いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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571:火花

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アガッターとツインで揉め始めてるんだが、月が昇って半分は過ぎている。
今日の予定が台無しだ。

「けち臭いこと言うけど、30リング払ったから、こっちで泊まろうか?」
「宿は良くないと言ってなかったか?」
「4番と5番でしょ?3番は嫌だけど、
豪華に1番で泊まる?もしくはここで、野宿?」
「向こうの砂漠際に行こうか?そこで野宿だな。
肉のチーズ焼きを作ってやろか?熊肉で。」
「やった!!」

背負子を背負っておいてよかった。



「すいませーん。そのダカルナの王様が会いたいという話。
次にダカルナに入国したときに改めてお聞かせください。」
「いえ、すぐにでも、ダカルナに来てほしい。」
「何の権利があって?」
「国王が命令しているんだぞ?」
「ダカルナ国の王様ですよね?わたしたちには関係ないでしょ? 」
「ニバーセル国民だとしても、他国の王には従うものだ!」
「どうして?その従う指示がニバーセル国に損害を与えるものだとしても?
おかしいよね?」
「小賢しいことを!!」
「だから捕らえればいいんだよ!!今のは不敬罪だ!ダカルナ国王に対してね!」
「そうなるな。捕らえよ!!」

『黙れ!!我らは行商人ティスとモウと名乗っているが、
護衛も兼ねている!
ニバーセルがコットワッツ領国、領主セサミナ様にお仕えしている。
護衛対象以外は敬意を払わなくていいはずだ。大陸共通だよな?
ここにはセサミナ様がいらっしゃらないが、
何も傍にいることだけが護衛ではないはず。
今、拒否しているわけではないだろ?
ダカルナ国入国時にあらためて声をかけてくれと言っているんだ。
どこが不敬なんだ?』

「嘘だね!護衛だって?こともあろうに、コットワッツ領主の?
セサミナの護衛は兄のマティスのはずだ!」
『今、セサミナ様を呼び捨てにしたね?
酒の上での軽口は許そうが、ここでは許されないよ!お前こそ不敬だ!!
死を持って償うか!!』

かなりの気を上げてみる。
マティスがローアングルから写真を撮っているから。
気で熊の毛皮と髪がたなびく。
ゴゴゴゴゴゴって奴だ。

「愛しい人!素晴らしいぞ!」
「もう!マティス!そればっかり!ちゃんと見てくれてる?」
「もちろんだ!」

マティスがフードを外して満面の笑みを向ける。
あ、これ!

「愛しい人もそればかりだぞ?」
「だってかっこいいもの。セサミンにも見せたいしね。」
「それは私もだ。可愛らしく、勇ましい愛しい人は皆に見せたいからな。」
「うん、見せるときは先に本人の許可を。」
「それは私もだ。」

一瞬火花が散った。
「「この件は後日。」」


「マティス!剣のマティス!本人か!!」

ここで、やっと理解できたようだ。
思うに、アガッターはミフィルからの情報が入っていないね。
さすがに、情報屋と名乗るぐらいならもう突き止めているはずだ。
ルンバにも止めはしたが、
鍛錬ワイプの弟子夫婦、すなわち剣のマティスとわたしだと。
なのに、マティスの伴侶がわたしだということにはならないのが不思議だ。
多妻が一般的だからか?ここだろうな。あー、馬鹿らしい。


「改めて名乗ろうか?
私はマティス。此度、ニバーセルがコットワッツ領国セサミナ様より、
かの地を拝領した。管理者は私と私の唯一の伴侶、この愛しい人だ。
通達も済んでいるはず。宣言も済んでいるしな。
ダカルナ国王が会いたいというならば、愛しい人が言うように、
入国時に改めて声をかけてほしい。
急ぎのようとなり、呼び出すつもりならば、まずはニバーセルに連絡を。
それが筋というものだろう?
ああ、護衛というのは間違いがないぞ?
そう名乗ることも許可をもらっているしな。
まだ、何かあるか?
セサミナ様を呼び捨てたことは、ここで、謝罪を。
それで、聞かなかったことにしようか。」
「・・・・アガッター、謝罪を。」
「どうして!!わたしはアガッターだよ!
中央にも出入りできる!!誰が謝るものか!!」


御付きを引き連れて帰っていく。

「ツイン殿といったな?貴殿に非があるわけではないが、
この件、覚えておくぞ?」

ものすごい睨んでいるが、仕方がないよね。
1回はこの件で断りが入れれるね。

「では、失礼する。」
「・・・いつ、ダカルナに?」
「護衛だが、行商もしているからな。はっきりとは約束はできない。」
「この地にはどれくらい?」
「応える義務もないが、愛しい人?どれくらいだ?」
「120リング以上を回収するくらい?」
「あはははは!だそうだ。」
「・・・。」


砂漠の方に向かっていく。
月が出ていてもまだ、大丈夫な場所。
砂漠の際。

テントを張って、火をおこし、熊肉を焼く。
これにチーズをかける。
熊はこれがおいしい。干し肉もおいしいけどね。


「なんだっておいしいよね!」
「そうだな。」
「マティスと食べるからだね。」
「そうだな。が、うまくなかったものもあったぞ?」
「ああ、生臭いのとか?あれはね。それはそれだ。
マティスが作るのは皆おいしいよ?」
「あははは。それはうれしな。それで?なにで120リング以上稼ぐ?
ここで、稼いでも税は取られないからな。」
「その場合はコットワッツにも納めなくていいの?」
「そうだろ?」
「じゃ、砂漠石か岩塩を取ろうか?
それをコットワッツで売ったらコットワッツに納税できるからね。」
「砂漠石な。協定のことははっきりしないし、
協定を結べば、砂漠を抱えるということになる。
また、ニバーセルに砂漠石を納めることにならないか? 」
「あ!そうか。いま、何も言わないのは、
誰も立ち入れないからってことか。
んー、要相談だね。じゃ、向こうの砂漠で岩塩?」
「砂漠の花を探そうか?」
「それだ!中央西砂漠だものね!どうやって探そうか?
コンダラで、砂漠の砂をすくっていく?」
「石使いが見つけたという話があるだろ?
あなたが以前話したように何らかの真実は入っているんだ。
石使いだから見つけられた。石使いは砂漠石を使う。
探すには砂漠石がいると。」
「難しいね。ここの石使いがってことでしょ?
砂漠石に探してこいって?だったらもっと見つかってるでしょ?
それか、砂漠石を持ってるってことだから、砂鉄集めみたいに?
磁石でくっつけるみたいとか?じゃ、コンダラに、砂漠石を付けて、
引いてみようか?」
「それも、それで見つかるならもっと話は拡がっている。
隠すにしても嘘の話がだ。」
「そうか。わからんね。推理するのは楽しいけど。」
「もう少し詳しく、あれに聞いたほうがいいな。」
「あれ?」
「そうだ。」
「「知ってるのか!!」」

ニコルさんのものまねで大笑いした。

「じゃ、月が沈んだら、こっそり訪ねていこう。
で、こっそり帰ってくると。
移動するしね。入国税は許してもらおう。」
「この廻りにいる見張りの者たちは?」

お約束のように見張りが付いている。

「今から、砂漠の奥に入ろう。
月がまだ出てるからね。ここはギリギリのところだ。
付いてこれないよ。で、用事を済ませたら、戻ってこよう。」
「そうするか。では、急ごう。」
「はーい。」

月が沈むまで、コンダラを出して、砂漠を驀進。
ピクトの山脈を右手に進んでいった。
2時間ほどだろうか。
一瞬の暗闇になり、すぐに明るくなる。

「光った!!」

砂が光った。
月無し石か?

「見た?」
「すまない。」
「この場所、覚えられる?」
「それは分かる。山が見えるからな。」
「じゃ、いつでも来れるね。またこよう。この方向ね。」
「ああ、わかった。」


タトートに入るのだから、やっぱりドロインさんに挨拶だ。
砂漠の花のことも聞きたいしね。

「ドロインさーん、おっはよーございまーす。」
「おや、また来てくれたのかい?いつも気付かないまま、ここにいてるね。
今日は2人?」
「ええ、また戻ってきたんです。あ、招待状ありがとうございます。
みな喜んでいました。それで、朝ごはんご一緒していいですか?」
「もちろんだとも。」
「今日はわたしの故郷の朝ごはんでもいいですか?」
「それは楽しみだね。あの2人も呼んでもいいかい?」
「ええ。」






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「ドロイン!!」
「ああ、大丈夫だよ。なにもない。」
「あ!あんたたちかい?合図を変えておくれよ、心臓に悪いよ。」
「そうだね。短く2回にしようか?その音を聞き逃すんじゃないよ?
うまいものが有りつけないからね。」
「そんな!」
「じゃ、今からありつけるんだね?」
「アサゴハンだと。」
「今から?へー。」

「ドロイン?何かあったか?この2人を呼ばないといけない何か?」

愛しい人が旅館の朝ごはんを作っている間に、話を聞いておこう。


「ああ、なかなかに面白いことになって来てね。
この2人を呼ぶことはないんだが、心配しているだけさ。」
「心配もするさ。刺繍布が持ち出せるとなったら、自国で欲しがるのは当然。
皆が、ドロインを自国に招こうとしている。」
「それは儲け時ではないのか?」
「金を出すのならね。出さないのに、来いっていう、筋の通らないものばかりだ。
ここでは悪さはできないが、万が一ってのがある。
一緒に住めればいいが、ドロインが拒むんだ。近くに住む事もね。」
「ドロイン?わがままだな?」
「は!このわたしにわがままだと?よく言うよ!
刺繍布のことだけではないよ?自称嫁候補の親が是非にと来るんだよ。」
「ご苦労なことだ。」
「ピクトもダカルナもデルサートルもだ。」
「らしいな。」
「暢気な!当事者になったらめんどくさいことこの上ないよ!!」
「当事者?このことに関して?」
「外から見てる分は楽しんだがね。
あんた知ってるだろ?行商やってるんだから。
ダカルナのアガッターが来るんだよ。明後日に。
会わないといけないのさ。」
「断れば?」
「断れるんならね。わたしだって、いろいろ付き合いもある。
あー、いやだいやだ。
これから向かうんだろ?例の場所に。
かち合わないようにするんだね。」
「いや、その場所からこっちに来たんだ。
アガッター、その女にも会ったよ。昨日。」
「何言ってる?時間が合わないじゃないか?」
「ああ、気にするな。」

「できたよー!!
お味噌汁はここで入れるからね。運んでねー。」
「まずは飯だ。」
「う巻きもつくったよー。」
「やった!!」

あれはうまい。まさに小躍りするな。
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