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83話

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 「くそ!まだ国につかないのか!」

 「申し訳ございません」

 「時間が限られているんだ!できるだけ急いでくれ!」

 自国に急いで戻っているアキュオスが今日もイライラしながら執事へと怒鳴り散らしていた。

 「くっ!この国は無駄に暑いな!」

 今日の宿へとたどり着いたアキュオスがバタバタと手で仰ぎながら悪態をついていた。

 「よぉ、随分イラついているじゃないか」

 「ん!?誰だ貴様!!」

 「それはまぁいいじゃないか、今日はいい話を持ってきた」

 「そんなものはどうでもいい!貴様どうやって入ってきた!」

 「まぁ細かいことは気にするな、話を聞け。このまま男爵を正室にするよりはマシな話だ」

 「なに!?貴様なぜそれを!」

 「色々つてがあるのだ。それでどうする?聞くのか、聞かないのか?」

 「くっ!……まあいい、話すだけ話してみろ」

 「ああ、実はな……」

 宿の部屋に突如あらわれた大柄だとわかるが全身をすっぽりローブにおおわれ顔もあまりよくわからない見るからに怪しい男にアキュオスは警戒しながらも話だけは聞くことにした。

 「……というわけで単刀直入に言えば手を組まないかという話だ」

 「なるほど…それの勝算はどれほどなのだ?」

 「ああ?100%にきまっているだろう?西の大国がついているのだ」

 「そうか…」

 「とりあえず、お前はこれからこの国の王妃と第二王女にアポをとれ」

 「ん?どうしてだ?」

 「ここの王妃と第二王女はだからだ」

 「ちっ!わ、わかった」

 男の話を聞きアキュオスが使いを出した。

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 「急な話に対応してくださり感謝いたします」

 「いえ、それでどのようなご用件なのかしら?」

 翌日、男を引き連れお忍びという形で王妃と王女との面会にアキュオスはこぎつけていた。

 「ここからは私が…………という話なのですがどうでしょう」

 「なるほど…西のお力をお借りしてあなたがあの国の王となり今いる方々をことごとく追放なさると」

 「ええ、その暁には大国の中枢を担う貴族でも追放されたをもすら手に入れることができますがいかがでしょうか」

 「魅力的なお話ですわね…ですが我が国が西の属国になるのは少々抵抗がありますが?」

 「同盟国となるので属国というわけではありません。ちゃんと独立したまま国を維持できると確約をとっております」

 「そうですか…あなたと我が国のメリットはわかりましたがアキュオス様にはどのような?」

 「私が王になった国との同盟と西の大国からのバックアップの確約にございます」

 「なるほど…わかりましたわ!王はきっと反対なさると思いますので今後は私が対応いたします」

 「お、お母様?そのようなことをご勝手にお決めになって大丈夫なのですか?」

 「この国が発展したら王も何も言いませんわ!」

 「そうですね、ありがとうございます。感謝いたします」

 アキュオスと男、そして王妃は王女の心配をよそにニヤリと笑いあい今後の計画を話し始めた。

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 「あのようなことをおっしゃっていらっしゃったけど……」

 アキュオス達との話し合いを終え自室に戻った王女はその後王妃に言われたことを思い出していた。

 「あなただってアメリアあの子だけが幸せになっているは楽しくないでしょう!?」

 王妃の言葉に一瞬、幸せを見せつけるようにしていたアメリアを思い出し苦々しい顔をしたが元はといえば王妃の言葉を鵜呑みにし無理やりアメリアに押し付けた婚約だったこと、そしてアメリアはずっと祖国を思い色々と支援をしていることを思い出し、自分が同じ立場だったらそのようなことをしていたかを考えアメリアだったから今の幸せを手に入れているのではないかと思い悩んでいた。

 「失礼いたします。こちらを」

 「これは?あら、アメリアからね」

 ハスクがアメリアの祖国に工場をたて商売をはじめたころから定期的にアメリアからエヴァへ手紙が届いており、内容は工場からアメリアのいる国へ出荷する際、一度遊びに来ないかという内容で出発日が記載されていて護衛もグラドスがついているので大丈夫な事、滞在もホルマトロ家が用意することが記載されていた。

 「ふぅ~…少し前までならアメリアが自慢したいだけと思っていたのですが…」

 欲におぼれ見知らぬ怪しい男の話に乗ってしまった時の王妃の顔を思い出し自分ももしかしたら今まであのような醜悪な欲の塊のような顔をしていたのではないかと後悔し昔からアメリアは自分を慕い接してくれていたことを思い出していた。

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 「ということでアメリアから誘いを受けたのですが」

 「ふむ、ハスク殿には色々世話になっておる。準備をさせるゆえ言ってきてくれるか?」

 「よろしいのですか?ありがとうございます」

 意を決し国王へアメリアの元へ行ってみたいことを伝えると王は柔らかな表情で心置きなくいってこいと言ってくれた。エヴァは少々驚いたが王である父親は今までも3姉妹それぞれを差別することなく全員に平等に接してくれていたこと、そして周りをみれば城にいる人々も同じように優しく接していてくれたことを何か憑き物が落ちたかのように我に返ったエヴァは周りを落ち着いてみることができそれに気づいた。

 「あの子が愛されているのはあの子も周りに愛をもっているからだったのね」

 どこか疲れどこか清々しいそんな不思議な感覚をもちながらエヴァはアメリアに遊びに行くことをたしなめた封書を書いて送り、その後アメリアのいる国へと向かった。


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 「はぁ~…エヴァお姉さまは今どのへんでしょうか」

 「くっくっく、グラドスからの定期報告では明日の昼には着くだろうと言っていたよ」

 「まぁ!!楽しみですわ!」

 「歓迎のパーティーの用意をセイに頼んであるよ」

 「ありがとうございます!」

 「しかし急に仲良くなったようだね」

 「んー、幼少のころは本当に私たちは仲の良い姉妹だったのですが、大きくなるにつれお母様が……」

 「ああ、そうか」

 「はい、特にエヴァお姉さまはお母様に似てらっしゃったので一番かわいがられておりましたわ」

 「ふむ、それで手元からだしたくなくここにアメリアを送ったということか」

 「ええ、そして今の自分の境遇と私の境遇の差にさらに溝が深くなったと思っていたのですが…私はやはりエヴァお姉さまのことが嫌いになれず…」

 「そうか」

 「はい、なので定期的にお姉さま方には手紙を送っていたのですがこの間きた手紙はまるで昔の優しかったエヴァお姉さまにもどったように感じる文で…もしかしたらまた仲良くできるのではないかとお会いになるのが多少怖くはありますがそれよりもワクワクしているのですわ」

 「ならとびっきりのもてなしをして楽しんでもらおうじゃないか」

 「はい!」

 ハンスの言葉にアメリアが満面の笑みで頷きホルマトロ家にきているセイジュとアンジェリーナの元へむかった。

 「アメリアお姉さまわかりましたわ!お任せください!!」

 「アンジェきみが何かをやるわけではないだろ?くっくっく」

 「む!アメリアお姉さまのお姉さまは私とセイにとってもお姉さまですわ!私だって心からの渾身のおもてなしをしてみせますわ!」

 「そうですね、僕もがんばります」

 「アンジェちゃん!セイちゃん!ありがとうございます!!」

 「アメリアお姉さまお任せください!スカラーでありクリエーターでもあるセイの本気をお見せして差し上げますわ!ね?セイ!」

 「肩書だけがすごくて申し訳ありませんけど、の精いっぱいのことをやらせてください」

 「はっはっは!ありがたいがやりすぎないようにきをつけてくれよ?」

 「わかりましたわ!」

 アンジェリーナがドンとだんだんと豊満になってきた胸をたたいて答えた。

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 「この度はお招きいただきまことにありがとうございます」

 「ようこそ遠路はるばるお越しになられました感謝いたします」

 「エヴァお姉さま!!ようこそおいでくださいました!」

 「ええ、アメリアお招きありがとう」

 翌日、ホルマトロ家へと到着しハスクとカリーナに挨拶をしているエヴァの元にハンスとともに現れたアメリアがぱっと輝くような笑顔を浮かべエヴァへ抱き着くと困惑した顔をしたエヴァだったが優しさが伝わったのか軟かな笑顔で抱きしめ返していた。

 「エヴァ様ようこそおいでくださいました」

 「ご無沙汰しております。ようこそお越しくださいました」

 「アンジェリーナ様、セイジュ様お久しぶりですね。お元気そうでなによりですわ」

 入室しにこやかに出迎えてくれたアンジェリーナとセイジュにエヴァも穏やかな笑顔を浮かべた。

 「エヴァお姉さまはいつまでこちらに居られるのですか?」

 「特にお父様からは言われていないので何とも言えないけれど迷惑にならない程度かしら」

 「エヴァお姉さまを迷惑だなんて思いません!ずっといてくださってもかまいませんわ!」

 「くっくっく!そうだね」

 「アメリアお姉さまのおっしゃる通りですわ!お姉さまが増えるなんて素敵ですわ!ずっとこの国にいてほしいですわ!」

 「向こうの国でも良くしていただけましたしね、お優しいお姉さまがいらっしゃってよかったですね」

 「ええ!」

 少し落ち着きお茶を飲みながら今後の話をしいつまで滞在できるか尋ねられ決まってなかったことに気まずそうに答えたエヴァだったがアメリアやアンジェリーナが心から一緒にいてほしいという気持ちが伝わりむずがゆくもうれしく思った。

 「お二人ともありがとうございます。素直にうれしいわ…」

 「お姉さまなにかお悩みでもおありになられるの?」

 「い、いえ!やっと着いたと一息ついてしまっただけですわ」

 「お疲れなら部屋で一度お休みになられてはいかがですか?」

 「いえ、大丈夫です。お心遣いありがとうございます」

 暖かく出迎えてくれているホルマトロ家の面々を陥れようとしている母を思い出し伝えるべきか黙っているべきか一人悩むエヴァは歓迎パーティーまでの間、アメリアに邸内を案内されしばし心を癒した。

 
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