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28話

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 俺が実家の商売の手伝いを初めて4カ月少々たった。

 そして納品について行ってわかったことがある、それはこの世界には俺が元居た世界と同じものや似たようなものがあるということだ。
 たしかに花などは同じものがあるとは昔バラを見かけてから気づいていたが他にも色々あった。だから俺はこの世界のことを調べなおした。

 「やはり…地図ではわからなかったけどこの世界にも砂漠や密林、大きな川や地図では見切れているが海がある」

 俺は手製の地図を作り調べたことを書き込んでいってる。それは特産品だったり気候、地質などわかったつど更新していった。

 「この世界でもシアの実やアーモンドにカカオそれにバナナなんかも名前が違うけど色々発見できたな…あとはパンとエールがあったから小麦とホップも当然ある…ほかの野菜なんかも色々みつけていければいいな…」

 俺は自室の机いっぱいに広げた手製の資料と公爵家から借りている本、商売がうまくいったときに父が買ってくれる本などを見ながら今後のことを色々考えていた。

 「海があるってことはこの大陸以外にも人が住んでいる場所がある可能性もあるか」

 最悪、国だけではなく大陸からも逃げる算段をつけなければならないかなと考えながら天井を見ると、ふとそれを伝えたらアンジェリーナはどんな顔をするだろうかと思った。

 「全然悪役令嬢じゃないし…本来の婚約者のコルグとは犬猿の仲…ゲームと現実はやっぱ違うのかなぁ」

 俺は前世でやっていたゲームを思い出しながら色々と違うところを考えた。

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 「もうすぐ誕生祭ですわね」

 「ええ、そうですわね。楽しみですわ!」

 学園内では年末にあるこの国の建国者の誕生日を祝うパーティーの話でもちきりだった。

 「アンジェリーナ様はもうお召し物のご準備は終わっていられるのですか?」

 「ええ、皆様も終わってらっしゃるの?」

 「はい!」

 「この時期はパーティーが続きますから準備に追われ大変ですわ」

 学園内で一緒にいることが多いこの国の宰相の娘カリンと近衛騎士団長の娘マチルダが話し合っているのを周りにいる他貴族の娘たちもうんうん頷いていた。

 セイジュが前世でやっていたゲームともっとも大きく違う点、それはやはりアンジェリーナの存在だった。
ゲーム内では公爵令嬢という立場を使い高圧的な態度で周りの人々に言うことをきかせていたが、今いるアンジェリーナは心穏やかでどこか天然のところもあり非常におおらかな人柄から上級、下級とわず貴族の娘たちが周りに集まってくる状態であった。

 「そうですね、ホルマトロ家主催のパーティーも学園のパーティーから2日後ですものね」

 「ええ、息つく暇がございませんわ…」

 「王家の主催は翌日ですからね…どちらもご出席なさる方々は大変だと思います…」

 「マチルダ様なにを他人事のようにおっしゃられてるの…でも仕方ありませんわ、王家と公爵家が終わらねば他の貴族がパーティーを開けませんもの」

 どこか他人事のようにいったマチルダの言葉にため息をついてカリンがいうと他の娘たちもうんうんと頷いていた。

 「皆さんごきげんよう」

 「メリダ様、ごきげんよう」

 その後もワイワイとパーティーについて談笑しているとメリダと数名の女学生をつれ現れた。

 「皆さん随分楽しそうですね」

 「はい、誕生祭のパーティーが近いので」

 「まぁ、そうですわよね。皆さまはもうご準備は?」

 「はい、みなかねがね終わっておられます」

 「立て続けのパーティーですものね準備もたいへんですよね」

 「そうですね」

 ニコニコ話すメリダに同じように笑顔でマチルダが会話をしていた。

 「皆さん、学園でのパーティーでお疲れかと思いますが翌日の当家でのパーティーぜひいらっしゃってくださいませね」

 「ありがとうございます!ぜひ参加させていただきます!」

 「もちろんでございます」

 満面の笑みのマチルダとどこか張り付けた笑顔のカリンが返事をすると周りにいた生徒たちも笑顔で頷いた。

 「……あの、アンジェ様もぜひお越しくださいませね?」

 「ええ、お誘いありがとうございますわ。ぜひ参加させていただきますわ」

 メリダはアンジェリーナだけが挨拶以外なにも話していないのに気づいていてまるで機嫌を探るように声をかけアンジェリーナはたんたんとそれにこたえていた。

 「ありがとうございます…ああ、そうですわ。翌日には私もリカルドお兄さまとご一緒にホルマトロ家主催のパーティーに参加させていただきますのでよろしくお願い致しますわ!」

 「ええ、お話は伺っておりますわ。リカルド様、ソフィア様そしてメリダ様のご参加楽しみにしておりますわ」

 「ええ…ありがとうございます。えっとそれでアンジェ様?」

 「なにか?」

 「あの…パーティーにセイ様は…」

 「……参加いたしませんわ…当日は旅先におりますわ…」

 「っ!……そう…そうですわよね…ありがとうございます。当日を楽しみにしておりますわ…では」

 メリダがセイのことを尋ねた瞬間、公爵家主催のパーティーには王族や色々な貴族が来るということでセイは街からでて旅先で誕生祭を祝うことにしたことを父ハスクから聞いたことを思い出し一瞬怒りをあらわにした表情を浮かべたアンジェリーナにメリダだけではなくカリンやマチルダまで顔を蒼くした。
 そしてその理由が自分たち王族のせいだと知っているメリダは気まずそうにそそくさとその場を後にした。

 「皆さま、そろそろ休憩時間も終わりますわ」

 「そうですわね。いきましょう」

 カリンが場の雰囲気を変えるように明るくいうとアンジェリーナもふっと肩の力を抜きいつもの柔らかな笑顔で頷き移動をした。

 カリンは以前セイジュのことでアンジェリーナを怒らせてしまい、その後自身の家でアンジェリーナとコルグのことを宰相の父からきいていたのでその後はセイジュのことに触れないようにしており、マチルダやいつも一緒にいるメンバーも暗黙の了解として触れないようにしていた。

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 「止めてくださる?」

 学園からの帰り道、突如アンジェリーナが馬車を止めさせた。

 「はぁ~…セイあなた何をしておりますの?」

 「え?アンジェリーナ様今お帰りですか?」

 馬車の窓をあけ声をかけるとそこには大きなリュックを背負い、カバーで中身こそ見えないが荷車いっぱいの荷物を運んでいるセイがいた。

 「いいから答えなさい」

 「はい?これは父の友人の問屋さんがいらっしゃるのですが、遠方の珍しい品も結構とりあつかってまして、昔からちょくちょくお邪魔しては欲しいものを譲っていただいてるんです」

 「そ、そう…それで荷はなんなのですか…」

 「えっと熱に強いレンガや植物の種、それと…」

 「い、いえもう十分ですわ…」

 「そうですか?ああそうだ!完成しましたら是非お見せいたしますね!」

 「え、ええ…何ができるのかはわかりませんが楽しみにしておりますわ」

 「はい!必ずにお見せしに行きます!」

 「1番!?」

 「え?はい。完成品はアンジェリーナ様に1番にお届けしてましたから」

 「そ、そうでしたの?」

 「ええ、そうです」

 「そ、そうでしたの!そ、それならばまた1番に見させていただきますわ!」

 「はい!」

 アンジェリーナは顔を真っ赤にしなぜか照れながらも昔見た輝くような笑顔を浮かべ帰っていった。
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