いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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627:葛藤

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黙り込んでいたガイライが地面を見ながら聞いてくる。

「・・・モウ?防ぐことは?」
「できないんよ。火矢はあるよね?
油にさ、火をつけたら燃えるでしょ?
それを防ぐのと同じだとおもう。水を掛けるしかない。
ああ、火が付いた油に水はダメだよ?余計に燃える。
そういう武器はない?火炎瓶?火炎樽?」
「・・・南にある。投げてくるんだ、火のついた筒を。
それが割れて火が広がる。」
「ああ、それだね。それが爆発するんだよ、爆弾は。
火はどうやって?導火線?縄が燃えて、油までと到達するんだね?
それが火薬につながるから爆発する。」
「・・・・。」
「水鉄砲ならあるよ。それを大型にしてもいい。
だけど、それこそ、対策はしてるだろうね。
火炎樽はどうやって防いでたの?」
「砂を掛けていたな。実際にはそれで被害が出るわけじゃない。
それが始まりの合図だ。」
「はははは!」
「おかしいか?」
「暢気なんだよ。なにもかも。
相手の口上を待つこともないし、合図を送る必要もない。
暗部の仕事でもそうでしょ?
んー?それとも、戦というのは形だけなの?」
「・・・・。」
「それでも、死んでいくものはいるよね?
国、軍部ではそれは仕方がないと?
なるほど。戦争が始まれば一番に考えることは、
どのようにして終わらすかということか?
それに振り回されて死んでいくのは下っ端か、民か。
どこも一緒だね。
だけど、戦争があれば、わたしの身内が傷つくんだ。
あはははは!困ったね。どうしようかな?ね?マティス?」
「おいで、愛しい人。時間はまだあるからもう少し考えよう?」
「・・・うん。」


マティスに抱きしめられて、そのまま眠ることにした。




─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘



「マティス君。」

『安心しておやすみ。明日の朝ごはんは愛しい人の好物にしよう。
甘いパンも焼き立てだ』


愛しい人は、おいしい口をしながら深く眠っていった。
窯を作ったほうがいいな。
ここで焼くほうがいいだろう。
このまま抱きかかえていよう。


「それで起きないんですか?何があっても?」
「余程のことがなければな。」
「どれくらい?」
「?パンが焼けるか、私が起こすかだ。
銃のことか?だったら、お前たちで考えろ。」
「もちろん。だが、聞きたいことがでてくる。
それを教えてもらえる範囲で教えてほしい。」
「お前たちは、いや、ワイプは愛しい人を利用すると?」
「そうではありません!教えを乞うだけです。」
「・・・・愛しい人に聞けば、教えれる範囲は教えるだろう。」
「ええ、それで十分。」
「だが、カヤクか?
そのことを作らないと言った時の心の葛藤はお前にはわかるまいよ。
臣のガイライは防ぐことを聞くだけで精いっぱいだ。
ニックも同じだ。ニックもガイライに臣の腕を捧げている。
お前だけだ!愛しい人に教えを乞えるのは!
セサミナもできないことなんだぞ?」
「ええ。十分に。糞尿泥棒の話からどうして爆発事件のことに気付けます?
教えてもらわないと気付きもしない。
先に手が打てるんですよ。把握してるだけで金の流れが違う。
はっきり言いましょう。
資産院は戦争が始まる前に資産の確保、終結時にどれだけ資産を残すかが
仕事なのですよ。
なのに、資産がすでにない。
増税なのは戦争の準備だ。
ないとなれば、戦争も回避するかと甘く期待していたんですが、
今までにないほど、戦争へと進んでいる。
いいですか?そのときに資産がなければ、ニバーセル国民から
強制的に徴収されるんですよ?
それはもはや、税ではない。国が行う強奪だ。
許されることではないんですよ!!」
「・・・・それは、お前の資産も徴収されるのが嫌なだけだろ?」
「もちろん。が、それは領国、領国民とて同じなんですよ?
その金で、軍備装備が充実できればいい。
実際には王族たちのくだらない装飾装備に代わるだけだ。
モウの一人芝居のようにね。
それを踏まえて準備をしないといけない。
それなのに、王の代替わりのはなしが、この時期に出てきている。
異常事態なんですよ。
だれも、戦時の王になんぞなりたくないはずなのに。
よほど、勝てる手段があるということなんですよ?
それが銃であり、おそらく彼女のいうカヤクです。」
「ガイライ?ニック?お前たちの認識は?」
「・・・。主が、モウが戦争回避を望めばわたしはそのほうに動ける。
もちろん、主を守ることが最優先だ。
が、モウはそれを望んでいない。
わたしに望んでいることはニバーセル、ニバーセル国民に仕えよと。
国の安泰を望んでいる。
軍人として当然のことが優先なんだ。
ニバーセルが戦争をすることでより良いことになるのならば、そうなる。
南、西方、東方も、ニバーセルを狙っているのは事実だ。
確実に戦争が起こる。
いつかではなく、2年以内にだ。
銃が普及し、そのカヤクも作っていれば、1年以内。
マトグラーサは動きはまさしく王位継承、諸外国併合だ。
主の言うニバーセルは今の王でのことだ。
王の為に動くことになる。
そうすれば、王位を狙うものは全て敵だ。
攻撃はしないが守りは固めておかなければならない。
カヤクのことは把握したい。」
「俺の主がそう望んでいるならば、俺もそう動くまで。
銃のことをもっと詳しく知りたい。
国外に銃の売り出しを掛けている。
なのに戦争へと向かってる。
引き込むか、それ以上の武器があるかだ。
ルポイドは別口だ。対大型獣だろ?
雨の日が終われば、新2軍隊はクジラ狩りに参加する。
そのときに銃のお粗末さを広めることになるだろう。
逆にそのほうがいいかもしれんがな。
それにルカリア、マトグラーサも参加する。」
「領国がか?」
「銃と弾を提供するかわりにだ。」
「砂漠の民が大型銃を使っていた。買えるような金額ではないはずだ。
安くか、おそらくただで配り、使ってもらう。
便利さに慣れたら、誰も手放さない。商売のやり方の一つだと愛しい人が。」
「それだろうな。」
「分隊は?」
「参加は出来ん。」
「テルマに参加せよと言われている。
雨の夜会にもくるそうだ。頼むか?」
「いや、隠密で参加するから。が、話は通しておこう。」
「マティス?お前たちは?」
「参加するだろうな。雨の夜会で何もなければ。
クジラを確保したい。」
「肉!食えたんだな?」
「ああ。また、皆に振舞うだろうな。
あとは身内だけで食べたんだが、恐ろしい肉というものもある。」
「なんだ?それ?身内?」
「セサミナと、アバサ、ルーのことだ。
その肉をほんのひとかけ食べただけで、
肉は当分いらんと思ったぐらい、肉が欲しくなくなる
その肉も含めてだ。」
「え?」
「その後、みなで干し肉をかじった。」
「え?」
「それを踏まえて食べさせてもらえ。
ああ、そんなことはいいな。
愛しい人が悩むのはダメだ。だが、話さない、何もしないのもダメなんだ。
なにを聞いてもいい。が、必ず、安心を返してくれ。
それが、条件だ。
マトグラーサの砂漠のことも、ワイプとガイライが知ってくれているだけで、
安心だと言っていた。
西砂漠のこともセサミナがいてくれてよかったと。
私と彼女が負うべき責任はもちろん負える。
だが、それ以外は、お前たちで負ってくれ。」
「「「承知。」」」


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