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第3章 ―旅情初編―

家族

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 応接室で話し合いをしていたセナ達であったが、食事の時間となり食堂へ移動した。

 「皆さん随分話し込んでおられたようですわね?」

 席に座るギルスとセナへエミルが声をかけてきた。

 「あぁ、ガルハルトやセバスの意見も聞いてみたかったからな」

 手を拭きながらギルスが答え、満足したのかエミルがメイドたちに食事の開始を告げた。

 「セナ様もせっかくというのに、ゆっくり休むこともできませんでしたわね」

 「いえ、元々は私の思いつきに、皆さんを巻き込んでしまったことですので、逆に申し訳なくって」

 「はっ!なにを水臭いことを」

 エミルの言葉にセナが申し訳なさそうに答えると、ギルスが問題なしとばかりに鼻で笑い飛ばした。

 その後も終始和やかに食事が進み、その場にいたメイドや執事たちも自然と笑顔となっていた。

 「着いてすぐに城へ使いをだし、明日の昼から王都にいる上位貴族を招集してもらった。ゆえに朝のうちに王に会い許可と協力を得れるようがんばろうではないか」

 「何から何まで任せてしまって申し訳ありません」

 明日の予定をざっくりと伝えたギルスに、セナが申し訳なさそうに答えた。

 「ふふふっ。先ほども言ったがな?水臭いことをいわんでくれ。これはもはや、我々ブレイダー家のなすべきことになったのだからな」

 「そうですわ。家族として一致団結をしてなすのですわ!」

 「……家族」
 
 ギルスが力強い笑顔でいい、エミルも頷きセナへといい、セナは家族という言葉で、元の世界にいる両親を思いだし、次にギルスとエミルをみて異世界に飛ばされてからのことを思いだしていた。

 「あぁ!家族だ!俺とエミルにメイリー、それからここで働いてくれてるものもそうだ、そして我が領に暮らす領民すべてを俺は家族だと思っている」

 ギルスがセナのつぶやきに胸を張りながら当然のことのようにいった。

 「えぇ、そうですわね!それに…セナ様?あなたももう私たちの家族ですわ」

 ギルスの言葉に同意したエミルが、優しい笑顔をセナへ向け言った。

 「ありがとうございます…嬉しいです」

 エミルの言葉にセナは初めて異世界に来た時の心細さと不安を思いだし、それを払拭してくれた2人との良縁に心からの感謝を笑顔で伝えた。

 そして、その日のブレイダー家は温かく笑顔溢れる中、それぞれが明日への意気込みを持ちすぎていった。

 翌朝。

 「それではいってくる」

 「はい。お気をつけて、ご武運を」

 ギルスの言葉に、セバスが一礼しブレイダー家で働くほぼすべてのもので、ギルスたちを見送った。

 そして、セナとギルス、そしてエミルは無事に王城へと着き王との謁見をおこなった。

 「朝早くからすまんな兄上」

 「国王様、ご無沙汰しております。この度は時間を頂きありがとうございます」

 「かまわんよ、セナ殿も久しいな。変わりはないか?」

 王城内の来客用の部屋でギルスとセナが国王と挨拶をかわした。

 「それでギルスよ。至急考慮してほしい問題とはなんだ?」

 「うむ。まずはこれを読んでくれ」

 国王の疑問にギルスが学校建設案を記した紙を手渡しながら言った。

 「ふむ、わかった。どれどれ……こっ!これはっ!」

 「どう思われますかな?

 手渡された紙を読み進めるにつれ、国王は驚愕の顔をしていき、してやったりの顔をしたギルスが声をかけた。

 「その案は神皇国と帝国の境に住んでいた子達が逃げ延びてきたのをセナ様が保護したことで生まれましたの」

 今だ紙に釘づけになっている国王へエミルが顛末を伝え始めた。

 「なるほどな……そんなことがあったのか……このことを知ったらアレストラも心を痛めるだろう……」

 帝国も絡んでいる問題なだけに、自身の妻で帝国から嫁いできたリネア王妃が、どう思うか思い浮かべた国王は苦々しくも、すこし悲しそうにつぶやいた。

 「まぁ、今は他国のことはいい、それより兄上。この案を実行してもよろしいか?」

 悲しむ国王を察してか、ギルスが話の流れを引き戻した。

 「ふむ、すまんがエルリックの意見も聞いてみてもいいか?」

 「かまわんよ」

 国王の申し出にギルスが頷き了承すると、国王は騎士へエルリックを連れてくるように指示を出した。

 コンコン

 「失礼します。このように早い時間からお呼び出しとは、何か早急な問題でもお起こりで?」

 「あぁ、大事な案件だ。貴公の意見をききたくてな」

 しばらくしたころ、エルリックが一礼し入室すると、国王へ声をかけ、国王が自身がさきほどまで読んでいた紙を手渡した。

 「お久しぶりです。エルリック様」

 「おぉ!セナ様。いつおもどりになってたのですか?」

 紙を受け取ったが未だ話について行けずに困惑しているエルリックに、セナが挨拶をすると、エルリックは驚きながらも笑顔を浮かべた。

 「時間があまりない、昼から招集をかけた者どもが集まる前に話をまとめなければならんのだ」

 セナへと話を振りそうだったエルリックを、国王が声をかけ紙を読むよう勧めた。

 「わかりました……では、失礼して。……これはっ!?」

 「ふむ。セナ殿の思い付きだそうだが、エルリックよ、率直にどう思う?」

 先ほどの国王同様に、読み進めるほどに驚愕の顔になっていくエルリックに、国王が率直な意見を聞いた。

 「ど、どうもこうも……我々では思いもつかないことだったと思います……」

 「ふむ、それには同感だ。それで?やらせてみてもいいと思うか?」

 目を紙からそらせずに答えるエルリックに、王が意見を求めた。

 「はい。いくつか問題点もあるかと思われますし、実際にやってみても次々に細かい物から大きなものまで新たな問題も出てくるでしょう……しかし!これは是非やるべきことかと思われます!」

 そして最後まで読み切ると、エルリックは力強い眼差しで国王へとしっかり自分の意見を伝えた。

 「そうか、余も同意見だ。ギルスよ……国も協力を惜しまん、やってみるがいい。ただし頓挫や失敗は許されんぞ?」

 国王が刺すような目でギルスを見据えながら最後の言葉を言った。

 「当然だ!我がブレイダーの名に懸け必ず成し遂げて見せる!我々の後ろには、この国の未来を創る者たちがいるのだからな!」

 「うむ。昼からの緊急招集時に余から正式に許可を出す。エルリック急がせて済まぬがそれまでに書類を制作してくれぬか?」

 「御意に!」

 「では、たのんだぞ?」

 「はっ!」

 王の最後の言葉に、その場にいた全員が力強く返事を返した。


 その後セナ達は一度、ブレイダー家へと戻り、屋敷内にいるすべての者に先ほど決まったことを伝えた。

 「というわけで、皆にも色々と苦労を掛けると思うが、これは自身の子や孫たちにかかわる歴史的な事だ。
我々ブレイダー家がこの国の先陣を切り、未来を切り開く!力を貸してくれ」

 『はいっ!』

 ギルスの言葉に、その場にいたすべての者が顔を見合わせた後、ギルスに向かい力強く頷きながら返事をした。

 「皆様?ありがとうございます。私たちブレイダー家が一丸となり、事に当たればやれないことなどないと私は思っておりますの、今こそ!を集結して見事やり遂げて見せましょう!」

 エミルの言葉に、ギルスやセナだけではなく、ガルハルト、セバスなどブレイダー家で働くすべての者が笑顔を浮かべ、返事を返した。

 
 
 

 
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