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64話

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 「アンジェだけ褒められて羨ましいです!」

 「そうね、私たちも同じ立場の妻になるのだから平等に接して欲しいわね」

 テンパるセイジュとアンジェリーナを見ながらメリダとマーリンが口をとがらせていた。

 「セイ、アンジェも落ち着きなさい」

 「ハスク様……申し訳ございません」

 「それでセイちゃん?どうなさいますか?」

 「え……」

 「この3人を妻とするか、西の大国にいってどのような方かもわからぬ王女を妻にするのか決めねばなりませんよ?」

 「あ、あの…お三方とそうなったとして、さきに打診してきたと向こうが言ってくるということはないのですか?」

 究極の2択をせまられたセイジュは、このままでは大変なことになると焦りながらも頭をフル回転させなんとか両方を回避できないか必死にかんがえながら質問した。

 「国王が打診されただけで正式な申し込みをうけたわけではないのよ」

 「正直に言えば多少の摩擦はおきるだろう」

 「それでは……結局ごめいわくを……」

 「大丈夫よ?だってセイちゃんはスカラーでクリエイターですもの」

 「ええ、教会が認めたスカラーが教皇様のお孫のマーリン様とクリエイターがそれを認めた国の王女メリダとそしてセイちゃんの素質を幼少から育てたホルマトロ家の令嬢アンジェちゃんとご成婚なさる…なにか問題でも?」

 「えぇ……」

 「ふむ、なるほどな。いわれてみればつながりがあるな」

 「ハスク様!よろしいのですか!?アンジェリーナ様が僕なんかとご結婚など!」

 「セイの人柄はしっておるしアンジェリーナが望むのなら特に反対はせぬよ」

 「なっ!?」

 「まぁ!あんな見た目もお心も素敵でお綺麗なメリダ様、アンジェリーナ様、マーリン様が義理とはいえ娘にきてくださるなんて……恐れ多すぎて実感が湧かないけど夢のようで嬉しいわぁ」

 「お、お母さんまで!?」

 「セ、セシリー…娘がほしいとはずっと言っていたが…さすがにこのお三方は……」

 緊張しながらも嬉しそうにはにかむ昔からどこか天然気質のあるセシリアにモンドは周りのメンツを見て顔を蒼くさせひたすら焦っていた。

 「セシリアお義理母様!私も可愛らしくお優しいお義理母様の娘になれて大変うれしいですわ!」

 「モンドお義理父様、セシリアお義理母様には孤児院にただいな貢献をしていただき感謝しております!私もお二人の娘になれるのをうれしくおもっております!」

 セシリアの年を感じさせない可愛らしいはにかむ笑顔はどことなくセイジュとにていてメリダとマーリンはきゅんと心を奪われ笑顔をむけて礼をした。

 「あ!あの!!」

 このままではなし崩しに3人と結婚してしまうと思ったセイジュは困惑しながらも勇気をふりしぼり声を上げた。

 「なにかね?」

 「あのそもそも私が旅にでれば問題ないのではないでしょうか…」

 「ふむ、それは国外に拠点をおくということかね?」

 「セイよ、結局モンド商会と自らの工房がこの国にあるのだ旅をしても拠点がかわらぬのであれば意味はなかろうよ」

 「あ゛ぁぁ…このままではここまでよくしてくださってる皆様の人生まで狂わせるほどのご迷惑をおかけしてしまうぅぅ……」

 ドラルとハスクの言葉にセイジュは頭を抱え地獄に落ちたかのような声をあげた。

 「セイ…大丈夫か?」

 「お父さん…こんな皆様にご迷惑をおかけして誰もいないところに気づかれずに消えたいよ」

 「そ、そうだな…父さんも生きた心地がしない…いっそ人の誰も来ないような場所に引きこもりたいくらいだ」

 「お父さん……はっ!それだよ!」

 「な、なんだ急に!皆様がおどろかれるだろう!」

 「あぁ!申し訳ございません!」

 モンドの言葉をきいたセイジュが何かを思いつき大声を上げた。

 「セイよ何を思いついたのだ?」

 「あ、あの!水があるだけでいいのでおおよそ人の来ない山や小島などを売ってくださる方をご紹介してください!!」

 「お、おちつけ!そのような場所を買い取ってどうするつもりなのだ?」

 「住みます!」

 「はぁ!?」

 「そして私が旅にでて行方不明になったということにしてください!」

 「まてまてまて!セイよ!お前の立場で失踪されたとあっては国のメンツがたたんではないか!」

 「いえ、国王様もハスク様も私に自由に見分を広げるようにと快く旅にだしたということにしていただければ」

 「なるほど…いい案かもしれん」

 「ドラル!なにをいう」

 「ハスク、我が国は彼を縛り付け自分たちのものにはしておらず自由を謳歌する協力をしておる…ちがうか?」

 「ドラルお前……問題を先送りしあとあとつけが回るのだぞ!」

 「今は時間を稼げればよい!メリダをわざわざ嫁に出す必要もなくなるだろう!」

 「お父様!」

 「あなた……」

 激怒するハスクにドラルが言った言葉にメリダはショックを受けエスメラルダはあきれ果てたようにドラルをみていた。

 「くっ!国王たる余がそう決めたのだ!セイジュには気に入った場所を1つやろう!すぐに場所を選び動いて構わん!」

 「は、はい!」

 その後、ドラルの言葉でセイジュのみ土地選びに場所を移動し選んだ場所は王派で忠実な文官が手続きをし場所を口外しないことをハスクたちに伝えた。

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 「国王はそこまで駄目なやつでしたか…」

 「で、では、アンジェちゃんとの婚約はどうなるんですの!?それにもうセイちゃんとは会えませんの!?」

 ホルマトロ家に返ったハスク、カリーナそして黙りこくり死んだような顔をしているアンジェリーナに話を聞いたハンスとアメリアが怒りと困惑していた。

 「セイちゃんはそんなに婚約なさるのが御嫌だったのかしら…」

 「いや、彼の性格上もしアンジェ達と力任せに結婚した場合を考えたんだろう」

 「どういうことですの?」

 「もし向こうがあきらめなかったらどうなる?」

 「え?……」

 「最悪はセイを亡き者にするか、アンジェたちをさらうもしくは……」

 「!?」

 「皆に迷惑をかけれない……それは彼の本心さ、とくにアンジェを危険にさらすそれは彼の矜持に反するんだろうたとえそれで自分が罰をうけようがアンジェ達から嫌われようがね」

 「セイちゃん…」

 ハンスの言葉を聞いたホルマトロ家の全員はセイジュはそういう人間だとわかっているだけに納得してしまい、その日まるで葬式のようになっていた。

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 「ん?あら?セルジュどちらにいくの?」

 「少々寄り道にございます」

 あれから1週間たち学園の帰り馬車がいつもと違う道を走っていることに気づいたアンジェリーナだったが城での話し合いのショックでほぼ抜け殻のようになっておりセルジュの言葉に頭をかしげながらもそのまま馬車に揺られていた。

 「お嬢様おつきになられました、少々おつきあいいただきませんか?」

 「え?え、ええ」

 馬車がとまった場所は人目につかない廃墟が立ち並ぶ旧市街地と呼ばれている場所で、一昔前は盗賊や孤児たちがたむろっていたがそういう人々すら寄り付かないほど荒廃が進んでいる場所だった。

 「こちらにございます」

 きょろきょろとあたりを見渡しながら歩いていたアンジェリーナにセルジュが1軒の朽ち果てた家の中に案内しアンジェリーナは恐る恐るセルジュの後に続いた。

 「まぁ…このような場所に階段が……」

 セルジュが壊れた家具を軽々とどかすと床に鉄の扉があり地下へと続いておりアンジェリーナは先を歩くセルジュの後を顔色を悪くしながら必死についていった。

 「失礼いたします」

 セルジュが行き止まりの岩壁に声をかけるとゆっくりと岩壁が開き地下に光がさした。

 「セルジュさん、ご足労をおかけして申し訳ありません」
 
 「いえいえ!童心に返ったようでわくわくさせていただきました」

 「え?……セ、セイ!?」

 「ご無沙汰しておりますアンジェリーナ様、ご足労頂きありがとうございます」

 「え?え、ええ…ご無沙汰しておりましたわ…って!今までどこにいたんですの!?ここはなんなんですの!?」

 「お嬢様こちらをお飲みになられ少々落ち着きになられてはいかがでしょう」

 「セルジュあ、ありがとうございます」

 セルジュが工房でのようにいつもの感じでお茶とお菓子をさしだしアンジェリーナは勧められた椅子にすわりお茶を一口のみほっと息を吐きだした。

 「それで?私たちとの婚約をお断りしてまでこんなところでなにをなさっていたんですの?」

 「アンジェリーナ様との婚約については城で言った通り大変光栄で夢のようですがあのような理由ではアンジェリーナ様にも皆様にも失礼ですしなにより…危険な眼にさらすことになりうると考えまして……申し訳ございません」

 「くっ!ふ、ふん!それではまるで泣く泣くしかたなく婚約をお断りしたように聞こえてしまいますわよ?本心では旅に行けなくなるのが御嫌だっただけではありませんの?」
 
 「まだ二人で旅に行ってませんしね」

 「い、いがいですわ!私とのお約束などとっくにお忘れなのかとお思いでしたわ」

 「僕はアンジェリーナ様との約束だけはたがう気はありませんからね」

 「ふぇ!?お、お口だけはどんどんと上手におなりになって!もう!」

 朗らかに笑いながら答えるセイジュにちょろいアンジェリーナは簡単にデレた。

 「アンジェリーナ様にだけこれから先をおみせしたくご足労願いました」

 「え?」

 「こちらにどうぞ」

 セイジュが部屋の奥の扉をひらいてアンジェリーナを招き入れた

 「こ、これはなんですの!?」

 驚くアンジェリーナの声が反響し響き渡った。
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