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45話

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 「やはりエドワードの槍はクレームがきましたね」

 「ああ、想定内だけどね」

 「今頃、3家に詰め寄られ逆にクレームをいれられているのは王の方かと思われます」

 2日目あと1戦勝てば明日の決勝戦へという控室で2日目の初戦、しかも最初の一撃で戦いを終わらせたエドワードの槍について大会運営側から使用を控えてほしいとクレームがきていた。

 「セイジュ君が言った通り、決まれば一撃で試合が終わってしまうからな」

 「さすがにまじかで見ても最初は何が起こったのか受け入れられませんでしたよ」

 リカルドの言葉にスタークがやれやれといった感じで答えた。

 「セイの言った槍が鳴くという意味がまさか風を切る音だとは思わなかったよ」

 「ええ、矛先の周りにある4枚の刃が風車のように回るとは思いませんでしたよ」

 「あの突進と突きで5人まとめて再起不能だ…食らった方もいまだによくわからんだろう」

 「おかげでここまで我々は新武器をためせていないんだけどね」

 「さすがエドワード、いやグラドスといったところですね」

 「この剣と槍のおかげです」

 俺たちは持参した飲物と食べ物をつまみながら話していた。

 「相手が突進してきた場合、ハンス様のカウンターも相当な威力になると思っています」

 「それは私も理解しているよ。しかも槍と違い私の盾にはクレームは入れれないしね」

 「そうですね、そんなことをしたら教会が黙ってはいませんからね」

 ハンスは自身の盾に描かれている女神マリアンヌを撫でながら満足げに頷いていた。

 「敵の攻撃を受けにくくかつ見やすい場所に描かれていますし、本当に怖いくらい色々計算されてますよね」

 「くっくっく!うちのセージでアルケミスト様はやるだろ?」

 「敵にはしたくはないですね」

 5角形の盾の上部にマリアンヌが祈るようなポーズが描かれている盾を苦々しく見ながらスタークが答えた。

 「私の剣も使い勝手がわかるとなかなか便利でいいですよ?」

 「そうだな…相手にはしたくはない」

 スタークが自身の極薄な剣をみせるとリカルドが嫌そうな顔で答えた。

 「しかしダン様に詰め寄られているとしたら王も生きた心地がしないのではないですか?」

 「ふっ、そうだろうな。なにせダンの槍には刃がついているからな」

 俺は今日会場でダンに実戦で使うように作っていたエドワードと同じ槍を手渡していた。

 「今の父ならば10…いや下手をすると一撃で20は貫けるのではないかと推測しております」

 「いや…ほんとかんがえるだけでも嫌になるがそれを容易に想像できてしまうのがもっといやだな」

 エドワードの言葉にハンスが心底いやそうに答えるとリカルドとスタークも同じだったようでげんなりしたように
頷いていた。

 「リカルド様、次の試合のお時間です」

 「わかった、では皆いこうか」

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 準決勝の場へと向かい闘技場へ出ると俺らのチームしかおらず不思議に思いあたりを見渡すとハスクが満面の笑みでサムズアップを決めていた。

 「不戦勝とはな…」

 「本日の2戦目タンクをしていた方のケガがひどいらしく相手がビビったみたいですね」

 「しかたない…私でもエドワードが槍を持っていれば逃げている」

 「とりあえず、ゆっくり休めるからいいじゃないか」

 「疲れているのはエドワードだけですけどね」

 「槍を3度しか振っておりませんから疲れなどありません」

 「……さぁ、帰りましょうか」

 ケロッとしたエドワードをみた俺たちはなぜか疲れが一気に噴き出し微妙な雰囲気の元、俺の工房へと向かった。

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 「リカルド様大変です!!」

 「どうした!」

 「闘技場よりこちらに向かったアンジェリーナ様の馬車が襲われ…」

 「なっ!アンジェはどうなった!?」

 「アンジェリーナ様はご無事です!…ですが後ろを走っていたマチルダ様の馬車が盾となり…マチルダ様がさらわれたそうにございます…」

 「!!」

 血相を変えたリカルドの騎士が報告してきた。

 「メリダ様、アンジェリーナ様、カリン様はご無事ですか?」

 「はい!ホルマトロ家へとご避難なさいました!」

 「そうですか…」

 「エド!アンジェのせいで」

 「いえ、マチルダも立派なグラドスだったということです」

 「襲った相手の特徴と向かった方角をお教えください」

 「セイ!」

 俺は怒りをグッと我慢しながら街の地図をだし、騎士からの情報を聞いていった。

 「スターク様どうおもわれますか?」

 「たぶんだが君の推理と同じだと思う」

 「やはり」

 「「 ここ! 」」

 俺とスタークは同じ場所を指さした。

 「リカルド様申し訳ありませんが私はこれより妹を救出に…」

 「セイ!準備はできているかい?」

 「もちろんです!」

 「ハンス!セイジュ様なにを!?」

 「我が妹の身代わりになったんだ助けに行かなくてどうする」

 「大会中は必ず守ると誓いました」

 ハンスは俺の作った鎧との盾を手にし俺も実戦用に作っていた自らの武器をすべて装備した。

 「まて、馬を人数分用意している。セイジュ君も乗れるな?」

 「はい!大丈夫です」

 「なっ!まさかリカルド様!スターク!」

 「相手を刺激してはいけませんから少数精鋭でいきましょう」

 「セイジュ君われわれの武器をくれ」

 おどろき必死に俺たちを止めようとするエドワードを無視し全員が準備をはじめ馬の準備ができたところで工房をでた。

 「第一王子として命じる…かならずマチルダを無傷で救出せよ!」

 「はっ!」

 「抵抗するのであればだれであろうと容赦する必要はない!すべての敵をなぎ倒せ!いくぞ!!」

 馬にまたがったリカルドが両刃の剣をかかげ声を上げる馬を走らせると俺たちも後に続いて馬を走らせた。

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 「報告にあった馬車はありましたが…どこに潜んでいるのか…」

 「下手に動いてバレては元もこうもない」

 俺たちは街のはずれにある旧市街地後にきていた。ここにはいまだに数十件の廃墟がありたびたび犯罪者たちの隠れ家となっていた。

 「あれは…皆さん!居場所がわかりました!」

 「なに!どこだ!」

 「あの建物の中だとおもいます!あれを!」

 「リンドウのブローチ!」

 「マチルダの物です!」

 あたりを慎重にみながら探していた俺は一軒の廃墟の入り口にリンドウをかたどったブローチが落ちているのに気づいた。

 「僕が探ってきます!」

 「セイきをつけろよ?」

 俺は隣の廃墟の壁を伝い3階の窓から中に侵入した。

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 「ちっ!邪魔しやがって!」

 「きゃ!」

 「おい!どうする?公爵の娘じゃねぇぞ?」

 「ああ、もうすぐ相手がきちまうぜ?」

 「代わりにこいつを手渡すしかねぇだろ!」

 「こんなチンチクリンの子供じゃまずいだろ!」

 話し声が聞こえ俺が崩れた床から下をのぞくと5人ほどの男が後ろ手に縛られさるぐつわをされているマチルダを囲うように話し合っていた。

 「見張りは2…」

 俺はそのあと少し内部をしらべると部屋の前に二人見張りが立っていた。

 「ん!」

 「ハンスそれはなんだ?」

 「セイからだよ…ふむ。一階の一番奥の右の部屋にマチルダが捕まっているみたいだ。相手は室内に5人、部屋の前に2人らしい…それからもうすぐ取引相手がくるらしい」

 「では、その相手が来る前に助け出さねばなりませんね…」

 「ああ、それとスタークこれは君にだ」
 
 スタークが俺が書いた建物の簡易見取図を見ながら侵入ルートを考え始めると同時にハンスが俺が書いたもう一枚の紙をスタークへと手渡した。

 「え?…ふむ…いい案だけど危険すぎるな…よし!皆作戦を伝える!」

 作戦を伝えたスタークが馬に乗りどこかへと急ぎ向かっていった。

 「さて…タイミングがすべてだ…ぬかるなよ?」

 「レオ誰に言っているんだい?…今のは誰にも止められないし負けない…」

 リカルドの言葉にハンスがぎらついた眼で答えるとエドワードも目に怒りの炎がみえるほどのたぎりをみせ、3人は俺からの合図で突入した。
 

 
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