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4章 皇国
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リヒトが用意していた馬車は一台。まあ、もともと俺と二人で帰る予定だったからな。最低限の荷物だけを持ち込み早速出発。この国の人に挨拶をしていかなくていいのかとも思ったけれど、いいから、と言われてしまった。数日間お世話になってしまったのに無言で離れることになって少し申し訳ない。
「お、ぎりぎり間に合ったか?」
陽気な声とともに登場したのはイシューさん。一体間に合ったとは何のことだろうか。
「あれ、お前ら?」
「こんにちは、イシューさん。
どうされたのですか?」
「あ、いや俺は皇国の使者様を隣国まで護衛しようと来たんだが……」
「護衛は結構です、と断ったはずですが?」
「ああ、それは。
どのみちパーティでドベルまで行く用事があってな。
国内で何かあっても困る、という王家の願いもあって、そこまでついていかせてもらうよ」
「ああ、まあそれなら構いませんが」
ドベルまでイシューさんが。それはかなり心強いけど、そんなに心配することがあるのか?
「え、あ、ま、待ってくれ?
あなたが皇国の使者、か?」
「ええ、そうですが」
「じゃあ、後ろにいるやつらは?
確かつい先日養成校を卒業していたよな」
あ、そういえばイシューさんは何も知らないのか。かなり混乱させてしまったようで申し訳ない。でも今までは言えなかったし、まさかここで会うことになるとは思わなかったし。
「私はこの方、スーベルハーニ皇子を迎えに上がったのです」
「お、皇子?
ハールが?」
「ええ、そうです。
護衛してくださるなら、もう行きましょう」
「え、あ、ああ」
ああ、しきりに首をひねっている。申し訳ない。でも、なんとか折り合いをつけたのか、一つうなずくと行くか、と振り返る。あ、後ろにも誰かいたのか。あれ……、イシューさんの後ろにいるのって。いや、見間違えだよな。こんなところにいるはずがない。その時、後ろにいたうちの一人から、不意に声が上がった。
「ハールが、皇子?
そんなことって、あるのか?」
「……サラン?」
考えるよりも先に言葉が出る。嘘だ、ここで会えるわけがない。そう頭では思っているのに、口は勝手に動く。誰だって、そう言われるはずなのに。
「……ああ、そうだ。
久しぶりだな、ハール」
気まずそうに笑う目の前の人物。幻覚、ではないのか?また会いたいっていう、俺の欲望が見せた都合がいい夢じゃ。
「はは、夢じゃねぇよ。
あんな恥ずかしい姿さらした後に、会うのはなんか気まずいな」
「本当に、サランか?
大丈夫、なのか?」
「大丈夫ってなんだよ。
でも、自分なりにあがいて、楽しい毎日だよ。
本当に、イシューさんには感謝してもしきれない」
そういうサランの笑みは柔らかいもので、無理をしているようには見えない。本物なのか。ああ、よかった、本当に。あの時の俺はどこかマヒしていたみたいだし、サランの役にはたてなかったはずだ。でも、今こうしてサランの笑顔を見て、心からほっとしている自分がいた。
目の前にいるサランが本物、それを認識すると今度はどうしてここにいるのかということが気になった。
「どうしてイシューさんと?」
「ああ、今俺たちはイシューさんに面倒見てもらっていてな。
助けてもらって、そのままなし崩し的に」
「助けてもらった、って?」
「あー、説明したいところだけれど……」
「それは後でな。
使者様がもう出るって言っている。
これから数日間一緒に旅するんだ、ゆっくり話す時間もあるだろう」
そっか、数日間一緒に。リヒトもなんだか急いでいるし、確かに急いだ方がよさそう。ということで、ひとまず出発することになりました。
「ハール、さっきの人たちは?
前に言っていたイシューさんのパーティの人みたいだけれど」
「ああ、俺が孤児院の出だって話はしただろう?」
「え、それ冗談じゃなかったの?」
「いや、本当だ。
数年間は孤児院にいて、その時一つ上だったのがさっきの人たち」
「ああ、同じ孤児院出身ってことか。
それがどうしてイシューさんのパーティに?」
「それはわからない。
俺もさっき知って驚いたくらいだから」
「へー……。
なんか、ハールってやたらと顔広いよね?」
「そういうわけではないんだけれど……。
王都に来てからは知り合いと再会することは多いかも」
ふーん、といいながら首をかしげるリキート。まあ、ここでいろんな知り合いと再会することになるとは、俺としてもかなり予想外だ。なんでイシューさんと行動を共にしていたか、詳しい事情は後で聞くことにしよう。
「お、ぎりぎり間に合ったか?」
陽気な声とともに登場したのはイシューさん。一体間に合ったとは何のことだろうか。
「あれ、お前ら?」
「こんにちは、イシューさん。
どうされたのですか?」
「あ、いや俺は皇国の使者様を隣国まで護衛しようと来たんだが……」
「護衛は結構です、と断ったはずですが?」
「ああ、それは。
どのみちパーティでドベルまで行く用事があってな。
国内で何かあっても困る、という王家の願いもあって、そこまでついていかせてもらうよ」
「ああ、まあそれなら構いませんが」
ドベルまでイシューさんが。それはかなり心強いけど、そんなに心配することがあるのか?
「え、あ、ま、待ってくれ?
あなたが皇国の使者、か?」
「ええ、そうですが」
「じゃあ、後ろにいるやつらは?
確かつい先日養成校を卒業していたよな」
あ、そういえばイシューさんは何も知らないのか。かなり混乱させてしまったようで申し訳ない。でも今までは言えなかったし、まさかここで会うことになるとは思わなかったし。
「私はこの方、スーベルハーニ皇子を迎えに上がったのです」
「お、皇子?
ハールが?」
「ええ、そうです。
護衛してくださるなら、もう行きましょう」
「え、あ、ああ」
ああ、しきりに首をひねっている。申し訳ない。でも、なんとか折り合いをつけたのか、一つうなずくと行くか、と振り返る。あ、後ろにも誰かいたのか。あれ……、イシューさんの後ろにいるのって。いや、見間違えだよな。こんなところにいるはずがない。その時、後ろにいたうちの一人から、不意に声が上がった。
「ハールが、皇子?
そんなことって、あるのか?」
「……サラン?」
考えるよりも先に言葉が出る。嘘だ、ここで会えるわけがない。そう頭では思っているのに、口は勝手に動く。誰だって、そう言われるはずなのに。
「……ああ、そうだ。
久しぶりだな、ハール」
気まずそうに笑う目の前の人物。幻覚、ではないのか?また会いたいっていう、俺の欲望が見せた都合がいい夢じゃ。
「はは、夢じゃねぇよ。
あんな恥ずかしい姿さらした後に、会うのはなんか気まずいな」
「本当に、サランか?
大丈夫、なのか?」
「大丈夫ってなんだよ。
でも、自分なりにあがいて、楽しい毎日だよ。
本当に、イシューさんには感謝してもしきれない」
そういうサランの笑みは柔らかいもので、無理をしているようには見えない。本物なのか。ああ、よかった、本当に。あの時の俺はどこかマヒしていたみたいだし、サランの役にはたてなかったはずだ。でも、今こうしてサランの笑顔を見て、心からほっとしている自分がいた。
目の前にいるサランが本物、それを認識すると今度はどうしてここにいるのかということが気になった。
「どうしてイシューさんと?」
「ああ、今俺たちはイシューさんに面倒見てもらっていてな。
助けてもらって、そのままなし崩し的に」
「助けてもらった、って?」
「あー、説明したいところだけれど……」
「それは後でな。
使者様がもう出るって言っている。
これから数日間一緒に旅するんだ、ゆっくり話す時間もあるだろう」
そっか、数日間一緒に。リヒトもなんだか急いでいるし、確かに急いだ方がよさそう。ということで、ひとまず出発することになりました。
「ハール、さっきの人たちは?
前に言っていたイシューさんのパーティの人みたいだけれど」
「ああ、俺が孤児院の出だって話はしただろう?」
「え、それ冗談じゃなかったの?」
「いや、本当だ。
数年間は孤児院にいて、その時一つ上だったのがさっきの人たち」
「ああ、同じ孤児院出身ってことか。
それがどうしてイシューさんのパーティに?」
「それはわからない。
俺もさっき知って驚いたくらいだから」
「へー……。
なんか、ハールってやたらと顔広いよね?」
「そういうわけではないんだけれど……。
王都に来てからは知り合いと再会することは多いかも」
ふーん、といいながら首をかしげるリキート。まあ、ここでいろんな知り合いと再会することになるとは、俺としてもかなり予想外だ。なんでイシューさんと行動を共にしていたか、詳しい事情は後で聞くことにしよう。
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