いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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711:樹脂蜜

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「いや、あの、
あまりお時間もないようなので。
そうでしょ?ガイライ?」
「あ、ええ。急ぎましょう。」
「え?そうなの?じゃ、後で聞こうか。
が、リーズナは残念だな!
どうなるのか考えて寝不足になればいい!!」
「ん?考えるまでもない。
この話の大筋、モウが言いたいことは心の中は
だれもわからないし思うのは自由だということだろ?
迷惑かどうかも話さなければわからない。
話したあとのことは、人それぞれということか。
要は己の心の中は己で決めればいいということだな?」
「はい!その通りです!」

すごい!わたしの言いたいことがわかってくれてるんだ!!
お母さんだ!!

「それに、その最後の出てきた男は、
そうだな、その父親の地位を狙う、兄弟かなにかだ。
それで、それぞれにいらぬことを吹き込んでいた?
権力争いによくある話だ。
しかもその老人、そのごたごたを聞いてやって来た、
父親以上の権力者か?
もしくは、そうだな、モウのことだから、
まったくの関係ない旅の老人で、あれよあれよというまに、
何でも解決してくれると勘違いされた老人で、
いままさに、何とかしてくれ、と心の中で泣きさけんでいるとか?」

オチまで見抜かれてる!!!
しかし、これはものすごく恥ずかしい!!!!

破棄した読書感想文を
みんなの前で読まされるレベル?
いや、いつの間にか、大事になって朝礼で読み上げられるとか?
この年でこんな辱めを受けるとは!!


顔面から火が出るとはこのことか!!


「え?愛しい人?顔が真っ赤だ。しかも、かわいいぞ!!
え?殺気?」
「モウちゃん!リーズナだな?やってしまえ!!」
「ニック黙れ!!母さんも落ち着いて!!」

お前らが黙れ!!
思わずしゃがみこんでしまった。

「ははははは!モウ!
若いな!
わたしは若いころ芝居に傾倒していたことがあってな、
演じるほうではなく、話を作る方だ。
出てきた登場人物が当然、なにかしらの役がある。
そして話の終わりも当然ある。芝居なんだからな。
即興だろう?よくは出来ていたぞ?
が、最初にもう少し老人のことを入れれば良かったと思うぞ?」

え?リーズナ殿は月影先生?

「お恥ずかしい限りです。精進いたします。」
「ははははは!そうかしこまるな!
なかなかに楽しかった。また聞かせてほしい。」
「はい。機会ありますれば。」
「お前、このことは誰にも言うなよ?
でないと2度と見れないぞ?」
「ん?そうなのか?
そうだな、では、また機会があるということで黙っていよう。
続きがあってもいいが、
芝居には必ず終わりがある。
人生ではない、終わりがな。それをわすれるな?」
「はい。重きお言葉、ありがとうございます。
あの、先生とお呼びしてしてもいいですか?」
「もちろんだ。」
「モウちゃん!!こいつが調子に乗るだけだ!!やめてくれ!!」
「でも、オチまで見抜かれて、それよりもわたしのいいたいことを
わかってくれたんですよ?
マティスはわかった?」
「あなたの気持ちはいつでもわかるのだが、
芝居風の話はわからない。
リーズナ殿の話の通りなのか?
だとしても、続きが聞きたい。
あなたの声で。前の話のように。」
「?前の?あれの続き?聞いたのか?」
「もちろんだ。よかった。泣いたぞ。」
「聞きたい!あれだろ?やっぱり親友を倒すんだろ?」
「いや、それは5番目の話だ。
最後、10番目の大会に参加しなかった兵士、
貴族の私兵がなにもかも倒していくのがよかった。」
「10!!全部聞きたい!!」

それは眠たくて、それこそ適当だったんだよ。

「別の物語があるのだな?
それも聞きたいな。
ああ、それとな?
モウの廻りは男ばかりか?」
「え?そういわれればそうですが、義理にはなりますが、
妹たちはいてますが?あとお世話になっているおかみさんとか?」
「んー?妹?セサミナ殿の奥方だな?
んー?モウは子を産んだことはないのだな?
一度な、成人前に女子たちが産婆に話を聞くという
その話を聞いて来たほうがいいな。
モウは異国出身だからかな?
異国か?異国な。」
「・・・どういうことですか?」

マティスとガイライが警戒して気を膨らます。

「ガイライ!マティス!!止めろ!!」

どういうことだろう?
ニックさんがリーズナ先生を守っている。

「これはニックか?相変わらず、野暮ったい。」
「うるさい。」
「あの?」

まとわりつく気に気付いたのか、
リーズナ先生が笑っている。

「ああ、女子の乳はな、己の子にしか出せない。」
「え?そ、そうなんですか?」
「そうだ。死産、もしくは、赤子が含まなければ乳は出ない。
産後に臥せることがあるのはよくあることだ。
その場合も乳は出ない。」
「では、今の話のように母親が臥せったり、
その、母親が死んでしまったら?赤ちゃんは?
だれかの乳を分けてもらったり、メーウやポットの乳を?」
「ん?動物の乳をか?
それもないし、他人の乳もない。子が受け付けない。
だから赤子には樹脂蜜だな。それで子は育つ。」

樹脂蜜!!



「先生。リーズナ先生。
ニバーセルでどうか、
ブラス以上に樹脂蜜が取れる木の確保と保護を。」
「ん?そうか?あれは寒い地方の生産物だ。
数は流通している。それでもか?」
「ええ。お願いします。そしてそれの成分の研究も。」
「どうして?」
「どうして?それこそ、どうしてと言いたい。
もし、もしも、戦争等でその蜜が手に入らなくなったら?
その蜜が一般市民には手が届かなくなるほど高騰したら?
その木がなにかの病気で枯れてしまったら?
ここでは育たないかもしれない。
だけど、成分の研究が進んでいれば、それに代わる他のものが
できるかもしれない。
子は資産です。国の。
子は樹脂蜜があれば育つと明確に断言できるのに、
その入手先が他国からの購入に頼るしかないなんて!
わたしが樹脂蜜を生産できる国の統治者なら、
それを他国との取引材料にします。」
「・・・・。」
「それともそのような必要不可欠なものを
独占するという考え方自体、この大陸にはありませんか?」
「いや、そんなことはない。」
「わたしの妹たちが産婆殿と話し合う機会を設けています。
それにはわたしも出るつもりです。
そのとき詳しく話は聞きます。
わたしは、48なのですが、結婚もはじめてで、
子を産んだことはありません。
この先もありません。
それは、わたしが異国の者であることも大きいのですが・・・。」

どこまで話せばいい?

「モウちゃん、かまわない。」

ニックさんが促す。
この人は話してもいい人なんだ。

「・・・我が夫、マティスは緑の目です。対象はわたしです。」
「なるほど!!ん?なにか施しているのだな?」
「はい。」
「マティス!良き伴侶を得たな。これ以上の伴侶はいない。
モウもな。マティス以上の伴侶はいない。」
「「はい。」」
「では、ガイライは?」
「ガイライは臣の腕を預からせて頂いております。
弟、セサミナからもです。」
「ははははは!!ガイライ!
よき主を得たな!」
「はっ!」
「んー?ではニックは?」
「ニックさんは、槍の師匠です。マティス共々。」
「俺はガイライに捧げているよ。」
「なるほど。お前たちの師はワイプだと聞いていたんだがな。」
「ワイプ師匠は武と生き方と棒術です。」
「リーズナ殿、これは間違ってはいけない、私は便宜上だ。」
「あー、そうだな。便宜上な。
夫婦で弟子としたほうが説明は速いな。
それが利点だな。」
「そうです!それのみの利点です!」
「マティス!喜ぶな!
リーズナ!もういいだろ?ヤッチの報告と同じはずだ。
異国の話は言うな。
モウちゃん、俺たちにはその手の話はわからなかった。
産婆の話を聞いてからのほうがいいな。」
「はい。わかりました。
・・・・マティス。」

やっぱり違うんだ。
それが悲しかった。
マティスにしがみつく。


「愛しい人?悲しまないで?
こうやって教えてもらったことに感謝しよう。
なにか大事になる前に知ることができたんだ。
どうすればいいかもわかっている。
産婆殿に教えてもらえばいい。
ね?」

マティスは知らなかったことを悲しんでいると思っている。
そうじゃない。
違うんだ。
人としての体の構造が違うんだ。
それが悲しい。

でも、そうだね、わたしの持っている知識で
へたなことをする前でよかったんだ。

「うん。先生ありがとうございます。」
「リーズナ先生に感謝を。」
「マティス!お前が先生と呼ぶことはない!!」
「いや、わたしからも先生と呼んでもよろしいか?」
「ガイライも!やめてくれ!!!」

ニックさんがワニワニ怒っているのがおかしかった。


「あの?その話は、その、わたしの廻りの男衆は、
そうですね、知らない話でしょう。
知識が偏っているといっていい。
先生は?一般的には知っている話なんでしょうか?」
「わたしも樹脂蜜で子を育てからな。
歯が生えるぐらいまで蜜だけでいい。
そこからは普通の食事に蜜をかければいい。」
「では、母乳で育った子にも?」
「いや、それはないと思うぞ?蜜の味しかしらないから、
その味がしないと食べないんだ。
それで、徐々に蜜掛けを減らすんだな。
蜜で育った子供はからだが丈夫だと言われる。
が、甘いもの好きだな。」

そんなこどもは結構いるんじゃないの?
だったら、蜜掛けの何かを売り出せば、
必ず売れるじゃない!
そんな商品は見たことない!
料理好きの人が料理にちょっと使うくらいだ。
そりゃプリンが流行るはずだ。
ある程度は樹脂蜜で育った人がいるんだから。
蜜は砂糖の代わり、結構安価なはず。
それがなくなる恐怖はないの?
いや、まじで寒い地方に行って樹脂蜜農園つくるよ?
あれ?じゃ、タンダードもそうなのかな?
ツイミさんは?大人になる前に掘り出されてからか。
樹脂蜜は乳児の成長に必要なのか。
で、大人の体になるためには樹脂蜜では追いつかない?
10年分の成長を10日でするんだ。
基礎が出来ていても、成長分のエネルギーがないとだけってことか。
高カロリーなものをいるということ?
乳児に必要なものが、
樹脂蜜にあると言われればそうなのだろう。
それと同じものが母乳に有るというのなら、
妊娠期になにか特別なものを食べている?
そんな話は聞かなかった。
お酒を呑んでもいいくらいなんだもの。
違うんだね、ほんと。


「愛しい人?」
「あ!うん。樹脂蜜すごいねって。」
「そうだな。まだどんな木から取れるか知らないな。
イリアスに行った時に見せてもらおう。」
「うん。先生?
ブラスと樹脂蜜の研究、お願いします。」
「そうだな。それらに興味のある人物を探しておこう。
なにも我々がすることはないんだから。」
「ええ。」
「先に言っておくが、それは俺たちじゃんないからな!!」
「それはわかる。ま、心当たりがあるからな。あたってみよう。」
「リーズナ先生、そろそろ行きましょう。
ニック隊長?かまわないですね?」
「・・・・。わかった。」
「ふふふ。ニックさん。きっとブラスノコに小躍りしますよ?」
「期待しておくよ。あとで寄るから。」
「はい。」



中央院本館に向かって歩いていった、3人。
それを見送り、まだ、わたしたちを監視している目があるので、
背負子を背負って、コットワッツ滞在館に向かう。
面談の館ではあの女2人はまだ、動けないようだ。
いろいろ運び込んでいる。
必要なものが揃う頃には動けるだろうね。


なんか、日に日に意地悪になってる気がする。





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