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596:盛りだくさん
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その日の夜、鍛練を頑張った。
地下の運動場で。
ホットヨガのように湿度と温度を上げる。
樹石を使って。
使用後は乾燥させないとカビるかもしれない。気を付けよう。
あぶない水着は却下だ。
トックスさんにカンターウォーマーを届けたとき、
からだにピッタリなトレーニングスーツを作ってもらっている。
クジラ皮製。
槍先が掠る程度なら肌も守ってくれる。
それを着こんでの鍛錬。
荷重は無しだ。
あらゆる部位が思いのまま動くことを意識する。
時間にして、3時間ほど、マティスとずっと組手だ。
拳、剣、棒、槍。
会わずの月まで、鍛錬の日々が続く。
もちろん行商も行う。
ダカルナの塩屋だ。
ここでは、行商、3兄弟で通していく。
塩袋の販売権利は行商夫婦から買い取ったということに。
行商夫婦はマティスとモウだ。
国を挙げて探しているはず。手配がなくても。
気付いているんだろう、わたしたち2人を見て、笑っていたから。
「よかったよ。塩袋は手に入らないかと思っていたからな。」
ここの塩屋は商売人。
相手が行商兄弟でほしいものを卸してくれるなら、
それが誰であろうとかまわない。
そういうことだ。
塩袋の値段交渉、ウォーマーの商品説明。
ウォーマーを3リングで卸すことで、塩袋の値段交渉成立。
納品は必ず20枚以上
思うに、この塩屋さんが一番の天敵だ。
で、ルンバがラスボス。
塩袋、2リングの仕入れで、3.5リングで卸すことになった。
1.5リングは取りすぎかと思ったが、
それを、ここでは8リングで売っている。
ヘレーナさんのところでは10リングになっている。
わたしたち以外に卸すことになれば、さらに高くなるだろう。
運送費というのはほんとに高いのだ。
そう考えると、ウォーマーは安いのか?
いや、塩袋がよい商品ということだ。
その報告をヘレーナさんへ。
ウォーマーも売って、塩袋を1枚2リングで買い取ると契約。
同じように水漏れの場合は購入しない。
20セットで、すべて問題なければ、プラス2リング。
実質2.2リングで購入となる。
豆袋も作ってくれていた。
また確認して、全購入。
子供たちのお駄賃は今回はクッキーだ。
フレシアにも売りに行く。
領主館がある街メンバ、手芸屋さんと言っていいのだろうか、
マティスがいつの間にかストッキングの依頼をしている店、
ヤツマさんの店にも。
何やらまた、2人で話し込んでいた。
2台お買い上げだからいいけど。
あとはティングの街、エリングさんの店。
「刺繍布が出回り始めたのは知ってるかい?」
「ええ。ちょうどその話が入って来た時にタトートにいたので
何枚かは買えましたよ。」
「それはうらやましい。持ってるんなら見せて欲しいね。」
そういわれたので、手持ちの刺繍布を2枚ほど出す。
いつか使うだろうが、今は使わないとマティスが判断したものだ。
「なんて素敵なんだろう。これ、売ってもらえない?」
「直接仕入れたほうが安いんでは?
わたしたちの手数料を上乗せすることになりますから。」
「今、これだけの布は手に入らない。
品不足なんだよ。みんながみんなが求めているからね。
しかも知ってるかい?
刺繍布ならどれでも売れるだろうって、手を抜いて加工したものは、
次の日にはバラバラになったって話だ。」
「それだと今までと一緒ですね。持ち出せるってのは嘘?
でも、わたしたちのはそんなことなってないですよ?」
知らない風を装う。
「うちの母親が言ってたよ。
今ある形から手を加えるときは、今よりいいものになるって
思いながら作らないといけないって。金になるからって、
ただ、布を半分に切って倍の値段で売ろうとするのがいけないんだよ、
きっと。」
「素晴らしい母君の教えですね。トックス叔父もそう言ってましたよ。
もちろん、叔父にも布を届けてます。これ、いいでしょ?」
刺繍布の手提げかばんを見せる。
「また!いいもの作ってるね。ん?」
縁の縫い目を見ている。
「あは!その四方のまつり縫いはティスです。」
マティスも裁縫はうまいが、トックスさんは神業だから。
わたしの縫い目を見られなくてよかった。
「この大きさの刺繍布を買って、
縁を縫って、で、この取手つけて。
最初はこれで刺繍布を宣伝するって言ってましたよ。
そしたら、服を作ってほしいって依頼が来るだろうって。」
「あははは!なるほどね。でも、すでにそれどころじゃないよ?
皆が目の色替えて刺繍布を求めてる。青が流行り、
あんたの旦那が言う赤も流行っている。
次は刺繍布だ。」
「タトートの刺繍布屋さんの方にここの白い布を見せたんですよ。
そしたらさすが、フレシアの布だって
感心してました。こっちの布を持っていって刺してもらったら?」
「向こうだって、ナルーザと近いんだ。いい布は山ほど手に入る。
それに、ナルーザが許さないだろうね。
が、そうだね、あの白い布はどこにも負けない自信はあるよ?
だけど、手間と金がかかり過ぎた。
なかなか売れなくて実は困っていたもんなんだよ。
二度とはできないね。
だからと言って値下げはできないしね。
褒めてくれたのはうれしいけどね。」
「いろいろあると。」
「そういうことだよ。」
刺繍布3本と、ブラスの輪っかを20本納める。
輪っかは2つで1銀貨。
布は買値の2倍でも安いと言ってくれた。
後はやはりタオル。色違いで、10枚ずつ買ってくれる。
冷蔵庫と冷凍庫は即買いはなかったが、
レンタルとなる。
次回に来た時に決めてもらうことに。
ここでは、仕入れ荷の1割は税で納めるという建前だ。
売った場合は?
「お蚕様にお布施だね。いいよ。わたしから出しておくから。」
「ありがとうございます。あの、綿入りました?
寒い所では好評なんで買いたいんですが。」
「いいのかい?雨の日前だから、これが最後なんだよ。
また近所に声をかけても?」
「ええ、お願いします。」
売れない綿は雨の日に燃やすそうだ。
もったいないな。
「なんか、大量に綿を買い取るってことで問題出ますかね?」
「問題?なにもないさ!
ただ、声を掛けてるのは一部だからね、燃やすときに出さなければ
不思議に思うだろう。その時話してもいいかい?」
「いや、物珍しがって買っていったとだけ。
これぐらいの量で、ちょうどいいんで。
うちのも買ってくれって言われると困ります。」
「あははは!そん時は断ればいい。でも、そういっておこうかね。」
前回の量より、半分ぐらいだろうか。
これも前回と同じ金額で購入。
次はビヤンさんのところ。ちょうどエスワさんも来ていた。
ここはウォーマーは各1台ずつ買ってくれた。
冷蔵庫と冷凍庫もだ。
これでいいと判断すれば大型も注文してくれるとのこと。
あと、タオルと塩。
塩はやはり一番塩がおいしいが、この前売りに来た行商からは、
とてもじゃないが買えなかったらしい。
「うちは運送料が格安なんで。
これから、またルポイドに行く予定なんですよ。」
「えー飯食って行けよ。で、いつものようにな!」
エスワさんが言う。
それはお店を手伝うということだ。
「わるいな。今日は、ガッスルを仕入れて、ルポイドに行く。
冷蔵馬車が出回れば、もうこの商売はできないから最後になるだろう。
この背負子に入るだけ仕入れるつもりなんだ。」
「そうか。そうだよな。仕方ないな。
また、雨の日前に来るだろ?そん時はゆっくりしていってくれよ?」
「ええ。もちろん。あ、これ、赤チーズって知ってます?
匂いのきつい、酒のみしか食べないチーズ。
別に腐ってるわけじゃないんで、お口に会えば食べて下さいな。
「知ってる!親父が言ってた奴だ!
親父!いいもんもらったぞ!!」
奥から親父殿が出てきた。
「ほら!これ!赤チーズって話してくれたことあるだろ?」
「おお!ほんとに赤いな!」
「え?食べたことあるんじゃないの?」
「話に聞いただけだよ。酒飲みは一度は食べないといけないってな。」
「親父は酒飲みだからなぁ。」
楽しいお酒で、体を壊さなければいいんじゃないかな?
ここの人は皆お酒に強いから。
日本酒ができれば是非とも飲んでほしいな。
「焼き鳥な、皆が真似するんだ。
風の仕組みもな。
で、内臓も売れる。少し値上がりしたかな?
だけど、俺の店が一番うまいって言ってくれるんだ。」
「エスワさんは丁寧に焼くからね。
ああ、ブラスの串、入りましたよ?
どうします?別の物で代用できるんならそっちのほうがいいかな?
これ、定期的に入るわけ訳でもないんで。
あと、豆ソースは?今塩で焼いてるでしょ?
タレで焼くとさらにおいしいですよ?」
そうなると、やっぱりお約束が成立する。
でもでも、焼き鳥はやっぱりタレですよ!
焦がさないように、弱火で煮詰めていく。
みりんの代わりにここでよく飲まれる甘いお酒。
甘いお酒なんかありますか?と聞くと、
チーズの礼だと親父殿が出してくれた。
ルポイドには朝一番に仕入れて行くことになった。
「いらっしゃい!コットワッツで流行りの豆ソースがかかった焼き鳥だよ!
塩もうまいが、このタレもうまい!食べ比べやっとくれ!」
「2番さん、盛り合わせ、タレと塩、1人前ずつ。
5番さん、鳥茶漬け3、おあと、持ち帰り盛りタレ3人前!」
「「よろこんで!!」」
反則業だが、タレ焼の煙は外に出るように細工した。
これはお客が来るだろう。
外にも椅子や机を並べた。
あー、ビール売りたい。唐揚げも。
売れるだろうねー。
座れないとわかるとお持ち帰りの客も増えて、
やって来たビヤンさんも手伝うことになる。
親父殿が留守番、チーズをちびり、お酒をちびりやってるそうな。
お土産に持って帰ってください。
包み紙はもちろん、カンランだ。
中で2重にしているから、
たれがついてる内側は食べてもおいしい。
「なくなったー!!」
売り切るまでが営業時間です。
今回のまかないごはんは、
鳥の米詰め。こっちの店で出してくれた。
向こうの店は仕込みだけやって、できたものを出している。
これがまた進化している。
中にチーズが入っているのとトマトが入っているのとができている。
ノーマルと、その2つを食べた。うんまーいい。
「あんたが、2つほどペロって食べるだろ?
客に言ったらさ、それぐらい食べれるけど、味が同じだから飽きるって。
で、違う味を作ったんだよ。それで、少し小さめ。
あんたには足りないかもしれないけどな。」
「そうか、小さ目で味を変えれば、いろいろ食べてもらえるな!
いいことを教えてもらった!さすが本職だな!」
「ま、そういうことだな。」
なんか、なんか、違う。
いや、愛だな、愛。
だって、マティスが心底嬉しそう。
うん、楽しみだ。
「だけど、大きめでも問題ないよ?」
あはははははは!
月が出て、半分だ。
少し寝たいし、ガルッスも仕入れたい。
今から仕入れることはできるかと聞けば、
今は捌いてる最中だけど、買えるはずだと、
一緒に市場に行くことに。
ビヤンさんは宿の仕事があるので、確保しておいた焼鳥盛り合わせを
お土産を持って帰っていく。
「エスワ?どうした?こんな時間に。」
「ほら、砂漠の民だよ。
で、今から、ガッスルを仕入れて、ルポイドに行くんだ。
悪いが捌いた分を売ってくれないか?」
「ああ!それはかまわんよ?向こうで宣伝してくれれば、
冷蔵馬車で売りに行っても売れるからな。」
「ここでも、冷凍庫、冷蔵庫どうですか?
どれくらい日持ちするか、どうやって解凍するか研究なさっては?
1台20リングなんですが、
いま、貸し出しもやってます。
買う価値があれば、次回こちらに来た時にお買い上げを。」
「それはいいな。必要なければ、買わなくてもいいんだな?」
「もちろんです。ただ、壊したり、
どこかに持っていったりはしないで下さいね。
そうすると、ただの箱ですから。その場合は20リング回収します。
使用中に壊れてしまったら、どうして壊れたか教えてください。
その場合は次回の参考になりますし。
どうぞ、普通にお使いください。」
「なるほどな。じゃ、盗まれたりしたら?」
「ああ、その盗んだ方には多大なる不幸が。お気の毒です。
砂漠石で、隠匿と盗難防止がかかっていますから。」
「そりゃそうか。じゃ、使ってみるよ。
で?どれくらいいるんだい?」
もちろん、背負子の最終形態の大きさで入るだけだ。
ルポイドには100。残りはこちらの雨支度分。
また、雨の日前に数回くればいいだろう。
お値段はなるほど、すこし値上がりしている。
雨の日前の値上がりと、焼き鳥人気でだ。
それでも、前回同様に利益は出る。
んー、焼き鳥と唐揚げも売ろうかな?
あと、コーヒー豆も仕入れないと。
テムローサのところにも石鹸とカンターウォーマーを届けないとね。
あとは、海苔だ。
イリアスが作ると言ってもあの岩場までは廻れないだろう。
コムのお茶も欲しい。
チャクのおかきもおいしいと宣伝して、
お茶もいいけど、コーヒーも。
茶こし付の急須も次に作ってもらう予定だ。
常に熱いお湯が沸いているポットを作るのもいいな。
コムはその時でいいか。
エスカルゴ皿はばっちりだった。
これは、会わずの月の日のお楽しみだ。
行商をするからには儲けないとね。
会わずの月まで、真面目に行商、真面目に鍛錬だ。
すること盛りだくさんだね。
違う。
新年が来るのが怖いのだ。
地下の運動場で。
ホットヨガのように湿度と温度を上げる。
樹石を使って。
使用後は乾燥させないとカビるかもしれない。気を付けよう。
あぶない水着は却下だ。
トックスさんにカンターウォーマーを届けたとき、
からだにピッタリなトレーニングスーツを作ってもらっている。
クジラ皮製。
槍先が掠る程度なら肌も守ってくれる。
それを着こんでの鍛錬。
荷重は無しだ。
あらゆる部位が思いのまま動くことを意識する。
時間にして、3時間ほど、マティスとずっと組手だ。
拳、剣、棒、槍。
会わずの月まで、鍛錬の日々が続く。
もちろん行商も行う。
ダカルナの塩屋だ。
ここでは、行商、3兄弟で通していく。
塩袋の販売権利は行商夫婦から買い取ったということに。
行商夫婦はマティスとモウだ。
国を挙げて探しているはず。手配がなくても。
気付いているんだろう、わたしたち2人を見て、笑っていたから。
「よかったよ。塩袋は手に入らないかと思っていたからな。」
ここの塩屋は商売人。
相手が行商兄弟でほしいものを卸してくれるなら、
それが誰であろうとかまわない。
そういうことだ。
塩袋の値段交渉、ウォーマーの商品説明。
ウォーマーを3リングで卸すことで、塩袋の値段交渉成立。
納品は必ず20枚以上
思うに、この塩屋さんが一番の天敵だ。
で、ルンバがラスボス。
塩袋、2リングの仕入れで、3.5リングで卸すことになった。
1.5リングは取りすぎかと思ったが、
それを、ここでは8リングで売っている。
ヘレーナさんのところでは10リングになっている。
わたしたち以外に卸すことになれば、さらに高くなるだろう。
運送費というのはほんとに高いのだ。
そう考えると、ウォーマーは安いのか?
いや、塩袋がよい商品ということだ。
その報告をヘレーナさんへ。
ウォーマーも売って、塩袋を1枚2リングで買い取ると契約。
同じように水漏れの場合は購入しない。
20セットで、すべて問題なければ、プラス2リング。
実質2.2リングで購入となる。
豆袋も作ってくれていた。
また確認して、全購入。
子供たちのお駄賃は今回はクッキーだ。
フレシアにも売りに行く。
領主館がある街メンバ、手芸屋さんと言っていいのだろうか、
マティスがいつの間にかストッキングの依頼をしている店、
ヤツマさんの店にも。
何やらまた、2人で話し込んでいた。
2台お買い上げだからいいけど。
あとはティングの街、エリングさんの店。
「刺繍布が出回り始めたのは知ってるかい?」
「ええ。ちょうどその話が入って来た時にタトートにいたので
何枚かは買えましたよ。」
「それはうらやましい。持ってるんなら見せて欲しいね。」
そういわれたので、手持ちの刺繍布を2枚ほど出す。
いつか使うだろうが、今は使わないとマティスが判断したものだ。
「なんて素敵なんだろう。これ、売ってもらえない?」
「直接仕入れたほうが安いんでは?
わたしたちの手数料を上乗せすることになりますから。」
「今、これだけの布は手に入らない。
品不足なんだよ。みんながみんなが求めているからね。
しかも知ってるかい?
刺繍布ならどれでも売れるだろうって、手を抜いて加工したものは、
次の日にはバラバラになったって話だ。」
「それだと今までと一緒ですね。持ち出せるってのは嘘?
でも、わたしたちのはそんなことなってないですよ?」
知らない風を装う。
「うちの母親が言ってたよ。
今ある形から手を加えるときは、今よりいいものになるって
思いながら作らないといけないって。金になるからって、
ただ、布を半分に切って倍の値段で売ろうとするのがいけないんだよ、
きっと。」
「素晴らしい母君の教えですね。トックス叔父もそう言ってましたよ。
もちろん、叔父にも布を届けてます。これ、いいでしょ?」
刺繍布の手提げかばんを見せる。
「また!いいもの作ってるね。ん?」
縁の縫い目を見ている。
「あは!その四方のまつり縫いはティスです。」
マティスも裁縫はうまいが、トックスさんは神業だから。
わたしの縫い目を見られなくてよかった。
「この大きさの刺繍布を買って、
縁を縫って、で、この取手つけて。
最初はこれで刺繍布を宣伝するって言ってましたよ。
そしたら、服を作ってほしいって依頼が来るだろうって。」
「あははは!なるほどね。でも、すでにそれどころじゃないよ?
皆が目の色替えて刺繍布を求めてる。青が流行り、
あんたの旦那が言う赤も流行っている。
次は刺繍布だ。」
「タトートの刺繍布屋さんの方にここの白い布を見せたんですよ。
そしたらさすが、フレシアの布だって
感心してました。こっちの布を持っていって刺してもらったら?」
「向こうだって、ナルーザと近いんだ。いい布は山ほど手に入る。
それに、ナルーザが許さないだろうね。
が、そうだね、あの白い布はどこにも負けない自信はあるよ?
だけど、手間と金がかかり過ぎた。
なかなか売れなくて実は困っていたもんなんだよ。
二度とはできないね。
だからと言って値下げはできないしね。
褒めてくれたのはうれしいけどね。」
「いろいろあると。」
「そういうことだよ。」
刺繍布3本と、ブラスの輪っかを20本納める。
輪っかは2つで1銀貨。
布は買値の2倍でも安いと言ってくれた。
後はやはりタオル。色違いで、10枚ずつ買ってくれる。
冷蔵庫と冷凍庫は即買いはなかったが、
レンタルとなる。
次回に来た時に決めてもらうことに。
ここでは、仕入れ荷の1割は税で納めるという建前だ。
売った場合は?
「お蚕様にお布施だね。いいよ。わたしから出しておくから。」
「ありがとうございます。あの、綿入りました?
寒い所では好評なんで買いたいんですが。」
「いいのかい?雨の日前だから、これが最後なんだよ。
また近所に声をかけても?」
「ええ、お願いします。」
売れない綿は雨の日に燃やすそうだ。
もったいないな。
「なんか、大量に綿を買い取るってことで問題出ますかね?」
「問題?なにもないさ!
ただ、声を掛けてるのは一部だからね、燃やすときに出さなければ
不思議に思うだろう。その時話してもいいかい?」
「いや、物珍しがって買っていったとだけ。
これぐらいの量で、ちょうどいいんで。
うちのも買ってくれって言われると困ります。」
「あははは!そん時は断ればいい。でも、そういっておこうかね。」
前回の量より、半分ぐらいだろうか。
これも前回と同じ金額で購入。
次はビヤンさんのところ。ちょうどエスワさんも来ていた。
ここはウォーマーは各1台ずつ買ってくれた。
冷蔵庫と冷凍庫もだ。
これでいいと判断すれば大型も注文してくれるとのこと。
あと、タオルと塩。
塩はやはり一番塩がおいしいが、この前売りに来た行商からは、
とてもじゃないが買えなかったらしい。
「うちは運送料が格安なんで。
これから、またルポイドに行く予定なんですよ。」
「えー飯食って行けよ。で、いつものようにな!」
エスワさんが言う。
それはお店を手伝うということだ。
「わるいな。今日は、ガッスルを仕入れて、ルポイドに行く。
冷蔵馬車が出回れば、もうこの商売はできないから最後になるだろう。
この背負子に入るだけ仕入れるつもりなんだ。」
「そうか。そうだよな。仕方ないな。
また、雨の日前に来るだろ?そん時はゆっくりしていってくれよ?」
「ええ。もちろん。あ、これ、赤チーズって知ってます?
匂いのきつい、酒のみしか食べないチーズ。
別に腐ってるわけじゃないんで、お口に会えば食べて下さいな。
「知ってる!親父が言ってた奴だ!
親父!いいもんもらったぞ!!」
奥から親父殿が出てきた。
「ほら!これ!赤チーズって話してくれたことあるだろ?」
「おお!ほんとに赤いな!」
「え?食べたことあるんじゃないの?」
「話に聞いただけだよ。酒飲みは一度は食べないといけないってな。」
「親父は酒飲みだからなぁ。」
楽しいお酒で、体を壊さなければいいんじゃないかな?
ここの人は皆お酒に強いから。
日本酒ができれば是非とも飲んでほしいな。
「焼き鳥な、皆が真似するんだ。
風の仕組みもな。
で、内臓も売れる。少し値上がりしたかな?
だけど、俺の店が一番うまいって言ってくれるんだ。」
「エスワさんは丁寧に焼くからね。
ああ、ブラスの串、入りましたよ?
どうします?別の物で代用できるんならそっちのほうがいいかな?
これ、定期的に入るわけ訳でもないんで。
あと、豆ソースは?今塩で焼いてるでしょ?
タレで焼くとさらにおいしいですよ?」
そうなると、やっぱりお約束が成立する。
でもでも、焼き鳥はやっぱりタレですよ!
焦がさないように、弱火で煮詰めていく。
みりんの代わりにここでよく飲まれる甘いお酒。
甘いお酒なんかありますか?と聞くと、
チーズの礼だと親父殿が出してくれた。
ルポイドには朝一番に仕入れて行くことになった。
「いらっしゃい!コットワッツで流行りの豆ソースがかかった焼き鳥だよ!
塩もうまいが、このタレもうまい!食べ比べやっとくれ!」
「2番さん、盛り合わせ、タレと塩、1人前ずつ。
5番さん、鳥茶漬け3、おあと、持ち帰り盛りタレ3人前!」
「「よろこんで!!」」
反則業だが、タレ焼の煙は外に出るように細工した。
これはお客が来るだろう。
外にも椅子や机を並べた。
あー、ビール売りたい。唐揚げも。
売れるだろうねー。
座れないとわかるとお持ち帰りの客も増えて、
やって来たビヤンさんも手伝うことになる。
親父殿が留守番、チーズをちびり、お酒をちびりやってるそうな。
お土産に持って帰ってください。
包み紙はもちろん、カンランだ。
中で2重にしているから、
たれがついてる内側は食べてもおいしい。
「なくなったー!!」
売り切るまでが営業時間です。
今回のまかないごはんは、
鳥の米詰め。こっちの店で出してくれた。
向こうの店は仕込みだけやって、できたものを出している。
これがまた進化している。
中にチーズが入っているのとトマトが入っているのとができている。
ノーマルと、その2つを食べた。うんまーいい。
「あんたが、2つほどペロって食べるだろ?
客に言ったらさ、それぐらい食べれるけど、味が同じだから飽きるって。
で、違う味を作ったんだよ。それで、少し小さめ。
あんたには足りないかもしれないけどな。」
「そうか、小さ目で味を変えれば、いろいろ食べてもらえるな!
いいことを教えてもらった!さすが本職だな!」
「ま、そういうことだな。」
なんか、なんか、違う。
いや、愛だな、愛。
だって、マティスが心底嬉しそう。
うん、楽しみだ。
「だけど、大きめでも問題ないよ?」
あはははははは!
月が出て、半分だ。
少し寝たいし、ガルッスも仕入れたい。
今から仕入れることはできるかと聞けば、
今は捌いてる最中だけど、買えるはずだと、
一緒に市場に行くことに。
ビヤンさんは宿の仕事があるので、確保しておいた焼鳥盛り合わせを
お土産を持って帰っていく。
「エスワ?どうした?こんな時間に。」
「ほら、砂漠の民だよ。
で、今から、ガッスルを仕入れて、ルポイドに行くんだ。
悪いが捌いた分を売ってくれないか?」
「ああ!それはかまわんよ?向こうで宣伝してくれれば、
冷蔵馬車で売りに行っても売れるからな。」
「ここでも、冷凍庫、冷蔵庫どうですか?
どれくらい日持ちするか、どうやって解凍するか研究なさっては?
1台20リングなんですが、
いま、貸し出しもやってます。
買う価値があれば、次回こちらに来た時にお買い上げを。」
「それはいいな。必要なければ、買わなくてもいいんだな?」
「もちろんです。ただ、壊したり、
どこかに持っていったりはしないで下さいね。
そうすると、ただの箱ですから。その場合は20リング回収します。
使用中に壊れてしまったら、どうして壊れたか教えてください。
その場合は次回の参考になりますし。
どうぞ、普通にお使いください。」
「なるほどな。じゃ、盗まれたりしたら?」
「ああ、その盗んだ方には多大なる不幸が。お気の毒です。
砂漠石で、隠匿と盗難防止がかかっていますから。」
「そりゃそうか。じゃ、使ってみるよ。
で?どれくらいいるんだい?」
もちろん、背負子の最終形態の大きさで入るだけだ。
ルポイドには100。残りはこちらの雨支度分。
また、雨の日前に数回くればいいだろう。
お値段はなるほど、すこし値上がりしている。
雨の日前の値上がりと、焼き鳥人気でだ。
それでも、前回同様に利益は出る。
んー、焼き鳥と唐揚げも売ろうかな?
あと、コーヒー豆も仕入れないと。
テムローサのところにも石鹸とカンターウォーマーを届けないとね。
あとは、海苔だ。
イリアスが作ると言ってもあの岩場までは廻れないだろう。
コムのお茶も欲しい。
チャクのおかきもおいしいと宣伝して、
お茶もいいけど、コーヒーも。
茶こし付の急須も次に作ってもらう予定だ。
常に熱いお湯が沸いているポットを作るのもいいな。
コムはその時でいいか。
エスカルゴ皿はばっちりだった。
これは、会わずの月の日のお楽しみだ。
行商をするからには儲けないとね。
会わずの月まで、真面目に行商、真面目に鍛錬だ。
すること盛りだくさんだね。
違う。
新年が来るのが怖いのだ。
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本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
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