いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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806:嫉妬

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タフト滞在館の敷地外にでて、会釈をし、ひと気のない方に行く。
そのときに、なにかが、すっと離れていく感じがした。
モウ様はわたしの肩に手を置いている。
なんとなく重みが分かるようにだ。


(お!タミナ嬢が後ろからついてきてるね。
ビャクとクーも戻ってきたし、その角曲がって?)
(わかりました)

へ?
絨毯?その上に座っている。
その絨毯は浮いているのか?


「ああ、声出して大丈夫。
クーもビャクもお疲れ様。
これは、とりあえずのお駄賃。ちょっとお酒のきつい飴。
シャリシャリのお酒が中に入ってる。」

クーたちは器用に食べていた。
彼らは酒飲みだ。

「モウ様?浮いてる?」
「うん。気配は分からんよ。音も拾えない。」
「あの?外に出たとき何かが外れた感じがしました。」
「ああ!ムムロズ殿の守りの気だよ?
館内でなにかまずいものがいたとか?
わたしではわからんかったよ。
それは、資産院として調べられる範囲で調べてくれる?」
「わかりました。」
「じゃ、タミナがどうするかだけ確認ね。」


なるほど。


気配が消えたので慌てて、曲がってきた。
キョロキョロと探し、目をつぶり気配を探っているのか?
彼女が気配読みをできるのは知っている。

だが、やはりわからないのだろう。


懐から石を取り出している。

『石よ、我の石よ、我が命に応えよ!
探して!ツミールという女を!!』


石は消えもしないし、砂にもならない。
なぜなら、ツミールという女はいないからだ。

なにも変化のない石を睨みつけ、
かなり大きい石なのだが、それを壁に投げつけてしまった。

「結構いい球なげるね。」
「モウ様?」
「あ、いや、こう、球をね、投げる競技があるのよ。
わたしダメだったな。肩がいいんだ。
なにか運動してるのかな。ん?投擲?」
「モウ様・・・・。」

モウ様の関心ごとはいつも少しずれているように思う。


また大きな石を出してくる。
先程のものよりも大きい。

タミナ殿はかなり質素な暮らしをしていると聞いていたんだが、
その石、今の価値でいくらだ?



『石よ、我の石よ、我が命に応えよ!
あの女が二度とオートの前に現れないようにして!
二目と見れないようなみにくい顔にして!!』


『砂漠石たちよ、こちらにおいで』

モウ様は石を2つとも呼び寄せた。
モウ様の言葉の方が強いということか?
あの女というのがツミールのことなら、
存在しないんだ。さっきと同じで何も起きなかっただろう。

砂漠の砂だろうか、それをタミナの手に置き、
そしてまた回収した。
それと同時に叫び声が聞こえた。

うぎゃぁ!!


少し離れたところからだ。


その声を聞いて、にやりとタミナ殿は笑い、
廻りを確認。
足早に去っていった。



「彼女石使い?」
「いいえ。そうは聞いていません。あの声は?」
「音石君。知ってるでしょ?それの応用。
先におぼえてもらって、合図を送って出してもらう。」
「ああ!その使い方!しかし、合図をどうやっておくるんですか?」
「わたしはお願いでできるし、んー、ツイミさんだったら、
そこに何かを移動させるとか、この言葉を言ったらとか?」
「事細かに指示すると?」
「そうそう! 」
「なるほど。」
「あの言葉・・・」
「はい?」

「石よ、我の石よ、我が命に応えよ


これ、資産院の石使いもいったし、
軍隊長のレディもいったよ?」
「れでぃ?」
「あー、女のほうの軍隊長、えーと、ルララちゃん?」
「ルパラ殿ですね?
その言葉は石使いがよく使っていますね。
よりよく使えるとか。
が、それは石使いだから使えると。
そう聞きます。わたしが言ってもなんとも。
事細かに指示してお願いするほうが確実にできます。」
「その時は感謝を忘れないようにね。」
「もちろん。」
「しかし、ほんと石使いって不思議だよね。
わたしが、この言葉使ってもなんにも起きないよ?
んなわけねーべ、って思ってるから。
あ、こっちに来てくれた砂漠石たち!
ごめんね。仕事を放棄させたみたいで。
わたしんところは、バリバリ使っちゃうんだけど、いいかな?
あとで、お話聞かせて?
とりあえず、ここに入ってね。」
「?」
「砂漠石はね、話してはくれないの。
だけど、話は分かってくれる。感謝を。
で、月無し石君たちが通訳してくれれば、出身が分かる。
コットワッツではない。
マトグラーサでもない。この大きなものは今はでない。
渓谷に近いところだけどね。
じゃ、どこってことになる。
最近買ったものか?持っていたものか?
誰かにもらったものか?

嫉妬ややっかみで、こんなことしないよ?
ふつうはね。しないよね?
オート君は彼女を受け入れたはずだから。
資産院の動きを探っていたんでしょ?
でも、それは仕事だからって。」
「どうなさるので?」
「いや、これ以上なにもしないよ?
ツミールはこれで終わり。師匠もそのつもりだ。
オート君も承知している。
問い合わせが来ても、臨時雇いだからやめたと言える。
ご近所の方は最近姿を見ない。
最後の訪問先はタフト館。
怖いもの知らずが問い合わせても、来たが帰ったと言える。
黙っていればオート君も悲しまない。
だからこちらから言う必要はない。
タミナが墓穴を掘らなければ、何も起こらない。」

「ボケツ?墓の穴?」
「ああ。ひとが死んだら、焼くか埋めるでしょ?
その穴、墓穴を自ら掘るってことだ。
身を滅ぼす原因を自分から作ることのたとえだね。」
「ああ!なるほど。」
「オート君にツミールはどうしたと聞いたとして、
彼女はやめたって聞いて安心すればいい。
彼女の顔を見たのかと聞けば、どうして?となる。
聞いた話だけど、顔に傷を負ってしまったらしいですよっていったら、
そんなことはないって知ってるオート君は疑問に思い、
かわいそうにといってしまうだろうな。そうなるとまた、怒り狂うわけだ。
偶然通りすがりに叫び声を聞いたが、
あれはツミールさんだったかもしれないっていっちゃうと、
声が出ないツミールの叫び声なわけがない。
なんで、ツミールだって思ったんだってなる。」
「本当だ!」
「ね?いらぬことを言わなければいい。
そうすれば、オート君とこれからも付き合えるわけだ。
で、オート君も悲しむことはないだろ?」

オート院長が悲しまなければいいということ。
ならば、最初から、ツミールに傷がついたと思わせなければいい。

そう考えていると、モウ様は、

「あはははは!ほっとけばいいのにって?
ダメだよ?わたしのものに傷をつけることは。
もちろんつかないけどね。
その行為がダメなんだよ?
1回目で諦めればいいのに。
2回目でより大きな石を出してきた。
アウトだね。」

そう考えてるのか。

わたしの懐にいた重みが無くなった。

「モウ様?ビャクとクーがいなくなりましたよ?」
「うん。ふふ。ビャクとクーはお出かけだよ。
よし、じゃ帰ろう!
ごめんね?今忙しいのに、こんなことさせちゃって。」
「モウ様?謝らないでください。お役に立ててうれしいのですから。」
「ふふ。ありがとう。ツイミさんに感謝だ。」
「ええ。うれしいです。」

モウ様のものだと言ってくれたことも。

「でね?
その姿を皆に見せることになるけどいい?」
「?かまいませんよ?
化粧もうまくなったでしょ?」
「うん。別嬪さんだ!
ルグにもしたのよ。そしたら大惨事だった。腹筋が。」
「?」




モウ様の移動で戻り、商談は決裂したことを報告。
みながわたしの姿をみて驚き、称賛してくれる。


「これは驚きですね。
なんというか、女性ですね。ルグとは違う。」
「ええ。色っぽいですよね。ルグさんとは違う。
あ!一般的にですよ?」

セサミナ殿とドーガー殿。


「ツイミさん?
目の色も髪色も違う?かつら?ああ!
目は?それも何か入れてると?
すごい!!」
「これ、誰でもできるんですか?
でも、その、胸もあるし、ん?」

ルー殿とアバサ殿。


「え?この人男?
胸あるし、大人だよな?え?小さいの?」
「オーロラ!!そこの大きさは言わない!!」
「あ!え?でも!!」

オーロラと名乗った彼は、傍付き見習いだそうだ。





マティス様は外に押し寄せている輩の対応をしに外に出ている。
モウ様の元を離れることがあるんだ。



「かつらですよ?で、外せば、ね?」

かつらを外す。

「顔には薄く粉を塗ってます。
やはり、髭を剃ったあとは色が違いますから。
それとうっすらと紅を。頬と、ここ、耳朶と目じりに。
ええ、書いているのですよ。この目のところにも。
眉も形は整えてます。
このほくろも書いてます。
蒸したタオルで拭けば取れますので、熱い時期はダメでしょうね。
胸?これです。」

胸も服の中から外す。
ちょっとコツがいるが、この瞬間が好きだ。


「尻にも入ってます。
着替えたいんですが、あ、服がない。」

持ち歩くわけにもいかないから。

「ああ、脱衣室に置いてるの着ていいよ。
シャワーも浴びといで。
蒸しタオルより、きれいに落ちるから。」
「ありがとうございます。」
「あ!俺が案内する!」

オーロラ殿が案内を買って出てくれる。
新人だから?なんでだろう?


「オーロラ?
別にシャワーは誰かと一緒に入るものでもないんだ。
場所だけ案内すればいいんだぞ?」
「なんだ、そうなの?ルグが体もあらってくれたから、
そういうものだと思ったよ。」
「・・・それは使い方が分からないと困ると思ってだ。」
「ああ!」

納得しているが、案内はしたいんだな?

「案内してくれますか?わたしはこの館は初めてなので。」
「わかった!」

いくつくらいなんだろう?
まだ幼いな。


(ツイミ殿?彼は事情があって世間をしらない。
8歳なんだが、恐ろしく素直なんだ。
彼が、天文院の隠密だ、カップに圧を掛けたな。
いまは違う、わたしのオーロラなんだ)
(彼なんですか?え?)
(できれば、そこに触れずに、普通に、子ども扱いせずに接してほしい)
(ええ、それはもちろん)


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