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572:ギフトセット
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「魚?柔らかいね。このスープも不思議な味だ、ほっとするね。この肉は?」
「サイコロステーキ。ちょっと豪華に、サイ肉です。」
「サイ!!家畜化の話は本当だったのかい?」
「ああ、それはこれから。これちい兄ちゃんにもらったものです。
早めに食べないとね。」
「うまいね。これはいい。この食べ方もいいね。」
「1個でご飯1膳たべちゃいますよね。」
「あははは!それはね。この米もいいね。」
「これはコットワッツで収穫したお米なんですよ。
故郷ではこれが主食でね、パンよりこっちの方が多い。
んー、最近は少なくなったんかな?
パンもおいしいですから。」
「米をそのまま食べるというのははじめてだよ。」
「そうなんですか?ふふふ。いろいろですね。」
「これ、この卵に入ってるのは?これも魚?」
「どうです?」
「ああ、これもうまい。この中身だけ食べたいくらいだ。」
「ほんとですか?じゃ、次回はそれを作った料理をごちそうしますよ。」
「すぐにでも食べたいね。」
「ええ。ちい兄ちゃんたちに食べてもらってOKが出れば。
わたしたち結構世間知らずだから。」
「それは、ああ、わかるね。
話が途中になったが、新領地に行った帰りなんだね?」
「また戻りますけどね。ここの警備隊長に会いに。」
「?」
「ドロインさんにも聞きたいんですけど、砂漠の花って知ってます?
それを探そうかと。」
「へ?あんた、それ本気で言ってるの?」
「おとぎ話的なことはしってますよ?
でも、ここの警備隊長さんが、探してくれって依頼してきて。
結局断ったんですけど、せっかくこっちに来てるんで探してみようかなと。」
「王の支持者だけだよ。あの話を信じているのは。」
「でも、昔からの言伝えでしょ?どこかに真実があるのではと。」
「暇なのかい?」
「ちょっと息抜きで。」
「砂漠の花ね。わたしも持ってるんだよ。」
「え!ほんとの話だったんですか!!」
「あんた、信じてないのに探すのかい?だったら見つかりっこないね。」
「ああ、それは真理だ。でも、あるとわかれば探せます。」
「そうかい?」
「見せてもらうわけにはいかないですか?」
「それはダメだ。願いを叶えている最中だからね。
その間は誰にも見せてはいけないよ?
叶ったら消えてなくなる。
見たことがあるというものは、わたしのように最中の者。
叶ったら、言わないだろうね。
だって、石のおかげでそうなったのかって、
言われたくはないだろ?」
「それはなんとなくわかります。」
「石が叶えるわけじゃないんだ。
それを持っているから叶えられると努力するんだよ。」
「ああ、それは。その考え方は。」
砂漠石だ。砂漠石がそうなんだよ。
ああ、わかった。
砂漠の花を見つけた石使いは知っていたんだ。
だけど、それを解いても理解はしてくれない。できない。
だから砂漠の花を作って渡したんだ。
「今の、今のここの王様の為に砂漠石を見つけた石使いさんは?」
「・・・・とうの昔に石になっている。石もない。」
「そうですか。かなり昔の話だったんですね。」
「生きていたらどうするんだい?石の見つけ方を聞くのかい?」
「いえ。それはもういいです。わたしには見つけられないとわかりましたから。」
「あるとわかれば見つけれると言ったじゃないか?」
「言葉が足りませんでしたね。
あるとわかり、必要となれば見つけることができる。
だが、わたしには必要ないとわかりましたので。
見付ることはできないと。」
「自分にはいらないと。それはまた大きく出たもんだ。
では、他人の為だったら?山とリングを積まれたら?」
「他人の為ですか?んー、それはないですね。
ドロインさんは知っているでしょ?ティスはマティスで、
その傍にいるのは異国の石使い、赤い塊と呼ばれていると。
ああ、爺の方じゃないですよ?
伴侶というのがことごとく抜け落ちるのはどうしてなのか不思議ですけどね。
その、一般の方より石をうまく使えると言われています。」
「ああ、それは聞いている。
伴侶というのが抜け落ちているわけじゃないよ?
伴侶がいても、関係がないってことだ。」
「なるほど。ま、それもいいです。それこそ、こっちには関係がない。
で、たまに依頼が来ます。
大前提として、そんな大金があるなら、石使いに頼むなと。」
「では少額であれば?」
「その内容によりますね。あのマッサージ、5リング頂きましたけど、
あれをさっき名前が挙がっていたアガッターの為にすることはないですね。
例え1000万リング積まれても。
・・・あ、嘘です。1000万ならします。」
「それはいいね!あはははは!」
そこで聞いていた2人も大笑いだ。
食後にコーヒーを飲んで、このまま帰ることにした。
あ、でも、竹酢液は渡しておこうかな。
「ああ、明後日に、アガッターと会うんだよ。」
「そうですか。お疲れ様です。」
「ほんと、疲れるんだよ。
あの見せてくれたコートを着たいんだが、持ってないだろ?
一緒に見せてくれた30と200は?その背負子に入れてないのかい?」
「ああ、ありますよ?サイズもぴったりなのが。」
ミフィル用に仕立てたものだ。
ちょっとだけロング気味かな?
「丈がちょっと長いかな?」
「いや、これでいい。まるであつらえたようじゃないか!
だが、トックスの持ってきたものとは違うね。
あれを見ていなければ、飛びつくね。」
「そうですよね。じゃ、ロングコートということでお買い上げ?」
「200だね。」
「ありがとうございます。
これ、まだ、出回ってませんから。」
「そうかい。それと、あの杖。」
「なにか少しでも不具合があれば調整しますよ?」
「いや、あれはいいね。あの赤い石。あれは?
あれと同じ石で耳飾りが欲しいんだが。」
「ああ、揃いの飾りはいいですね。どんなのがいいですか?
書いてもらえれば、マティスが作りますよ?
この耳飾りもマティスが作ってくれたんです。いいでしょ?」
久しぶりに自慢してみる。くふふふふ。
「ああ、いいね。良く似合ってる。わたしは丸玉だけでいいんだ。」
「金は?杖とお揃いにできますよ?」
「そこまでいいさ。杖が目立つほうがいい。」
「じゃ、大きさは?大きいの?小さいの?」
「大きいほうがいいが、耳がもげるだろ?」
「ぶ!そりゃそうですね。
薄く、丸く、できますよ?耳朶が隠れるくらい?
この大きさで。こんな感じ?鏡は?
ああ、これいいですね。」
紙を丸く切り、耳にあてて、大きさと位置を決める。
きれい鏡だ。卓上鏡って初めて見たよ。
が、すこし曇っているなかな?
これが一般的なのかな?
「透かしを入れましょうか?
光があたれば浮き出るように。」
「ああ、それはいいね。お願いしよう。
柄はこれと同じで。」
「はい。」
部屋の隅にテーブルを移動して作業だ。
大っぴらに加工できるものでもない。
サンゴはまた取りに行きたいな。
「どうする?」
「裏からね、堀り込むの。
表に出ちゃだめだよ。
上は耳朶に隠れすから、このピンの下に。」
「こう?」
「うん。」
裏に薄く書いて、砂漠石を尖らせたもので、削る込んでいく。
うまいね。あっという間だ。
削ったところは砂漠石で埋めてしまおう。
これもドロインの守りになるように。
「いくらになる?」
「んー、いくらで買っていただけますか?」
「こっちが決めるのかい?」
「材料はその、海でとってきたものなんで、ただなんですよ。
その時の労賃、加工代を入れても、1リング?」
「・・・・物を売るときは、ほかの誰かに決めてもらいな。」
「今日はいないので。ああ、200のコートのおまけで。」
「それはいけないよ。価値あるものを安売りしては、
この石がかわいそうだ。そうだろ?
アガッターとの会合が面倒で、気がめいっていたんだが、
うまい食事と、いい上着、いい飾りが手に入ったからね。
あの女の驚く顔が楽しみだ。」
「じゃ、飾りの代金の代わりに、教えてもらいたいことがあるんですが?」
「わたしの知っていることでいいのかい?
知らないことなら損するよ?」
「ああ、それはかまいません。アガッターの姉、
ミフェルさんが言うには情報を買うというのも賢い方法だと言ってましたから。」
「ミフィルも知っているんだね。」
「ええ。樽で化粧水と髪油を売ってくれたんですけどね、
その後、アガッターと商談決裂になって。」
「その話、詳しく聞いてもいいかい?」
「何のことはないですよ?」
酒を入れる瓶の蓋をもとに、
ゴムを使っての密封容器。
馴染みの陶器屋に作ってもらった。
もともと、ミフィルさんが買い取る約束だったけど、
妹がしゃしゃりでてきて、態度が気に入らなかったから帰ってきた。
後日、アガッターと陶器屋は契約をしている。
陶器屋も商売なので事前に、事情は説明している。
その化粧瓶もぼちぼち販売になるだろうけど、
こっちはもっといいのを作った。隠匿しようがしまいが
こっちが先に作っているんだから施しようがない。
そのいいものをまた、その陶器屋に開発してもらってる。
アガッターに見せれば2回連続盗みに入られて、
とうとう10万で買っていったそうな。
ちょっといじわるしました。
そんな話。
「大体はわかったが。あんたたちわかったかい?」
「なんせ、アガッターが気に入らなってことだろ? 」
「その通りです。」
「化粧瓶の話もこっちに聞こえているさ。それを今回持ってくるんだろう。
で?それよりいいもの?それを10万?」
「ええ。あ、よかったらもらってくれますか?
お世話になった方につかってもらえればと。
あ、姐さん方も使ってください。」
ちゃんと竹かごに入ったギフトセットだ。
高級タオルも入っている。
おまけの小さな砂漠石も。
「この砂漠石を入れて光らすときれいですよ。
暗いところで試してくださいな。ちょっと、いいでしょ?」
竹かごを開け、3人は顔を見渡した。
「・・・・10万?」
「らしいですよ?陶器屋の奥さんの懐に入るからいいんですけど、
お間抜けですよね?くふふふ。」
「・・・・お間抜けはお前だよ!!いいや!大間抜けだ!!」
「大間抜け!!」
はじめて言われたよ、大間抜けって!
横でマティスは怒るどころか、
笑いをこらえている。
えぇー。そこは愛しい人になんてこというんだって怒る場面じゃないの?
わたしのことを思って叱ってくれてるからないんだろうね。
「どっち方面でしょうか?」
「どっち? 」
「価格が高い?安い?こういうのは作っちゃダメ?
んーちい兄ちゃんは何も言わなかったですよ?
ああ、あまり人に見せるなとだけ。
世話になった人に配ることに関しては何も。」
「配った相手は?」
「えーとコットワッツのお世話になってる方の奥方たちと、
陶器屋の奥方と、ニバーセル資産院の院長の彼女さんと、
イリアスの村長の奥方です。」
「それらはみな、あんたのことは知っているんだね? 」
「知っている?何を?」
「いろいろできるということをだよ!!」
「いろいろも何も、何もできないですよ?
後は今度お嫁に行く娘さんにもあげようかと。ニックさんの姪御さんです。
それとなくは口止めしてますよ。自分たちだけで楽しんでくれって。」
「身内だね、ほぼ。これを自慢げに見せびらかすものはいないと?」
「今のところは。んー、ニックさんの姪っ子はどうかな?
マトグラーサの豪族に嫁ぐそうなので、
そこでは逆に自慢してほしいですね。多妻なところらしいんで、
こう、意地悪されないように?」
「それもいいだろ。で、これを量産?
いくらで?」
「それはまだ。陶器屋と相談ですね。」
「まったく同じもの?」
「それは多少違うと思いますよ?手ごたえはある感じですが、
まだまだ先な感じですね。これはあくまでも試作品なんで。
これよりももっといいものができるのと思っていますし、
ちょっとしたお祝いに送れる品になればいいなと。
なので、10万なんて金額は論外です。
そうですね。このセットで奮発しても10リングですかね?」
「新たに作ってるものが10リングでもいいだろうが、
これを売るとなったら、白磁だけで20万もらいな。」
「すごい!でも売ることはないですよ?それに、今度わたしの作ったもので、
いくらで売ってくれって言われたら
その10倍の金額を請求しろって言われてます。」
「誰に?」
「師匠に。」
「ああ、まともなのがいたね。よかった。」
「ドロイン?それは間違いだ。あれがまともなら、
この世のすべてがまともだ。」
「金銭感覚についてだよ!」
「ああ、それはうむ。そうだな。金銭感覚だけな。それならばいいだろう。」
「あ、でも、そしたら軍曹は損したことに?10万損したよね?」
「軍曹?陶器屋の奥方のことだね?軍関係者者なのかい?」
「あだ名です。わたしは隊長って呼ばれてます。」
「・・・・。ティス?
あんたはこれに関して何をしているんだい?」
「私か?愛しい人と軍曹が話しているとき?
その主人、陶器屋の主人と話しているか、飯の用意だ。
絵付けの手法も教わっている。」
「その陶器屋の主人は何と言ってる? 」
「2人のことか?お互いの奥方の惚気だ。これがなかなか勝負がつかない。
いつも引き分けだ。
最後はますます惚れてしまうなと。 」
「もう!そんなこと話してるの?はずかしいな!」
「ああ、わかった。わかったよ。わたしが間違っていたようだね。
間抜けはわたしだったよ。」
「え?そこがさげですか?んー、今の話の流れではわからなかったです。」
「さげ?なんだい?」
「えーと面白話の、落としどころ? 」
「・・・・わたしは今、面白話をしていたわけじゃないよ!!」
「でも、姐さんたちが死にかけです。死因は笑死?」
「ドロインが、ドロインが自分で間抜けだって!!」
「自分が間違っていたって!」
ぶははははは!!!!
「お前たち!!仕事に戻りな!!」
「ひー、苦しい!
も、戻るから!あんた、モウだったね。
いいものもらったよ!今日はゆっくりはできないのかい?」
「すいません、今日は帰ります。」
「そうかい?今度はゆっくり泊まっていきなよ。」
「ありがとうございます。次回は必ず。」
「ほら!仕事に戻りな!!」
「はいはい。」
「サイコロステーキ。ちょっと豪華に、サイ肉です。」
「サイ!!家畜化の話は本当だったのかい?」
「ああ、それはこれから。これちい兄ちゃんにもらったものです。
早めに食べないとね。」
「うまいね。これはいい。この食べ方もいいね。」
「1個でご飯1膳たべちゃいますよね。」
「あははは!それはね。この米もいいね。」
「これはコットワッツで収穫したお米なんですよ。
故郷ではこれが主食でね、パンよりこっちの方が多い。
んー、最近は少なくなったんかな?
パンもおいしいですから。」
「米をそのまま食べるというのははじめてだよ。」
「そうなんですか?ふふふ。いろいろですね。」
「これ、この卵に入ってるのは?これも魚?」
「どうです?」
「ああ、これもうまい。この中身だけ食べたいくらいだ。」
「ほんとですか?じゃ、次回はそれを作った料理をごちそうしますよ。」
「すぐにでも食べたいね。」
「ええ。ちい兄ちゃんたちに食べてもらってOKが出れば。
わたしたち結構世間知らずだから。」
「それは、ああ、わかるね。
話が途中になったが、新領地に行った帰りなんだね?」
「また戻りますけどね。ここの警備隊長に会いに。」
「?」
「ドロインさんにも聞きたいんですけど、砂漠の花って知ってます?
それを探そうかと。」
「へ?あんた、それ本気で言ってるの?」
「おとぎ話的なことはしってますよ?
でも、ここの警備隊長さんが、探してくれって依頼してきて。
結局断ったんですけど、せっかくこっちに来てるんで探してみようかなと。」
「王の支持者だけだよ。あの話を信じているのは。」
「でも、昔からの言伝えでしょ?どこかに真実があるのではと。」
「暇なのかい?」
「ちょっと息抜きで。」
「砂漠の花ね。わたしも持ってるんだよ。」
「え!ほんとの話だったんですか!!」
「あんた、信じてないのに探すのかい?だったら見つかりっこないね。」
「ああ、それは真理だ。でも、あるとわかれば探せます。」
「そうかい?」
「見せてもらうわけにはいかないですか?」
「それはダメだ。願いを叶えている最中だからね。
その間は誰にも見せてはいけないよ?
叶ったら消えてなくなる。
見たことがあるというものは、わたしのように最中の者。
叶ったら、言わないだろうね。
だって、石のおかげでそうなったのかって、
言われたくはないだろ?」
「それはなんとなくわかります。」
「石が叶えるわけじゃないんだ。
それを持っているから叶えられると努力するんだよ。」
「ああ、それは。その考え方は。」
砂漠石だ。砂漠石がそうなんだよ。
ああ、わかった。
砂漠の花を見つけた石使いは知っていたんだ。
だけど、それを解いても理解はしてくれない。できない。
だから砂漠の花を作って渡したんだ。
「今の、今のここの王様の為に砂漠石を見つけた石使いさんは?」
「・・・・とうの昔に石になっている。石もない。」
「そうですか。かなり昔の話だったんですね。」
「生きていたらどうするんだい?石の見つけ方を聞くのかい?」
「いえ。それはもういいです。わたしには見つけられないとわかりましたから。」
「あるとわかれば見つけれると言ったじゃないか?」
「言葉が足りませんでしたね。
あるとわかり、必要となれば見つけることができる。
だが、わたしには必要ないとわかりましたので。
見付ることはできないと。」
「自分にはいらないと。それはまた大きく出たもんだ。
では、他人の為だったら?山とリングを積まれたら?」
「他人の為ですか?んー、それはないですね。
ドロインさんは知っているでしょ?ティスはマティスで、
その傍にいるのは異国の石使い、赤い塊と呼ばれていると。
ああ、爺の方じゃないですよ?
伴侶というのがことごとく抜け落ちるのはどうしてなのか不思議ですけどね。
その、一般の方より石をうまく使えると言われています。」
「ああ、それは聞いている。
伴侶というのが抜け落ちているわけじゃないよ?
伴侶がいても、関係がないってことだ。」
「なるほど。ま、それもいいです。それこそ、こっちには関係がない。
で、たまに依頼が来ます。
大前提として、そんな大金があるなら、石使いに頼むなと。」
「では少額であれば?」
「その内容によりますね。あのマッサージ、5リング頂きましたけど、
あれをさっき名前が挙がっていたアガッターの為にすることはないですね。
例え1000万リング積まれても。
・・・あ、嘘です。1000万ならします。」
「それはいいね!あはははは!」
そこで聞いていた2人も大笑いだ。
食後にコーヒーを飲んで、このまま帰ることにした。
あ、でも、竹酢液は渡しておこうかな。
「ああ、明後日に、アガッターと会うんだよ。」
「そうですか。お疲れ様です。」
「ほんと、疲れるんだよ。
あの見せてくれたコートを着たいんだが、持ってないだろ?
一緒に見せてくれた30と200は?その背負子に入れてないのかい?」
「ああ、ありますよ?サイズもぴったりなのが。」
ミフィル用に仕立てたものだ。
ちょっとだけロング気味かな?
「丈がちょっと長いかな?」
「いや、これでいい。まるであつらえたようじゃないか!
だが、トックスの持ってきたものとは違うね。
あれを見ていなければ、飛びつくね。」
「そうですよね。じゃ、ロングコートということでお買い上げ?」
「200だね。」
「ありがとうございます。
これ、まだ、出回ってませんから。」
「そうかい。それと、あの杖。」
「なにか少しでも不具合があれば調整しますよ?」
「いや、あれはいいね。あの赤い石。あれは?
あれと同じ石で耳飾りが欲しいんだが。」
「ああ、揃いの飾りはいいですね。どんなのがいいですか?
書いてもらえれば、マティスが作りますよ?
この耳飾りもマティスが作ってくれたんです。いいでしょ?」
久しぶりに自慢してみる。くふふふふ。
「ああ、いいね。良く似合ってる。わたしは丸玉だけでいいんだ。」
「金は?杖とお揃いにできますよ?」
「そこまでいいさ。杖が目立つほうがいい。」
「じゃ、大きさは?大きいの?小さいの?」
「大きいほうがいいが、耳がもげるだろ?」
「ぶ!そりゃそうですね。
薄く、丸く、できますよ?耳朶が隠れるくらい?
この大きさで。こんな感じ?鏡は?
ああ、これいいですね。」
紙を丸く切り、耳にあてて、大きさと位置を決める。
きれい鏡だ。卓上鏡って初めて見たよ。
が、すこし曇っているなかな?
これが一般的なのかな?
「透かしを入れましょうか?
光があたれば浮き出るように。」
「ああ、それはいいね。お願いしよう。
柄はこれと同じで。」
「はい。」
部屋の隅にテーブルを移動して作業だ。
大っぴらに加工できるものでもない。
サンゴはまた取りに行きたいな。
「どうする?」
「裏からね、堀り込むの。
表に出ちゃだめだよ。
上は耳朶に隠れすから、このピンの下に。」
「こう?」
「うん。」
裏に薄く書いて、砂漠石を尖らせたもので、削る込んでいく。
うまいね。あっという間だ。
削ったところは砂漠石で埋めてしまおう。
これもドロインの守りになるように。
「いくらになる?」
「んー、いくらで買っていただけますか?」
「こっちが決めるのかい?」
「材料はその、海でとってきたものなんで、ただなんですよ。
その時の労賃、加工代を入れても、1リング?」
「・・・・物を売るときは、ほかの誰かに決めてもらいな。」
「今日はいないので。ああ、200のコートのおまけで。」
「それはいけないよ。価値あるものを安売りしては、
この石がかわいそうだ。そうだろ?
アガッターとの会合が面倒で、気がめいっていたんだが、
うまい食事と、いい上着、いい飾りが手に入ったからね。
あの女の驚く顔が楽しみだ。」
「じゃ、飾りの代金の代わりに、教えてもらいたいことがあるんですが?」
「わたしの知っていることでいいのかい?
知らないことなら損するよ?」
「ああ、それはかまいません。アガッターの姉、
ミフェルさんが言うには情報を買うというのも賢い方法だと言ってましたから。」
「ミフィルも知っているんだね。」
「ええ。樽で化粧水と髪油を売ってくれたんですけどね、
その後、アガッターと商談決裂になって。」
「その話、詳しく聞いてもいいかい?」
「何のことはないですよ?」
酒を入れる瓶の蓋をもとに、
ゴムを使っての密封容器。
馴染みの陶器屋に作ってもらった。
もともと、ミフィルさんが買い取る約束だったけど、
妹がしゃしゃりでてきて、態度が気に入らなかったから帰ってきた。
後日、アガッターと陶器屋は契約をしている。
陶器屋も商売なので事前に、事情は説明している。
その化粧瓶もぼちぼち販売になるだろうけど、
こっちはもっといいのを作った。隠匿しようがしまいが
こっちが先に作っているんだから施しようがない。
そのいいものをまた、その陶器屋に開発してもらってる。
アガッターに見せれば2回連続盗みに入られて、
とうとう10万で買っていったそうな。
ちょっといじわるしました。
そんな話。
「大体はわかったが。あんたたちわかったかい?」
「なんせ、アガッターが気に入らなってことだろ? 」
「その通りです。」
「化粧瓶の話もこっちに聞こえているさ。それを今回持ってくるんだろう。
で?それよりいいもの?それを10万?」
「ええ。あ、よかったらもらってくれますか?
お世話になった方につかってもらえればと。
あ、姐さん方も使ってください。」
ちゃんと竹かごに入ったギフトセットだ。
高級タオルも入っている。
おまけの小さな砂漠石も。
「この砂漠石を入れて光らすときれいですよ。
暗いところで試してくださいな。ちょっと、いいでしょ?」
竹かごを開け、3人は顔を見渡した。
「・・・・10万?」
「らしいですよ?陶器屋の奥さんの懐に入るからいいんですけど、
お間抜けですよね?くふふふ。」
「・・・・お間抜けはお前だよ!!いいや!大間抜けだ!!」
「大間抜け!!」
はじめて言われたよ、大間抜けって!
横でマティスは怒るどころか、
笑いをこらえている。
えぇー。そこは愛しい人になんてこというんだって怒る場面じゃないの?
わたしのことを思って叱ってくれてるからないんだろうね。
「どっち方面でしょうか?」
「どっち? 」
「価格が高い?安い?こういうのは作っちゃダメ?
んーちい兄ちゃんは何も言わなかったですよ?
ああ、あまり人に見せるなとだけ。
世話になった人に配ることに関しては何も。」
「配った相手は?」
「えーとコットワッツのお世話になってる方の奥方たちと、
陶器屋の奥方と、ニバーセル資産院の院長の彼女さんと、
イリアスの村長の奥方です。」
「それらはみな、あんたのことは知っているんだね? 」
「知っている?何を?」
「いろいろできるということをだよ!!」
「いろいろも何も、何もできないですよ?
後は今度お嫁に行く娘さんにもあげようかと。ニックさんの姪御さんです。
それとなくは口止めしてますよ。自分たちだけで楽しんでくれって。」
「身内だね、ほぼ。これを自慢げに見せびらかすものはいないと?」
「今のところは。んー、ニックさんの姪っ子はどうかな?
マトグラーサの豪族に嫁ぐそうなので、
そこでは逆に自慢してほしいですね。多妻なところらしいんで、
こう、意地悪されないように?」
「それもいいだろ。で、これを量産?
いくらで?」
「それはまだ。陶器屋と相談ですね。」
「まったく同じもの?」
「それは多少違うと思いますよ?手ごたえはある感じですが、
まだまだ先な感じですね。これはあくまでも試作品なんで。
これよりももっといいものができるのと思っていますし、
ちょっとしたお祝いに送れる品になればいいなと。
なので、10万なんて金額は論外です。
そうですね。このセットで奮発しても10リングですかね?」
「新たに作ってるものが10リングでもいいだろうが、
これを売るとなったら、白磁だけで20万もらいな。」
「すごい!でも売ることはないですよ?それに、今度わたしの作ったもので、
いくらで売ってくれって言われたら
その10倍の金額を請求しろって言われてます。」
「誰に?」
「師匠に。」
「ああ、まともなのがいたね。よかった。」
「ドロイン?それは間違いだ。あれがまともなら、
この世のすべてがまともだ。」
「金銭感覚についてだよ!」
「ああ、それはうむ。そうだな。金銭感覚だけな。それならばいいだろう。」
「あ、でも、そしたら軍曹は損したことに?10万損したよね?」
「軍曹?陶器屋の奥方のことだね?軍関係者者なのかい?」
「あだ名です。わたしは隊長って呼ばれてます。」
「・・・・。ティス?
あんたはこれに関して何をしているんだい?」
「私か?愛しい人と軍曹が話しているとき?
その主人、陶器屋の主人と話しているか、飯の用意だ。
絵付けの手法も教わっている。」
「その陶器屋の主人は何と言ってる? 」
「2人のことか?お互いの奥方の惚気だ。これがなかなか勝負がつかない。
いつも引き分けだ。
最後はますます惚れてしまうなと。 」
「もう!そんなこと話してるの?はずかしいな!」
「ああ、わかった。わかったよ。わたしが間違っていたようだね。
間抜けはわたしだったよ。」
「え?そこがさげですか?んー、今の話の流れではわからなかったです。」
「さげ?なんだい?」
「えーと面白話の、落としどころ? 」
「・・・・わたしは今、面白話をしていたわけじゃないよ!!」
「でも、姐さんたちが死にかけです。死因は笑死?」
「ドロインが、ドロインが自分で間抜けだって!!」
「自分が間違っていたって!」
ぶははははは!!!!
「お前たち!!仕事に戻りな!!」
「ひー、苦しい!
も、戻るから!あんた、モウだったね。
いいものもらったよ!今日はゆっくりはできないのかい?」
「すいません、今日は帰ります。」
「そうかい?今度はゆっくり泊まっていきなよ。」
「ありがとうございます。次回は必ず。」
「ほら!仕事に戻りな!!」
「はいはい。」
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『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
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