いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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775:名の守り

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「カップの戻りは明日でいい。
隠匿したまま、ワイプ殿についてくれ。」
「わかりました。2人は?」
「まだ、資産院だ。」
「フーサカは何処だと、天文院ノトンが。隠密、オーロラのことも。」
「コットワッツの方は問題なしです。
ローチがまた小憎らしいんですが?」


会合前のすり合わせ。
セサミン、マティス、ルグとドーガーだ。
ドーガーは一度コットワッツに一度戻っている。

わたしとオーロラ、湿地組はファッションショー。
ルグとオーロラが傍にないとダメだという縛りは、
ルグが許可した範囲とした。
コントのようで面白かったが仕方がない。


「これ、歩きにくい。」
「でもさ、ここに武器とか隠せる。
骨の細さも隠せるよ?」
「ああ!」
「3人はお揃いね。どうかな?トックスさん?」

こういうのには、もちろんトックスさんの助言は必要だ。


「そうだな。このふくらみがあるのはいいな。
ああ、タトート?なるほど。
ぱっと見スカートだけどな。」
「いいでしょ?」
「面白いな。
で?その袋は持っておきたいと?」
「そうだ。」
「中身が大事なのか?袋が大事なのか?」
「中身だろ?」
「ランドセルみたいなのかなって?
でもさ、荷物置いてってーて言われるとダメなんよ。
ポッケがいっぱいあるチョッキ、じゃなくてベストみたいなの?」
「ああ、なるほど。」
「で、血のりを仕込んでほしい。」
「は?」
「絶対襲われる!
会合が終わたら!前はない。
誰が?
新参お傍付き見習いたち限定だ。
セサミナ?これを狙うと戦争を待たずに大戦争になる。
セサミナ主導で。
護衛赤い塊?できるんならとっくにしてる。
ルグ?ドーガー?
彼ら2人もセサミナが許さない。
己が襲われる以上の大問題になる。それを口実にするからだ。
じゃ、だれ?となると、
この3人だ。
誰もが言うだろうね、見習いだから仕方がないですね。
ここに連れてきたのが早かったのでは?ってね。」
「何言ってんだ?」
「「モウ様?」」
「ああ、なるほど。」
「え?おっさん、モウのいってることわかるの?」
「これ!トックスさんっていいなさい!」
「へーい。」
「ははは!おっさんで間違いがない。
だけど、お前も小僧って呼ばれるより名前の方がいいだろ?
トックスと呼んでくれ。さんもいらんから。」
「・・・小僧。」
「そうだろ?」
「ほら!わかる人にはわかるんだって!」
「わかるというか、お前、オーロラ?リリク出身だろ?
その耳の傷、親が付けるんだよ。
これ以上の怪我をしないようにって。
願掛けだな。
で、それがまだ薄っすら残ってるのは10未満だ。
10超える頃には自然と消えてるからな。」

耳!耳なし芳一のように見てなかったか!
髪がかかってたしね。
今はさっぱり切っている。
で、金髪のカツラも耳をだして後ろでくくっているのだ。

「!」
「それ、だれでも知ってること?」
「リリクの昔の風習だ。俺も話で聞いただけで、
リリクで見たこともないけどな。
でも、話で聞いた通りだな。
いい親御さんだな。伝統を守ってるんだな。
オオイ?オウイか?そう呼ばれてただろ?」
「それも知ってるの?」
「あははははは!
昔のリリクの言葉で、わたしの可愛い坊やって意味らしいぞ。」
「・・・・。」
「よかった。よかった。
その守りは残ってるからね。
あなたを守る守りは全て残ってるから。」
「ん?事情があるのか?
その年でここにいるんなら、親御さんとは離れているんだな?
さすがに今は違う名前だろ?傷が消えるころ、
また新たな名前を付けるんだよ。それが名の守りだ。
たいてい、今呼ばれている名前だけどな。
それがこれからを決めるんだと。
名を大事にするんだな。
で、それまでに嫌なことがあったら、変えればいいってことらしい。」
「はー、さすがトックスさんだよ。」
「いや、俺も聞きかじりだよ?
リリクもそんな奥まで行ってない。タトートに近い村で聞いた話だ。
都まで行ってない。」
「なんで?」
「金欠。」
「おお。それは残念。
その名前を新たに付けるのってなんか儀式的なものあるの?」
「いや?今日から何とかだって言えばいいらしい。
で、廻りがその名を呼べばいいんだよ。
名前ってそうだろ?」


「・・・今日から俺は、オーロラだ。」
「あなたはオーロラだ。いい名前だね。」
「あの!今日からわたしは、アバサです。」
「そうだね、あなたはアバサだ。素敵な名前だ。」
「今日からわたしはルーです。」
「うん、あなたはルーだ。かっこいい名前だね。」
「お?俺の名前はトックスだ!」
「ええ!あなたは導きしもの!トックスさんだ!!
じゃ、わたしも!
わたしの名前は愛しい人!これはマティスだけが呼べる名前。
だから皆はモウって呼んでね。」
「「モウ!」」「「モウ様!」」

あはははは!!!


良かった。
名前は大事なものだ。
名は呪だ。
リリクは言霊の本質を知っているのかな?
必ず行かなくては。


「で?血のりって?」
「銃でもナイフも効かない。言霊でね。
でも、そうなると、廻りは何じゃとて?ってなる。
だから、見てて?」

ナイフが凹んでそこから血が出るもの。

それを出して、グサッとな。
どくどく出る血。


「「「ぎゃーーーー!!!」」」
「!」

さすがオーロラは声を上げない。


「いや、これ、こうね、凹む。
で、これは、プニカシロップ。
鉄なべで延々煮詰めたの。とろみが出て、いい感じに。
甘い匂いもなくなったの。」
「愛しい人?舐めてはいけないよ?」

いつの間にかマティスが傍にいた。
汚れた腕を拭いてくれている。
床に落ちたものも。

「舐めないよ!だっておいしくないもの。
お話終わったの?」
「こっちはな。そっちは?」
「血のりの説明。」
「ああ。トックス?すまない。
手間だとはおもうが、愛しい人の言うとおりに。
わたしも手伝おう。」
「なんでそこで謝るのよ!もう!
じゃ、それはトックスさんとマティスにお願いするとして、
練習だよ!」
「「「?」」」
「え?わかんない?銃なら、撃たれる、で、血のりがはじける。
銃で撃たれると、よっぽど腕がうなくないと即死はない。
もちろん、弾はどっかに行くよ?
頭とかは狙われたらどっかに行く。
だから、何も反応しなくていいし、わからんはず。
で、相手も失敗した?って思う。
心臓を狙ってくる場合限定ね。
トンって、衝撃はわかる。
で、後ろなら、えっ?て振り返ればいい。
前なら、血が出てるから、
やっぱり、え?って。
で、血みて、なんじゃ、こりゃぁぁぁって。
ナイフも同じで。
人はそれぐらいなら、即、死ぬことはない。
それをやっちゃうってなら、皆の見ている前ではしない。
大騒ぎを起したいんだよ、誰かさんは。
だから、致命傷にならないようにわざと外す。
そんな腕があるかどうかも疑問だけどね。
銃なら余程の腕だ。もしくは至近距離。
今回は遠くから撃ってくる。
狙うのは、頭ではなく胴体。
だから、必ずえ?って反応をすること。
撃たれるとね、
その部分がいたいというより熱く感じる。
痛みは後で来る。てか、その前に恐怖も来る。
血が抜けるから、ふーって気が遠くなる。
現実逃避で笑ってしまうこともある。
で、死ぬ。
だから、こうね?」

血袋をピって潰す。

え?
え?あれ?熱い?
あ、血?
え?
え?あ、ははは。
あれ?・・・死ぬの?
・・・・。

ばたり。


「愛しい人!!!!いやだ!死なないで!!」
「待って!今は練習なの!!見本!みんなに教えてるの!膜も張ってない!」
「なんだ。私は?うまくできた?」
「違うでしょ!それに、顔が笑ってるよ!」
「いや、すまん!あはははははは!!!
ここでは無理だろ?」

どうして笑っちゃうのかな?もう!

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