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63話

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 「ドラルわざわざ急にどうしたというのだ」

 「忙しいところすまんな」

ホルマトロ家にお忍びという形で国王ドラル=ホーネットが来ており二人は気さくな雰囲気のまま話し始めた。

 「……というわけなのだが」

 「まてドラル、これはもはや我々だけで話せる内容ではない」

 突然自身の元を訪ねてきたドラルの話を聞いたハスクはすぐに自身の家族とドラルと共に来ていた王妃たちを呼び出した。

 ============================================

 「というわけで集まってもらった次第だ」

 「はぁ~…やはり来ましたか」

 「父上、そのような大ごとなぜ今までだまっていらっしゃったのですか」

 「アンジェちゃん大丈夫?」

 「メリダ様お気をしっかりお持ちになって」

 ハスクから話を聞いた集まったメンバーでハンスは予想していたことが起こったと頭を悩ませ、リカルドは父親が自分に何も相談してくれなかったことに憤慨し、アンジェリーナとメリダは顔を真っ青にしこの世の終わりのような顔しておりそれをアメリアとソフィアが必死に慰めカリーナとエスメラルダはショックを受けてはいたが寒気がするほどの無表情となっていた。

 「相手は教皇様ですらつよくでれないほどの大国…我が国ではどうすることもできまい…」

 ドラルがため息交じりにあきらめたかのようにいった。

 「ドラル、お前が諦めてどうする!セイの国外流出がどれほどのことかわかっておるのかっ!」

 「わかっておる!しかしどうすることもできまい!あの教皇ですら手を打てんのだぞ!」

 「セイジュ君はこのことを?」

 「事前の知らせや接触がないよう城からも兵をおくっておる」

 「そうですか」

 ドラルが一応は対応していることにリカルドは少しほっとした様子で頷いた。

 「ねぇリナ」

 「ええ、何を言いたいかわかってるわラル」

 「さすがね」

 「どうしたのだ?」

 「セイちゃんの国外流失および今後の婚姻申し込みを防ぐ策ですわ」

 「なにかあるのか?」

 意味深にうなずきあったエスメラルダとカリーナにハスクとドラルが尋ねた。

 「ええ、ありますわ確実な方法が」

 「エスメラルダそのような方法があるのであればおしえてくれ!」

 「簡単ですわ、セイちゃんが婚約してしまえばいいのです」

 「え!?」

 「どのような大国でお相手が王女だとしても先にセイちゃんが婚約もしくは結婚してしまえば問題ありません」

 「それはそうだが!相手はどうするのだ!?今から募っても我が国だけでも相当な数となろう?それを選んでいる時間はないやもしれんのだぞ?」

 「メリダ?」

 「アンジェちゃん!」

 ドラルが興奮しながら指摘するのを二人は気にも留めず自身の娘たちに声をかけた。

 「え?な、なんですか?お母様」

 「はい?お母様?」

 ショックのあまり話が耳に入っていなかった二人が急に呼ばれ不安げな表情をする中、エスメラルダとカリーナはお互い確認しあうようにうなずくと優しげな表情で話を切りだした。

 「セイちゃんに西の大国から第4王女との婚約話が打診されております」

 「……はい」

 「この国よりもずっと大国でその力を前に教皇様も強くいえぬほどのお相手です」

 「……は、はい……」

 「このままではセイちゃんが他国に連れて行かれてしまうわ」

 「ええ…そうですわね……」

 エスメラルダとカリーナの言葉に二人はもはや涙が流れ出す寸前となりながらもなんとか受け答えしていた。

 「そうならない方法が1つだけあるの」

 「え!?」

 「ほんとうですの!?」

 「ええ、そのためにはあなたたちの力が必要なの…どうしますか?」

 「お、おい!エスメラルダ!よもや!」

 「あなたはだまってらっしゃって!……メリダ、アンジェちゃんどうなさいますか?」

 「やります!セイのためならなんでもやらせていただきますわ!」

 「お母様!私もやります!ぜひやらせてくださいませ!」

 エスメラルダの言葉に息を吹き返したように驚きながらも顔を上げた二人にドラルの言葉をさえぎりエスメラルダは二人の意思をたしかめた。

 「そう…アンジェちゃんメリダちゃん本当にいいのね?」

 「はい!必ずセイを守って見せますわ!」

 「そうです!おば様!私とアンジェでかならずセイ様を毒牙からお守りして見せますわ!!ですからその方法をお教えくださいませ!!」

 最終確認をするかのようにたずねたカリーナにアンジェリーナは胸を張り答えメリダも力ずよく宣言した。

 「では二人にはセイちゃんの婚約者となってもらいます」

 「え?」

 「へ?」

 「セイちゃんの今の地位とこれまでの貢献を加味し国王様にセイちゃんの重婚を認めていただき二人がセイちゃんの婚約者になれば他国やその他の貴族からのお話すべて断ることができます」

 「まして今回の相手はこの国より大国、格下の国の側室になることを認めることなどありえないでしょ?」

 エスメラルダの言葉に二人が驚き固まっているのを無視するかのようにエスメラルダとカリーナが理由を述べ始めた。

 「そして王女の肩書とホルマトロ家の今の財力と影響力、両方を使うことが今回のキモなのです」

 「おい、エスメラルダなにをそのような勝手なことを!」

 「では、あなたは何か解決策がおありになられるの?」

 「ぐっ!し、しかしだな…メリダには他国からの話もいくつもきておるのだぞ…」

 「セイちゃんが他国、しかも大国にいき向こうで今のように色々おつくりなられたほうが困ることになるのは明白ですわ」

 「ぐぬっ!しかし王女と公爵令嬢二人も娶るなど…」

 「あなたはどうお思いなの?」

 「ふむ、相手がセイであるならば人柄を一番知っているのは我々だ、安心できる相手ではある、それでセイを取られずに済むというのであればなおのこといいとは思うが…個人的で悪いがやはり一番はアンジェがそれを望み幸せになれるかということだな」

 「お父様……」

 「あなた!さすがですわ!」

 煮え切らず今もなおグダグダいうドラルをよそにカリーナにきかれたハスクは腕を組み深刻そうに考え込んだ後自身の考えを述べた。

 「そうなった場合、やはりメリダが正室になるのかい?」

 「一応、形だけもそうしてもらえると王家こちらとしてはありがたいな」

 「リカルド、ハンス今回の婚約については正室だ、側室だという話はなしよ」

 「どういうことですか?」

 「どちらも正室になるからよ」

 「母上!さすがにそれは世間の目がゆるしませんよ!」

 「いえ?国王がお決めになればそれがルールです」

 「なっ!?なにがなんでもそれは強引では!」

 「リカルドおちつけ、答えはわかりきっているが一応アンジェ達の返答をきこうじゃないか」

 「それは今さらであろうよ!」

 「しかし形だけでも意思確認は必要なものさ、さて二人はどうするんだい?」

 あまりの力技に盛大に困惑するリカルドをよそにハンスは面白そうにアンジェリーナとメリダにたずねた。

 「私はセイ様と結婚します!いえ是非させてください!」

 「ふぇっ!?」

 「あら、アンジェはしないのですか?では私の独り占め」

 「なっ!当然なりますわ!セイを心から支えられるのは私だけですわ!」

 挑発的に言ったメリダの言葉を遮り勢いよく立ち上がりアンジェリーナが言った。

 「さて、の話はまとまりましたね」

 「ええ、そうね。あとはがどう動くかしらね」

 「セイか…旅をしたいと申して居ったからな婚約や結婚をどうとらえるか…」

 「いえ、セイちゃんの話ではありませんわ」

 「ん?あちらの国の話か?」

 「それもありますが…まぁ私たちが対策を考えておきますわ、ね?ラル」

 「ええそうねリナ」

 「世の意見は……」

 不敵に笑いあうエスメラルダとカリーナにドラルは肩を落とし、他のメンツは頭に?が浮かんでいた。

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 「というわけなのだがそなたはどうするつもりだ?」

 「へ?あ、あのそのような事がほんとうに…」

 「セイよ事実だ西の大国の第4王女から縁談を持ち掛けられておる」

 「セイちゃん、モンドとセシリアにはあとはセイちゃん次第なの」

 「え?」

 「国王様からおはなしをするということで黙っていたんだすまん」

 「それでセイよ、西の大国はこの国よりもはるかに大きく強い国だ悪い話ではないと思うが?」

 「な、なぜ私などが…恐れ多くて自分ではなんと答えてよいのか…」

 「セイちゃん?素直な気持ちで答えて大丈夫なのよ?」

 「は、はい…私は旅をするのが夢ですのでできればまだ結婚などは…ですがそのような大国からのお誘いを断った場合、最悪国同士の摩擦がおきるという可能性があるのであれば…国王様やハスク様に申し訳なく……」

 「そう、セイちゃんは行きたくはないけど国のことを考えるとどうしたらよいのかわからないということですわね?」

 「は、はい。自分のことですのに煮え切らず申し訳ございません」

 突然の話にガタガタ震え盛大に汗を噴出しながら涙目でセイジュは必死に頭を下げ続けた。

 「セイちゃんお顔をあげて?西の大国に行かずに済む方法を皆でかんがえました」

 「カリーナ様……」

 「そして1つだけ回避できる方法をみつけました」

 「王妃様ほんとうにございますか?」

 「ええ」

 エスメラルダとカリーナの言葉にセイジュは地獄から救われたかのような顔をした。

 「国王様?私がおしらせしてもよろしいかしら?」

 「うむ…エスメラルダ、君に任せる」

 「ありがとうございます。ではセイちゃんその方法ですが……」

 「は、はい」

 勿体つけるかのようにためたエスメラルダにセイジュはつばを飲み込み続きを待った。

 「あなたが3と婚約することです」

 「へ?」

 「セイ、もどってこい!」

 「かはっ!ハ、ハスク様申し訳ございません…しかし…あの」

 「気持ちはわかるが事実その方法しかない」

 「あ、あの3人とは?それは重婚になってしまうのでは…あの…」

 一瞬気絶したセイジュを呼び戻すためハスクが力いっぱい背中をたたくと我に返ったセイジュがもはや死人なのではというほど血の気がひけた顔でハスクに助けを求めるように尋ねた。

 「おちつけ、今相手をよぶ。はいってもらえ」

 ハスクが指示を出すとドアが開いた。

 「セイ様!私達がセイ様の相手です!」

 「は?」

 「私もです。くすっ、セイジュ様お顔がすぐれませんが大丈夫ですか?」

 「え?」

 「セイ!今後も私に任せておきなさい!」

 「え?えぇぇぇぇぇぇ!?」

 入室してきたのはメリダ、マーリンそしてアンジェリーナでセイジュは驚きすぎて後ろに倒れるところをハスクに支えられ何とか立っていた。

 「どう?セイちゃん!」

 「ど、どうもこうも!皆さん私ごときがご結婚できる方々ではありませんよ!」

 カリーナにセイジュは我を忘れ大声で答えていた。

 「あら、アンジェちゃんじゃ不満でもあるのかしら?」

 「ふ、不満などあるはずありません!アンジェリーナ様ですよ!?こんな僕にいつもキラキラした笑顔で接してほめてくださるあんなにお優しくお綺麗な方なんですよ?公爵令嬢様なんですよ?そんなお方とご結婚など!私の幸運すべて使い切って死んでしってもたりないほどのお方ですよ!?」

 カリーナがわざとらしく尋ねるとテンパったセイジュがワナワナと震え必死に思っていることを素直に答えた。

 「ふぇぇぇ!?」

 「まぁ!まぁ!」

 セイジュの言葉を聞きアンジェリーナは顔を真っ赤にし今にも倒れそうになっておりカリーナは嬉しそうに両手を組み笑っていた。
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