いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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703:お傍付き

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『かいもーん』
『もんどー
汝、どこからきて、何用でニバーセルが王都の門を叩くか!』
『我、コットワッツが領主セサミナ様傍付き、カップ。
門を叩くは臨時会合出席のセサミナ様の傍付きの為。
門戸を開き、我を通せ!』
『コットワッツが領主が一行は先に入都している!
なぜ故遅れて入都する?』
『え?』
『あ!』
『『・・・・・。』』



『承知!通りませー』



「・・・・お傍付きを名乗るのなら気を付けろ!!」
「・・・すまん。」


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘

「はははは!
それは門番も困るだろうな。
この時期に問答するのはそのようになるだろうが、
まさか、傍付きだと名乗るものがそのようなことを考えているとは
思わないからな。
ああ、わざとか?さすがだな。」
「・・・・。」
「?」
「いえ、それが。その、はい、精進します。」
「あははははは!!」
「セサミナ様?どういうことですか?」


やはり、ドーガーは状況を読むのが鈍いですね。
カップが到着してから門でのやり取りの報告を聞いていたのですが、
どうして、カップが気を緩めると腑抜けになるのが
わかっていないようです。


「雨の日前だ。うまく事が進んだということだろ?」
「ああ!
カップの娼婦はコットワッツにいたのか!
近所の方に結構聞かれていたんだよ、カップのこと。
こっちには急遽来てもらっているからな、
故郷にいるのかって。
知らないことは知らないと返事はしていたんだよ。
そうか。
うちのマーサも結構聞いてたんだよ?
がっかりするかもしれないな。」

「「・・・・。」」
「?」
「それで?どこが接触してきた?」
「はい。天文院と、マトグラーサです。」
「マトグラーサな。それは?」
「おそらくは、ナソニール関連だと。」
「そうなるな。」
「天文院はオート様に館変更を持ってきた人物です。
名前はフーサカ。そのときは隠密の圧に動けませんでした。」
「では、お前の身元はばれていると?」
「ナソニールの御者で、資産院に雇われ、
そのままコットワッツにという流れは把握しているとは思います。
マトグラーサはそれにツイミの関係者だということも。」
「関係者か。血縁者ということか?」
「いえ。兄と呼んでいましたが、
それは同郷で仕事を世話してくれたということで。
実際に母の元にまで調べにはいかないでしょう。
祖母の遠い親戚の村ですし、その方々も今は誰も。」
「気を付けるに越したことはないがな。
お前も姉上に施してもらうか?」
「え?あれですか?」
「姉上は嬉々として説明してくださったからな。おそらくあのようなことが
好きなのであろうな。」
「お言葉ですが、あれは、セサミナ様に施したいのかと。
言葉の端々に、セサミンだったらこの色が映えるよねーと。」
「!・・・・。いらぬことを言わぬように。」
「はい。
マトグラーサと天文院もそうですが、とにかく話がしたいと。
わたしは新人なのでまずはセサミナ様に入都の報告をしたいと。
セサミナ様のことで話があると。」
「それには?」
「内密だということで、明日の月入り前に。」
「わかった。ご苦労。」

それから、モリト、ベルケを呼んで、
簡単にカップが引き抜きにあったと。

「他から、いろんな誘いが来るだろう。
それに乗るも乗らぬも自分で判断してほしい。
コットワッツに不利な話でも、お前たちにはいい話かもしれん。
傍付き見習いなんだ。先は自由だ。
ああ、ここで、コットワッツの為とかいうな?
それは嘘になる。まだ、傍付きがどういうものかわかっていないのに、
軽々しく言うことがな。
疑問はいつでも聞いてくれていいからな。」


傍付きになるときに忠誠は誓うのです。
見習いはまだですね。
仕事の内容も雑用しかわかっていません。

カップは忠誠を誓っていますよ。
遅れて来るよう指示したときに。
しかし、その文言の最初は姉上の為とありますが。
あははは!なにもおかしくはないですよ?
わたしが臣の腕を捧げているのですから。



「カップはどうするんだ?」

カップは外から来た新人。
しかも、年齢も下なので、下に見られています。
それに低姿勢です。
スビヤンの指示もありますね。
そのままで廻りを観察しています。

「一応あって話を聞いてくるよ。
ほら!隠密?ニックさんが話してくれてただろ?
あれをやってくる!」
「そんな!お前の腕で大丈夫なのか?」

カップの実力は隠しています。
ええ、一応ワイプ殿の紹介で抜擢されたことになっていますから。
皆の前でやった手合わせではわからないでしょう。
妬みもありますね。が、そこはカップの人柄でしょう、
概ね受け入れられていますよ。
この2人にもなんですが。
お傍付きは命懸けなので、大変だなという認識です。

「んー、大丈夫だろ?まさか殺されはしないって!」
「お前が裏切らないって保証もないじゃないか!」
「ふふふふふ。奥さんを悲しませることはしないよ。」
「「「え?」」」
「あーーーー!!もう言いたい!いいですよね?
わたくし、カップは婚約いたしました!!
ドーガー兄上を見習って、
戻れば一緒に住みます!!
憧れの雨の日前です!!!
うはぁぁぁ!!!!うれしはずかしぃ!!!!!」
「誰と!誰とだ!!」
「おめでとう!カップ!」
「はい、ドーガー兄上!」
「いや、兄弟子だからってそう呼ばなくていいんだぞ?」
「いえ、兄上は兄上なんで。母上にも喜んでもらえました。
お時間取れれば、故郷の母にも報告したい思います。」
「んん???」

そこまで言われてもまだわからなかったようですね。

「・・・・もしかして、マーサ?」

モリトが彼女の名前を出してやっと。

彼女は人気があったようで、
早々にダンスが婚約者となっていましたから。
ダンスが辞めた後は店を出す準備で一度館勤めをやめています。


「なんだよ!!いつの間に!!
雨の日が終わってから狙うつもりだったのに!!」
「お前はゼルラといい感じじゃないのか?」
「ぜルラが来ればいいけど、来なかったらな。」
「そういう考えがダメなんだよ!俺はダンスのこともあるから
控えてたんだぞ?」
「うそつけ!お前は誰彼なしに声を掛けてたじゃないか!」
「うるさいな!!」
「しかし、カップ狙いが多かったからな。
先に決まったんなら、それはそれでいいな!」
「お!そうだな!」
「やったな、カップ!」
「気を抜くなよ?雨の日が終わるまでな!」
「うん!ありがとう!がんばるよ。」


雨の日前は男も女もそんな感じなんですよ。
え?あの娘たちがですが?
ああ、先に決まったのはよかった。



「えーと?カップ?そうなの?」
「はい!ドーガー兄上!!」
「あ、そうなんだ。うん、うん。そうだな。
うん、良し!!鍛錬だ!!」
「あ!俺たちもいいですか?」
「もちろん。」
「ああ、ドーガー?半地下の鍛練場がある。
そこに行こう。わたしもまだ見てないんだ。
姉上の力作らしい。」


いま、やってますよ。
わたしは、そこで、書類整理を。
上から光が入ってくるのがいいですね。
客は来ていません。

それで?まだ動かないんですか?
わかりました。昼は先に食べておきます。






─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘




(ロセツと名乗りましたか?)
(うん、ダクツロセツと。
で、どっちで呼べばいい?ってきいたらロセツでって)
(そうですが。それは、できれば、彼の前だけで呼んでください)
(そのほうがいいのね?ここは名前っていう扱いが難しいね。
 ガイライがそういうのならそうしておくよ)
(それで?いまは?)
(うん、ずーっとお辞儀したまま)
(ダクツが声を掛けるまでそのままで)
(うん。それは分かるよ)

後は第3軍の話。

(そうだね。金にがめついと言われてもいいから、
その都度必要経費は請求するように。
無償なんてものはこの世にはないんだから)
(無償のものはないのですか?)
(ん?ああ、母の愛とか?忠臣とか?そういうの言ってる?)
(ええ)
(それらを比較の中に入れることがそもそも間違ているよ)
(ああ、そうですね)
(ふふふ。労働の対価だ。請求していこう)
(はい)
(第3軍は仕事だ。その仕事がどんな内容でも、
ガイライはわたしの息子で、わたしの臣だ。それはかわらない)
(はい!)


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