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774:卑怯者
しおりを挟む「母さん!!」
「カップ?なにがあったの?」
急に現れた俺を見て母さんは驚いたようだ。
移動のことは話している。
「心配しないで!
俺結婚するんだ!約束した!
婚約したんだ。雨の日前に一緒に住むんだよ?」
「素敵!その報告?
そのために移動できたの?ダメよ!
モウ様のために使わないと!でも!うれしいわ!」
「いいんだよ!自分のためにも使わないとダメだって、
モウ様も言ってたから!
ああ!違うよ!まずいんだ!」
「え?」
ナソニールのこと、領主が逃げたこと、
ツイ兄のこと、マトグラーサのこと。
ざっと説明していく。
「そう。逃げたのね。」
「で、今のツイ兄の姿絵。もらったんだ。
ね、ばーちゃんそっくり!」
「母様!!え?これ、ツイミ?」
「うん。びっくりだよ。
俺が目を青くしたら母さんそっくりだっていわれた。
母さんも変装して?
髪は切って?かつらは長期間だとばれるって。
目に入れるのも難しいって。
いい?」
「あなたたちに迷惑をかけているのね? 」
「違うよ?そんなことツイ兄がするわけない。
でも、念のためだ。ここにいるほうが問題だ。
村長にも黙っていこう。話せば迷惑がかかる。
置手紙を書けばいい。
別のところに暮らすってね。
母さんもばーちゃんの娘ってことは知らない。
世話してるってだけだ。
こうなるのわかってたんだね、ばーちゃんは。
さすがだよ。準備して。」
「わかったわ。」
「荷物まとめれば運べるから。
あ!リンゴのある?」
「ええ。たくさん作ってるわよ。」
「やった。急ごう!!」
外れの家だ。
いつの間にかいなくなったとしても、皆が自分の生活に手がいっぱいだ。
探すこともしないだろう。
リンゴのことで今までの恩以上のことは返した。
リンゴの実の酒漬けは内緒だな。
だって、母さんが作ったものだもの。
まだ、誰も知らない。
「すいません。部屋空いてますか?」
門から入らずそのまま、櫓宿に。
ここに何度か来たけれど、
姿は見せていない。
「いらっしゃい。風呂無し3リング、風呂有り5リング。
今ならどっちも空いてるよ?」
「長期だったら風呂有の方がいいかな?母さん?」
「贅沢よ?」
「大丈夫!稼いでるんだから!」
「いいえ。桶で十分。」
「そう?長期なんだ。
とりあえず雨の日が開けるまで。いくらになる?」
「雨の日も含むのか?今年は長いぞ?」
「うん。先に払うよ。いくら?」
「へー。お前たち親子?2人?」
「いや、俺は仕事に戻る。母さん一人だ。」
「153リングになるぞ?」
「高い!」
「そうだろうな。街で家を借りたほうが安い。」
「いや、ここの方がいいんだ。」
「・・・なんで?」
良し、警戒したな。
これで、母さんを探りに来たのなら、先にクスナさんが気付いてくれる。
「いろいろだよ。
じゃ、153リングね。食事は?」
「1食2銀貨。街だと1銀貨で食えるぞ?」
「だから、訳有りなんだよ。
それ、付けて。いくら?」
「・・・・163だな。先に払えるんなら150でいいよ。」
「悪いね。じゃ、これね。」
「・・・。」
「母さん。また来るから。
外にでるくらいはいいけど、街には念のためいかないで?
俺か、あの2人か、一緒の時にね。」
「ええ。」
「荷物あるんだ。運ぶから、何階?」
「8階だ。」
「え?なんで?」
「長期なんだろ?で、訳有りだったら、下の階で
いつも誰かが使っていたら、噂になるだろ?
8階まで埋まることはほとんどないんだよ。」
「8階に何部屋?」
「2つだ。一つは俺の客用だから。」
ワイプ様のことだ。
「ありがとう。じゃ、運ぶね。
・・・・8階か。うん、頑張るよ。」
荷は、荷車で運んでいる。
小袋に入れれば良かったな。
いや、あやしまれるか。
8階の部屋はこじんまりした、きれいなものだった。
「素敵ね。見て!海が見える!!
あら?火が使えるみたい。
十分ね。食事も作れるけど?」
「そうだね。落ち着いたら、そうしよう。
とにかく、今日の臨時集会でどうなるかだ。」
「・・・領主が領民を見捨てるなんて!
いちばんしてはいけない事なのよ!
許されないことなの!卑怯者が!」
母さんはあれのことを悪く言ったことはなかったのに。
ただ、妻にふさわしくなかった、双子を産んでしまった、
それだけだった。
あれを、領主として、父として、夫として認めていたんだ。
「母さん?卑怯者だから、ツイ兄をいいように
使ってたんだよ?」
「そう、そうね。わたしは、ツイミとって、酷い母だった。」
「ははは!そんなこといったら、ツイ兄に怒られるよ?
こうして、今生きてるんだ。それも楽しく。
ね?モウ様も言うよ?日々感謝だって。全てに感謝だって。」
「ええ。感謝しているわ。」
「うん。俺の奥さんも連れてくるから。
ドーガー兄上の妹さんなんだ。」
「あら!ふふふ。あなたもいい顔で笑うようになったわね。
ええ、感謝ね。」
「・・・・母さん。うん。モウ様にも言われたよ。」
「そう。いらっしゃい?抱きしめさせて。」
「うん。」
「お嫁さんを大切にね。悲しませたらダメよ?」
「うん。」
「じゃ、俺はこれで。
よろしくお願いします。」
「・・・・・。なにかあったらどうするんだ?
しょっちゅう来るのか?お前に連絡はできるのか?」
「それはトリヘビで。」
「そうか。親不孝はするなよ?」
「ええ。」
街を見てから帰るか。
お土産にチーズだな。
門からきちんと入らないと。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「開けますよ?」
ワイプが入ってきた。
「開いた!!」
閉じた扉に体当たりしたが、びくともしない!
「なにか食べました?
これ、差し入れです。辛いものですが、米と一緒にどうぞ?
コットワッツのカレーです。水がいります。
卵とチーズはお好みで。
これはアイスですね。解けますからお早く。
ああ、冷凍庫に入れときますか?氷も入ってますよ?
水に入れてください。
そこに。買ったものは冷蔵庫だから。」
「・・・・。」
「臨時会合が終わったら連れていきますから。」
匂いのきついものを持ってきた。
が、腹がなる。
そのまま扉から出ていったが、やはり扉は動かない。
「フーサカ。諦めろ。」
「そうだな。
・・・これ?食べる?」
「カップと食べたものの中になかったな。
辛いって?」
「・・・。辛い!
うん、食べよう。そこ、片付けろ。」
「お前の紙だぞ!向こうに!!」
「ああ、バラバラにまとめるなよ!」
「じゃ、自分でしろよ!!」
「わかってるよ!!」
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