いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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646:見解

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「先に塩屋に行ってくるよ!
先に打診があったはずだし、聞いてくる。
ああ、その前に塩袋作らないと!」
「どうするんだ?」
「塩袋に依存性のあるものは無効にしてもらう?
厳密にいえば、マンザス以外のものをどうにかする?
問題なのは青い花だ。
どうする?考えないと!」
「まて!モウちゃん!先に説明だ!」
「時間がない!!」
「愛しい人まだ大丈夫だ。一度戻ろう。」
「・・・うん。」



ワイプ達のいる場所にもどるが、愛しい人はそのまま扉君の家に帰った。
もう少し詳しく作業部屋で調べてみる、と。
片付けは終わっており、あるのは少し大きめのテントのみ。



「マティス君?モウは?」
「話すから。
ガイライ?それはどうするんだ?」

ガイライの横にタンダートといったか?それがいる。
床には似たような背丈の男の死体。

「どちらにしろ、ここを離れないと。
タンダートの死体を埋めてね。
それは調達してますから。
これ、似せれます?」
「服と、顔かたちか?
肉の塊だとすれば、できるだろう。
からだになにか特徴はないのか?傷とかは?」
「?」
「愛しい人の話だ。
偽の死体を用意するときの注意点だな。
顔は潰す、爪先、筋肉、髪、目の色、これはできるだけ似ているものを。
死因もおなじ状況で。
後は歯?これはここでは大丈夫とか。
あとは、いつも身に付けているもの、それと体の傷。
で、これは?罪人?」
「罪人です。死因も心臓を一突きですよ?
調達方法は気にしないでください。
あなたたち、いつもそんな話をしてるんですか?」
「・・・・。野営をした時に調査対象をどこまで調べるかとか、
排泄物まで掘り起こして調べるとか、
仮死の状態でどうするとか、偽装殺人?とか?その時の話だ。」
「2人とも大丈夫ですか?いろいろと。」
「排泄物は暗部なら調べるんだろ?」
「調べませんよ!!」
「やっぱり!お前は尊敬しない!!」
「マティス、いいから!タンダート?なにかあるか?」
「・・・・。いつも身に付けているものはない。
服は脱げばいいのか?
傷は、太ももに槍傷がある。」
「古い?」
「子供のころのだ。自分の槍先で刺した。」
「・・・・あとな。
そういう傷をわざと残すことで相手と連絡するというのもあるらしい。
自分と思しき死体にその傷があれば偽物だと。」
 「いや、ほんとにあなた方2人どんな話をしてるんです?
今度ゆっくり聞かせてください。」
「怖いぞ?ほんとに怖い。」
「マティス!ワイプ!いいから!その傷はわたしも知っている。
が、それこそ、死んだ後に付けた傷だとわかるぞ?」
「そこは大丈夫だ。
どれ?んー?ん?こんなものか?」

そうなってほしいとお願いすればいい。
死体といえど、ただの肉だ。そう思えばいい。


死体をテントの横に埋め、話を聞かせた。




「マンザスだ。が、1割ほど分からぬ成分が入っている。
それに依存性があるのではないかと愛しい人が危惧している。」
「タンダート?知っているか?」
「先にタンダート?彼は?」



エルトナガ国に仕えている。
エルトナガは痛み止めルロイドをはじめ様々な薬を生産、
他は農業、漁業、林業。砂漠には接していない。
東側には領地とはならない未開の土地がある。
迷いの森、豪風地域というわけではなく、
ただな未開な土地。その向こうは小さな島々があり、
その海はいつも荒れているので漁出れない。
漁に出るのは西側の海だ。
中央からは習得を催促されているが、
その土地の税を払う以上の利益は見込めないので、それができればと、
断わるのが国としての長年の方針だ。
バランスよく国を治めている。
統治しているのはやはり王族、貴族だ。
ルポイドのように国内での生産品で国民が豊かに食べていけ、
対国外としての商品がある。
ルポイドは香水、エルトナガは薬といわけだ。

が、噂にも流れるようにその薬となる植物が枯れたと。

未開の土地に移植し、生産高を増やそうと試みるのは
長年やっていることだ。
中央に対しても努力していると見せることもできるし、
実際、生産できれば習得もあり得る。
ただ、本腰を入れていないだけ。

それがここ最近、大きく変わる。
国の方針が変わったのだ。
まさしく、本腰。
範囲を広げ植え付けていく。
一時は習得を申請しようというところまでいたが、
全て枯れてしまった。
やはりだめだなと、なった矢先に、本生産地の植物も枯れたのだ。
伝染病か一時的なものなのか?
病気が蔓延すれば国が成り立たないから、
数か所隔離して育てている場所がある。
全滅しないようにだ。
土を変え、水を変え、それこそ国を挙げてだ。
それが問題だったようだ。
その植物が流出した。
よそで、隣国で見たという話が入ってきた。
が、それを使った痛み止めが出回った話は聞かない。
やはり育たないんだ。
エルトナガの一部の場所しか。

「笑い話だったよ、最初はな。
どこでも育つのなら苦労はないと。
なのに、隣国ネルウカート国で生産していると。
だが、痛み止めは作っていない。
おかしいだろ?
ルロイドの材料となる植物が枯れたという話も漏れている。
それを調べている。
ザスの葉を売り出そうとしていることも。
それに混ぜていることも。
ネルウカート国もあのエフエだけじゃない。
2つ、3つの勢力が絡んでるんだ。
わたしはエフエに雇われた方じゃない。
反エフエだな。要は邪魔をしろと言われている。
ネルウカート国に入って5年だ。いまだに監視はついていたがな。」
「ワイプ?」
「・・・・コーヒー入れてもらえますか?」

(なんだ?)
(モウの見解を聞きたい)

皆とつなげて会話をする。
タンダートにはコーヒーを飲む準備をしているように見えるだけだ。

(愛しい人?聞いていたか?)
(んー、聞いてたよ?見解?
よくできたお話としかいいようがない。
それが本当だとしても、タンダード?彼の中での真実、
エルトナガでの真実だとしてもだ。
その植物を他国で育てることが問題だとして、
どうする?回収もできないだろ?流出した時点で終わりなんだよ。
だから、徹底した管理がなされていたはずだ。
それを笑い話だというのはおかしいし、
その話、師匠は知らなかったでしょ?ソヤの話ではじめて知った?
そこまで徹底したはずだ。枯れた、もしくは変異したというのは真実だろう。
それは、で?ってことだ。
エルトナガは死活問題。ネルウカート国で生産して利益をあげれるのなら、
それに便乗したい、奪いたい。
聞こえてくる真実が正義とは限らない。
正義もその立場で違う。
ここで問題は、ニバーセルにとって害か、益か。
わたしの身内にとっていいか悪いか。
皆が、ザスの葉がないと生きていけないという状態は人としてアウトだ。
が、お茶やコーヒー、お酒、甘いもの、これを趣向品として楽しむ、
それにザスの葉が入るのはかまわない。その見分けがつかない)
(こっち来れますか?)
(うん。わたしもコーヒー欲しい。着替えてから行く。
また笑われたらいやだもん)
(え?見たい!)

『寝ろ!』


タンダートを眠らせ、愛しい人の近くに。
作業中は危ないので部屋の外に移動するという決まりがある。


「来たの?その膜からこっちはダメよ?」
「毒!」
「念のため。」

作業部屋を覗くと砂漠石の膜で作った中にいた。
そこから、また小さい膜の中に入り、空気を入れ替えているのか?


「・・・・。」

上から下まですっぽり覆った服だ。
目はごうぐるだ。
愛しい人の愛しさが見えない。
声もくぐもっている。
が、その歩き方が可愛らしい!!愛しい人だ!!

そこから、ごそごそと脱ぎ始める。
可愛い!!

「はー、空気は入れ替えてるけどちょっと苦しいかった!!」

やっと外に出てきた。


「抱きしめても?」
「もちろん!」

はー、愛しい人の匂いだ。
あの被いの中では愛しい人のにおい成分は外にでなかったのか、
いつもより濃厚だ。
研究しなくては!


「ん?匂う?」
「いい匂いだ。」
いつもより、深く吸う。


「タンダートさんは眠らせたの?」
「移動まで見せることはないだろう?
ニックとムムロズを移動したときはテント内にいたからな。」
「そうだね。」
「それで?なにかわかったのか?」
「いやもう、砂漠石先生と月無し君を総動員して、まずは分類?
あとは、あらゆることを想定して質問しまくりで。」


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘



「ああ、コーヒーを入れずに。」
「わたしが入れよう。これは本当にうまく入れれるぞ?」


「ザスね、ニック殿?これをカリク殿は買ったと?」
「そうだよ。あれはザス好きだ。
もともと、タフトの街道はこれ関連のもので発展したんだよ。
細工ものがな。
それが入ってこなくなったが、技術が残った。
高級品が売りになったよ。
ザスなんて金持ちしか手が出ない、それこそ高級品だ。
当時な、酷かったんだよ。ひっきりなしに、タトートから馬車が来る。
中央側からな。香りを一番楽しむためには、
20番門内だ。そこから、10番まで。
王都までは香りが持たない。
俊足馬でもだ。止まらずに進めばそれだけ金がかかる。
皆が20番で降ろしたよ。
20番門街ではそれを独占したんだ。
が、欲しくなるだろ?金を出せばいいんだろうが、
自分の懐にだけはいるようにする輩も出た。
それの不正を調べるためにムムロズと俺が派遣されたよ。
が、トラ騒ぎがあって、入ってこなくなると、
残りを巡ってまた争いだ。
タトートからマンザスが無くなり、やっと落ち着いて、
ムムロズは残った。
カリクはマンザスが無くなり、
ムムロズがいたから今の地位があるんだよ。
それまで、ザスの葉の為にあらゆることをした。内容はギリギリだ。
それも、崩れる。
ムムロズに譲る話になっていたようだが、
早いほうがいいな。」
「タンダートの話、ガイライ殿はどう取りました?」
「モウのいうように、彼の中の真実というところか。
簡易審判をタフコーと同じだ。
そう思い込まされてる。」

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