『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

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2章 孤児院と旅立ち

22

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「はぁー、いいお湯だった」

「うん、すごく気持ちよかったね」

 存分にゆっくりさせてもらって、湯から出る。あのおばあさんには感謝しないと。おかげで気分もさっぱりした。服も用意してくれたいたようで、久しぶりの上質な服に嬉しくなる。ただ少し絡まれているのを助けて、簡単に傷の手当てをしただけだったんだけど。
フェリラの方も上がったかな? 

「っ、キャー――!」

「ご、ごめん!」

 って、一体何が!? 今の叫び声フェリラだよね? それにリキートが謝った?

「な、なにがあったんだ?」

 慌てて先に外にでたリキートの後を追う。えーと、本当に何があったんだ。リキートは顔を赤くして固まっているし、フェリラはフェリラで顔を赤くしてうずくまっている。

「そ、そいつが!
 そいつが、見たのよ!」

「そ、それはフェリラが悪いんじゃないか!
 なんでそんな無防備なんだ!」

 ふっ、話についていけない。もうほおっておいていいかな?

「うう、あたしがお風呂上りで暑くて、それで扇いでいたのよ」

「それも上のボタンをはずして!
 本当に……」

 あ、はい、わかりました。これはフェリラが悪いな。リキートは被害者、って言ったら怒られそう。

「とにかく仲直りしてくれよ。 
 ほら、使用人の人たちがどうしたらいいか困っている」

「あう、う……。
 こ、今回だけは許してやってもいいわ」

「いや、フェリラが悪いだろ!?
 なんで僕が許してもらう、見たいになっているのさ」

「いいから! 
 とにかく仲直りしておけ」

 二人のことをにらむと途端におとなしくなる。そしてちゃんと仲直りしてくれたみたいです。


「皆様、服のサイズはぴったりなようで安心いたしました。
こちらをどうぞ」

「あ、ありがとうございます。
 えーっと、アリーさん、でしたよね」

 飲み物が入ったコップを置いてくれたアリーさんにお礼を言っただけなのに、なんだかすごく驚かれてしまった。え、俺何か変なこと言った?

「私のようなものの名前まで覚えていただき、ありがとうございます。
 間もなく大奥様がいらっしゃいます」

 一礼してアリーさんが去っていくのを見送ってから、水に口を付ける。あれ、これフルーツの味もする。あ、フェリラが口を付けて目を輝かせた。何か言うかと思ったが、開きかけた口を、リキートをみて閉じた。まあ、表面上でも許して入ればいいけどさ。リキートもなんだかフェリラの反応気にしているみたいだが。

 それにしても、本当におもてなししてくれている……。あの女性と使用人の態度はあれだけど、少なくとも大奥様とアリーさんは俺たちを歓迎してくれていると思っていいのかな?

 談笑していると、アリーさんが大奥様を連れて戻ってきた。一緒にいる男性は、もしかして息子さん、とか? 大奥様とどことなく顔が似ている。

「お待たせしてしまいましたね。
 まあ、皆さんとても……」

 え、いやいやいや、そこで止められるととても気になる。こんな格好久しぶりにしたし、やっぱり似合わないか?

「これは服飾店とてしての腕がなるわね。
 そういえば、リアンカがあなた方に無礼を働いたときいたわ。
 本当にごめんなさい。
 その、こちらに嫁いできてまだあまり日がたっていないものだから、あまりどういう方かがつかめていないの」

 お嫁さんでしたか。まあ、実害はなかったし特に気にすることでもない。

「妻の無礼、変わって僕からもお詫びします。
 母を助けてくださった方だというのに」

「あ、いえ、気にしないでください。
 俺たちは大丈夫なので。
 それよりもいろいろとありがとうございます。
 とても立派な屋敷で驚いてしまいました」

「我が家は代々、服飾店を経営していてね。
 王都やほかの町にも店を出しているから、まあそれなりに。
 そうだ、母から君たちが服を求めていると聞いたよ。
 母を助けてくれた礼に、可能な限り対応しよう」

 服飾店! え、どんな偶然だ。たまたま助けたおばあさんが大手の服飾店の大奥様って……。フェリラ、意外とすごいかもしれない。ここはありがたく甘えておこう。正直俺たちは普通に買い物しても、下に見られる予感しかない。

「わぁ、ありがとうございます!」

「あ、ありがとうございます。
 とても助かります」

 

 さて今俺たちの前にはずらりと、多くの服が。どれもこれも質がいいものばかりだ。いや、絶対にお金がもたない。でも楽しそうに選んでいるリキートとフェリラを止めるのも気が引ける。

「リキート殿は剣をお持ちなのですね。
 剣を扱われるのでしたら、こういった形の服がお勧めです」

「あ、動きやすそうですね。
 これいいな」

「フェリラ殿はとても華奢ですからね、こういった服がお似合いですよ。
 ですか、もしやフェリラ殿も戦われるので?」

「あ、そうね。
 動きやすい服がいいかも」

「これいくらくらいなんですか?」

「こちらは銀貨35枚となっております」

「へぇ……。
 あ、ねえフェリラ。
 こっちとかいいんじゃないかな?」

「あ、いい!」

 うん、すごい楽しそう。あ、リキートの来ている服よさそう。今はもう堂々とシャリラントを持っていられるし、剣を使いやすい服がいいよな。

「おや、ハール殿はあまり服に興味がないのですか?」

「いえ、その。
 お金が持つ気がしないな、と」

「はは、母の恩人からお金など取りませんよ」

「でも、俺たちがしたのはここまで感謝されることではありませんし……」

「そういう見返りを求めない優しさが、母はとても嬉しかったのですよ。
 そうですね、ここにある服は試しに作ってみたものばかりです。
 なので気を使わなくて大丈夫ですよ」

 つまりサンプルだから、好きに持って行っていいってこと? すごく気を使わせてしまった。

「あ、あの元からこれをそのまま渡す予定ではなかったですよ!? 
 その、ここにあるものから選んでもらって、そのあとに店舗から同じものを持ってこようと」

「あははは、疑ってないです。
 気を使っていただきありがとうございます」

 ああ、本当に優しい人だ。こんな人がなんで先ほどの女性みたいな人と結婚したんだろう。正直釣り合わない。でも、他人の夫婦事情に首を突っ込むものではないだろう。

「そうだ、ハール殿も剣をお持ちなのですね。
 そのような美しい剣、初めて見ました」

「あ、ありがとうございます。
 俺には身に合わない剣とは思うんですが、とても大切なものなのです」

 やっと、この剣を正しく使うことができる。それは本当に俺にとって大切なことだ。う、なんか暖かい目でこっち見ている。ごほん、とわざと大きく咳ばらいをする。さて、では遠慮なく選ばせてもらおう。俺が絶対にほしいのは魔法を使っても大丈夫なように、浮かぶ国章を隠せるくらいの厚手のベストのようなもの。後はフードか。

「それにしても、とてもきれいな髪ね。
 私は年老いてこんな髪色だけれど、全然違うわ」

「きれい、ですか?」

「ええ、とても」

「あり、がとうございます。
 俺はそんなに好きではないんですが、そういってもらえると、少し好きになれる気がします。
 でも、なかなか邪魔になってきたのでそろそろ切りたいですね」

「あら、じゃあここで切っていけばいいわ!」

「え、そんなにお世話になるわけには!」

 いいからいいから、とぐいぐい背中を押されてしまう。えーっと、これはもう流れに身を任せた方がいいのか。

「母が申し訳ないね。
 久しぶりに若い子が遊びに来てくれて、ずいぶんと楽しそうだ。
 付き合ってもらえると嬉しいな」

「わかりました」

 まあ俺としてはかなりありがたい申し出だからいいんだけどさ。

 結局髪を切ってもらった上に、服もいつくか分けてもらってしまった。二人も気に入った服を見つけられたようで、とても楽しそうだし。こうして見ると二人ともそれなりの家の子に見えるから、服って不思議だ。さて、早速もらったフードをかぶって、と。

「二人ともフードかぶるの?
 なんだか怪しいからやめてほしいんだけど……」

「でも俺たちの髪色って目立つから」

「いや、フードの方が目立つから」

 うぐ、なら仕方ない……。フードは外すか? いや、でも……。そんな言い争いをしている間に、王都に入るための大門はもうまじかに迫っていた。

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