『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio

文字の大きさ
64 / 178
3章 冒険者養成校

23

しおりを挟む

 案内されたのは、王立学園の中のとある一室。ずいぶんと居心地がよさそうな空間だ。そしてそこにセットされているソファーに俺を呼び出した人は座っていた。

「やあ、今日は面白い試合を見させてくれてありがとう。
 養成校の学生であそこまで魔法を扱える人がいるなんてね」

「い、いえ」

 俺を呼び出した相手。それは大会に臨席していた王家の人。狙い通り、か? それともまた別の用? そう言えば、以前ケリーが王太子がどうの、と言っていたな。この人は誰だ……? 王家の人っていうところしか聞いていなかった。

 えーっと……、そうだ、確か国王陛下の弟とか言っていた気がする。名前はやっぱり思い出せないが。王太子ではないか。まああの一件はまたいつか考えるとしよう。今はひとまずこれからのことをどうにかしなければ。

「……どこからどう話したら、と思っていたんだが。
 単刀直入に聞こう。
 君は、何者だ?」

「何者、ですか?
 ハール、と申しますが」

 そんなあいまいな聞かれ方をされても困る。俺に答えられるのはこれくらいだ。

「ああ、まあそうだろうが。 
 ここに来るまで一体どこにいた?
 どうやって暮らしていた?」

「国のはずれにある孤児院で暮らしていました。
 そこを出ていくようにと訪れた司教様に言われ、その先で出会った人と冒険者養成校を目指しました。
 それで今、ここにいます」

「孤児院?」

 信じられないといった様子の王弟に、俺もうなずくしかない。俺がこの国の孤児院に一定期間いたことは変えようのない事実なのだ。そしてもう一度何か魔法を使ってみてくれないか? と言われた。

 何かって一番困るんだが。まあ、周りに被害が及ぼさないように適当にっと。ということで、小さな炎を手のひらに作り出した。

「ああ、やはり。
 見間違えでもなんでもなかったんだね」
 
 とうとう頭を抱えだしたこの人に確信を持てた。俺が皇家の直系だとわかったのだと。よかった。さすがに服が破れるどうこうはできなかったのだ。でも自分から言い出すのもまずい。それこそ、なぜお前はここにいるんだという話になるからな。

 だから俺が何も言わずにこの人が察してくれたのは本当に助かった。

「君は……アナベルク皇家の人間だね?」

 どう、反応したらいいのだろう。あっさり認めていいのか? それとも否定する? どのみち、この人の言葉は疑問形の形をとっているようで確信を持っている。結論は変わらない。だから俺はあえて、気が付かれたくなかったかのように押し黙った。

「本当に、なんでそんな人がこんなところにいるんだよ……。
 早急に連絡を取った方がいいな。
 あそこ今関わりたくないのに……」

 俺が目の前にいるとわかっているのか、わかっていないのか。なんかものすごくぶつぶつと言っている。だが、ひとまず俺が考えた最善の方向に進んでいるようで安心した。

「ああ、とにかく。
 君にはこのまま王宮に来てもらおう。
 すぐに皇国に人をやるから、それまでは部屋から一歩も出ないでくれ」

 わかったな? というこの人に恐る恐るといったていでうなずく。さて、この後は一体どう転んでいくのだろうか。


 そこからはまさに腫れ物に触れるような扱いを受けた。丁寧だが関わりたくないといった様子がわかる。俺としても積極的にかかわらなければいけない理由はないし、何より顔を真っ青にして震えられると申し訳なくなる。

 ここにきて翌日には寮に置いてきた荷物、そしてお金も手元に来た。だけど、あれ以来リキートにもフェリラにも会えていない。最後に会ったとき、リキートは何か言いたげな顔をしていたけれど一体何だったんだろう。それがずっと頭の中を回っていた。

 本当は、ここから先のことを考えなくてはいけないのに。

『ずっと閉じこもって、気がめいっているのでは?』
 
(そうなのかな?
 でも仕方ないよね)

『あなたが納得しているのならばいいのですが。
 ほらほら、元気出していきましょう?』

(いや、元気出してもやることない)

『素振りでもしていては? 
 体はなまりますよ』

(怪しまれない程度に、トレーニングはしているんだけどな。
 さすがに素振りしだしたら、よけい怪しまれないか?)

『それは……』

(ま、ありがと)

 ここでこんな鬱々としていても仕方ないよな。こうなるとわかっていて、いろいろ行動していたんだから。拷問や絶食とかされていないだけ感謝しないと。

 そして、そこから数日。とうとう皇国からお迎えが来たらしい。思ったよりも早かったのか遅かったのか、よくわからないが。とにかく今日、迎えに来た人と会えるらしい。誰が来たのか……。シャリラントがいるからどうにでもなるはずだが、皇国までの道のりでずっと命を狙われ続けるのも正直疲れる。皇帝、皇后の手先だったとしてもどうにか俺に敵意を持たない人だといいなー、とかさすがに望みすぎか。

 部屋にノックの音が響く。来た。

 どうぞと短く答えると、数人入ってきた。先頭はあの時の王家の人。それと騎士だろう人達も一緒にいる。そういった人たちに紛れて入ってきたのは、予想もしていなかった人物だった。


しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

処理中です...