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712:力関係
しおりを挟む「お疲れ様です、姉さん、兄さん。」
「んー。ホント疲れたよ。ご飯は?食べた?」
「ええ。箱弁当を。」
「そう。晩御飯はがっつりお肉を食べよう。」
「姉さんたちは?」
「うん、食べたよ?軽くね。」
「どうでしたか?」
「詳しくはニックが戻ってからだな。
王の前で領地管理者、護衛、行商だと認められた。
我が主と我が王のために精進すると誓いもした。」
「・・・・そうですか。
それは、一般的なものなのですが、
兄さんも?」
「セサミン?問題?」
「いえ。
姉さんは問題は無いとは思いますが、
ここでは王は絶対です。それに対する誓いも。
兄さんはニバーセル王に忠誠を誓ったことになる。」
「ん?忠誠じゃないよ?
領地管理とセサミンの護衛と行商を頑張るって誓っただけだよ?
王さん、ああ、我らが王もがんばれーって。
これ、普通のことだよ?」
「え?そうなるんですか?」
「逆に何を心配してるの?」
「えっと、王の命令は絶対なんですよ。だから・・・。」
「その感覚がいまいちわからんのよね。」
「姉さんはそうなんですが、兄さんは?わかるでしょ?」
「心配するな。何も問題ない。
あれはいわばモウモウ商会の上客だ。
お前が心配することはない。大丈夫だ。」
「でた!マティスの大丈夫!!逆に怖い!!」
「愛しい人!!」
「うふふふふ。うん、これはほんとに大丈夫の大丈夫だから。
心配しないで?」
「ええ。姉さんがそう言ってくれるのであれば。」
「それで?そっちはどうなんだ?」
鍛錬後の話を聞いてみる。
いまは、セサミンだけだ。
見習いの2人は完全にお昼寝。
ドーガーとカップも限界までの鍛錬でお昼寝。
要は力尽きて寝ている。
「この敷地だからいいようなものの、
セサミン1人だったの?ダメじゃん。」
「いえ。先ほどまで、ガイライ殿も、ワイプ殿もいらっしゃてましたから。」
「飯を食いにか?」
「ええ。しかし、少し、ワイプ殿の様子がおかしかったですよ?」
「いつもだろう?」
「いえ、そうではなく、いつもは3人前ほど召し上がるのが、
我々と同じだけで。」
「病気だ!!」
「マティス。それじゃ、さっきのニックさんと一緒だよ?
食べる量で健康状態はある程度分かるけどね。
あれだよ、さっきの話のこと考えてるんでしょ?
ちょっとでもなにか食べてくれてるならよかったよ。
この話はまた師匠の顔を見てからだ。」
「?」
「ああ、大丈夫だから。
鍛練場、よかったでしょ?」
「ええ!」
わたしも話をそらしてることあるな。
あまり疑問に思わないで
大丈夫
気にしないで
言霊になっているのだろうな
強くは作用していないと思いたいが、
そうお願いしたことは、深く疑問にも思わない。
新年にあるという王の言葉もこのあたりか。
疑問に思うな
不安になるな
受け入れろ
んー。
いいんだか悪いんだか。
いや、ダメだろうな。探求心が消えていく。
1年で物事を完結しないと進化はない。
年越し案件は消える。
3歩進んで、2歩下がるんだったらいいけど、へたをすれば0だ。
そりゃ進化のスピードは遅いわな。
師匠の場合は?
年明けに決めてしまいましょうとか言われているのかな?
銃の開発は?
新年から?
そうなるとかなりの短期間だ。
年越しできる方法があるはず。
ラーフィングにきちんと聞いといたほうがいいな。
いや、あれは現役の国の統治者だ。
例えわたしの名付け子だとしても
言えないことの方が多いだろう。
テルマもエデトもそうだ。
別にこの大陸の仕組みを知りたいわけではない。
いまの記憶のまま年を越したいだけだ。
ルンバのほうがいいか?
一国の王になる教育は受けていて今は関係ない立場だから。
剣の鍛錬もしたいしね。
混合いはじめの月の日の臨時会合。
全ての王族、貴族が集まることになるそうだ。
それまで、夜会も開かれる予定だったがなくなった。
軍部のこと、ナソニールのこと、
飛び地で所有しているスクレール家の土地のこと、
タンダードが当主になってニバーセルに戻っていること、
数十年ぶりにザスが入ったこと、
もろもろのことが皆に認識されている。
力関係が変わる。
夜会を開いて情報交換する段階ではない。
誰が誰を支持し、どうすれば己に権力が付くかの駆け引き。
夜会を開いての情報収集は余計に混乱を招く。
己の手駒を駆使して秘密裏に情報収集しないと。
臨時会合が始まる前に、
赤い塊のモウ、剣のマティスを己の手駒にしたかったが、
ことごとく失敗。
そもそも、なんでなんだ?
石使いは他にもいるだろうし、剣の腕だって、
マティスより上位はごろごろいる。
赤い塊が見せた石使いのレベルだって、
腕はいいだろうが、大量の砂漠石は必要というふれ込み。
だったら、糸使いの方がいいのだろう?
そう、あの布や、えーとなんて名前だっけ、タフトのいとこ殿が話していた。
言霊のことを気付いたのなら、もっと大騒動になっているはず。
故郷では知識と呼べない知識が欲しいとか?
確定的なことがわかっているなら自分で行動するだろう。
それが分からない、想像力の元になる元ネタがないんだ。
ただ、なんとなく、なんかかできそうだと?
ムムロズさんのように?
あのひとは商売には素人すぎる。
ある意味商売に夢を見てると言っていいか。
カリク殿のもとで、まだまだ修業が必要だ。
ではダカルナの王は?
ある程度の権力を持っているのだから、
漠然としたものを欲するのは余りにもお粗末すぎる。
わたしを求めた時点で統治者失格だ。
セサミナもテルマ、エデトもそれはない。
利用しようとはしたけれど、本腰ではない。
テルマが本気を出せば、マティスとて赤子同然だ。
彼らは誇りをもって統治者なんだ。
もちろん、ラーフィングもだ。
中途半端なものたちが、とりあえず求めてる?
ダメもとで?
迷惑この上ないな。
やはり、さくっと無視だな。
お昼寝組が目覚めて、
また鍛錬。
カップ君とマティスが手合わせをしている間、
わたしとドーガー、
見習いのモリト、ベルケとの手合わせ。
ドーガーとは荷重を10以上ででやっているから、
傍から見れば、ドーガー有利だ。
モリトとベルケとは、それなりに。
自分の型の復習にはちょうどいい。
己の実力を隠しているかどうかまではわからない。
マティスもこれで隠しているなら師匠以上だと言っていた。
それはないだろうが、
もしかして、重たい服を来てるとか?
ちょっと投げ飛ばしてみようか?
柔術の鍛錬も必要だな。
・・・2人の息が続かなかった。
感じたままの実力か。
「基礎体力があまりないな?
瞬発力はあるのかな?
道中襲ってきたという盗賊は瞬殺?」
声を出さずに頷く2人。
暗部向きか?
「わたしはまだ人に教えるほどの技量はないんだが、
基礎鍛錬を続けることがまず第一なのかな?
それはニック殿に指示はもらってるんだな?」
また頷くが、お前に言われたくないという感じが
ひしひしと伝わる。
育てないといけないんだよね?
「セサミナ様?ルグはなんと?」
「なにか切っ掛けがあればと。」
「ふーん。ドーガーは?」
「わたしもそうなんですが、モウ様、マティス様に会うまでは、
死ぬんだということを経験しておりません。
お傍付きの心得は所詮話の中でのこと、
命を懸けてお守りするとは誓いましたが、
実際にそんな場面は有りませんでした。
守らなければセサミナ様は死ぬ、
もちろん、わたしも死ぬ。
リッツオとポリートのように理解できてなかったのです。
うまく言えないのですが。
それがないとなんとも。」
「いまは?」
「死ぬのならお守りしたうえでと。」
「んー。
逆に経験して尻込みする場合もあるな?
それはどう思う?」
「そうなるのでしたら、それまでかと。」
「セサミナ様は?あー。立場が違うか。」
「はははは!さすがですね。」
「?」
セサミンは捨て駒にできるんだ。
マティスもそう言ってるしね。
うまく使えというのはそういうことだ。
が、ルグとドーガー、カップだけでは不安だな。
師匠に預ける?
ニックさん?
いや、ガイライやニックさん、
師匠が動くのはわたしがいるからだ。
うぬぼれではなく。
コットワッツの為には動かない。
一緒に食事をするのも、臨時会合前が最後だろう。
コットワッツに肩入れする理由がない。
では、セサミナを守るためにどうするか?
育てるか?
誰が?
ルグ?ドーガー?
セサミナの守りが薄くなる。
マティス?
しない、しない。
カップの力量を確かめることはするが、育てはしない。
ルグとドーガーはセサミナの護衛にだから、
指導をしているだけだ。弟を守るために。
護衛を育てることはしない。
それに、いきなりマティスじゃそれこそ死んじゃうな。
わたしか?
「セサミナ様?この2人、預かってもいいですか?」
「いえ。許可できません。」
「え?」
セサミン、セサミナが明確に拒否した。
はじめてじゃないかな?
「理由をお教えください。」
「あなたはわたしの護衛です。
あなたの仕事は配下を育てることではない。
あなたは武を教えるほど経験があるわけではない。
その2人のことはわたしが考えます。」
「わかりました。出過ぎた真似をいたしました。
お許しください。」
「ルグと考えていますから。」
「はい。」
ふーーーー
(愛しい人?)
(うん、わかってる)
(姉さん!姉さん!!)
(うん、ありがとう)
セサミンの立場は臣にて主だ。
臣としては容認できない。
主としても許可できない。
セサミンはわたしが守ればいい。
姉として。
マティスがマティスであるために。
息が整った2人とドーガーに
セサミンが領主として話し出す。
「ニック殿は第3軍となるから今までのように、
鍛練を依頼できない。
兄上たちはわたしの護衛でコットワッツの領地管理者だ。
ドーガー、お前がしないといけない。
己の鍛練と同時にだ。
任せられるな?」
「もちろんです。」
「モリト、ベルケ?お前たちはこの会合の間、
よく考えろ。
これから様々なことが起こる。
良くも悪くも。
何度も言うが、コットワッツに不利でも、
お前たちにはいいこともある。
よく考えるんだ。」
「「・・・・はい。」」
この時、カップは完全に熟睡していた。
マティスが張り切っていたから。
月が沈む前、月入りの頃に
天文院とマトグラーサからの呼び出しをもらっている。
少し寝ていたほうがいいだろう。
別々に話は来たらしいが、
同じ時間帯を答えているのだ。
さすが、カップ君だ。
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