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594:冬虫夏草
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セサミンはドロインさんの家をでてから別れた。
ガイライはお土産に渡した布を気に入って、もう少し欲しいという。
姐さんの店だ。が、人が多い。
行列ができていた。
刺繍布が外に持ち出せるようになったと、瞬く間に広まったようだ。
他の店では店先に、これはないだろうというレベルのものまで並んでいる。
だが、皆が買うのは刺繍布で、
前に買った布は不人気なのか、人がいない。
「これだよ。いろんな色があるからね。
系統をそろえるか、反対色をもっていくのもおすすめだよ?」
「?母さん?これですか?母さんがくれたものは、柄があったんですが?」
「あれは、この母が入れたのですよ。金華山織りもどき。
これ、密集してるでしょ?で、柄のところを短くしてね。
好きな模様も入れれるよ?」
「わたしもできますか?」
「うん。短くしたいところをね、きゅって引っ張るように移動するの。で、切る。
そしたら元の戻るから、凹んで柄になるの。
違う色を持ってきてもいいかも。移動でね。交換。
絵を書くみたいにできるよ。」
「面白そうですね。」
こういうのは楽しい。
何色か、単色の毛足が長い布を抱えて奥に入っていく。
「モウ!ドロインのところは?これから?」
わたしに気付いたここの女主人、
ドロインさんの孫娘、サリアさんが出てきた。
店の人が知らせたんだろうね。
「いいえ。先に寄りましたよ。これから帰ります。
その前にここに来たら、布と香辛料を買わないと。
ドロインさんのところに手軽に食べれるものを置いてますので、
良かったら食べて下さいな。わたしたちは、先に頂きましたから。」
「帰る?あれ?話は?ドロインから話が合っただろ?
それにわたしたちは出るなって言われてたんだけど?」
「断りましたよ?無理でしょ?」
「え?断れたの?ど、どうやって?」
「へ?断りますって。あれ?何のはなしですか?」
「ちょっとこっちおいで。」
奥の隅に呼ばれる。
「・・・ドロインが娘にするって言っただろ?」
「その話ですよね?ええ。断りましたよ?
うふふふ。そんなことしたら、姐さんが娘になっちゃう。」
「そんなことじゃないよ!断った?ドロインの家で?
ドロインは中央のタトーロインだと知ってるよね?」
「爵位もちってことですよね?あんまり詳しくないですが、えらいさんだということは。」
「その程度の知識?」
「いや、一般人はそうでしょ?」
「それで断ったと?いや、あんた、すごいね。」
「わたしが望んでいないことはドロインさんも無理強いしませんよ?」
「いや、そうだけど。」
「心配させてしまっているようです。何も問題ないと言ってください。
あ、それとこれくださいな。あ、彼はわたしの息子なんですよ?」
「え?」
サリアさんは頭にいっぱいクエスチョンマークを浮かべてしまった。
ガイライは大量の布を抱えつつ帰っていった。
そして、わたしたちはそのまま香辛料のバザールに。
ここはいつも通りだ。
「ビャクとクー、彼らが買ったのってどれです?」
どんなものを買ったのか全く教えてくれなかったようだ。
なのにおいしそうに食べているから気になると。
「虫系が多かったよ?原型は留めてないけど。」
「キャムロンは?食べてみたんですか?」
「まだ。今晩挑戦かな?
虫だからね、わたしもそれ系を買っておこかな?」
「おいしかったら教えてくださいね。おいしかったらですよ?」
師匠も虫食は抵抗あるようだ。
虫食ははまれば、ものすごく美味らしいから。
んー、そうなのか?そう思いたいだけかな?うーん。
そんなことを考えながら、
クーちゃんとビャクが買っていったものをわたしも買っていく。
「では、戻ります。
タトーロイン卿と同じように声をかけてくるものもいるでしょうね。
その時は卿の誘いを断ったといいいなさい。
それでかなりのものは引くでしょう。」
「ドロインさんの名前を使いたくないな。」
「使えるものは何でも使うというのは、武にもつながりますよ?」
「おお!ものすごい説得力です。押忍っ!」
「それ、返事ですよね?」
「そうですよー。じゃ、そうしますね。」
「これからの予定は?」
「魚を干しっぱなしなんで砂浜にもどります。そこで、キャムロンを。
最悪一番被害が少ない場所かなと。」
「そこまでして?」
「いや、市場の人がかなり念押ししたんで。」
「それね、そんなにおいしいものなら、ガイライ殿やニック殿にもに進めませんか?
子飼いなんでしょ?」
「勧めても食べないってわかっていたら勧めませんよ?
自分でおいしいものを人が嫌がったら嫌だもの。ニックさんには
メイガで失礼なことしたと思ってます。」
「マティス君?大丈夫ですか?」
「毒気はないとわかる。」
「中毒性は?」
「あの状態ではわからんな。」
「そんな話あるんですか?」
「食材が豊富にあるんですよ?王都は。
なのに、あの場所に住む者たちは頑なにあの場所を動かないし、
食材もわざわざ取り寄せる。おかしいと思いませんか?」
「故郷の味なんでしょ?そういうのありますよ?」
「ツイミとソヤにも聞きましたが、それは食べないと。
ツイミですら食べたことないと。」
「15匹で1銀貨。当時のツイミさんのお家では高かったとか?
それにタフトから取り寄せでしょ?
なかなか手に入らなかったとか?
でも、そうですね。ちょっと気を付けてみます。
スーは?いまどこです?」
「王都の厩舎ですよ?そうですね、スーに聞くのが一番早いでしょうか?」
じゃ、後で行きますと、別れる。
砂浜に戻ると月無し石が増えていた。
分裂したんだろうか?
何もなかったかと聞くまでもないだろ。
が、念のため。
「お疲れ様。
なんかあった?」
なにやら、わいわいと言ってるような?
「んー誰か来たの?え?ここの人?猟師さんかな?
迷子?あら、それで?また来そう?あらら。」
一応目くらましは掛けている。
砂浜と海しか見えないだろう。
魚の干し台には近づかないようにもなっている。
月無し石のプライベートビーチもだ。
「そうか、撤収だね。でも、何しに来たんだろ?」
「雨支度だろうな。少し早いと思うが、今年は長い。
食料は大量にいるからな。そして売れる。」
「そうか。先に大量に取っちゃったけど、大丈夫かな?」
「ここで、何かを採るわけではないだろ。
確保した食料を置いておくんじゃないか?」
「そうか。ここから船を出すわけじゃないんだ。
どちらにしろ、当分来れないね。海、満喫した?
ん?ああ!あの砂だ!ありがとう。」
また、きれいな砂を大量に出してくれた。
塩袋に5袋分だ。枯山水の庭を作ろう!いいねー!
魚も回収して、ここに来た痕跡は全てなくした。
また、雨の日が来たら来よう。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「スー兄!これについてなにかアドバイスありますか?」
虫か
うまいぞ
「おお!やっぱりおいしいんだ。
これは?スーリムは小さいのを買ったの。
これは故郷でも近いものが有るの。
残飯食べさせてるって。
おなかの中をきれいにするために、数日絶食させてたべるの。
それか、ハーブ、薬草だけを与えるって。
いま、お茶葉と薬草だけあげて、あとは絶食。
数日たったら食べるんだ。これはおいしいよ?」
そっちは、虫ではない
食べたことはない
「そうなの?これは、貝の仲間だ。こっちは大丈夫だと思う。
寄生虫は取り除くしね。
こっち、キャムロンって中毒性ある?師匠が心配?
というより警戒してたよ?」
中毒性?
それはない。この虫自身はうまいが、
これに宿るものがあるんだ
臓は食べないことだな
「宿るの?寄生虫?こっちに?冬虫夏草みたいな?」
なんだ?
「なんかね、菌類なんだけど、茸ね。
虫にやどって、からだを乗っ取って
発芽にいい場所まで移動さすみたいな。
ちょっと怖い奴。」
ああ、それだ
「うそん!え?まじで?」
操られる、と言われてる
「え?そんな軽く言わないで!
誰が操るの?」
それは知らない
それを食べたものは時々不思議な行動をとるそうだ
これを売っているものは無理には勧めないだろ?
だが、買ったものには
これはうまいと言わなかったか?
「まさしくその通りです。
え?わざと?」
知らんな
昔からだ
普段と違う行動だが、数年に1回だけだから誰も知らない話だ
馬はみなは知ってるぞ?
最近では、タフトの街道で値引きがあったらしい
「それ知ってる!
ゼムの奥さんが話してた!急に割引が始まったって!
え?そんなことできるの?え?」
長い間、かなりの量を食べないとだめらしいがな
「それ、食べてる人は知らない話だよね?」
知らないだろうな
ワイプも知らないだろ?
「知ってるのって、スー兄とか、馬さんだけ?」
それと操る人間だけだ
「ちょっと大スクープだよ!マティス!」
「ワイプに報告だけでいい。
ワイプもそれを聞いて動ける話ではない。それは捨てろ。」
「いや、スー兄もおいしいっていってるのに?
ダメなとこって、内臓とか、そういうとこ?」
足と頭も食べないな
「身だけね。ちなみに生だよね?どんな味?」
甘いぞ
「スー?本当に身だけならいいんだな?」
もちろんだ
臓と頭、足を食わなければいい
数匹置いていってくれ
情報料だ
「うん、わかった。
スー兄のたちの分も焼こうか?
勧めた人も焼くって言ってたし。」
いや、そのままでいい
焼く前に処理はしろ
混ざるから
「はーい。
よかった、先に聞いといて。
んじゃ、6匹ほどでいいの?
ん。んーと、そのお残したものは?
あ、埋めるのね。わかった。
わたしもそうする。肥料になる?」
それは分からないが、止めておいたほうがいいだろうとのこと。
そうだよね、なにかまずい成分がお茶葉とかに移ったら問題だ。
あとは赤い実は食べない。固いから。
「虫入りは?」
その虫はうまくないとのこと。
「愛しい人?これはやめておいた方がいいのでは?」
「大丈夫よ!故郷にもね、毒のある魚があるんだけど、
そこ以外はほんとにおいしいの。
そう思えばいいんじゃないの?」
この報告だけしてもらって、
扉君の家に戻った。
エビの解体技術が役に立つ。
シャコに近いか?
殻は薄い。これも剥く。
脂身?フォアグラ?背中と言っていいのだろうか、
そこだけがコロンと取れた。
ちなみに1匹だけ、マスク着用で焼いてみたが、
足も殻も頭も、ドロっと溶けて、
かなり小さくなった。
お手軽な調理法で匂いもいい。
溶けた殻がカリっと香ばしさを醸し出している。
「ダメだぞ?」
「うん。もちろん。生は感じなかったけど、
これ、なんとなく問題ありそうな気がするね。
話を聞いてるからさらにだ。これは処分ね。
処分箱に。焼却処分しよう。
でもさ、このカリっとしたのがいいんよきっと。」
焼けば容赦なく溶けだした。
ダメだ。
小麦粉・片栗粉・パン粉をまぶして焼いてみる。
片栗粉作っといてよかった。
カリっとなるのは片栗粉。
カリカリがいい!!
その上に溶かしバターを掛け、さらにカリっと。
輪切りにすれば、フォアグラもどき!!
牛フィレ肉とフォアグラのロッシーニ風!!
うん、肉が添え物だ。
鉄のお皿を使えばさらにいい。
あと、20枚は作ってもらおう。今回はお願いで。
「どう?まずい感じはしないよね?
むしろよだれがでるほどうまそうだ。
これね、もうひと手間かけてテリーヌ作るよ。
それは一晩おかないといけないから明日ね。
さ、これ、師匠を呼ぼうか?
おいしいそうだけど、うん、味見してもらおう。」
実は食べていない。
うまそうだ、よだれが出ると、2人で言っているだけだ。
初物は師匠が食べる。
これは決まりだ。
師匠の家に行くとなると、
ツイミ兄弟の分と、ガイライの分も作ることになる。
収納庫万歳!
ダメだったらお肉がメインになるだけだ。
晩御飯には少し早いので、
虫無しの赤い実を検証。
外れ大門の市場で買ったものはくるみっぽかった。
これは?
虫入りの緑の身は結構大きいものだった。
これは小さい。が、栗ぐらいはある。
「固い!割れん!」
マティスもがんばったが、指で割るには大きすぎで
拳で割るには小さすぎる。
もっと乾燥させればいいのか?
強制的に乾燥。
それでも固い。
カメリで使った万力で割る。
マカダミアナッツの要領だ。
殻は薄いのにものすごく硬い。
でも、なんか使えそう。あ、マティスが笑ってる。もう!
皮の内側に固いけど、うすい膜。
そのさらに内側に、手でもろもろはがせるスポンジのようなもの。
で、その中、仁というのだろうか、ころんとした実。
「小さい!」
虫はこの仁とスポンジのようなものをぎりぎりまで食べているのだろうか?
虫入りも買っておけばよかった。いや、ダメだ。
いま、ぞわっと来た。
どれがたべれるんだろうか?
外殻。
何かに使えそうということだけで、食べることはできない。
乾燥させているので絞っても何も出ない。
内幕も同じ。
もろもろスポンジ。
これも食べるものではないとわかる。
もぐさ?お灸?
火をつける。
「あ、燃えるね。匂いは?甘いね!」
「愛しい人?虫が食べる実だ。虫が寄ってくるかもしれんぞ?」
「却下!!」
即消した。
消臭も念入りに。
撒き餌とか?これもとっておこう。
そして実!正確には仁!
梅干しの種の仁は好きなのだ。
「絞ったら油取れそうだね。」
「カメリの方が効率はいいな。」
「そうだね。食べるほうで。オーブンで焼いて軽く塩を掛けようかな。」
「食べるんだな?」
「木の実系はおいしいって!虫も食べるんだもの!
これ、おいしかったらチョコレート掛けてもおいしいよ?」
マティスもチョコは大好きだ。
「わかった。その味見は私がする。」
割ってオーブンで焼いたものと、
殻つきのまま焼いたもの。
これは殻つきのまま焼いて、割る。
その方がおいしい。
が、ものすごい手間だが、スポンジ状のものも、
きれいはがれる。
この焼いたときの甘い匂いが、なんとなくしみ込んでおいしい。
塩いらず。
剥いたほうは、塩を掛ければ、さらにおいしい。
止まらない味だ。
チョコ掛けもきっとおいしいはず。
晩御飯は作ったので、2人で菓子工房でチョコ作り。
ぼちぼち、テオブロマが入って来てるらしいので、
ツイミさんに大量買いを依頼している。
こういう時はツイミさんにお願いするのが一番だ。
それ専用の袋も渡している。
ルポイドで買うのが一番いいだろうけど、
余りにも大量に買うと怪しまれる。年内は内緒だ。
1コまるまるは大きいので、4等分で。
ココアパウダーを掛ける。
あのツルっとした表面はどうするんだろうな?
あれはあきらめよう。
あと、砕いてチョコに入れれば、
懐かしのハートチョコだ。
謎の穀物チャクを煎ってからチョコに混ぜてもおいしい。
さっくり感がでる。クリスピーだ。
「チャクがうまい!」
マティスが驚いていた。
これはいいね。また買っておこう。
月が昇った。
ではでは、師匠に食べてもらいましょうか。
ガイライはお土産に渡した布を気に入って、もう少し欲しいという。
姐さんの店だ。が、人が多い。
行列ができていた。
刺繍布が外に持ち出せるようになったと、瞬く間に広まったようだ。
他の店では店先に、これはないだろうというレベルのものまで並んでいる。
だが、皆が買うのは刺繍布で、
前に買った布は不人気なのか、人がいない。
「これだよ。いろんな色があるからね。
系統をそろえるか、反対色をもっていくのもおすすめだよ?」
「?母さん?これですか?母さんがくれたものは、柄があったんですが?」
「あれは、この母が入れたのですよ。金華山織りもどき。
これ、密集してるでしょ?で、柄のところを短くしてね。
好きな模様も入れれるよ?」
「わたしもできますか?」
「うん。短くしたいところをね、きゅって引っ張るように移動するの。で、切る。
そしたら元の戻るから、凹んで柄になるの。
違う色を持ってきてもいいかも。移動でね。交換。
絵を書くみたいにできるよ。」
「面白そうですね。」
こういうのは楽しい。
何色か、単色の毛足が長い布を抱えて奥に入っていく。
「モウ!ドロインのところは?これから?」
わたしに気付いたここの女主人、
ドロインさんの孫娘、サリアさんが出てきた。
店の人が知らせたんだろうね。
「いいえ。先に寄りましたよ。これから帰ります。
その前にここに来たら、布と香辛料を買わないと。
ドロインさんのところに手軽に食べれるものを置いてますので、
良かったら食べて下さいな。わたしたちは、先に頂きましたから。」
「帰る?あれ?話は?ドロインから話が合っただろ?
それにわたしたちは出るなって言われてたんだけど?」
「断りましたよ?無理でしょ?」
「え?断れたの?ど、どうやって?」
「へ?断りますって。あれ?何のはなしですか?」
「ちょっとこっちおいで。」
奥の隅に呼ばれる。
「・・・ドロインが娘にするって言っただろ?」
「その話ですよね?ええ。断りましたよ?
うふふふ。そんなことしたら、姐さんが娘になっちゃう。」
「そんなことじゃないよ!断った?ドロインの家で?
ドロインは中央のタトーロインだと知ってるよね?」
「爵位もちってことですよね?あんまり詳しくないですが、えらいさんだということは。」
「その程度の知識?」
「いや、一般人はそうでしょ?」
「それで断ったと?いや、あんた、すごいね。」
「わたしが望んでいないことはドロインさんも無理強いしませんよ?」
「いや、そうだけど。」
「心配させてしまっているようです。何も問題ないと言ってください。
あ、それとこれくださいな。あ、彼はわたしの息子なんですよ?」
「え?」
サリアさんは頭にいっぱいクエスチョンマークを浮かべてしまった。
ガイライは大量の布を抱えつつ帰っていった。
そして、わたしたちはそのまま香辛料のバザールに。
ここはいつも通りだ。
「ビャクとクー、彼らが買ったのってどれです?」
どんなものを買ったのか全く教えてくれなかったようだ。
なのにおいしそうに食べているから気になると。
「虫系が多かったよ?原型は留めてないけど。」
「キャムロンは?食べてみたんですか?」
「まだ。今晩挑戦かな?
虫だからね、わたしもそれ系を買っておこかな?」
「おいしかったら教えてくださいね。おいしかったらですよ?」
師匠も虫食は抵抗あるようだ。
虫食ははまれば、ものすごく美味らしいから。
んー、そうなのか?そう思いたいだけかな?うーん。
そんなことを考えながら、
クーちゃんとビャクが買っていったものをわたしも買っていく。
「では、戻ります。
タトーロイン卿と同じように声をかけてくるものもいるでしょうね。
その時は卿の誘いを断ったといいいなさい。
それでかなりのものは引くでしょう。」
「ドロインさんの名前を使いたくないな。」
「使えるものは何でも使うというのは、武にもつながりますよ?」
「おお!ものすごい説得力です。押忍っ!」
「それ、返事ですよね?」
「そうですよー。じゃ、そうしますね。」
「これからの予定は?」
「魚を干しっぱなしなんで砂浜にもどります。そこで、キャムロンを。
最悪一番被害が少ない場所かなと。」
「そこまでして?」
「いや、市場の人がかなり念押ししたんで。」
「それね、そんなにおいしいものなら、ガイライ殿やニック殿にもに進めませんか?
子飼いなんでしょ?」
「勧めても食べないってわかっていたら勧めませんよ?
自分でおいしいものを人が嫌がったら嫌だもの。ニックさんには
メイガで失礼なことしたと思ってます。」
「マティス君?大丈夫ですか?」
「毒気はないとわかる。」
「中毒性は?」
「あの状態ではわからんな。」
「そんな話あるんですか?」
「食材が豊富にあるんですよ?王都は。
なのに、あの場所に住む者たちは頑なにあの場所を動かないし、
食材もわざわざ取り寄せる。おかしいと思いませんか?」
「故郷の味なんでしょ?そういうのありますよ?」
「ツイミとソヤにも聞きましたが、それは食べないと。
ツイミですら食べたことないと。」
「15匹で1銀貨。当時のツイミさんのお家では高かったとか?
それにタフトから取り寄せでしょ?
なかなか手に入らなかったとか?
でも、そうですね。ちょっと気を付けてみます。
スーは?いまどこです?」
「王都の厩舎ですよ?そうですね、スーに聞くのが一番早いでしょうか?」
じゃ、後で行きますと、別れる。
砂浜に戻ると月無し石が増えていた。
分裂したんだろうか?
何もなかったかと聞くまでもないだろ。
が、念のため。
「お疲れ様。
なんかあった?」
なにやら、わいわいと言ってるような?
「んー誰か来たの?え?ここの人?猟師さんかな?
迷子?あら、それで?また来そう?あらら。」
一応目くらましは掛けている。
砂浜と海しか見えないだろう。
魚の干し台には近づかないようにもなっている。
月無し石のプライベートビーチもだ。
「そうか、撤収だね。でも、何しに来たんだろ?」
「雨支度だろうな。少し早いと思うが、今年は長い。
食料は大量にいるからな。そして売れる。」
「そうか。先に大量に取っちゃったけど、大丈夫かな?」
「ここで、何かを採るわけではないだろ。
確保した食料を置いておくんじゃないか?」
「そうか。ここから船を出すわけじゃないんだ。
どちらにしろ、当分来れないね。海、満喫した?
ん?ああ!あの砂だ!ありがとう。」
また、きれいな砂を大量に出してくれた。
塩袋に5袋分だ。枯山水の庭を作ろう!いいねー!
魚も回収して、ここに来た痕跡は全てなくした。
また、雨の日が来たら来よう。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「スー兄!これについてなにかアドバイスありますか?」
虫か
うまいぞ
「おお!やっぱりおいしいんだ。
これは?スーリムは小さいのを買ったの。
これは故郷でも近いものが有るの。
残飯食べさせてるって。
おなかの中をきれいにするために、数日絶食させてたべるの。
それか、ハーブ、薬草だけを与えるって。
いま、お茶葉と薬草だけあげて、あとは絶食。
数日たったら食べるんだ。これはおいしいよ?」
そっちは、虫ではない
食べたことはない
「そうなの?これは、貝の仲間だ。こっちは大丈夫だと思う。
寄生虫は取り除くしね。
こっち、キャムロンって中毒性ある?師匠が心配?
というより警戒してたよ?」
中毒性?
それはない。この虫自身はうまいが、
これに宿るものがあるんだ
臓は食べないことだな
「宿るの?寄生虫?こっちに?冬虫夏草みたいな?」
なんだ?
「なんかね、菌類なんだけど、茸ね。
虫にやどって、からだを乗っ取って
発芽にいい場所まで移動さすみたいな。
ちょっと怖い奴。」
ああ、それだ
「うそん!え?まじで?」
操られる、と言われてる
「え?そんな軽く言わないで!
誰が操るの?」
それは知らない
それを食べたものは時々不思議な行動をとるそうだ
これを売っているものは無理には勧めないだろ?
だが、買ったものには
これはうまいと言わなかったか?
「まさしくその通りです。
え?わざと?」
知らんな
昔からだ
普段と違う行動だが、数年に1回だけだから誰も知らない話だ
馬はみなは知ってるぞ?
最近では、タフトの街道で値引きがあったらしい
「それ知ってる!
ゼムの奥さんが話してた!急に割引が始まったって!
え?そんなことできるの?え?」
長い間、かなりの量を食べないとだめらしいがな
「それ、食べてる人は知らない話だよね?」
知らないだろうな
ワイプも知らないだろ?
「知ってるのって、スー兄とか、馬さんだけ?」
それと操る人間だけだ
「ちょっと大スクープだよ!マティス!」
「ワイプに報告だけでいい。
ワイプもそれを聞いて動ける話ではない。それは捨てろ。」
「いや、スー兄もおいしいっていってるのに?
ダメなとこって、内臓とか、そういうとこ?」
足と頭も食べないな
「身だけね。ちなみに生だよね?どんな味?」
甘いぞ
「スー?本当に身だけならいいんだな?」
もちろんだ
臓と頭、足を食わなければいい
数匹置いていってくれ
情報料だ
「うん、わかった。
スー兄のたちの分も焼こうか?
勧めた人も焼くって言ってたし。」
いや、そのままでいい
焼く前に処理はしろ
混ざるから
「はーい。
よかった、先に聞いといて。
んじゃ、6匹ほどでいいの?
ん。んーと、そのお残したものは?
あ、埋めるのね。わかった。
わたしもそうする。肥料になる?」
それは分からないが、止めておいたほうがいいだろうとのこと。
そうだよね、なにかまずい成分がお茶葉とかに移ったら問題だ。
あとは赤い実は食べない。固いから。
「虫入りは?」
その虫はうまくないとのこと。
「愛しい人?これはやめておいた方がいいのでは?」
「大丈夫よ!故郷にもね、毒のある魚があるんだけど、
そこ以外はほんとにおいしいの。
そう思えばいいんじゃないの?」
この報告だけしてもらって、
扉君の家に戻った。
エビの解体技術が役に立つ。
シャコに近いか?
殻は薄い。これも剥く。
脂身?フォアグラ?背中と言っていいのだろうか、
そこだけがコロンと取れた。
ちなみに1匹だけ、マスク着用で焼いてみたが、
足も殻も頭も、ドロっと溶けて、
かなり小さくなった。
お手軽な調理法で匂いもいい。
溶けた殻がカリっと香ばしさを醸し出している。
「ダメだぞ?」
「うん。もちろん。生は感じなかったけど、
これ、なんとなく問題ありそうな気がするね。
話を聞いてるからさらにだ。これは処分ね。
処分箱に。焼却処分しよう。
でもさ、このカリっとしたのがいいんよきっと。」
焼けば容赦なく溶けだした。
ダメだ。
小麦粉・片栗粉・パン粉をまぶして焼いてみる。
片栗粉作っといてよかった。
カリっとなるのは片栗粉。
カリカリがいい!!
その上に溶かしバターを掛け、さらにカリっと。
輪切りにすれば、フォアグラもどき!!
牛フィレ肉とフォアグラのロッシーニ風!!
うん、肉が添え物だ。
鉄のお皿を使えばさらにいい。
あと、20枚は作ってもらおう。今回はお願いで。
「どう?まずい感じはしないよね?
むしろよだれがでるほどうまそうだ。
これね、もうひと手間かけてテリーヌ作るよ。
それは一晩おかないといけないから明日ね。
さ、これ、師匠を呼ぼうか?
おいしいそうだけど、うん、味見してもらおう。」
実は食べていない。
うまそうだ、よだれが出ると、2人で言っているだけだ。
初物は師匠が食べる。
これは決まりだ。
師匠の家に行くとなると、
ツイミ兄弟の分と、ガイライの分も作ることになる。
収納庫万歳!
ダメだったらお肉がメインになるだけだ。
晩御飯には少し早いので、
虫無しの赤い実を検証。
外れ大門の市場で買ったものはくるみっぽかった。
これは?
虫入りの緑の身は結構大きいものだった。
これは小さい。が、栗ぐらいはある。
「固い!割れん!」
マティスもがんばったが、指で割るには大きすぎで
拳で割るには小さすぎる。
もっと乾燥させればいいのか?
強制的に乾燥。
それでも固い。
カメリで使った万力で割る。
マカダミアナッツの要領だ。
殻は薄いのにものすごく硬い。
でも、なんか使えそう。あ、マティスが笑ってる。もう!
皮の内側に固いけど、うすい膜。
そのさらに内側に、手でもろもろはがせるスポンジのようなもの。
で、その中、仁というのだろうか、ころんとした実。
「小さい!」
虫はこの仁とスポンジのようなものをぎりぎりまで食べているのだろうか?
虫入りも買っておけばよかった。いや、ダメだ。
いま、ぞわっと来た。
どれがたべれるんだろうか?
外殻。
何かに使えそうということだけで、食べることはできない。
乾燥させているので絞っても何も出ない。
内幕も同じ。
もろもろスポンジ。
これも食べるものではないとわかる。
もぐさ?お灸?
火をつける。
「あ、燃えるね。匂いは?甘いね!」
「愛しい人?虫が食べる実だ。虫が寄ってくるかもしれんぞ?」
「却下!!」
即消した。
消臭も念入りに。
撒き餌とか?これもとっておこう。
そして実!正確には仁!
梅干しの種の仁は好きなのだ。
「絞ったら油取れそうだね。」
「カメリの方が効率はいいな。」
「そうだね。食べるほうで。オーブンで焼いて軽く塩を掛けようかな。」
「食べるんだな?」
「木の実系はおいしいって!虫も食べるんだもの!
これ、おいしかったらチョコレート掛けてもおいしいよ?」
マティスもチョコは大好きだ。
「わかった。その味見は私がする。」
割ってオーブンで焼いたものと、
殻つきのまま焼いたもの。
これは殻つきのまま焼いて、割る。
その方がおいしい。
が、ものすごい手間だが、スポンジ状のものも、
きれいはがれる。
この焼いたときの甘い匂いが、なんとなくしみ込んでおいしい。
塩いらず。
剥いたほうは、塩を掛ければ、さらにおいしい。
止まらない味だ。
チョコ掛けもきっとおいしいはず。
晩御飯は作ったので、2人で菓子工房でチョコ作り。
ぼちぼち、テオブロマが入って来てるらしいので、
ツイミさんに大量買いを依頼している。
こういう時はツイミさんにお願いするのが一番だ。
それ専用の袋も渡している。
ルポイドで買うのが一番いいだろうけど、
余りにも大量に買うと怪しまれる。年内は内緒だ。
1コまるまるは大きいので、4等分で。
ココアパウダーを掛ける。
あのツルっとした表面はどうするんだろうな?
あれはあきらめよう。
あと、砕いてチョコに入れれば、
懐かしのハートチョコだ。
謎の穀物チャクを煎ってからチョコに混ぜてもおいしい。
さっくり感がでる。クリスピーだ。
「チャクがうまい!」
マティスが驚いていた。
これはいいね。また買っておこう。
月が昇った。
ではでは、師匠に食べてもらいましょうか。
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