武神大公は元妻のストーカーがやめられない。〜元夫に敵視されていると思っている元妻の令嬢と、その元妻をストーキングしている元夫の大公のお話〜

百百百百

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ストーカー激怒

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 軽い取り調べをビーくんから受けて、私は大公邸に戻ってきた。
 レイに貸していたと言うことも話さざるを得なかったが、彼女は無実のはずだ。
 それよりも、問題は犯人である。


「何やってんだ馬鹿野郎!」


 部屋に続く扉を開けると、待っていたビャクが私のスネを杖で叩いた。


「何するの!危ないでしょうが!」
「うるせぇ、取り調べって何やらかした!」


 私に向かってガミガミ怒るビャク。
 どうやら、屋敷の団員達の間で噂になっているらしい。
 私がレイザーを締め上げたことで、不審の目は抑えられていたが、二度目の疑いの目にビャクは怒りを露わにする。


「好き勝って言いやがって、ぶち抜いてやる。」


 どこをとは言わずに、銃を持ち出そうとするビャクをアダムが取り押さえた。
 ハジメが呆れたように溜息を吐く。


「今回もまたしても濡れ衣だ。フローレンス嬢に貸していたカメラが、大公のプライベートルームに仕込まれていた。」
「ちゃんと説明したんだろうな!」
「そのための取り調べだよ。わかったらうそカリカリしなさんなって。」


 ポンポンと肩を叩けば、凄い形相で睨まれた。
 生きていれば、濡れ衣の一つや二つぐらいあるだろう。
 

「ですが、こう嵌められていてはそのうち嘘が真になるかもしれません。」
「実際、全く知りませんって言うわけじゃないしね。」


 武神とまで呼ばれた大公を盗撮するなんて、相当な度胸のある人だと思わない?
 そう言って、私は枕の中に隠した紙を取り出した。


「それは?」
「この領地の地図。友人に頼んで、いろいろ調べてもらったの。」


 赤くバツがつけられた建物が三カ所。
 貸してもらった目と耳で調べた結果、この三ヶ所がここ数日の間で頻繁に厳重警備がされていた。
 間違いなく、ヤツはこの中のどこかにいる。


「警備ってことは、貴族ですか?」
「んや、もっと上。」


 私が天を指すようにすれば、ハジメの眉間にシワが寄った。
 貴族の上と言えばそう王族。
 つまり、皇帝ハロルド•タイガーである。


「何故皇帝が、大公を監視しているんだ?」
「モモラさんと結託しないか、その警戒だろう。」


 惜しい!大ハズレ!
 正解は、私と大公の関係を知ることと、シンプルに大公の写真を撮ることである。


「レイはハロルドとよく賭け事をするから、その時に取られでもしたんだろうね。」


 レイは多才だが、賭け事に関しては悲惨なものだった。
 借り物を賭けた挙句負けたのだ。
 バツが悪くて、レイも私に言い出せなかったのだろう。
 まぁ、忘れていた私も悪い。


「なら、犯人は皇帝だって大公に伝えるのか?」
「しかし、大公が信じるでしょうか?」
「レイに証言を頼むから、ともあれ私の無実は証明されるわ。」


 これで私は無罪放免。
 残すところの罪は、反逆罪だけとなるが、これもハロルドが犯人だと知れればなんとかなるはずだ。
 私とハロルドには、ある契約があるのだ。
 皇帝ハロルドが兄である大公を異常なまでに愛していること、つまり、ブラコンであることを隠す契約である。
 この度の盗撮がバレれば、彼のブラコンも暴露の危機に陥るはずだ。
 秘密の知るのは我一人。
 ハロルドは必ず私に助けを求めるはずだ。
 ウシシシ、ハロルドめ今度こそ泣かせてやる!
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