いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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588:虫

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王都での最後の用事。
紅の大量買い。
買えるだけ買う。小さな絵筆も。

前回もそうだが、あんたが買うの?的な顔をされる。
砂漠の民の服に、髪はバンダナを巻いている。
お肌は肌歴史上いちばんのつやぷるだが、プカプカの土で汚しているのだ。

「どうして?」
「ちょっと小奇麗な恰好をした人がさ、
大量に買うと、何かあるって店の人は思うよ?
でもさ、いかにもいなかっぺって格好だと、
地元で頼まれたんだねって思うか、それこそ行商だねって思う。
次の会合までは内緒なんだよ。」
「隠匿を掛ければ?」
「これはそういうもんじゃないよ。アイデア?思い付き?着想?
誰でもまねできる。コロンブスの卵だ。」
「?」
「最初に考えつくのが難しいってことだったかな?
すぐまねされる。隠匿はそのためにあるけど、これはね、無理だろうね。
だから、売り出す前までは気付かれてはいかんのよ。」
「なるほど。」






「晩御飯はカニ尽くし?」
「そうなるな。が、何人分だ?」
「んー、10人前ぐらいあればいいかな?多めに考えて12?
オート君や、メディングが誰か連れてくるかもしれないし。
ガイライもこっちでなんかしてるようだから、その関係も呼ぶ?
んー15?ああ、コットワッツにも持っていく?50?」
「それぐらいか。カニがなくなる。」
「!!ジットカーフに!いや、すでに時季じゃないんだっけ?
イリアスの砂浜?」
「そうだな。もう少し海の幸をいただいておこう。
雨の日が20日もあるのは私もはじめてだしな。
かまぼこでかなり魚を使っただろ?
肉はいい。鳥肉も買えばいいしな。
魚も買うよりこっちで捌いたほうが臭みがないんだろ?
エビもカニも。」
「そうだね。みんなにもお裾分けしたいしね。
あのサンゴがあればまたほしいな。アワビも!!」
「そうか。では、砂浜に。
あの陶磁器屋にも行くんだろ?一番によって、それから砂浜。
半分過ぎにタトートに行けばいいだろ。」
「うん!」
「あのパスタはうまかった。また食べたいな。」
「わかった!あとね、あの赤チーズのパスタもいいんよ?
2種盛りにするね。」
「楽しみだ。ああ、あの外れ門通りのような市場は、
旧王都の近くにもあるらしいぞ?
ラグロが教えてくれた。」
「おお!それは耳より情報だね。先にそっち行こうか?」
「そうだな。カニはすぐに食べれるようになっているしな。」
「ガイライに晩御飯のこと伝えとくね。」


(ガイライ?いまいい?)
(モウ!少し待って)
(ん)


「少し、待ってくれ。」

(お仕事中だったらいいよ?あとで連絡するから!)
(いえ。いいですよ。どうしました?)
(ごめんね。今日の晩御飯。師匠の家でカニ三昧)
(それはうれしい)
(うん。でね、生産院のメディングも来るの)
(?どうして?)
(いろいろなんだけど、師匠が自慢したいみたい)
(問題は無いのですか?)
(豆ソースも昆布もだいじょうぶだから。お酒は秘蔵酒ということで)
(わかりました)
(たぶん、オート君も来るんじゃかな?生産院の院長も)
(そのほうがいいでしょうね。院長同士の集まりだとするほうがいい。
資産院と生産院というのが珍しいですが)
(うん、だから、ガイライも誰か連れてきていいよ?
なんか、お仕事してるんでしょ?)
(え?ああ、そうですね。誘ってみましょう)
(うん。大人数はダメよ?)
(ああ、ひとりですよ)
(えっと、女性?だったらいろいろ準備がいるけど?)
(母さん!違います)
(違うよ!女性だったら女子好みの甘味を用意しないとねってこと!)
(あ、そうですか)
(うふふふ。それはおいといて、じゃ、月が沈んだら来てね)
(それまであなたは?)
(旧王都の近くに外れ大門通りみたいな庶民の市場があるんだって!
そこ行ってくる)
(え?外れ大門通りもたいがいですが、
そっちはさらにひどいですよ?匂いも!)
(そうなの?匂いは膜張ったからな。
でも、おいしい木の実仕入れたから、外れ通りで)
(その、そこは、虫や生き物を扱っています)
(う、それは)
(愛しい人、今回はやめておこう)
(マティス、そうしてくれ)
(では月が沈んだら来てくれ)
(わかった)




「危なかったね!旧王都一帯が吹き飛ぶよ!」
「そうだな。先に聞いておいてよかった。」
「ラグロさんは?なんか言ってた?」
「どっちの通りでも物は買わないし、
そこで売っているものは食わないといっていたな。」
「外れ通りはマトグラーサの食べ物が多かったからかな?
旧王都の近くのはタフトに近いよね?虫とか生き物ってなんだろ?
食材なんだよね?」
「家畜用かもしれんぞ?」
「いや、王都で家畜ってのはないでしょ?あっても牧場でしょ?ボットの。
その通り近くに住んでる庶民向けの食材を売ってるんだよ。
昆虫食はやっぱりあったんだ。いなごかな?イモ虫系かな?」
「ダメなんだろ?想像するな。」
「でもさ、ナマコかもしれない。」
「ああ、川があるものな。ガイライはあれの本体は知らないか。」
「やっぱり見に行こう!ガイライは行くなとは言ってないからね。」
「そうだな。ダメと思ったらすぐに移動な。私の傍に。」
「うん。」



・・・場所が分かりません。
結局もう一度ガイライに連絡して案内してもらうことに。


「ごめんね。仕事は?終わったの?」
「ええ。一人招待しましたよ。ダクツです。
王の筆頭護衛ですよ。」
「ああ!ウォーマーを買ってくれた人だね。
王さんの護衛。その間王の護衛は誰が?」
「筆頭ですが、何も彼だけではないですから大丈夫ですよ。」

ついてくるってことはないよね?


「それで、やはり行くんですか?」
「ダメってことはないんでしょ?」
「虫系が苦手でしょ?わたしでも少し躊躇しますよ?」
「いや、でもそれは食材だよね?食べている人がいると。
だったら、うん、見るだけ見る。」
「・・・馬も駱駝馬も売っています。肉として。」
「あー、そうか、食材ね。なるほど。うん。大丈夫。」
「マティス?いいのか?」
「仕方がない。結局は見ないとあきらめないだろ?
Gはでない。最初から分かっているから。大丈夫だな?」
 「うん!」



王都近くの王都下、その下の下町、近くの外れ大門通り
それらの反対側にあるのが、旧下町ということだ。
それなりの集落がある。
ここから王都内に働く人は少ないがいないこともない。
王都に仕事が決まれば、王都下か、下町に移る。
それでも、ここがいいという人がいるということだ。
その旧下町の先にある市場。

初見では迷子になるな。


「あれー、ガイライの旦那?
軍を首になったって聞きましたよ?
こんなところに何用で?」
「買い物だ。」
「あはははは!それはいい!そこまで落ちぶれたってこと?」
「そうなるな。」
「ここで買い物したことないの?」
「さすがにないですね。」
「そうかー。」
「いや、食材を買っても料理できないんで。」
「あー、それは分かるな。じゃ、行こう、行こう!」
「3人?3リングだ。」
「え?お金取るの?なんで?」
「ここの出入りを管理してるんだよ。
問題ある奴は入れない。中の連中は安心して商売ができる。
1リングでも安いだろ?」
「なるほど!1日どれくらいここを出入りするんだろ?
兄さんも見極めが大変だね?」
「そう!1日100人ぐらいかな?おれが許可した人間だけが入れる。」
「すごい!1日100リング!
そういう商売をしないといけないね!見習いたいよ!」
「あはははは!そういうこった!」

3リング払って中に入る。

「モウ?
100人と言いましたが、全部に金をとってるわけじゃない。
わたしたちだからですよ?」
「だろうね。あれは、ガイライの子飼い?」
「ベースですか?そこまで行きませんが、何かあると知らせてはくれます。」
「そうか。」


少し進むと、右と左に食材がならぶ。
お客さんも結構いる。
黒門市場か、錦市場か。
うん、馬も駱駝馬も吊るされているよ?お肉だね。
それは問題ない。知り合いではないから。
あとはうごめく何かがある。結構大きい。
芋虫とは言わない!
うごめく足が鳥肌を呼ぶ。
なまこが大丈夫だったのは脚がないからだ!
今わかった!


「それはどうやって食べる?」
「知らないのか?どっから来た?」
「ああ、コットワッツから。」
「へ?なんで?」
「ション、教えてやってくれ。」
「え?ガイライの旦那が連れてきたの?珍しいね?
しかも、久しぶりじゃないの?首になったってほんと?」
「そうだ。」
「だったら、ここの買って食べればいい!安いしうまいからね!
あー、でも、しないんだよね?ん?そっちの女の人?嫁さん?」
「違う、わたしの母だ。」
「へ?」
「息子がいつもお世話になっております。」
「へ?」
「彼女は私の妻だ!」
「へ?じゃ、ガイライの旦那の父親? 」
「「それはない!!」」
「ふ、複雑なんだね。」
「その話はいい。で、これは?どうやって?」
「ああ、食べ方?焼くんだよ。」
「その、これはなんの幼虫?大きくなったらなんになるの?」
「なに?ん?うちが一番大きいのを扱ってる。」
「そ、そうですか。じゃ、3匹ください。」
「一人1匹?足りないよ?
大体一人5匹は食うから!15匹!1銀貨でいいよ!!」

まだ、まだ脚は短いから!
おなかの方を見なければ大丈夫!!

それから、その虫、キャムロンの店が続く。
確かに一番大きいようだ。
あとは木の実。
どんぐりのようなもの。

中に虫がいるのは分かっている。これはそういうものだ。


「これ、中に虫いますよね?どうしたらいいんですか?」
「ん?それがおいしいんだよ?」
「そうですか。」

食べ方は炒めて、殻をむいて食べると。

「大きい虫がいればあたりだよ。
じゅっっと脂が出てうまい。」

虫食万歳なようだ。


「あははは!虫がダメなんだね?
そんな奴がここに買い物来るんじゃないよ?
が、この実は虫無しでもうまいからね。
虫無しあるけど?」
「それを!!けどなんで、虫がいないってわかるんですか?」
「色が赤い。中の実が枯れてるんだ。虫が好まないってことだよ。」
「おお!!素晴らしい見分け方!」

赤い実を大量に買った。
緑のどんぐりは買わない!絶対にだ!!

あとはうごめく、カタツムリがいた。

「愛しい人?え?」

そう、わたしの眼はきっと輝いていただろう。
エスカルゴ大好き!!


「これはこのまま?どうやって食べるんですか?」
「初めて?このスイールの大きさでは食べないよ。
今から育てるんだ。雨の日までね。そうすると、拳より大きくなる。
その大きさで買うより、今買ったほうが得だよ?」
「おい!嘘つくなよ!それは売れ残りだろ?それ以上育たないよ!!」

同じように並べていた横の男が声をかけてきた。
というよりも、そこまで大きくなったら、ちょっと食べれん。
今がまさにエスカルゴサイズ。

「うるさいね!別にいいじゃないか!」
「あんた、さっき赤の木の実を買っただろ?
あれも騙されてるんだよ。うまいもんか!虫無しが!
誰も買わないから避けた実を買わされただけだよ!」

あら。そうだとしても買ってるけどね。

最初に声をかけたカタツムリ屋さんは、
横の男にもう一度悪態をつくと店を片して帰っていった。
店と言っても地べたに木箱で並べていただけだけど。


「モウ、そろそろここも店じまいだ。
月が昇る前に閉める。」
「え?そうなの?ちょっと!おにーさん!それは?
売り物?」

横の男も片付け始めている。
もう一度ここにくるのは勇気がいるから今日で済ましておきたい。
おいしかったらまた来よう。

「買うのか?食えんぞ?」
「じゃなんでここに並べてるの?買う人がいるからでしょ?」
「売れ残りだよ。この箱の中で育てるんだ。
餌?残飯だよ。
大きいものから売れる。小さいのは売れないんだよ。
餌をやってもそれ以上育たないんだ。
捨てるだけだ。箱はまた使うからな。」
「大きいのはどうやって食べるの?」
「ほんとに知らないんだな?焼くんだよ。殻を潰してな。」
「ガイライ、食べたことある?」
「ないですよ。」
「マティスは?ないよね?」
「ないな。」
「んー、どんな味か知りたい。」
「・・・・大きくても小さくても味は一緒だよ。」
「お!そりゃそうだ。じゃ、この小さいのくださいな。」
「・・・・。」
「かまわんよ。売ってやってくれ。」

店の男がいいのかとガイライを見たのだ。

「10匹5銅貨だ。大きいのが1匹5銅貨だからな。」
「おお!お買い得!じゃ、これ、80ぐらい?
箱ごと売ってくれませんか?」
「・・・5銀貨だ。」
「あい!マティス?これね、布でフタしてもって?
収納しちゃダメ。そのままね。」


たしか、数日断食させると。
で、おなかの中をきれいにするのだ。
塩で締めて、後は湯がいて、殻と身を分ける。
それぞれを徹底的に洗って、身を味付け。
ガーリックバターと一緒に身を殻に戻してオーブン焼き。

が、殻に戻すのは面倒なので、
プレートを作ろう。
明日、一番にナーチアのところに行くときに頼んで見ようかな。



3リング払った男はまだいた。
「なんかかったの?
え?キャムロンはいいとして、赤い実にそんな小さいスーリム?
旦那?騙されてるよ。いっしょについていってやればよかったな。
だれだ?こんなの売り付けたの?」
「いいんですよ!無理矢理売ってもらったんで。」
「え?物好きだな?
でも、そのキャムロンはいいよ。
うまいから!」

おすすめの食べ方は聞けば、焼くという返事。
そうだ!ずんぐりむっくりの白いエビだと思えばいい!
うん!一気にうまそう!!


「ちなみにこの食材どこから入ってくるの?」
「タフトだよ。俺たちはタフトから来てるんだよ。」
「そうなんだ。」
「あははは!顔に出てるよ!
タフトはタフト街道だけってわけじゃないんだよ。
街道以外に住んでいるもんの食事はこんなもんなんだよ。
が、うまいから!」


うまいを念押しされた。
ニックさんが案内してくれる裏街道もこんな感じあのだろうか?
先に聞いておこう。
心の準備がいるから。



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