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3章 冒険者養成校
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何度も野宿をして、食料を調達するのにも一苦労。孤児院でもここまでは苦労しなかった気がする。こうなって初めていかに俺が恵まれていたかわかる。子供一人で逃げるなんて無茶もいいところだったろう。なにせ、この年になって、孤児院でいろいろ生きていくための知識を学んで、なおかつシャリラントの助けもあり、王都にたどり着いたのだから。
まあ、あの時はそれしか手がなかったのは重々承知しているが。でも、助けてくれる人がいて、アズサ王国に入って間をおかずに商団に拾ってもらえたから、ここまでこれた。
「ハール、フェリラ、着いたよ……」
王都の検問のための門の前。ようやくここまでたどり着いた。
「ここが、王都なのね」
すごい。ものすごく人が並んでいる。馬車は違うところにいっているから、きっと馬車専用か、貴族専用の門もあるのだろう。
「まだ門の中に入っていないよ。
さて、行こうか」
いざ、王都へ! この人の列だけで、いかに王都が栄えているかわかる。もしかしたら皇都の方が栄えているのかもしれないが、あそこではあまり自由に行動したことがなかったから。
「えーっと、ここに並べばいいんだっけ?」
「徒歩の人、ここに並んでいるからいいんじゃないか?」
ほかの国で王都に入ったことはあるけれど、だいぶ昔。それに基本中にこもっていたから、全然詳しくない。三人でびくびくしながら、ひとまず並んでみる。というか、リキートも知らないとは思わなかった。あ、でも貴族は自分で手続きしたりしないか。
それにしても……。
「なんか、視線感じるんだけど」
「あ、やっぱりそう思う?」
そう、さっきからちらちらと周りの人がこっちを見るのだ。うーん、やっぱり俺とリキートの髪色が目立つのか? 人からの興味とかそういうのがまじった視線って居心地が悪い……。
「今は我慢だね」
はぁー、とため息をつくリキート。まあ、周りの人全部に牙向いていくわけにはいかないしな。皆ここに並んでいるだけで暇なのだろう。って、なんかさっきからシャリラントが呆れている気がするのは気のせいか?
あの時、俺の名を伝えてから俺とシャリラントの関係に少しだけ変化があった。前はそれこそ一心同体って感じだったが、今はもう少し遠くなっている。だから、感情が気がする、くらいのものだ。
居心地が悪い中、それでも並んでいる。しばらくして、ようやく検問まで辿り着いた。正直ここまででへとへとだ。
「え、な、なぜこちらに?
ああでも何か事情があるのかもしれない……。
それに明らかに平民な人と一緒だし……」
なんかぶつぶつ言ってるし、なんか混乱している。俺たち何もしていないよな? 頭を抱え始めた検問員が落ち着くまで、ひとまず待つ。少ししてようやく回復したようだ。だから、後ろから俺たちをにらむはやめてくれ。この流れを止めたのは俺たちじゃない、この検問員だ。
「し、失礼いたしました」
ちょ、ちょっと待て、なんか明らかに今までの人と口調違う。……あー、なんかわかった気がする。リキートのこの髪色、そして俺の髪色もかもしれないが、目立つ。もともと平民には珍しい色なのだ。それに加えて、この新品の質のいい服。これ、訳あり貴族みたいに勘違いされたか?
間違ってる。間違っているが、血筋的には間違っていないのが怖いところ……。
「今度から身分相応な服着ような……」
「へ?」
「身分を証明できるものはお持ちですか?」
身分を、証明……? そういえば途中でも何度か言われたな。孤児と家出少年と……、途中の村で合流した少女、身分証明書なんてもちろん持っていない。うん、フェリラは持っていてもいい気がするが、ここでは突っ込むまい。
「すみません、持っていないんです」
「え、あの……?
なにか家紋が入っているものを、お一つ見せていただければいいのですが……」
「え!?」
はい、確定。完全に貴族と思われている。そしてリキートは動揺しすぎだ。
「すみません、俺たち貴族ではないんです。
だからそういうの持っていなくて」
「は?
貴族では、ない?」
確認するような検問員の質問に三人でうなずく。あ、固まっている。そろそろ話を勧めてくれないと、並んでいる人の我慢の限界が訪れる。というか、もしかして証明できるものがないと入れないとかないよな。
「で、では一人当たり銀貨20枚を」
「銀貨20枚!?」
「え、ええ。
ちなみにこれからどこに向かう予定で?」
「冒険者ギルドに」
「ギルド……。
そちらでギルドカードをもらい、ランクをEまで上げたのち、こちらの紙を所定の場に提出すると半分お返しします」
なるほど、そういう対策か。銀貨20枚なんて、貧乏人には相当きつい金額。それも王都に入るだけで。さて、どうする。僕もさすがに銀貨60枚は無理だ。フェリラは考えるまでもない。残る人は一人。ちらっとリキートを見る。
「ではこれで」
まさかここで金貨を使うことになるとは。でも、ここまで来て王都に入れない、という事態は回避できた。本当に助かった。
「はい、金貨1枚お預かりします。
銀貨40枚ですね。
こちらが支払い証明書になります」
「ありがとうございます」
どうぞ、と言われ中に入る。ようやく王都だ。まさか入り口でここまで手間取るとは思わなかった……。
「ごめん、リキートに払わせてしまって」
「ううん。
もともと僕が行きたいっていったんだもの。
あそこの町で服、買わないで済んでよかった」
確かに、とうなずく。おばあさんと旦那様、それにフェリラに感謝だ。さて、それじゃあ早速冒険者ギルドに行って登録しなくては。
王都の人は気がいいのか、聞くとどこにギルドがあるのか教えてくれる。そのおかげで思っていたよりも早く着くことができた。
「これがギルド本部……。
すごい大きさだ」
「うん……」
これまでの旅でも、冒険者ギルドを見かけることがあった。でももっとこじんまりしたもの。本部というだけあって、かなり立派な建物だ。お互いの顔を見合わせて、いざ!
まあ、あの時はそれしか手がなかったのは重々承知しているが。でも、助けてくれる人がいて、アズサ王国に入って間をおかずに商団に拾ってもらえたから、ここまでこれた。
「ハール、フェリラ、着いたよ……」
王都の検問のための門の前。ようやくここまでたどり着いた。
「ここが、王都なのね」
すごい。ものすごく人が並んでいる。馬車は違うところにいっているから、きっと馬車専用か、貴族専用の門もあるのだろう。
「まだ門の中に入っていないよ。
さて、行こうか」
いざ、王都へ! この人の列だけで、いかに王都が栄えているかわかる。もしかしたら皇都の方が栄えているのかもしれないが、あそこではあまり自由に行動したことがなかったから。
「えーっと、ここに並べばいいんだっけ?」
「徒歩の人、ここに並んでいるからいいんじゃないか?」
ほかの国で王都に入ったことはあるけれど、だいぶ昔。それに基本中にこもっていたから、全然詳しくない。三人でびくびくしながら、ひとまず並んでみる。というか、リキートも知らないとは思わなかった。あ、でも貴族は自分で手続きしたりしないか。
それにしても……。
「なんか、視線感じるんだけど」
「あ、やっぱりそう思う?」
そう、さっきからちらちらと周りの人がこっちを見るのだ。うーん、やっぱり俺とリキートの髪色が目立つのか? 人からの興味とかそういうのがまじった視線って居心地が悪い……。
「今は我慢だね」
はぁー、とため息をつくリキート。まあ、周りの人全部に牙向いていくわけにはいかないしな。皆ここに並んでいるだけで暇なのだろう。って、なんかさっきからシャリラントが呆れている気がするのは気のせいか?
あの時、俺の名を伝えてから俺とシャリラントの関係に少しだけ変化があった。前はそれこそ一心同体って感じだったが、今はもう少し遠くなっている。だから、感情が気がする、くらいのものだ。
居心地が悪い中、それでも並んでいる。しばらくして、ようやく検問まで辿り着いた。正直ここまででへとへとだ。
「え、な、なぜこちらに?
ああでも何か事情があるのかもしれない……。
それに明らかに平民な人と一緒だし……」
なんかぶつぶつ言ってるし、なんか混乱している。俺たち何もしていないよな? 頭を抱え始めた検問員が落ち着くまで、ひとまず待つ。少ししてようやく回復したようだ。だから、後ろから俺たちをにらむはやめてくれ。この流れを止めたのは俺たちじゃない、この検問員だ。
「し、失礼いたしました」
ちょ、ちょっと待て、なんか明らかに今までの人と口調違う。……あー、なんかわかった気がする。リキートのこの髪色、そして俺の髪色もかもしれないが、目立つ。もともと平民には珍しい色なのだ。それに加えて、この新品の質のいい服。これ、訳あり貴族みたいに勘違いされたか?
間違ってる。間違っているが、血筋的には間違っていないのが怖いところ……。
「今度から身分相応な服着ような……」
「へ?」
「身分を証明できるものはお持ちですか?」
身分を、証明……? そういえば途中でも何度か言われたな。孤児と家出少年と……、途中の村で合流した少女、身分証明書なんてもちろん持っていない。うん、フェリラは持っていてもいい気がするが、ここでは突っ込むまい。
「すみません、持っていないんです」
「え、あの……?
なにか家紋が入っているものを、お一つ見せていただければいいのですが……」
「え!?」
はい、確定。完全に貴族と思われている。そしてリキートは動揺しすぎだ。
「すみません、俺たち貴族ではないんです。
だからそういうの持っていなくて」
「は?
貴族では、ない?」
確認するような検問員の質問に三人でうなずく。あ、固まっている。そろそろ話を勧めてくれないと、並んでいる人の我慢の限界が訪れる。というか、もしかして証明できるものがないと入れないとかないよな。
「で、では一人当たり銀貨20枚を」
「銀貨20枚!?」
「え、ええ。
ちなみにこれからどこに向かう予定で?」
「冒険者ギルドに」
「ギルド……。
そちらでギルドカードをもらい、ランクをEまで上げたのち、こちらの紙を所定の場に提出すると半分お返しします」
なるほど、そういう対策か。銀貨20枚なんて、貧乏人には相当きつい金額。それも王都に入るだけで。さて、どうする。僕もさすがに銀貨60枚は無理だ。フェリラは考えるまでもない。残る人は一人。ちらっとリキートを見る。
「ではこれで」
まさかここで金貨を使うことになるとは。でも、ここまで来て王都に入れない、という事態は回避できた。本当に助かった。
「はい、金貨1枚お預かりします。
銀貨40枚ですね。
こちらが支払い証明書になります」
「ありがとうございます」
どうぞ、と言われ中に入る。ようやく王都だ。まさか入り口でここまで手間取るとは思わなかった……。
「ごめん、リキートに払わせてしまって」
「ううん。
もともと僕が行きたいっていったんだもの。
あそこの町で服、買わないで済んでよかった」
確かに、とうなずく。おばあさんと旦那様、それにフェリラに感謝だ。さて、それじゃあ早速冒険者ギルドに行って登録しなくては。
王都の人は気がいいのか、聞くとどこにギルドがあるのか教えてくれる。そのおかげで思っていたよりも早く着くことができた。
「これがギルド本部……。
すごい大きさだ」
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