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76話

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 「それでは5国よりメーカーの位を授ける」

 「有難き幸せ」

 誕生祭まであと1ヶ月を切ろうとしている中、王城で各国の大使となったソフィア、アメリア、ブランカ、エイミーとともに代表しリカルドがセイジュにメーカーの称号をあたえた。

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 「しかし君の正装はとんでもないことになったね!」

 「緊張で生きた心地がしません……」

 授与式が終わり王城内で関係者たちやそれぞれの家とつながりある貴族たちをあつめパーティーが開かれた中、ニヤニヤしたハンスに言われセイジュはなにも飲食できず顔を蒼くしていた。

 「セイちゃん、そのローブも素敵ですわ」

 「アメリア様ありがとうございます、これはアンジェリーナ様方が色々デザインにご助力してくださったので」

 アメリアの言葉にセイジュは授与式には新調したローブでなければならないと婚約者たちに言われ5人のアイディアをまとめカリンがデッサンにおこしたものをセイジュが言われるがまま必要な素材を用意し王家御用達の仕立て屋が仕立てた逸品であり主なデザインは今までの物を周到し黒と金を基調としたもので左胸にスカラーと5つのメーカーの勲章がつけられており、右の肩あたりになる部分にはマリアンヌ教会のマークを中心にホーネット家を筆頭に婚約者たちの家のマークが囲うように刺繍されていた。

 「セイジュ君これで君は5つの国で最上級の国賓扱いとなった。その5つの国々には検問なしでいけるようになった、いつか機会があれば各国をまわるのもいいかもしれんぞ」

 「い゛……僕などに国賓あつかいなど…」

 「セイ、そうでもないよ?すでに君から恩恵を受けている国などもあるからね」

 「そうですわ!私の祖国ではセイちゃんのおかげで鉄と塩そして砂糖の輸出がはじまって新しい産業として雇用を生んでおりますわ!」

 「あ、製鉄所など順調に稼働なさっているのですね」

 「ええ!ハスクお義理父様が現地で買い付けと製造そして各国への販売をおこなってくださって雇用と税収がふえましたわ!」

 「おお!さすがハスク様!すごいですね!」

 「まぁガラスに必要な素材まで取れたことは嬉しい誤算であったな」

 アメリアが嬉しそうにハスクとハンスに笑顔をむけハスクはどこか自慢げに笑っていた。

 「まぁ、どの国も多少なりとも君の影響で恩恵をうけているのは間違いないね」

 「え?ブルリック様、僕はそのようなことはしておりませんが…」

 「いえ?5国間の交流が今後しっかり確立されていけば西の大国に対抗しうることになるのは各国理解しておりますからねぇ、そしてその縁を繋いだ根源はまちがいなくあなたですよ」

 「そのようなことは……」

 にっこりブルリックにほほ笑みを向けられセイジュは自身への評価が高すぎることに困惑しひたすら汗を吹き出していた。

 「それに教会も恩恵をうけていますしね」

 「え?」

 「この国のが各国にも存在感を示し始めていますから」

 「え?教皇様派ですか?」

 「あっはっはっは!教会だって権力の派閥がありますよ!そして現教皇様の派閥でいまもっとも強いカードはセイジュ様あなたじゃないですか」

 「えぇ!?」

 苦笑気味にいったスタークの言葉にあたりを見渡すと全員が頷いていてセイジュの胃は限界をむかえそうになっていた。

 「まぁ細かいことを君は気にしないで今まで通りでいいさ」

 「はぁ~ありがとうございます」

 「さて、これで向こうがどう出るか楽しみだねぇ…くっくっく!」

 「ハンス…こういう時、おまえが味方で本当に良かったとおもっているよ」

 「それはそれは有難きお言葉!国王様」

 にやにやと楽しそうなハンスにリカルドが深いため息をついた。

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 「まさかこのタイミングで…しかも5国同時に授与なんてありかよ!」

 「アキュオス様どういたしましょう!」

 「下手に手を出して国同士の摩擦を生むわけにもいかない…が、様子を見て接触できるなら接触していこう。一気に距離を詰める必要はない必ず隙が生まれるはずだ」

 「はい、かしこまりましたわ」

 アキュオスが思案した言葉にダリアは神妙な顔をし頷いた。

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 「んー、少し操作がシビアすぎますかね?」

 「い…いえ、そのようなことはないかと」

 「一応、上がりきっても下がりきってもあのスプリングがあるので大丈夫なようには設計してますがブレーキで止まるようにしてください」

 「はい……」

 ナラクと呼ばれる崖に流れ落ちる滝の水源を使いいくつか水車を作り、レバーが2本あるエレベーターのようなものをセイジュはつくりあげセルジュとリコーとともに使い方をおしえながらの試験運転を何度かこなしていた。

 「ひゃぁ!ゆ、床が浮いていきますわ!!」

 「エレベーターという装置にございます。これで皆さま階段を上り下りせず最上階までお上りになられます」

 「そ、そうなんですのね…それは大変楽になりますわね」

 「はい、ただ試作品とのことでございますのでお慣れになられるまでは私どもが操作させていただきます」

 「わかりましたわ」

 一番先に帰ってきたアンジェリーナが初めて乗り驚いたが、さすがに一番セイジュになれているのか立ち直りが早く結果一番最初に操作も覚えた。

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 「このままではセルジュとリコーの負担が大きすぎますわ」

 「ふむ、あいわかった。相談してみよう」

 一生懸命働いてくれるセルジュとリコーの負担を考えメイドと執事をふやしてほしいとアンジェリーナがハスクに進言し、婚約者の親たちが話し合いそれぞれの家から2名をつけることにきまった。なお、執事長はセルジュ、メイド長はリコーとなり二人は主に全体の指示とセイジュとアンジェリーナにつくことにきまった。

 「セイジュ様ご無理をなさらず」

 「え?いえいえ大丈夫ですよ。お二人の部屋のようなスペースが取れないので後から来ていただいた方々には多少狭い部屋で不自由をさせてしまうのが心苦しいですね」

 「いえ、多少部屋が小さいだけで間取りなどはそのままなのでお気になさらずに」

 「そうですか?まぁ、あまり大げさに増改築すると目立ちますし我慢して頂きましょう」

 「執事やメイドにそこまでおきをつかわずに」

 「そういうわけにはいきませんよ、せっかく一緒の場所にすむ仲間ですしお仕事とはいえ色々やっていただいてますから」

 セイジュのやさしい言葉にセルジュとリコーだけではなく新たに増えたメイドや執事たちも嬉しそうに笑顔で仕事にはげみだした。

 「リコーメイド長!わたしの部屋に!!」

 「あ、ああ…好きに使って構いません。セイジュ様からのお心遣いです」

 「えぇ!?本当に使ってもよろしいのですか?」

 「ええ、もちろんよ」

 自身も体験したせいで焦る新しいメイドが何を言いに来たのか察し何でもないかのように答えてみせた。

 「皆に1つだけ言っておきます…セイジュ様の優しさを踏みにじったり、また泥を塗るような行為をせぬように気を付けてください。セイジュ様の執事、メイドもまた一流だと思われるよう今後も力をあわせがんばりましょう」

 「はい!」

 全員が待遇の良さに驚く中、それぞれ席をおく家でみたセイジュの優しさが自身にもむけられていることに嬉しさと誇りを持ちまた他のものにこの座を取られぬよう全員がセイジュのために精一杯仕えようと一致団結した。

 「あ、あの皆さん僕ではなくアンジェリーナ様やメリダ様などに御付きなはずでは…」

 「おなじことにございます。なにか問題でもございますか?」

 「い、いえ…ありがとうございます。なにか不便な点などがあればお教えください」

 「はい!」

 有無を言わせぬリコーの笑顔に屈したセイジュが全員に頭を下げ工房へと戻っていった。

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 「セイジュ様、皆様がお越しになられました」

 「あ、はい!ありがとうございます!」

 誕生祭まであと4日とせまる日、セイジュは婚約者たちの家族全員を魔の山にある家に招待した。

 「ほぉ!さすがに立派じゃないか」

 「ハンス様、皆様もご足労頂きありがとうございます」

 「セイちゃん!あの乗り物はスリリングで楽しいものですわね!」

 「アメリア様、帰りはさらに爽快にございます」

 「まぁ!楽しみだわ!」

 トロッコのスピードに興奮しっぱなしのアメリアにセルジュが誇らしげに答えた。

 「それでセイジュ君、この集まりはなんなんだい?」

 「はい、ひとまず新居が完成しましたのでお披露目をしたほうがいいといわれまして」

 「なるほどな」

 「私たちがご案内いたしますわ!」

 共通スペースや工房などをセイジュが案内しおえると各家族に分かれそれぞれの私室へと自身の家族を案内し始めた。

 「まぁ!これはすごいですわ!!」

 「アメリアお姉さま!危ないのでそう興奮なさらず!」

 「つきましたわ!」

 「まぁ!!」

 アンジェリーナがセルジュとともに自身の私室へと到着するとカリーナとアメリアが感嘆のこえをあげた。

 「こちらをお母様!こちらをお兄様とソフィアお姉さまのお部屋にしたんですよ!」

 「え、ええ…ありがとうございますメリダちゃん」

 「セイ様がここだったら息抜きにゆっくりできますし何かあって避難しても大丈夫なようにとお作りしてくださいました!」

 「まぁ!セイちゃんったら相変わらず優しいわ!」

 「屋上にはガラス張りのテラスもございます。そしてセイジュ様よりこの塔がホーネット家の私室としてあてがわれておりますのでごゆるりとお休みしていただければとのことにございます」

 「は?こ、この塔まるまる1塔を日ごろメリダ1人でつかっておるのか」

 「さようにございます」

 「なんと…はっ!では他も同じなのか」

 「塔内の間取りや装飾などはメリダ様のご希望によりこのようになっております」

 「そ、そうか…」

 驚きっぱなしのリカルドをよそに早速屋上のテラスを見て感動したエスメラルダとソフィアがメリダとともにお茶を飲み色々な話をした。

 「ほー!このような場所に祈りの場が!」

 「はい!毎日朝と夜のお祈りは欠かしておりません」

 「そうかそうか」

 「おじい様のお部屋もあるのですからいつでもお越しくださいね!」

 「ほっほっほ!心遣い感謝するよ」

 マーリンが日当たりが一番いい場所に礼拝場をつくっていてそれをみた教皇は驚きっぱなしだったが自室まで用意してくれた孫とセイジュへの感謝で心が温かくなっていた。

 「セイジュ様、側室の我が娘も正室の皆様と変わらぬ対応をしていただき感謝いたします」

 「ええ、カリンを大事にしていただきありがとうございます」

 「え!?ダン様、ブルリック様まで!なにを頭り前のことを!と、とりあえず頭を上げてください!!」

 夜になり、食事の準備ができセイジュが工房から食堂へとつくと全員がすでにそろっていてセイジュは恐縮しながら席に着くと同時にダンとブルリックから深々と頭を下げられすぐに立ち上がりあたふたした。

 「では、すまんが母とソフィアをよろしく頼む」

 「お兄様お気をつけて!また是非いらしてくださいね!」

 「ああ」

 「では私たちもこれで」

 夕食が和やかにおわり執務のためリカルドをはじめ各家の男たちが岐路に付いた。

 「誰の目にもとめられずゆっくりできるのは素敵ですわね!」

 「ええ、ほんとうに」

 アメリアの言葉にソフィアが笑顔で答え、各家の女性たちは夜遅くまでおしゃべりを楽しんだのであった

 
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