いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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709:小芝居劇場

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ん?ガイライの気配だ。

「ニック、ニック隊長!ここに居られましたか!
リーズナ殿とご一緒とは、珍しい。
リーズナ殿、先日はありがとうございました。」

ガイライがやって来た。
わたしへの探りの気配はなかったから、
ニックさんを捕えてやってこれたのかな?

「ん?どうした?」
「中央院から呼び出しです。会合前に軍部再編のことで、
詰めの協議をしたいと。」
「ちょうどいいな。わたしも出ようか。ブラスのことも決めてしまおう。」
「リーズナ殿もご一緒していただけるので?」
「うれしいだろう?ニック?」
「ヤッチは?ヤッチ!!出てこい!!」


だれだ?リーズナ殿のお傍付きか?


「あれは先に戻っている。
わたしの身の安全を心配しているのか?
お前たち2人がいればいいだろ?
これは、護衛業ではないから金は払わないがな。
モウ、マティス。
うまい茶だった。
土産はこれ?2つ?」
「ええ。お傍付きの方と、リーズナ殿のご家族の分です。」
「なるほど。が、あれはわたしの、そう、わたしの家族だ。
先に戻って飯の支度をしているんだろう。
これ、日持ちはする?」
「ものによりますね。中身は同じものなので、
日持ちするもの早めに食べて頂くものと分けましょう。
それでも、んー、5日ほどかな?豆ソースは日持ちしますけどね。
お気に召しましたら、またお買い上げください。」
「そうか!あれも喜ぶだろう。豆ソースの話もしていたからな。
汚水処理場のことも考えていかねばな。
また、意見を聞くかもしれないがかまわないな?」
「な!?お前が人の話を聞くの?
だったら、俺の話を聞けよ!!
モウちゃん!こいつと関わるな!
ヤッチがいないんだったら、ここで始末する!!」
「え?ニックさん、怖いこと言いますね。
この方はツイミ殿と同じ、尊敬すべき方ですよ?」
「マティス!!ガイライ!!糸を使われてるぞ!!」
「ニック、落ち着け!」
「ガイライ!おかしいだろ?リーズナだぞ?
リーズナを尊敬するなんて、
モウちゃんが今日は飯はいらないっていうくらい緊急事態だぞ!!」
「ニックさん!!酷い!」
「良し!!さすが、リーズナ殿だ!
ニックの本性を引き出すことができるとは!」
「マティスは黙れ。ニックは落ち着け。
第3軍のことでリーズナ殿にはかなりご尽力いただいているだ。
一緒に行ってもらえるならそのほうがいい。」
「ガイライ!
お前の悪い癖だ!お前もいつも自分のこと以外は
いい様に考える!!」
「ちょっと!ニックさん!!
いい様に物事を考えるのはうちの教育方針です!!
息子を悪く言わないで!!」
「?ガイライはモウの御子息か?」
「ええ。ああ、ややこしくなるので先に言いますが、
産みの親ではありません。が、それ以外にでも、
親子のつながりはあるものです。
血のつながりがあっても、
親子とは言いたくないつながりもありますでしょ?」
「うむ、それもそうだな。」
「この手の話をすれば、また長くなりますが、
わたしはガイライを息子だと思い、
ガイライはわたしを母だと慕ってくれる。
それで十分。」
「・・・・廻りがそう思わなかったら?」
「人様にどう思われようが大事なのは己がどう思っているか、
相手がどう思っているかですよ?」
「相手が実は、迷惑だと思っていてもか?」
「?そういわれた?
だとしてもそれは嘘かもしれない。
自分以外の心は自分以外にはわからない。
だから話すのですよ?
話して、話して、お互いが出せる精一杯の心を
相手に見せるんですよ?


説明はむずかしいですが、こんな話があります。

ある国に、
なんでも揉め事を解決してくれると評判の老人がやってきます。

その話を聞き付けた2人の女がやってきました。
子供も1人。
青白い顔をして手を引かれています。
国の統治者の妻達とその子供です。
どちらの女もこの子はわたしの子供だというんですよ。
どちらの子かはっきり決めてほしいと。

子供と言っても次の雨の日が来れば
大人の体になるだろう、それぐらいの年齢だ。
見るからに利発そうな子。
ただ、わけもわからず、ここに来たのであろう。
顔色が悪い。
その子がしっかと片方の女の手を握っている。
では、その女が母親か?
そうではない。
産みの親ではないんだ。
もう一人の女が、産みの親だ。
それは皆が知っていること。
だが、育てたのは懐いている女。
どうしてそうなったかは省きますが、
自分こそはこの子の母なのだと、双方譲らない。

では、その解決方法は?

その老人は言いました。

2つに切り裂いて、
双方に与えよと。

なんて酷いことをと誰もが思ったが、
この老人はわたしの言うと通りにする約束するのなら、
解決方法を与えようと先に言っている。

聞いている廻りの者たちはみなが息をのんだ。

そうするとどうなったか?

育ての親は髪を振り乱さんばかりに叫んだ。

殺さないでください、殺さないでください!!
子は諦めます。
生きていればそれでいい!!

産みの親は言った。

どうぞ、切り裂いてください。
例え死んでも、半身になろうとも我が子が手元に来るならば!


これ、あなたならどう考えますか?」


大岡裁きとソロモン裁きを混ぜたような話だ。
4人が答える前に話を進める。


「やはり子供のことを思うものこそが、産みの親でなくても
本当の親だ!
だれが、子を引き裂いてまで手元に置きたがるものか!
事実、子が懐いているのがその証拠だ!!

廻りで見ていたもの達から声が上がる。

その声を聞いて安堵する女。

親とはそういうものか?
生きていればいいと考えるのが愛情ある親か?」

4人は頷く。
ふふふ。わたしの話にそんなきれいごとはないよ?




「今度は産みの親が髪を振り乱さんばかりに叫んだ。

黙れ!黙れ!!
なにを言うか!
わが身から産まれた子!
それを取り上げられ、自分の言いなりになるように
育てられ、暴君になるであろう我が子を
黙ってみていられるか!
子供が懐いている?
当たり前だ!
叱ることもせず、子供の言いなりに
菓子を与え、わがままを許せば、子は親でなくても
懐くであろう!
それを止められないからこそ、ここに来ているんだ!
何も知らないくせに!!
我が子がこのまま大人になるのを
止めるにはこれしかないんだ!
育てることと甘やかすことは違うんだ!!
このまま我が子が育てば、間違いなく暴君になろう。
そうなればお前たちはどうするんだ!?
この世のものとは思えぬような方法で命を奪うくせに!!
そうなるの前に母なるわたしが止めるんだ!
それにはこれしかないんだ!
さぁ!半身にしてください!!
その身を抱き、わたしは海へと船を出しましょう!!」


4人は黙ってしまう。
いつの間にか、ガイライも座って聞いている。
またしても小芝居劇場になってしまった。




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