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80話
しおりを挟む「セイ様お一人で大丈夫でしょうか」
「セルジュもリコーもおりますから大丈夫ですわ」
「どちらにしてもはやく戻りたいですわね」
「はい!」
「そうですね」
学園での誕生祭が始まって早々5人は笑顔で送り出してくれたセイジュを思いすでに帰りたくなっていた。
「こちらにいらっしゃったのね」
「エミリーお姉さま?それに皆様もどうなさいましたか?」
「ふふふっ、皆様をお守りするように賜ったのですわ」
5人の元にエミリー、アメリア、ブランカの3人がにこやかに現れハンスたちから妹たちと行動を共にするよう頼まれていた。
「マーリン様、皆様もご機嫌いかがですか?」
「あらアキュオス様ごきげんよう、お楽しみいただけてますか?」
「ええ、こちらの国は豊ですねパーティーなど我が国とは規模が違いますよ」
「そうですか、あと1週間でお戻りになられるのですから楽しんでくださいね」
「ええ、ありがとうございます。それでマーリン様最後のダンスタイム幼馴染のよしみでご一緒していただけませんか?」
「え?私共は婚約者がある身なので学園のルールに従わなければなりませんので申し訳ありませんがお受けできませんわ」
「ルールとは?」
「婚約またはご成婚なさっていてお相手が参加していない方はダンスに参加しなくてもよいのですわ」
「へ?そ、そうなのですか」
「ええ、必ずではありませんがほぼ参加いたしませんわ、貴族同士などが多いのであらぬうわさが経たぬようにしておりますのよ」
「な、なるほど…ですが必ずではないのでしたら」
「私はマリアンヌ教徒ですから不貞行為だと思われる行動は慎むことにしておりますので申し訳ございませんがお断りさせていただきます」
「そ、そうですか…ではどなたか…」
「アキュオス様にはダリア様がおいでではないのですか?」
「え?いえ、彼女とはそのような関係では…」
「まぁ!そうでしたの!?私達はてっきりそのようなご関係だとおもっておりましたわ!!」
汗をかき必死に否定しようとするアキュオスにカリンが大袈裟に驚いてみせた。
「あら、ダリア様ですわ」
「え?あ…皆様ごきげんよう」
カリンの声に近くにいた数人が注目するとその中にいたダリアをみつけたカリンがにこやかに声をかけると少々焦りながらもダリアが挨拶に来た。
「ダリア様、ダンスのお相手はもうお決まりなのですか?」
「え?い、いいえ…」
「そうですか、ではもしよろしければアキュオス様のパートナーになっていただけませんか?」
「え!?」
「本来ならば幼馴染としてご一緒してさしあげたかったのですが私は婚約している身ですのでダンスには参加いたしませんので、もしよろしかったらお願いできますか?」
「え、ええ…アキュオス様が私などでよろしければ…」
「ありがとうございます」
ただの男爵令嬢のダリアではマーリンからのお願いを無下にはできないということを知っていながら笑顔で圧をかけ了承させるとマーリンは満足げにうなずいた。
「誕生祭以外でも仲良くしていらっしゃるようなので気心知れている方がパートナーになられるのはアキュオス様とてよろしいことだと思いますわ」
「そうですわね、本日のダリア様のお召のドレスもアキュオス様の国の旗とおなじ水色で素敵ですしお似合いだとおもいますわ」
「わぁ!美男美女で素敵ですね!まるでご夫婦のようですしもし本当のご夫婦になられたらダリア様は可愛らしく美しい王妃様ですね!」
「!!!」
アンジェリーナとカリンの言葉を聞き両手を組みうっとりするようにいったマチルダの言葉をききダリアは何かをおもったのか驚きの顔をしカリンはある種天然のマチルダからの思わぬ援護射撃にちいさくガッツポーズをとっていた。
「正室とはいかないまでも側室なら問題もありませんし、この国ともそれなりのつながりもおもちになられます。双方悪いお話ではありませんものね」
「そうですわね」
わざとらしくダリアにメリットをいうカリンの言葉にアンジェリーナが頷いた。
「…………」
「ダリア様、私達はあなたが幸せになれるようお祈りしております」
「!!マーリン様ありがとうございます!私王妃にふさわしくなれるようがんばります!」
「なっ!?」
「ダリア様ならばきっと素敵な王妃様になられますわ!がんばりになられて!」
「ちょ!ちょっとおまち…!」
「はい!皆様もセイジュ様と末永くお幸せになられることを心よりお祈りいたします!」
「ええ、ありがとうございます」
沈黙し何かを考えていたダリアの背中を押すようにマーリンが祈るようにいうとぱっと覚悟を決めた顔をしたダリアがアキュオスの腕に自身の腕を絡ませ満面の笑みで礼を言い何かをいいたそうにしていたアキュオスを牽きづるように連れて行った。
「面白い展開になりましたわね」
「ええ、アメリアお姉さま」
「カリンちゃんほどの知恵をお持ちなならば私たちの前でだけは演技でとも考えられますが…」
「エミリーお姉さまあれが演技だと?」
「ふふふ、無理そうね」
後ろで必死に笑いをこらえていたアメリアたちがダリアとアキュオスが見えなくなると我慢しきれず笑いながら話し出した。
「とりあえず、もうすぐ立食も終わりあとはダンスだけになりますわ」
「では馬車を用意してもらいましょう!」
「そうですわね」
「ああ、私たちもご一緒してもよろしいかしら?」
「え?お姉さま方も?」
「ええ、ハンス様が色々とおやりになられることがあるそうよ」
「そうなんですの」
「ええ、お義理母様方もダイナン邸にいってらっしゃるようで私たちはセイちゃんの元にと、よいですか?」
「もちろんですわ!」
その後、ダンスの時間になるころに全員が馬車でホルマトロ家といきそこからトロッコでセイジュの待つ家へと帰っていった。
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「皆様がお帰りになられました」
「皆様おつかれさまでした」
執事の言葉にセイジュが入り口まで出向き全員を笑顔で迎え入れた。
「セイちゃん?私たちまで連日お邪魔してもうしわけありません」
「え?アメリア様そのようなことをお気になさらず!皆様もいつでもお気軽にお越しくださってください」
「ふふふ、ありがとうございます」
セイジュが用意していたいくつもの小さなお菓子をそれぞれ好きなようにつまみながら改めて礼を言うアメリアたちにセイジュは来てくれたことを嬉しそうにいうとアメリアたちもアンジェリーナたちも笑顔をうかべた。
「専用のお部屋をあてがっていただいてある程度の着替えなどもあるのでつい居座ってしまいそうになりますわね」
「お気持ちはよくお分かりになられますわ」
エミリーの言葉にブランカも笑顔で同意した。
「お好きな時にお好きなだけごゆっくりしていってくださいませ」
「アンジェリーナ様ありがとうございます」
「ところでセイ様は本日はなにをなさっておいででしたの?」
「本日セイジュ様は何かを制作なさっておいででした」
「なにか……ですか」
「はい、セイジュ様のお考えは私などでは測れるようなものではありませんので申し訳ございません」
「いえ!きっと私も完成してご説明していただくまで理解などできませんもの!」
アンジェリーナの後ろに控えていたリコーが恭しく頭を下げながら報告しそれを聞いた全員が自身もきっとわからないだろうし、アンジェリーナ付きのはずのリコーはすでにセイジュのほうを優先していることにあえて触れないようにしていた。
「私一つずっと疑問に思っていたのですがセイちゃんは日ごろどのような生活をなさってるの?」
「えっと…それは…」
「朝日が昇るころにご起床なさり、取引先や現在おすすすめしていらっしゃる事業の書類をおまとめになり夜は鍛錬をなさった後、読書をしご就寝なさっておりますが私も学園に言っている間のことはわかりかねますわ」
「そう。リコー昼間セイちゃんはなにをなさってるの?」
「はい、主に色々なご制作にご尽力しておいでです」
「あら、ではお外には出ていないのかしら」
「いえ、ダイナン領やこの邸宅の周辺などを中心にご活動なさっておいでです」
「そうなのですね、お体には気を付けるようお願いしますね」
「かしこまりました」
アメリアの質問にメリダをはじめとした婚約者たちはセイジュの活動を把握しておらず唯一カリンだけが朝と夜だけ知っていたことに驚いていたがそれぞれの婚約者たちは恥ずかしくなっており今後セイジュがなにをやっているのかもっと一緒にいようと心に誓っていた。
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「んーー!!!」
「アンジェ様どうでしょうか」
「セイ!最高ですわっ!!」
「お気に召していただけたようでよかったです」
「はぁ~この甘いクリームにチョコレートそしてわずかに果実の酸味がアクセントとなり最高の出来ですわ!」
「この甘い匂いはなんですの?」
「アメリアお姉さまこれですわ!セイの新作ですの!」
「え!?そうなのですか?」
「はい、完成したのでアンジェリーナ様にご試食をお願いしていたところです」
「セイ!お姉さまにもお一つお作りになって!」
「はい、ではアメリア様少々お座りになりお待ちください」
「ええ!お願いいたします!!」
セイジュが工房に設置してある厨房へむかうのをアメリアはワクワクしながら見送った。
「こちらです」
「まぁ!可愛らしいお菓子ですわ!」
「お姉さま!クリームが溶け崩れるまえにお早くお食べしてみてください!」
「え?ええでは頂かせていただきますわ!……んんんんーーーーー!!!!」
「お姉さまどうですか?すごいでしょう!」
「アンジェちゃん最高ですわ!!セイちゃんはやはり大天才です!!」
「お気に召していただけたようで嬉しいです」
「はぁ~ん!セイちゃんやっぱりあなた最高に天才で最高に可愛いですわぁ~!!!」
「ん!!お姉さま!おはなしくださいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
柔らかくはにかみながら照れ笑いするセイジュに我慢の限界をこえたアメリアがぎゅっと豊満な胸にセイジュの顔を抱きしめるとクレープもそっちのけでアンジェリーナが口の周りにクリームがついたまま必死に引きはがそうとした。
「はぁ~…ますます居座ってしまいそうですわぁ~」
全員にクレープをふるまうとエミリーがうっとりしながら言うと全員が苦笑しながらも同意しながら夕方にそれぞれの屋敷にへと帰っていった。
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