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7話

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 俺は病室でありがちな感じで天井を見ながらのことを思い出していた。

 「アンジェリーナ様を最初に助けたときに転生は理解してたんだけどなぁ」

 ひとり呟いたが俺は理解しているつもりだったというだけで結果を受け入れることに努力していたにすぎなかったことに気づき深いため息をついた。

 前世の俺は川岸清太、都内の高校に通うしがない17歳だった、幼馴染2人と下校中に車道に突っ込んできたトラックから目の前を歩いていた小さな女の子と母親らしき人物をかばい轢かれて死んだ。

 そして目を覚ましたのは4歳の死にかけたセイジュだった……衝撃の事実だがさらに俺を困惑させたのはこの世界だ…。

 「どおりで父さんやアンジェリーナ様をみてどこかで見たことがあると思ったはずだ……」

 俺が今いきているこの世界は俺が死ぬ直前まで話していた恋愛攻略ゲームの世界だったのだ。そしてアンジェリーナは女性キャラを選んだ時にことごとく邪魔してくる悪役令嬢で、コルグは男性版の悪役キャラだった……。
 父親はゲーム内でアイテム購入の際にでてきたキャラだしハンスは攻略対象だ……しかしここで謎が1つ……。

 「ゲーム内にセイジュはでてきてない……モブとしてすらいなかったはず……」

 今の俺、セイジュと母親のセシリアはゲーム内に1度たりとも出てきていない。そして俺はゲームの内容をゆっくり振り返るように思い出していくとゲームと今いる世界である出来事が違うことに気づいた……。

 「ゲームの設定じゃアンジェリーナ様は幼少のころ誘拐に会い助け出されたがその時のことで性格最悪な悪役令嬢になったはず……それってまさか…」

 俺になる前のセイジュがアンジェリーナを助けるきっかけになってしまったということと、本来死ぬはずだったセイジュが俺が転生したことにより死ななかったことでゲームとはすでに違うストーリーになってしまったという可能性が俺の頭をよぎった。

 「とりあえず、15歳からはじまるゲームにはセイジュは一切出ていないのなら、このまま当たり障りなく生活していれば俺はそのストーリーとは無関係になるはずだ…」

 俺は時すでに遅しじゃないかと一抹の不安を抱えながらも自分に言い聞かすようにつぶやき15歳になるのと同時に旅にでれるように準備しようと心に誓い痛み止めの薬に逆らうのをやめ再び眠りについた。


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 「失礼いたします。お父様何用でしょうか」

 「あぁ、アンジェよく来た。さきほど治療院から連絡が来てな…さきほどセイジュ君が…」

 「え?ま、まさか…セイ…そん、な…」

 父親のハスク公爵によばれ執務室にきたアンジェリーナにハスクは暗い表情でいいだしづらそうに話を切り出すと話を察したかのようにアンジェリーナは瞳に涙をため悲痛な面持ちでショックを隠せずへたり込んだ。

 「何を勘違いしておる?意識を取り戻したと連絡がきたんだが?」

 「えっ!?ほんとうですのっ!?」

 「う、うむ」 

 「お父様!なんと紛らわしい!!」

 「逆光がまぶしすぎただけであろう!」

 「思わせぶりすぎるのですわっ!!!あぁ!そんなことよりもすぐにでも見舞いに行かなくてわっ!」

 窓からの逆光で目を細めていた父親にこれでもかと指をさしながら激昂するがアンジェリーナはセイの見舞いに行かなくてはとあたふたしだした。

 「アンジェ落ち着きなさい目を覚ましたばかりなのだ少し落ち着いてからにしたらどうだ?」

 「そんな悠長な!…あ…」

 「ん?どうしたんだ?」

 「2度までも私をかばい大けがをさせてしまっては…もう私にはお会いになりたくないのではと…」

 すぐにでも飛び出しそうなアンジェリーナが急にうつむき消え入りそうな声でつぶやいた。

 「ふむ。セイジュ君、彼が目を覚まし真っ先に言った言葉をおしえてやろう」

 「え?」

 「アンジェリーナは無事か…だったそうだが?」

 「セイ…」

 「あとで治療院に使いを出す、面会が可能なら行ってあげなさい」

 「はいっ!」

 ハスクの言葉を聞き胸を熱くさせたように手を合わせ嬉しそうに返事をした。

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 「セイジュ君お客様よ」

 「え?お客ですか?誰だろ…とりあえずどうぞ」

 意識を取り戻してから3日、どんだけ殴られたんだよってくらい腫れていた顔もモナ先生のヒールのおかげで
大分よくなってきており、腕のリハビリも再開し今は病室のベッドでハンスから借りていた本を読んでいた。

 「失礼いたしますわ!」

 「え?アンジェリーナ様!?なぜこのようなところに?」

 「なぜ?私がセイの見舞いに来るのは当然でしょう?」

 「え?」
 
 友達と呼べる人なんかいない俺に親以外の面会者がきたことに驚いたが勢いよく現れたアンジェリーナは当然のように答えたあと申し訳なさそうな顔をした。

 「セイ…1度ならず2度まで私を助けこのように大けがをさせてしまって…」

 「いやいや、元は僕がきちんとコルグ様に挨拶できなかったことが原因です。あっ!アンジェリーナ様はケガなどなさりませんでしたか?」

 「え、ええ…私は大丈夫ですが…」

 「はぁ~!…よかったです」

 「セイ…あなた…」

 俺のせいで消えない傷跡なんかできた日には人生が終わってしまう。怪我がなくて俺は心からの安堵の息を吐いた。
 
 「アンジェリーナ様、残る傷もなく後遺症もなさそうなのでご安心ください」

 「モナ先生、ありがとうございます。セイをよろしくお願いいたしますわ」

 「はい。おまかせください」

 モナ先生がアンジェリーナを安心させるように笑顔でいうと心底安心したような顔をしたアンジェリーナと俺はその後、時間が許す限りの雑談をした…気を使い気疲れしたが同年代の子と話せたことに俺はうれしさを感じていた。
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