いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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842:副隊長

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「ニック!!やっとこっちに顔を出したのか!!!!
遅いよ!!
もちろん、今日はお前のおごりだよな?
なんたって、軍隊長様なんだから!!
おい!皆呼んで来い!!」
「んなわけないだろ?予算なしの貧乏軍なんだよ!
知ってんだろ?
お前たちから祝いだから
好きなだけ呑んでくれっていうのが筋だろうが!!」
「そんなことは、月が北から昇らないとありえねーな!!」


がははははは!!!!

「だろうな!だからな、今日は、
タレンテ軍副隊長ルカリと、
スダウト軍副隊長センターを連れてきた!」


資産院を出て、軍部に戻りルカリと呑みに行くぞと声を掛けると、
センターが自分も行きたいと付いてきた。

スダウト軍にはセンター、
タレンテ軍にはルカリが副隊長に就任したという。
スダウト家に引き抜かれたブックナは護衛のままだ。




「大丈夫か?ルカリはいまさらだが、
下町だぞ?」
「いえ、大丈夫です!」
「そうか?」



ルカリ、センター、ブックナとそれぞれで秀でたところはある。
センターは上位の貴族で、あまり真面目ではない。
のらりくらりと鍛錬はさぼるので、
センターに役をつけることはなかった。

ブラス狩りの件を聞けば、すぐにしてませんと、
悪びれることなく報告してきたのはセンターだ。
なぜしないのかと問いただせば、
誰も見ていないし、金もいりませんから、と。

ニックがわたしの補佐時代は、
彼の呑みの誘いに付いてきたこともない。
たいていの者は1度は来るのだが、頑なに断った。
2度目以降はルカリ以外は全員断る。

マティスにあこがれてはいたが、
本人はもちろん、あの剣技をはじめて見たといい、
マティスと話すルカリがうらやましいと話す声が聞こえていた。

ルカリを先にタレント家が指名したようだ。
我々以外に一番モウに近い軍人だからだ。
遅れてスダウト家がセンターを指名。
セサミナ殿が軍部に来た時に名指しで呼び出したとか。
甘味を食べた、タオルをもらったと自慢していたらしいから、
コットワッツとつながりがあると思われたんだろう。




「就任祝いだ!
2人がきっと振舞ってくれるぞ!!
あるだけの酒をもって来い!!!」


うぉぉぉぉおおおおおおお!!!!



(2人とも震えてるではないか)
(大丈夫だって!)
(そうか?)
(ここにいる奴らは酒が楽しく飲めればいいんだから)
(それはそうだな)



下町の奥の奥、ニックが懇意にしていた酒場に、
4人で向かう。後ろに3人ほどついてきているが、いつものことだ。
とにかく、ニックの歓迎ぶりがすごい。
20年の不在だったのに、関係がないようだ。
ただ、かなり高齢な仲間が石になったという話は、
奢ってもらう約束だったのにと、嘆き、そして笑った。
子供が成人になったと言えば、連れてこいといい、
結婚したとなれば、それはおかしい!嫁を連れてこい、
軍隊長として騙されていると忠告してやろうという。

酒は下町が作った酒、ビールがうまいという話から、
それに合う肴だと、コリコリやプカプカ、川ナマコ、
ミーキの骨を油で揚げたもの、
赤根の豆ソース漬けなどを背負子から出して振舞った。

コットワッツの標準装備だいう背負子だが、
同じ形は問題だろうと、少し大きめで作ってもらい、
それはわたしが背負ってる。

本当に中に入っているものが大半だが、
二重底に手を入れれば、呼び寄せで取り寄せられる。
手を入れることはできるのはニックとわたしだけだ。

どう考えても入るはずのない量だが、
これも誰も疑問に思わない。
いや、ひとり、ふたりと凝視しているな。
どこの手のものだ?
石を飛ばしてみるか?

あれがルカリ先生なのか?と奥方連中が集まってきている。
下町の奥方たちは都下まで来ることができないが、
話は聞いているのだろう。
先生!先生!と話をしてくれと頼んでいる。

あの女は?

いないか。下町に近い場所に住んでいるなら、
この様子は聞こえてくるはず。

ほら、都下のルカリの生徒たちがやってきた。
最初の4人と、さっきの集まりに来た女たちもだ。
その女性陣に囲まれ、センターが逃ないようにルカリが紹介し、
一緒に盛り上がっているな。

センターも催促され、
体つくりの話を披露している。
ああ、なるほど。
簡単で効果が出るものを披露して喜ばれている。
センターは鍛錬をさぼっていたのではなく、
効率よく体を作っているということか。
では、あとは経験と実戦だけだな。




軍隊長と言えど、踏み込めない領域はある。
いや、軍だからだ。
旧下町の市場と同じだ。
あの場所のことはベースが教えてくれる。

「ガイライ!ここまで来るのは珍しいな!」
「ああ。ニックがいるからな。
お前の無理難題に応えなくていいからな!」
「あはははは!そうなるか!」

バッチだ。
都下に住んでるが、下町のものを仕入れて、
都下で売っている商人だ。
都下でも世話になっていた。いいも悪いも。


下町に住んでいるものは、
気軽に話しかけてくれるが、軍部が動くと
別の住人から、どうしても反発が出る。

どうしてあいつらだけ?
こっちのほうがひどい有様なのに?
贔屓をしているのか?
それが軍のやり方か?

全ての要望に応えることはできない。
必要なことだけだ。

なので、
これに動いてもらうことしかできなかった。


給金はこれらにすべて使っていたと言っていいだろう。


「よ!バッチ!!俺がいない間、
ずいぶん儲けていたらしいじゃないか?」
「よく言う!!その分資産院に持っていかれとるわ!」
「お?本当か?軍権限で調べようか?」
「・・・・呑むか?」
「はははははは!もちろん!!」



ニックのようにはいかなかったな。
これがニックのやり方だから。
わたしはわたしのやり方をするだけだ。




!!

モウの言霊!

「おい?ニックもガイライも?おい!」
「え?ど、どうした?」

ニックのにらみとわたしの気で皆が黙ってしまった。



モウの宣言だ。
ああ、まさしく!まさしく我らは守られている。

わたしたちの様子にみなが騒ぎ出した。

(ニック!)

「!いやいや!すまん!!なんか俺が持ってきたツマミが
まずいって誰か言ってない?ひどいよな!!」
「な!なんだよ!!おどろくじゃねぇか!!
だれだ?そんなこと言う奴は?」
「向こうから聞こえたぞ?」
「誰だぁ!?」

(ニック?)
(ああ、大丈夫だ。先に守りをもらってる。大丈夫だ)

モウの力は偉大だ。
神聖視するなとマティスは言うが無理だろう。
ニックはモウとのつながりは薄い。
わたしとセサミナ殿は主と臣だ。
ルグとドーガーも同じ。
ワイプは弟子と師だ。
ツイミたちは言葉が悪いがモウの信者だ。
これをモウは許している。

ニックは?
槍の師だとしてもワイプとはまた違う。
不安だったろう。
あの言葉がニックの守りになっている。
求めたものを与えることができる、
それができるものは少ない。



またモウだ。
さっきの言霊の説明か?
皆にも聞こえたのだろう。
理解していないものがいるのか?

(重さって言ったの、ドーガーだよな?)
(だろうな)
(はははは!)
(ちょっと流れが変わったぞ?どうする?)
(任せとけ!)




「おい!なんか面白いことやって見せろよ!
ルカリ!!お前なんかやってみろ!
センターもだ!」
「え?我々がですか?」
「そうだよ?副隊長なんだから!やらないと!」
「え?では、ガイライ殿も?」


センターはいらぬことを言うな!!

「そ、そうですよ。まずはガイライ殿から!!」

ルカリ・・・。
以前のルカリなら率先して動いていたのに!!

「お!そうだな!ガイライ!!
やってくれ!!」

ニックまで!!
なにが任せろだ!
が、いい機会だ。
皆、笑い死にすればいい!!

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