武神大公は元妻のストーカーがやめられない。〜元夫に敵視されていると思っている元妻の令嬢と、その元妻をストーキングしている元夫の大公のお話〜

百百百百

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ストーカー敵現る

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 聞くに耐えない激しい罵り合い。
 大変不適切な言葉も使われたため、以下省略させてもらう。
 優雅な動作でカップに口をつけるレイと、まだまだ言い足りないと言う顔をする大公。
 以前からの仲を知ってる私やビー君達からすれば対して珍しいことではないが、初対面のワンコくんたちは驚きすぎて若干引いていた。
 まさかこんな美人が毅然な態度であんな言葉使うなんて、誰が思うだろう。

 言い争いに決着がつかないまま、両者睨み合うように対峙している。
 慣れているとは言え、流石にこの緊張感は嫌な者である。
 私でさえこれならば、後ろに立っているワンコくんたちは冷や汗で風邪を引くかもしれない。
 私は緊張感で渇いた喉を潤そうと、カップに手をかけた。


「あら、モモその飲み物飲まない方が良くってよ。」
「え、でもせっかく入れてくれたんだから……。」
「ヘドロみたいな味がするの。貴女が死ぬところなんて見たくないわ。」


 大公はその言葉をまた挑発と捉えたようで、鋭い目を吊り上げて彼女を見るが、私は彼女の言葉の真意をすぐに理解した。
 昔、ハロルドが毒入りのケーキを作ってくれたと話した時、毒に強い耐性を持つ彼女はこう言ったのだ。
 食べない方が賢明よ、ヘドロみたいな味がするから。
 流石はレイ。
 きっと誰が敵で味方かわからない今、暗黙のうちに伝えられる一番の言葉を使ってくれているのだ。
 これだから、彼女との友人関係はやめられない。
 初めはお互い、利害関係の仲であった。
 だが、今となっては真の友だとお互いに認識している。


「貴方が飲んだらどう大公陛下?」
「こらこらこらこら。」


 私の分のカップを大公に近づけるレイの手を止めると、悪戯っ子のように舌を出して笑った。
 レイは触れ合った手を再び握ると、キリッとした目で私を見つめた。


「ねぇ、やっぱり私のお屋敷に来ない?」
「だから、コイツは今反逆罪の疑いがかけられてるつってんだろ。」
「貴方もわからない人ね。私はフローレンス家よ。」


 フローレンス家はその代々続く王家との因縁で、王家に従う立場にあるとは言えど、皇帝に真っ向からノーと言える唯一の公爵家だ。
 皇帝もこの公爵家だけは、易々と命令することはできない。
 例え罪人を引き渡せと言われても、彼女の家柄ならば対立が深まるとしてもノーと答えられるだろう。
 大公も今は私を監視としてそばに置いていられるけど、皇帝からの勅命が下りれば私を引き渡すほかなくなるのだ。
 レイの言うことにも一理あるねと考える素振りを見せると、大公が強く机を叩いた。


「気に食わないことがあったらすぐ暴力。これだから野蛮な害虫は嫌いなのよ。」
「俺はこの領地の大公だ。つまりここでは皇帝と同等の発言権を持つ。」
「だからなんだって言うの?私に死刑でも言い渡すおつもり?」


 レイの誘いを断る理由を考えていたが、大公の言葉に興味をそそられた。
 何か考えがあるらしい。
 はぁと大公はため息を吐くと、チラリと私を見てレイに向き直った。


「モモラ•クイーンを、我が公国の国賓として迎える。」
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