いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
839 / 869

839:望めば成る

しおりを挟む


「さて、この面談も終わりにしましょう。
後の方で、次は自分だと待っている方もいないようですし。
一室だけ公開する準備もしないといけません。
それが終われば、みな領国に帰ることになります。」
「え?どうして?」
「護衛がルポイドに行くのでね、
領主の守りが手薄になります。
もちろん、筆頭、次席の腕で十分ですが、
そうなると他のことに手が回らない。
人手不足なのは本当なんですよ。
だからこその従者募集ですよ?武でも知識でもいい。
他の何かでも。
コットワッツの為になる方がほしいのです。」
「・・・・・。
あなたは?かなり上の地位なのか?
ドーガー殿の上官?
内部の事情にも詳しいようだが?」
「ええ。こういう時の権限を任されるぐらいですね。」
「では!ルポイドに同行させてほしいと、領主殿に頼んでくれ!」
「だから、それはどうして?」


話が進まない。
館に案内するという話を聞いて、
先ほどとは違った輩が集まってきた。
中に入れるのならば、己がいいということか?
配下に任せておけばいいものを。
逃げ場がなくなるぞ?

戻ってきたドーガーに集まった者たちを
中に案内してもらおうか。

(ドーガー?領主の許可をもらいに中に入れ。
少し待たせて、それから案内すると言え)
(そうなると、ここでお一人になります。
ルグさんか、マティス様を呼びますのでお待ちください)
(いや、少し試したいこともあるから、1人でいい)
(?なにを試されるんですか?まさか、あの挨拶?)
(あれはまだだ!いいから!何かある前に呼ぶから!!)
(わかりました)

目の前の男はまだ考えている。
ドーガーは集まった者たちに説明をはじめ、
そして館に入っていった。

ひとりになるのははじめてではないか?

常にわたしの横にはルグ、ドーガー、スビヤン、
そして妻や子供たち。我が領民たち。
兄さんと姉さん。
誰かがいる。
大事なものたちだ。



今、敷地内にいる人間は大事か?
目の前の男は、保留だ。
これ以外は?
大事どころか、不要なものたちだ。

この敷地内はすべて掌握できる。
わたしの領域なのだ。
意識すればいい。
館内は?
姉さんがいる。
わたしが姉さん、主に害成すことはあり得ない。


わたしが望み、それを願う。
そしてそれが成る。
砂漠石がなくとも。

望めば成る

兄さんがけがをすればいい
けがをすれば何処にも行けない
戻ってくる
また、僕と話をしてくれる



望んだんだ。
僕が。
そしてそう成った。

けがをした。
目と腕と腰に。
館に戻らなかったが、コットワッツにいる。
話はできなくなったけど、
僕の傍にいる。

あの時はまだ、砂漠石のこと、
この世界の仕組みを知らなかった。

今は?

願えば叶う。


わたしの領域、わたしの願い。
姉さんに向けて銃を撃ったものをどこかに飛ばす?
それは姉さんが望んでいない。
主が望まないことはできない。



この庭に集まっている輩すべてを思うままに操ってみるか?
それとも、全て砂漠に飛ばしてみるか?
どういう考えでここにやって来たのか、それこそ全て面談するか?
嘘何ぞ言えぬようにして。

もちろんできるだろう。
意のままに。

では、
コットワッツの発展は?
これは願いではなく、やっていくべき事柄だ。



ははははははは!
なるほど!


それをすれば世界が終わる。
姉さんが最初から話していたことだ。
それに気付いて恐ろしさに震えたではないか!!

何もできない。
してはいけない。
使うべき力ではない。

できることは、自分本位にちょっとしたことだ。

姉さんがするように。
ちょっと楽したい、ちょっと便利に、だ。
ふふふ。さすが、姉さん、我が主だ。






まずは、彼だけ確保することにしよう。
どうもっていくか?

自称叔父、グリクに姉さんが話しかけたように?
やさしく、わたしは味方だと、助けてやるという。
相手は不安を多少なり持っている。
それを解決してほしいのだ。
だから、やさしく、味方になってくれる相手に全てを話す。

そうだ、まず名前を聞かなくては。
姉さんは名は大事だという。
一番短い呪いまじないだと。


「こっちじゃ、真名とかあるんでしょ?
それと大体同じなんじゃない?
力の方向は違うかもしれんけどね。
んー、これも研究案件だね。
言霊、ツクモガミ、ウシノコクマイリ?
ああ、そうか、ヒトガタ、ヨリシロもありか。
それやな、、、、、」


そういうと、かなり考え込んでいた。
わからない言葉ばかりだ。
こういう時はいつも考えがまとまって話してくれるまで待つほうがいい。
途中で話しかけると、考えがどこかに行ってしまうそうだ。

どこかってどこだろう?
姉さんの考えが集まっているところはきっと楽しいところに違いない。
いや、恐ろしいところだ、きっと。
楽しいことはすべてこちらに見せてくれているから。

この時は、兄さんが焼き菓子を持ってきたので、
この話は途中で終わってしまった。
覚えている内に聞いておかないと。

うつむいている男に声をかけた。


『先に名前を教えてもらえますか?』

下を向いていた男は、慌ててこちらを見る。
にっこりと微笑んで見せた。

ふふふ。
姉さんと兄さんがいれば詐欺師選手権優勝だと褒めてもらえるだろう。
・・・・。
いや、違う。
それは兄さんだ。
これは意識した。
兄さんは意識せずに常にだ。

「あああ、わたし、わたしの名前はタミトンだ。」

やっと、わたしの顔を見た。

『タミトン、さんですね。
タミトンさんにね、お声をかけたのは、
ここに集まって来ている他の者たちと、少し違うと思ったからなんですよ。
ほら、そっと後ろを見てください。
中に入れるのなら、自分が入りたいと、
最初に来た者たちの上官でしょうか?
それなりにここ王都で地位のある者たちが来ています。
このまま、皆採用だといえば、ほとんどのものが現職を辞めないといけない。
だってそうでしょ?
自ら望んでやって来たんだから。採用と言われた時点で、
辞めないと。
あとで、辞退することもできますよ?
しかし、その間に別のものが自分の地位に入り込んいるでしょう。
入り込む余地がないほど己の地位があるのなら、
そもそもここに来ない。
ね?
だから、使い捨てのように配下を寄こした。
それなのに中に入れるとわかって自ら来ている。
中に入るだけで目的は達するのか?
おそかな話だ。
いや、これは失礼。
だけど、あなたは違う。
なにか、そうなにか、
どうしても、ここ、コットワッツと話がしたい?
いや、違いますよね?
コットワッツに助けてほしい?』

また、下を向いてしまった。
ダメか。
もっと、強く望むか?






姉さんの言霊!!

「?・・・・あの?」
「黙れ!!」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...