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587:いい話
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「店の方か?店主、ルタレン殿に取次ぎを。
モウといいます。相談したいことがあると伝えてほしい。」
ハンバーグ屋さん名前はルタレンさんという。
店が開く前、準備で忙しくなる前だ。
店の入り口に座り込んでいた男に声掛けた。
「まだ来ていないと思うよ?」
「そうですか。ではラグロ殿は?」
「ラグロは仕込みだから先にいるとおもう。呼んでこよう。」
「ありがとう。」
「ん。」
「?」
「金くれよ。」
「呼び代?」
「そうだ。」
「なるほど。」
『ラグロさーん!ラグロさーーん!!店前までおいでくださーいい!!』
「ははは!そんな声で奥まで届くか!」
が、すぐにラグロさんがやって来た。
「なんだ?どうした?」
「ラグロさん!」
「あ!あんたか!どうした?」
「ん。」
最初に声をかけた男に手をのばした。
「あ?」
「え?ラグロさんを呼ぶとお金をくれるってことでしょ?」
「用事があるのはそっちだろ!ふざけるな!!」
「イルム!何やってる?ここには来るなて言われているだろ!!」
「うるさい!!」
イルムという男はこちらを睨んで裏通りに入っていった。
「店の方ではなかったんですか?」
「元だな。例のチーズの配合を他所に売ったんだ。
で、クビだ。」
「ああ。」
だから嫌な感じだったんだ
「それから毎日、ここに居座って嫌がらせだよ。
ここの店はまずいとかね。」
「そんなことされたらお客さん来ないですね。」
「まずけりゃね。変わらず繁盛しているさ。」
「それは良かった。」
「それで?どうした?俺に用事か?」
「いえ、店主殿に話があったんですが、まだ来られてないと。
じゃ、ラグロ殿を呼んでもらおうとしたら、お金を請求されたんで、
自分で呼んでみようかなと。」
「あんたの声か?奥まで聞こえたよ。
旦那ももうじき来るが?あ、ほら、来たようだ。」
派手ではない、しかし、立派な馬車がやって来た。
店主のようだ。
こちらに気付くと、急いで降りてきてくれた。
「モウ殿?マティス殿も?
何かありましたか?セサミナ様は? 」
「セサミナ様はコットワッツです。
今日は行商として来てます。どうぞ、呼び捨てに。」
「それは出来ませんよ。コットワッツから領土を拝領したと聞きましたよ?
それだけではなく、剣のマティス殿と赤い塊モウ殿だ。」
「あははは。呼び名はどうでもいいですね。
その、商品の売り込みなんですよ。お時間いただけませんか? 」
「もちろん!中に!ん?ラグロ?どうした?」
「イルムが来てました。俺は呼ばれたんで。」
「またか。懲りないな。」
「俺を呼びだすのに、そちらさんに金をせびったようです。」
「!払ったのですか?」
「いえ、それだったらと大声を出して呼んでしまいました。」
「ははは!奥までよく声が届いたもんですね。
ああいう輩に金をとられてはいけません。キリがない。」
「?」
「聞きました?あのチーズの配合をね。よそに売ったんですよ。
ああ、そこからまた改良してますからご安心を。
今度はそれがよそで売れなくなったら、こっちに口止め料を求めてきた。
追い返したら嫌がらせですよ。
いまは、そんなくだらないことで日銭を稼いでいる。」
「そういったことは取り締まれないんですか?軍とか?」
「あははは!軍は動かないですよ。
ガイライ殿だけだったようですよ?わたしもこっちに来た時は、
ガイライ殿が見廻ってくれていましたから、
そういうものだと思っていたんですがね。
いまは違うようです。」
「分隊として廻っても意味がない?」
「ないですね。逆に向こうが暴力をふるってきても、
返せない。弱い立場になっているんですよ。」
「そうですか。」
「ああ、ここで話すようなことではないですね。
中に。」
「はい。」
分隊のガイライが制裁できないってこと?
訴えられるとか?権力がないってこういうこと?
見回り時の権限はどうなったんだろ?
ガイライはいま王都のはず。後で聞いてみようか?
いや、かーちゃんがそこまで息子の仕事の首を突っ込んでいいのか?
うん、聞くだけ聞くだけ。
「行商ですね?なにか商品の売り込み?いい話ですか?」
「ええ。いい話にならばうれしいんですが。
いま、ラグロさんとマティスで作ってもらっています。」
「あの、チーズふぉんでゅも出すつもりなんですよ。」
「楽しみですね。」
チーズの話で盛り上がってしまった。
イリアスの赤チーズも知っているそうな。
「あれは、匂いと味で嫌がられますが、わたしは好きでしたね。
ええ、一度この時期にイリアスに行った時に食べましたよ?
向こうは嫌がらせで出したようですが。
酒に合う。もって帰ることはできなかたのが残念でしたね。
途中でそれこそ腐りましたから。」
「それはがっかりでしたね。」
「ええ。」
ステーキ皿を温めて、その上に肉を乗っけるだけだ。
すぐに出てくる。
鉄の皿だけではない。ちゃんと、ペレッというのか?焼き台もつけている。
4人で試食会だ。
見るのはお皿だけど。
「鉄のお皿ですね。下は木の台ですけど。
普通のお皿だと冷めるでしょ?チーズハンバーグも熱々の方がおいしい。
で、これだと冷めにくい。
それと、こっちはお肉。焼き加減って好みがあるでしょ?
これで、じゅっとすれば好きところまで焼き色を付けてくれる。
もちろん、最初に出す状態は一番いい焼き加減だけど、
好みは千差万別だから。」
鉄のお皿はいいけど、この焼き台は、高級路線ではないというのは分かる。
でも、お皿自体を温めたり、熱いものを熱いまま、
冷たいものは冷たいままにっていう、
そういうのがないから楽しんでもらえると思う。
出してもらったお肉の焼き具合はミディアムレアより若干レア気味。
「おお!これはいい。この皿はどちらで作りましたか?」
「ナソニールの道具屋ルッションで作ってもらいました。
こちらでお使いいただいたら後に売り出す約束です。」
「あなたは?」
「わたしは、個人、身内で楽しむ分は使いますが、ここ以外に売ることはない。
やはりコットワッツ出身というので贔屓もしてしまいますよ?」
「ありがたい!!」
「ここで出せば、また真似をされるでしょう。
どこで作ったかと探りもありますから、その時はルッションと伝えてください。
彼も仕事ですから。もし、真似されたくないというのなら、提携を。
いま20皿有ります。一皿、1リングでいかかがですか?
もちろん、ルッションさんのところで直接買えばもっと安いですが、
運送費かかりますよ?今回ついでがあったのでこの値段です。」
「ついで?」
「これです!カンターウォーマー!!
ルポイドのコーヒーマスター、カンター殿が厳選したコーヒー豆!そして焙煎!
メジャートのメディケ陶磁、イリアス、レタンの豆袋!
そしてコットワッツの樹石台!
構想10年の商品ですよ!!
しかもすでに各院で爆売れ商品!
食後のコーヒーサービスにも使える、いま、モウモウ商会一押しの商品です!!」
「食後のサービス?」
「ああ!英語じゃニュアンスが違うか!えーと、奉仕?提供?
食後にコーヒーをつけるんですよ。甘味と一緒に。
ここでは果物はつきますよね?あ?別料金?そうなんだ。
それでも、コーヒー入れるの大変でしょ?これがあれば、
だれでも簡単においしいコーヒーが煎れれます。
もちろん、本職の人にはかなわないけど、素人が入れるよりおいしい。
入れてみましょうか?」
「愛しい人もうまいだろ?」
「んー、そうだね。これはこだわりがあるよね。
えーと店主さんとラグロさんは?コーヒーどうです?」
「好きではない。あの粉が口に入るのが嫌いだ。」
「私もですね。それにここでは、出したことがない。」
「そうか!んー、食後のコーヒーっていう習慣がないよね。
じゃ、店主さん、入れてみてください。マティス、教えてあげて?
わたしは食後の甘味を作りましょう。」
「ここで?」
「うん。あ、チーズ大丈夫ですよね?」
簡易のコンロを出して、外門通りで買った木の実を炒って、薄皮を取り、
少し砕いて赤チーズと樹脂蜜で和える。
甘くないクッキーも添えた。
赤が鮮やかだ。
薄皮が付いたままだとそりゃうまくないだろうな。
チーズが大丈夫でも、ゴルゴンゾーラ系がダメな人はいる。
ダメな人はダメだから、リンゴタルトのアイス添え。
背負子にはなんでもはいってるのだ。
赤チーズはどちらかと言えば前菜かな?
白ワインと一緒に食べたい。
「食後の甘味を選べるようにするんですよ。
本日の甘味は赤チーズの蜜添えかリンゴのタルトのアイス添え。
お飲み物はコーヒーか紅茶。お選びくださいって。
選べるのって楽しいですよね。
今回は2種類どちらも試してみてください。
飲み物はコーヒーだけですが。」
「赤チーズ!これは葡萄酒で食べたい。」
「ですよね。まだありますから、お分けしますよ。」
「やはり冷蔵庫で?」
「ええ。冷蔵庫と冷凍庫の間くらい?ものが凍らない程度の温度で。
油紙に包めばいいですよ。」
コーヒーはドリップ式なので粉が入ることもない。
しかも、温度調整は完璧。
ドリップ式のコツさえ覚えればいい。
水と、粉をセットしただけでできるコーヒーメーカーはいらないかな?
これは、スパイルでの提供ネタだ。
「赤チーズ?これが?」
「ダメな人はダメってわかりますから、こっちをどうぞ?」
「いや、そこまではいかないが。」
マティスとラグロさんは恐る恐るだ。
コーヒーはもちろんおいしい。
「ラグロ、ダメなら食べるな。わたしが食べる。」
「店主さんは好きな味でした?」
「ええ。これはいい。」
「マティスは?」
「うまいな!」
「ラグロさんは?」
「うまいが、すまない。チーズはいいが甘いのはダメなんだ。」
おお!人生9割損してる。
が、それも人生。
「赤チーズのソースもありますよ?
乳で伸ばして、胡椒をいれて。
お肉にかけるとか。」
「ああ、それはうまそうだ。」
赤チーズは樽で譲る。もちろん、購入金額に上乗せしている。
だって税金払わないと。
あとは木の実のキャラメリゼの話をした。
これはくるみだと思っていいと思う。
パンに入れてもおいしいよね。
くるみパン好きなんだ。
鉄の皿で火傷しないように、肉汁が飛ぶので注意するようにと
それだけお客にも念押しをしてくださいと伝えて、
店を出た。
次回きっとセサミンはここに寄るから楽しみだ。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「赤チーズでソースを考えてくれ。」
「・・・旦那?俺は肉捌きで雇われているんだ、その、料理はできない。」
「嘘つけ!その割には話を熱心に聞いていたじゃないか?
少なくともわたしよりできるんだ、作ってくれ。で、それをこちらに。」
「え?いえ、これは甘いけど、食べれるんで。」
「・・・。
これ、木の実。これも仕入れて来てほしい。外門通りといったな?
あんなところに出入りしてるんだろうか?」
「わかりませんね。あの男、マティスは、
外れ門から入って来たと言ってましたよ?」
「呼び捨て?」
「そう呼んでくれていいと。
ニックと知り合いなのかと聞かれて、肉を焼きながら雑談を。
ニックは分隊になったガイライさんの片腕ですよ。
ちょっと前に戻って来て、すぐに分隊扱いになりましたが。
あれとは昔からの飲み仲間だったんで。」
「そうか。え?剣のマティスが外れ門から入ったのか?」
「らしいですよ。いろんな食材があるなって。
ほかにああいうところはあるのかって。
大門横の外門と、旧王都近くにある抜け門ぐらいだって話を。
だけど、俺らはそこで物は買わないし、食べないって。
この木の実が焼いて薄皮を剥くだけで
こんなにうまいってしらなかった。」
「そうだな。うまいな。砂糖掛けも作れるだろ?」
「・・・旦那。ここの料理人に頼んでくださいよ。」
「ダメだ。完成する前に外に漏れる。
チーズ入りだってそうだろ?みなでいろいろ試したからなんだがな。」
「・・・・。俺だって外に漏らすかもしれない。」
「あはははは!それはないな。
だったら、あの2人が同席させない。マティス殿が雑談するわけがない。
信頼しているということだ。
そしてわたしもな。でないと、モウ殿と2人っきりにはしない。
次回セサミナ様が王都に来るのは混合いはじめの臨時会合だ。
それまでに完成させておきたい。
ナソニールのルッションという道具屋にも話をつけなくては。」
「他に売るなと?」
「それはないな。優先的に売ってほしいということぐらいだ。
他で売るなら売ればいい。
が、一番うまく提供できるのはこの店というだけだ。
肉もうまい、ハンバーグもうまい。甘味もうまいし、コーヒーも出る。
あ、まだあるか?うまいな、コーヒー。」
「ええ。俺ももらっていいですか?」
「もちろん。忙しくなるな。お前もな。
報酬も上げよう。」
「それはいい話だ!」
モウといいます。相談したいことがあると伝えてほしい。」
ハンバーグ屋さん名前はルタレンさんという。
店が開く前、準備で忙しくなる前だ。
店の入り口に座り込んでいた男に声掛けた。
「まだ来ていないと思うよ?」
「そうですか。ではラグロ殿は?」
「ラグロは仕込みだから先にいるとおもう。呼んでこよう。」
「ありがとう。」
「ん。」
「?」
「金くれよ。」
「呼び代?」
「そうだ。」
「なるほど。」
『ラグロさーん!ラグロさーーん!!店前までおいでくださーいい!!』
「ははは!そんな声で奥まで届くか!」
が、すぐにラグロさんがやって来た。
「なんだ?どうした?」
「ラグロさん!」
「あ!あんたか!どうした?」
「ん。」
最初に声をかけた男に手をのばした。
「あ?」
「え?ラグロさんを呼ぶとお金をくれるってことでしょ?」
「用事があるのはそっちだろ!ふざけるな!!」
「イルム!何やってる?ここには来るなて言われているだろ!!」
「うるさい!!」
イルムという男はこちらを睨んで裏通りに入っていった。
「店の方ではなかったんですか?」
「元だな。例のチーズの配合を他所に売ったんだ。
で、クビだ。」
「ああ。」
だから嫌な感じだったんだ
「それから毎日、ここに居座って嫌がらせだよ。
ここの店はまずいとかね。」
「そんなことされたらお客さん来ないですね。」
「まずけりゃね。変わらず繁盛しているさ。」
「それは良かった。」
「それで?どうした?俺に用事か?」
「いえ、店主殿に話があったんですが、まだ来られてないと。
じゃ、ラグロ殿を呼んでもらおうとしたら、お金を請求されたんで、
自分で呼んでみようかなと。」
「あんたの声か?奥まで聞こえたよ。
旦那ももうじき来るが?あ、ほら、来たようだ。」
派手ではない、しかし、立派な馬車がやって来た。
店主のようだ。
こちらに気付くと、急いで降りてきてくれた。
「モウ殿?マティス殿も?
何かありましたか?セサミナ様は? 」
「セサミナ様はコットワッツです。
今日は行商として来てます。どうぞ、呼び捨てに。」
「それは出来ませんよ。コットワッツから領土を拝領したと聞きましたよ?
それだけではなく、剣のマティス殿と赤い塊モウ殿だ。」
「あははは。呼び名はどうでもいいですね。
その、商品の売り込みなんですよ。お時間いただけませんか? 」
「もちろん!中に!ん?ラグロ?どうした?」
「イルムが来てました。俺は呼ばれたんで。」
「またか。懲りないな。」
「俺を呼びだすのに、そちらさんに金をせびったようです。」
「!払ったのですか?」
「いえ、それだったらと大声を出して呼んでしまいました。」
「ははは!奥までよく声が届いたもんですね。
ああいう輩に金をとられてはいけません。キリがない。」
「?」
「聞きました?あのチーズの配合をね。よそに売ったんですよ。
ああ、そこからまた改良してますからご安心を。
今度はそれがよそで売れなくなったら、こっちに口止め料を求めてきた。
追い返したら嫌がらせですよ。
いまは、そんなくだらないことで日銭を稼いでいる。」
「そういったことは取り締まれないんですか?軍とか?」
「あははは!軍は動かないですよ。
ガイライ殿だけだったようですよ?わたしもこっちに来た時は、
ガイライ殿が見廻ってくれていましたから、
そういうものだと思っていたんですがね。
いまは違うようです。」
「分隊として廻っても意味がない?」
「ないですね。逆に向こうが暴力をふるってきても、
返せない。弱い立場になっているんですよ。」
「そうですか。」
「ああ、ここで話すようなことではないですね。
中に。」
「はい。」
分隊のガイライが制裁できないってこと?
訴えられるとか?権力がないってこういうこと?
見回り時の権限はどうなったんだろ?
ガイライはいま王都のはず。後で聞いてみようか?
いや、かーちゃんがそこまで息子の仕事の首を突っ込んでいいのか?
うん、聞くだけ聞くだけ。
「行商ですね?なにか商品の売り込み?いい話ですか?」
「ええ。いい話にならばうれしいんですが。
いま、ラグロさんとマティスで作ってもらっています。」
「あの、チーズふぉんでゅも出すつもりなんですよ。」
「楽しみですね。」
チーズの話で盛り上がってしまった。
イリアスの赤チーズも知っているそうな。
「あれは、匂いと味で嫌がられますが、わたしは好きでしたね。
ええ、一度この時期にイリアスに行った時に食べましたよ?
向こうは嫌がらせで出したようですが。
酒に合う。もって帰ることはできなかたのが残念でしたね。
途中でそれこそ腐りましたから。」
「それはがっかりでしたね。」
「ええ。」
ステーキ皿を温めて、その上に肉を乗っけるだけだ。
すぐに出てくる。
鉄の皿だけではない。ちゃんと、ペレッというのか?焼き台もつけている。
4人で試食会だ。
見るのはお皿だけど。
「鉄のお皿ですね。下は木の台ですけど。
普通のお皿だと冷めるでしょ?チーズハンバーグも熱々の方がおいしい。
で、これだと冷めにくい。
それと、こっちはお肉。焼き加減って好みがあるでしょ?
これで、じゅっとすれば好きところまで焼き色を付けてくれる。
もちろん、最初に出す状態は一番いい焼き加減だけど、
好みは千差万別だから。」
鉄のお皿はいいけど、この焼き台は、高級路線ではないというのは分かる。
でも、お皿自体を温めたり、熱いものを熱いまま、
冷たいものは冷たいままにっていう、
そういうのがないから楽しんでもらえると思う。
出してもらったお肉の焼き具合はミディアムレアより若干レア気味。
「おお!これはいい。この皿はどちらで作りましたか?」
「ナソニールの道具屋ルッションで作ってもらいました。
こちらでお使いいただいたら後に売り出す約束です。」
「あなたは?」
「わたしは、個人、身内で楽しむ分は使いますが、ここ以外に売ることはない。
やはりコットワッツ出身というので贔屓もしてしまいますよ?」
「ありがたい!!」
「ここで出せば、また真似をされるでしょう。
どこで作ったかと探りもありますから、その時はルッションと伝えてください。
彼も仕事ですから。もし、真似されたくないというのなら、提携を。
いま20皿有ります。一皿、1リングでいかかがですか?
もちろん、ルッションさんのところで直接買えばもっと安いですが、
運送費かかりますよ?今回ついでがあったのでこの値段です。」
「ついで?」
「これです!カンターウォーマー!!
ルポイドのコーヒーマスター、カンター殿が厳選したコーヒー豆!そして焙煎!
メジャートのメディケ陶磁、イリアス、レタンの豆袋!
そしてコットワッツの樹石台!
構想10年の商品ですよ!!
しかもすでに各院で爆売れ商品!
食後のコーヒーサービスにも使える、いま、モウモウ商会一押しの商品です!!」
「食後のサービス?」
「ああ!英語じゃニュアンスが違うか!えーと、奉仕?提供?
食後にコーヒーをつけるんですよ。甘味と一緒に。
ここでは果物はつきますよね?あ?別料金?そうなんだ。
それでも、コーヒー入れるの大変でしょ?これがあれば、
だれでも簡単においしいコーヒーが煎れれます。
もちろん、本職の人にはかなわないけど、素人が入れるよりおいしい。
入れてみましょうか?」
「愛しい人もうまいだろ?」
「んー、そうだね。これはこだわりがあるよね。
えーと店主さんとラグロさんは?コーヒーどうです?」
「好きではない。あの粉が口に入るのが嫌いだ。」
「私もですね。それにここでは、出したことがない。」
「そうか!んー、食後のコーヒーっていう習慣がないよね。
じゃ、店主さん、入れてみてください。マティス、教えてあげて?
わたしは食後の甘味を作りましょう。」
「ここで?」
「うん。あ、チーズ大丈夫ですよね?」
簡易のコンロを出して、外門通りで買った木の実を炒って、薄皮を取り、
少し砕いて赤チーズと樹脂蜜で和える。
甘くないクッキーも添えた。
赤が鮮やかだ。
薄皮が付いたままだとそりゃうまくないだろうな。
チーズが大丈夫でも、ゴルゴンゾーラ系がダメな人はいる。
ダメな人はダメだから、リンゴタルトのアイス添え。
背負子にはなんでもはいってるのだ。
赤チーズはどちらかと言えば前菜かな?
白ワインと一緒に食べたい。
「食後の甘味を選べるようにするんですよ。
本日の甘味は赤チーズの蜜添えかリンゴのタルトのアイス添え。
お飲み物はコーヒーか紅茶。お選びくださいって。
選べるのって楽しいですよね。
今回は2種類どちらも試してみてください。
飲み物はコーヒーだけですが。」
「赤チーズ!これは葡萄酒で食べたい。」
「ですよね。まだありますから、お分けしますよ。」
「やはり冷蔵庫で?」
「ええ。冷蔵庫と冷凍庫の間くらい?ものが凍らない程度の温度で。
油紙に包めばいいですよ。」
コーヒーはドリップ式なので粉が入ることもない。
しかも、温度調整は完璧。
ドリップ式のコツさえ覚えればいい。
水と、粉をセットしただけでできるコーヒーメーカーはいらないかな?
これは、スパイルでの提供ネタだ。
「赤チーズ?これが?」
「ダメな人はダメってわかりますから、こっちをどうぞ?」
「いや、そこまではいかないが。」
マティスとラグロさんは恐る恐るだ。
コーヒーはもちろんおいしい。
「ラグロ、ダメなら食べるな。わたしが食べる。」
「店主さんは好きな味でした?」
「ええ。これはいい。」
「マティスは?」
「うまいな!」
「ラグロさんは?」
「うまいが、すまない。チーズはいいが甘いのはダメなんだ。」
おお!人生9割損してる。
が、それも人生。
「赤チーズのソースもありますよ?
乳で伸ばして、胡椒をいれて。
お肉にかけるとか。」
「ああ、それはうまそうだ。」
赤チーズは樽で譲る。もちろん、購入金額に上乗せしている。
だって税金払わないと。
あとは木の実のキャラメリゼの話をした。
これはくるみだと思っていいと思う。
パンに入れてもおいしいよね。
くるみパン好きなんだ。
鉄の皿で火傷しないように、肉汁が飛ぶので注意するようにと
それだけお客にも念押しをしてくださいと伝えて、
店を出た。
次回きっとセサミンはここに寄るから楽しみだ。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「赤チーズでソースを考えてくれ。」
「・・・旦那?俺は肉捌きで雇われているんだ、その、料理はできない。」
「嘘つけ!その割には話を熱心に聞いていたじゃないか?
少なくともわたしよりできるんだ、作ってくれ。で、それをこちらに。」
「え?いえ、これは甘いけど、食べれるんで。」
「・・・。
これ、木の実。これも仕入れて来てほしい。外門通りといったな?
あんなところに出入りしてるんだろうか?」
「わかりませんね。あの男、マティスは、
外れ門から入って来たと言ってましたよ?」
「呼び捨て?」
「そう呼んでくれていいと。
ニックと知り合いなのかと聞かれて、肉を焼きながら雑談を。
ニックは分隊になったガイライさんの片腕ですよ。
ちょっと前に戻って来て、すぐに分隊扱いになりましたが。
あれとは昔からの飲み仲間だったんで。」
「そうか。え?剣のマティスが外れ門から入ったのか?」
「らしいですよ。いろんな食材があるなって。
ほかにああいうところはあるのかって。
大門横の外門と、旧王都近くにある抜け門ぐらいだって話を。
だけど、俺らはそこで物は買わないし、食べないって。
この木の実が焼いて薄皮を剥くだけで
こんなにうまいってしらなかった。」
「そうだな。うまいな。砂糖掛けも作れるだろ?」
「・・・旦那。ここの料理人に頼んでくださいよ。」
「ダメだ。完成する前に外に漏れる。
チーズ入りだってそうだろ?みなでいろいろ試したからなんだがな。」
「・・・・。俺だって外に漏らすかもしれない。」
「あはははは!それはないな。
だったら、あの2人が同席させない。マティス殿が雑談するわけがない。
信頼しているということだ。
そしてわたしもな。でないと、モウ殿と2人っきりにはしない。
次回セサミナ様が王都に来るのは混合いはじめの臨時会合だ。
それまでに完成させておきたい。
ナソニールのルッションという道具屋にも話をつけなくては。」
「他に売るなと?」
「それはないな。優先的に売ってほしいということぐらいだ。
他で売るなら売ればいい。
が、一番うまく提供できるのはこの店というだけだ。
肉もうまい、ハンバーグもうまい。甘味もうまいし、コーヒーも出る。
あ、まだあるか?うまいな、コーヒー。」
「ええ。俺ももらっていいですか?」
「もちろん。忙しくなるな。お前もな。
報酬も上げよう。」
「それはいい話だ!」
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離婚する気持ちが固まっていく。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
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