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573:名誉会員
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「これは遠慮なくもらっておこう。
さ、この飾りの代金の代わりに何が聞きたい?」
「この青い花、知ってますか?それと、この香りどう思います?」
青い花は全体を押し花に。
種は小さな密封容器に入れている。
「面白いことをしているね。」
押し花というのはないようだ。
植物の標本的なものなんだが。
「これは枯れている?色はそのまま?」
「ええ。もっと、みずみずしいですが、色はそのままです。」
「青い花というのは見たことがないね。話にも聞かない。
残念だね。」
「いえ。ドロインさんが知らないということは
ほとんどの人が知らないということです。
それが分かるだけで十分。
ではこの香りは?蓋をあけて、鼻を近づけてください。
毒ではないです。」
「わかってるよ。ん!
・・・・あんんたたちはまた!なにをやっているんだい!」
「知っている香りですか?」
「知らないよ!ここタトートだよ?あらゆる香りが集まると言っていい。
ルポイドの香水だって取り扱ってるんだよ?
なのにこの香りは知らない。このわたしがだよ?
食べ物ではあるだろうけど。豆ソースとかね。
しかし、この手合いのもので、知らない香りに出くわすとはね。」
「これ、そんなに香りの持続時間というのかな?
あっという間になくなってしまうんですよ。」
「それは致命的だね。」
「その香り成分だけを取り出すとか、そういう研究すればいいんでしょうけど、
この一瞬の香りがいいかなって。
さっきの箱を開けたときに、ふわっと香ってくれればなと。
あとは、綿にくるんで匂い袋とか。
下着とか入れている場所に入れておくんです。
そしたら、なんとなーく匂いが移る感じで。」
「それは、もったいない。」
「すれ違った人からほのかに素敵な香がして来たら
思わず振り返るようなのが好きなんですよ。」
「い、愛しい人!恥ずかしいぞ!!」
「え?こんな話も?」
「あはははは!ニバーセル人はそうらしいね!」
「お国柄なのかしら?なんせ、そんなやわらかい香りで、
これ系はきっと師匠に聞いてもダメなんですよね。
一瞬の香り、いくらで売れるとおもいますか?
原価は気にしないで。」
「これは面白い。が、誰に対して売るかだね。」
「これの売り上げでコットワッツに貢献したい。
ニバーセルでは対国外の商品を求めている。
その一つになればと。」
ドロインさんは密封容器を少し降り、中の音を確かめた。
そしてもう一度蓋を開け、匂いを確かめる。
「さっきよりは薄くなってるね。
3つ?粒?」
「空気に触れるとなくなると。なので、綿にくるめば、
結構持ちます。」
真綿の方だが。
「1粒10万で。」
「暴利だ!!!」
「知らないよ。だが、この瓶、あの化粧瓶のようにしゃれたものに入れて
3粒。容器こみで50万だね。」
ドロインは極悪人だった。
「数は出してはいけない。
それはあんたの兄弟に相談しな。わたしがそういったと言えばいい。」
「うーすっ。」
「なんだい?不服かい?」
「高い。高すぎる。」
「ルポイドの香水、知ってるかい?
「ええ。わたしにはきつい香りでした。」
「好みがあるだろうが、あれはこれぐらいの瓶に入って200万リングだよ?」
これくらいって、テルマさんがくれたくらいの瓶だ。
あれで200万!!
「香りが続かないからね、50万でいいところだろ。
この中身は?見てもいいかい?」
「ええ、どうぞ。」
「・・・・種?これを植えれば育つ?」
「それはないですね。」
受粉したものが香るのではなく、しなかったものが香りを出し続けたのだ。
間違えて、何個かは受粉前ものを摘み取っていた。
そっちの方が香りが残っていたのだ。
なので、受粉した種は、草原の家の周りに植える予定だ。
また月の沈むころ、凪の時に、受粉し損ねた種をもらおう。
青い花に食われる前に。
「これがなにか、わからなくする方法を確立してからだよ?」
「これはドロインさんが言うように種なんですよ。
コットワッツから売り出せば、おのずと新しい領地、
あの豪風領域の植物だとわかるでしょ。採取方法が特殊ですが。」
「では、これを取れるのはあんたたちだけ?」
「おそらく。」
「それもあの子にいいな。」
「あはははは!あの子扱いですね。
ちぃかジロと呼んでやってください。
アガッターは呼び捨てにしたからちょっと脅しましたけどね。」
「そうだ、結局謝罪もないまま、帰っていったな。」
「ちょっと詳しく話して聞かせておくれ。」
「あの、わたしたち2人、説明がへたくそって言われるんで
出来事の箇条報告でいいですか?」
「それは誰かに言われたのかい?」
「師匠に。師匠に報告するときは箇条報告です。」
「ああ。あんたたちの師匠だね。よくわかっている。」
「あれに理解力がないんだ!!」
「そうだね。それは仕方がないよ。あんたたち2人のことだから。」
「?」
「いいから。ほら、そうだね、アガッターと会う直前の出来事からだ。」
そこで、入国税をいわば、2重取りされたことから話す。
そうなると2人の男に助言したことの話になってくるが、
それは今はいいだろう。
「コットワッツ領領主の領主の力の一つに移動があるそうだ。
石使いもかなりの大きさの砂漠石を使ってもできるらしいね。
あんたは領主の兄だ。移動ができると?」
「そうだな。できないとは言わない。
が、実際は領主が領主の力を使えるだけだ。どちらかというと、
私も石使いと呼ばれてもいいそうだ。そういうことだな。」
「そうなるね。
では、ダカルナとアガッターとミフィルが探している行商夫婦はあんたたちで、
ダカルナはツインの名において捕縛命令は取り消したと。
それは念を押しておいてやろう。
アガッターとミフィルは個人的に追ってるのはどうしようもないがね。
謝罪はなしか。儲けたね。」
「ええ。これで、それを理由に断れます。その時のアガッターの地位次第ですが。」
「アガッターね。
化粧水はいいもんなんだよ。髪油もね。当然隠匿もかかっている。
昔は誰もが家で作っていたんだ。
それを口外しないって石の契約をしてしまってね。すべての人に対してだ。
アガッターの祖父が徹底した契約を行ったそうだ。」
「ああ、それで納得ですよ。だって、誰でもおもいつく方法なんだもの。
なんで、各自で作らないのかなって面倒なので、わたしは買えるなら買えますが、
手作り好きな人は作るでしょ?
競争相手がいないと商品の向上もないですよね。
いや、いいものは昔ながらの手法で生き延びてるってことでしょうか?」
「あんた、その作り方を知っていても、言ってはいけないよ?
が、昔ながらの手法ね。昔の方がよかったと思うんだよね。」
「・・・・。」
「言いたいことは分かる。こっちが年を取ったといいたいんだろ?
それも言わなくていい。それを差し引いてもだ。」
「あはははは!えーと薄めてるとか?」
「だろうね。1ヵ月持たないんだよ。だから、最後は捨ててたんだ。
が、この化粧瓶を使えば、日持ちがするってことだろ?
その分、売り上げは減る。それを補うためにさらに薄めるかもしれないね。」
「軍曹の作った瓶は1か月、普通に使い切る量で作ってもらっています。」
「ああ、その軍曹、なかなかにできる人だね?」
「ええ。ナーチアという名前です。白磁が完成したら
いままで呼ばれていた白磁とは別な白磁、
ナーチアの白磁と呼びつもりです。」
「名前が付くというのは名誉なことだ。
では、これは?この香りは?」
「名前ですか?んー。」
「あんたの名前は付けないのか? 」
「うへっ。それは恥ずかしいです。」
「珍しいね。大抵は自分の名を付けたがるし、残したがるもんだよ?」
「そんなことないですよ?ピクト山脈のふもとの村の村長さんも、
ウダー村っていうんですが、それが村長のなまえかってきいたら、
そんなの恥ずかしいだろっていってましたよ?」
「ピクト?ウダー?」
「人それぞれですよ。なので、わたしはちょっと遠慮しますし、
マティスの名前も、マティスを知らない人がその名は呼びのは嫌なんで。 」
「愛しい人!私もだ!」
「愛しい人なんだね?あんたの名前は? 」
「ええ。マティスだけが呼べる名前です。あとは、それぞれで。
いまはモウって呼ばれることが多いですね。」
「あんたは異国の者だと言っていたが、この大陸の人間ではないんだね?」
「ふふふ。異国の者です。」
「そうだね。この大陸は名前を大事にする。
名前というのはその人そのものだ。
ピクトの村長?そいつは自分の名になにか負い目をあるからだ。
あんたはそれはないだろ?」
「名というのは一番短い呪です。そう認識はしています。
わたしは名前がないのですよ。だから、マティスが愛しい人がそう呼ぶならば
それが名前です。モウというのはないと不便なことがあったので、
それもマティスが付けてくれました。
別の人間がわたしを愛しい人と呼べばマティスはその人をどうにかするでしょうね。
彼は緑の目ですから。」
「ああ、それで。」
「うふふふ。ここでは、聞かれたことは素直に話してしまいますね。」
「そんなことはないだろう?肝心なことは話してはいないだろ?」
「ドロインさんが聞かないようにしているからですよ。」
「当たり前だ。知ってどうにかできることと、知らなくていいことがあるんだ。」
「それが分かるというのが素晴らしいです。」
「・・・あんたの師匠が苦労しているということは分かるよ。
チイもね。」
「ちぃは、あれは領主だ。苦労とは思っていない。
ワイプはこっちが苦労をしている。あれの身に何かあれば、彼女が泣く。
そうならないように先に始末したいがうまくいかない。
ドロインも死ね死ね団に入らないか?
いかにワイプが死ぬかを考える団体だ。」
「ドロインさんは甘々団なんだよ!引き抜きしないで!!」
「あまあま?」
「そうです。甘いものが人生の上で必要不可欠な人で構成される団体。
あ、プニカのタルト置いときますね。皆さんで食べてください。
冷凍庫にも入れておきます。日持ちしますし、
焼けば熱々のものが食べれますよ。」
プニカのタルトは見た目も豪華で皆に好評なのだ。
「わたしは甘々団だね。」
「ええ、名誉会員です。」
「あははは!ああ、楽しいね。ああ、あのカンターウォーマーは?まだなのかい?」
「離れはじめと会わずの月の真ん中以降に持ってきますよ。」
「その時にちぃとあんたの師匠も連れて来れるかい?
少し話がしたい。」
「ドロイン?ワイプと話すと神経がやられるぞ?」
「あんたは、あれだね、そのワイプが大事なんだね?」
「異議ありだ!!」
「ドロインさん!そうなの!」
「愛しい人!!」
「ああ、わかってる。大事というのは何も、いい意味だけではないだろ?
あんたの生活、人生を邪魔しないようにしてほしいだけだろ?」
「!!そうだ!あれが何かへまをするたびにこちらの精神が擦り減る!」
「わかったから。その辺も話をしておいてやろう。 」
「おお!ドロインは死ね死ね団の名誉会員だな!」
「そうしておいておくれ。」
W名誉会員だ。
さすがだ。
ではまた、数日後にと、ローストポットを置いて警備隊長のところに行くことになった。
さ、この飾りの代金の代わりに何が聞きたい?」
「この青い花、知ってますか?それと、この香りどう思います?」
青い花は全体を押し花に。
種は小さな密封容器に入れている。
「面白いことをしているね。」
押し花というのはないようだ。
植物の標本的なものなんだが。
「これは枯れている?色はそのまま?」
「ええ。もっと、みずみずしいですが、色はそのままです。」
「青い花というのは見たことがないね。話にも聞かない。
残念だね。」
「いえ。ドロインさんが知らないということは
ほとんどの人が知らないということです。
それが分かるだけで十分。
ではこの香りは?蓋をあけて、鼻を近づけてください。
毒ではないです。」
「わかってるよ。ん!
・・・・あんんたたちはまた!なにをやっているんだい!」
「知っている香りですか?」
「知らないよ!ここタトートだよ?あらゆる香りが集まると言っていい。
ルポイドの香水だって取り扱ってるんだよ?
なのにこの香りは知らない。このわたしがだよ?
食べ物ではあるだろうけど。豆ソースとかね。
しかし、この手合いのもので、知らない香りに出くわすとはね。」
「これ、そんなに香りの持続時間というのかな?
あっという間になくなってしまうんですよ。」
「それは致命的だね。」
「その香り成分だけを取り出すとか、そういう研究すればいいんでしょうけど、
この一瞬の香りがいいかなって。
さっきの箱を開けたときに、ふわっと香ってくれればなと。
あとは、綿にくるんで匂い袋とか。
下着とか入れている場所に入れておくんです。
そしたら、なんとなーく匂いが移る感じで。」
「それは、もったいない。」
「すれ違った人からほのかに素敵な香がして来たら
思わず振り返るようなのが好きなんですよ。」
「い、愛しい人!恥ずかしいぞ!!」
「え?こんな話も?」
「あはははは!ニバーセル人はそうらしいね!」
「お国柄なのかしら?なんせ、そんなやわらかい香りで、
これ系はきっと師匠に聞いてもダメなんですよね。
一瞬の香り、いくらで売れるとおもいますか?
原価は気にしないで。」
「これは面白い。が、誰に対して売るかだね。」
「これの売り上げでコットワッツに貢献したい。
ニバーセルでは対国外の商品を求めている。
その一つになればと。」
ドロインさんは密封容器を少し降り、中の音を確かめた。
そしてもう一度蓋を開け、匂いを確かめる。
「さっきよりは薄くなってるね。
3つ?粒?」
「空気に触れるとなくなると。なので、綿にくるめば、
結構持ちます。」
真綿の方だが。
「1粒10万で。」
「暴利だ!!!」
「知らないよ。だが、この瓶、あの化粧瓶のようにしゃれたものに入れて
3粒。容器こみで50万だね。」
ドロインは極悪人だった。
「数は出してはいけない。
それはあんたの兄弟に相談しな。わたしがそういったと言えばいい。」
「うーすっ。」
「なんだい?不服かい?」
「高い。高すぎる。」
「ルポイドの香水、知ってるかい?
「ええ。わたしにはきつい香りでした。」
「好みがあるだろうが、あれはこれぐらいの瓶に入って200万リングだよ?」
これくらいって、テルマさんがくれたくらいの瓶だ。
あれで200万!!
「香りが続かないからね、50万でいいところだろ。
この中身は?見てもいいかい?」
「ええ、どうぞ。」
「・・・・種?これを植えれば育つ?」
「それはないですね。」
受粉したものが香るのではなく、しなかったものが香りを出し続けたのだ。
間違えて、何個かは受粉前ものを摘み取っていた。
そっちの方が香りが残っていたのだ。
なので、受粉した種は、草原の家の周りに植える予定だ。
また月の沈むころ、凪の時に、受粉し損ねた種をもらおう。
青い花に食われる前に。
「これがなにか、わからなくする方法を確立してからだよ?」
「これはドロインさんが言うように種なんですよ。
コットワッツから売り出せば、おのずと新しい領地、
あの豪風領域の植物だとわかるでしょ。採取方法が特殊ですが。」
「では、これを取れるのはあんたたちだけ?」
「おそらく。」
「それもあの子にいいな。」
「あはははは!あの子扱いですね。
ちぃかジロと呼んでやってください。
アガッターは呼び捨てにしたからちょっと脅しましたけどね。」
「そうだ、結局謝罪もないまま、帰っていったな。」
「ちょっと詳しく話して聞かせておくれ。」
「あの、わたしたち2人、説明がへたくそって言われるんで
出来事の箇条報告でいいですか?」
「それは誰かに言われたのかい?」
「師匠に。師匠に報告するときは箇条報告です。」
「ああ。あんたたちの師匠だね。よくわかっている。」
「あれに理解力がないんだ!!」
「そうだね。それは仕方がないよ。あんたたち2人のことだから。」
「?」
「いいから。ほら、そうだね、アガッターと会う直前の出来事からだ。」
そこで、入国税をいわば、2重取りされたことから話す。
そうなると2人の男に助言したことの話になってくるが、
それは今はいいだろう。
「コットワッツ領領主の領主の力の一つに移動があるそうだ。
石使いもかなりの大きさの砂漠石を使ってもできるらしいね。
あんたは領主の兄だ。移動ができると?」
「そうだな。できないとは言わない。
が、実際は領主が領主の力を使えるだけだ。どちらかというと、
私も石使いと呼ばれてもいいそうだ。そういうことだな。」
「そうなるね。
では、ダカルナとアガッターとミフィルが探している行商夫婦はあんたたちで、
ダカルナはツインの名において捕縛命令は取り消したと。
それは念を押しておいてやろう。
アガッターとミフィルは個人的に追ってるのはどうしようもないがね。
謝罪はなしか。儲けたね。」
「ええ。これで、それを理由に断れます。その時のアガッターの地位次第ですが。」
「アガッターね。
化粧水はいいもんなんだよ。髪油もね。当然隠匿もかかっている。
昔は誰もが家で作っていたんだ。
それを口外しないって石の契約をしてしまってね。すべての人に対してだ。
アガッターの祖父が徹底した契約を行ったそうだ。」
「ああ、それで納得ですよ。だって、誰でもおもいつく方法なんだもの。
なんで、各自で作らないのかなって面倒なので、わたしは買えるなら買えますが、
手作り好きな人は作るでしょ?
競争相手がいないと商品の向上もないですよね。
いや、いいものは昔ながらの手法で生き延びてるってことでしょうか?」
「あんた、その作り方を知っていても、言ってはいけないよ?
が、昔ながらの手法ね。昔の方がよかったと思うんだよね。」
「・・・・。」
「言いたいことは分かる。こっちが年を取ったといいたいんだろ?
それも言わなくていい。それを差し引いてもだ。」
「あはははは!えーと薄めてるとか?」
「だろうね。1ヵ月持たないんだよ。だから、最後は捨ててたんだ。
が、この化粧瓶を使えば、日持ちがするってことだろ?
その分、売り上げは減る。それを補うためにさらに薄めるかもしれないね。」
「軍曹の作った瓶は1か月、普通に使い切る量で作ってもらっています。」
「ああ、その軍曹、なかなかにできる人だね?」
「ええ。ナーチアという名前です。白磁が完成したら
いままで呼ばれていた白磁とは別な白磁、
ナーチアの白磁と呼びつもりです。」
「名前が付くというのは名誉なことだ。
では、これは?この香りは?」
「名前ですか?んー。」
「あんたの名前は付けないのか? 」
「うへっ。それは恥ずかしいです。」
「珍しいね。大抵は自分の名を付けたがるし、残したがるもんだよ?」
「そんなことないですよ?ピクト山脈のふもとの村の村長さんも、
ウダー村っていうんですが、それが村長のなまえかってきいたら、
そんなの恥ずかしいだろっていってましたよ?」
「ピクト?ウダー?」
「人それぞれですよ。なので、わたしはちょっと遠慮しますし、
マティスの名前も、マティスを知らない人がその名は呼びのは嫌なんで。 」
「愛しい人!私もだ!」
「愛しい人なんだね?あんたの名前は? 」
「ええ。マティスだけが呼べる名前です。あとは、それぞれで。
いまはモウって呼ばれることが多いですね。」
「あんたは異国の者だと言っていたが、この大陸の人間ではないんだね?」
「ふふふ。異国の者です。」
「そうだね。この大陸は名前を大事にする。
名前というのはその人そのものだ。
ピクトの村長?そいつは自分の名になにか負い目をあるからだ。
あんたはそれはないだろ?」
「名というのは一番短い呪です。そう認識はしています。
わたしは名前がないのですよ。だから、マティスが愛しい人がそう呼ぶならば
それが名前です。モウというのはないと不便なことがあったので、
それもマティスが付けてくれました。
別の人間がわたしを愛しい人と呼べばマティスはその人をどうにかするでしょうね。
彼は緑の目ですから。」
「ああ、それで。」
「うふふふ。ここでは、聞かれたことは素直に話してしまいますね。」
「そんなことはないだろう?肝心なことは話してはいないだろ?」
「ドロインさんが聞かないようにしているからですよ。」
「当たり前だ。知ってどうにかできることと、知らなくていいことがあるんだ。」
「それが分かるというのが素晴らしいです。」
「・・・あんたの師匠が苦労しているということは分かるよ。
チイもね。」
「ちぃは、あれは領主だ。苦労とは思っていない。
ワイプはこっちが苦労をしている。あれの身に何かあれば、彼女が泣く。
そうならないように先に始末したいがうまくいかない。
ドロインも死ね死ね団に入らないか?
いかにワイプが死ぬかを考える団体だ。」
「ドロインさんは甘々団なんだよ!引き抜きしないで!!」
「あまあま?」
「そうです。甘いものが人生の上で必要不可欠な人で構成される団体。
あ、プニカのタルト置いときますね。皆さんで食べてください。
冷凍庫にも入れておきます。日持ちしますし、
焼けば熱々のものが食べれますよ。」
プニカのタルトは見た目も豪華で皆に好評なのだ。
「わたしは甘々団だね。」
「ええ、名誉会員です。」
「あははは!ああ、楽しいね。ああ、あのカンターウォーマーは?まだなのかい?」
「離れはじめと会わずの月の真ん中以降に持ってきますよ。」
「その時にちぃとあんたの師匠も連れて来れるかい?
少し話がしたい。」
「ドロイン?ワイプと話すと神経がやられるぞ?」
「あんたは、あれだね、そのワイプが大事なんだね?」
「異議ありだ!!」
「ドロインさん!そうなの!」
「愛しい人!!」
「ああ、わかってる。大事というのは何も、いい意味だけではないだろ?
あんたの生活、人生を邪魔しないようにしてほしいだけだろ?」
「!!そうだ!あれが何かへまをするたびにこちらの精神が擦り減る!」
「わかったから。その辺も話をしておいてやろう。 」
「おお!ドロインは死ね死ね団の名誉会員だな!」
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