30 / 78
ストーカー敵現る
4
しおりを挟む
聞くに耐えない激しい罵り合い。
大変不適切な言葉も使われたため、以下省略させてもらう。
優雅な動作でカップに口をつけるレイと、まだまだ言い足りないと言う顔をする大公。
以前からの仲を知ってる私やビー君達からすれば対して珍しいことではないが、初対面のワンコくんたちは驚きすぎて若干引いていた。
まさかこんな美人が毅然な態度であんな言葉使うなんて、誰が思うだろう。
言い争いに決着がつかないまま、両者睨み合うように対峙している。
慣れているとは言え、流石にこの緊張感は嫌な者である。
私でさえこれならば、後ろに立っているワンコくんたちは冷や汗で風邪を引くかもしれない。
私は緊張感で渇いた喉を潤そうと、カップに手をかけた。
「あら、モモその飲み物飲まない方が良くってよ。」
「え、でもせっかく入れてくれたんだから……。」
「ヘドロみたいな味がするの。貴女が死ぬところなんて見たくないわ。」
大公はその言葉をまた挑発と捉えたようで、鋭い目を吊り上げて彼女を見るが、私は彼女の言葉の真意をすぐに理解した。
昔、ハロルドが毒入りのケーキを作ってくれたと話した時、毒に強い耐性を持つ彼女はこう言ったのだ。
食べない方が賢明よ、ヘドロみたいな味がするから。
流石はレイ。
きっと誰が敵で味方かわからない今、暗黙のうちに伝えられる一番の言葉を使ってくれているのだ。
これだから、彼女との友人関係はやめられない。
初めはお互い、利害関係の仲であった。
だが、今となっては真の友だとお互いに認識している。
「貴方が飲んだらどう大公陛下?」
「こらこらこらこら。」
私の分のカップを大公に近づけるレイの手を止めると、悪戯っ子のように舌を出して笑った。
レイは触れ合った手を再び握ると、キリッとした目で私を見つめた。
「ねぇ、やっぱり私のお屋敷に来ない?」
「だから、コイツは今反逆罪の疑いがかけられてるつってんだろ。」
「貴方もわからない人ね。私はフローレンス家よ。」
フローレンス家はその代々続く王家との因縁で、王家に従う立場にあるとは言えど、皇帝に真っ向からノーと言える唯一の公爵家だ。
皇帝もこの公爵家だけは、易々と命令することはできない。
例え罪人を引き渡せと言われても、彼女の家柄ならば対立が深まるとしてもノーと答えられるだろう。
大公も今は私を監視としてそばに置いていられるけど、皇帝からの勅命が下りれば私を引き渡すほかなくなるのだ。
レイの言うことにも一理あるねと考える素振りを見せると、大公が強く机を叩いた。
「気に食わないことがあったらすぐ暴力。これだから野蛮な害虫は嫌いなのよ。」
「俺はこの領地の大公だ。つまりここでは皇帝と同等の発言権を持つ。」
「だからなんだって言うの?私に死刑でも言い渡すおつもり?」
レイの誘いを断る理由を考えていたが、大公の言葉に興味をそそられた。
何か考えがあるらしい。
はぁと大公はため息を吐くと、チラリと私を見てレイに向き直った。
「モモラ•クイーンを、我が公国の国賓として迎える。」
大変不適切な言葉も使われたため、以下省略させてもらう。
優雅な動作でカップに口をつけるレイと、まだまだ言い足りないと言う顔をする大公。
以前からの仲を知ってる私やビー君達からすれば対して珍しいことではないが、初対面のワンコくんたちは驚きすぎて若干引いていた。
まさかこんな美人が毅然な態度であんな言葉使うなんて、誰が思うだろう。
言い争いに決着がつかないまま、両者睨み合うように対峙している。
慣れているとは言え、流石にこの緊張感は嫌な者である。
私でさえこれならば、後ろに立っているワンコくんたちは冷や汗で風邪を引くかもしれない。
私は緊張感で渇いた喉を潤そうと、カップに手をかけた。
「あら、モモその飲み物飲まない方が良くってよ。」
「え、でもせっかく入れてくれたんだから……。」
「ヘドロみたいな味がするの。貴女が死ぬところなんて見たくないわ。」
大公はその言葉をまた挑発と捉えたようで、鋭い目を吊り上げて彼女を見るが、私は彼女の言葉の真意をすぐに理解した。
昔、ハロルドが毒入りのケーキを作ってくれたと話した時、毒に強い耐性を持つ彼女はこう言ったのだ。
食べない方が賢明よ、ヘドロみたいな味がするから。
流石はレイ。
きっと誰が敵で味方かわからない今、暗黙のうちに伝えられる一番の言葉を使ってくれているのだ。
これだから、彼女との友人関係はやめられない。
初めはお互い、利害関係の仲であった。
だが、今となっては真の友だとお互いに認識している。
「貴方が飲んだらどう大公陛下?」
「こらこらこらこら。」
私の分のカップを大公に近づけるレイの手を止めると、悪戯っ子のように舌を出して笑った。
レイは触れ合った手を再び握ると、キリッとした目で私を見つめた。
「ねぇ、やっぱり私のお屋敷に来ない?」
「だから、コイツは今反逆罪の疑いがかけられてるつってんだろ。」
「貴方もわからない人ね。私はフローレンス家よ。」
フローレンス家はその代々続く王家との因縁で、王家に従う立場にあるとは言えど、皇帝に真っ向からノーと言える唯一の公爵家だ。
皇帝もこの公爵家だけは、易々と命令することはできない。
例え罪人を引き渡せと言われても、彼女の家柄ならば対立が深まるとしてもノーと答えられるだろう。
大公も今は私を監視としてそばに置いていられるけど、皇帝からの勅命が下りれば私を引き渡すほかなくなるのだ。
レイの言うことにも一理あるねと考える素振りを見せると、大公が強く机を叩いた。
「気に食わないことがあったらすぐ暴力。これだから野蛮な害虫は嫌いなのよ。」
「俺はこの領地の大公だ。つまりここでは皇帝と同等の発言権を持つ。」
「だからなんだって言うの?私に死刑でも言い渡すおつもり?」
レイの誘いを断る理由を考えていたが、大公の言葉に興味をそそられた。
何か考えがあるらしい。
はぁと大公はため息を吐くと、チラリと私を見てレイに向き直った。
「モモラ•クイーンを、我が公国の国賓として迎える。」
0
あなたにおすすめの小説
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!
木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。
胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。
けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。
勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに……
『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。
子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。
逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。
時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。
これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる