『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio

文字の大きさ
86 / 178
4章 皇国

22

しおりを挟む

 翌日、もう体調は大丈夫だったが休めとベッドに押し込まれてしまった。ここに来てからあまり休みがなかったのも確かなので、結局言葉に甘えて今日も休ませてもらうことになった。それにしてもどうしよう。一日はさすがに寝れないし、かといってこの状況で外で体を動かすのも気が引ける。

『ハール、大丈夫ですか?』

 おわっ、びっくりした……。さあどうするか、と考えていたら急にシャリラントが現れたよ。なんだか久しぶりに見かけた気がする。

「ずっとそばにいたのですが、出ていくタイミングもありませんでしたからね」

 周りを確認すると、ふわりと実体化する。相変わらずの見た目ですね、はい。

「それで、大丈夫ですか?」

「大丈夫って……。
 ああ、うん、大丈夫」

 何をそんなに心配しているのかと首をひねりたくなるほど、シャリラントの目は真剣だった。俺、そんなにだめそうだったかな。

「まあ、大丈夫ならよいのですが」

「心配してくれてありがとう」

 素直にお礼を言うと皆さんに任されてしまいましたから、と言い訳がましく言っている。皆さんって、思い当たる人数人。いつの間に交流をはかっていたのかも気になるが、まさかシャリラントに俺を任せていたとは。確かにこの場において一緒にいられるのはシャリラントだけだけどさ。

「そういえば、シャリラントは外の状況を知っているのか?」

 俺がいないところでリキートたちと交流をはかっていたシャリラントだ。きっと俺がいないところでもほかの人と会えるはず。今は俺がリキートたちと連絡をとるのは難しいが、どうしているのかは知りたい。

「知ろうと思えばいくらでも。
 視覚共有でもしましょうか?」

「え、そんなこともできたのか……?」

 ここにきてまさかの能力が。え、今までそんな話したことないよな。どういうことだ、とシャリラントを見るがまあ言ったことありませんから、と笑う。いや、まあ今まで必要になっていなかったからだろうけど。一体他には何ができるのかいっそ怖いよ。

 とはいえ暇なのは確か。せっかくなので視覚共有をして久しぶりに外を見ることにした。

「こうやって外行くときシャリラントどんな状況なんだ?」

『実体化はしていないのでほかの人には見えていない状況ですね』

 いきなり人型のものが空を飛んでいたら驚いてしまうだろう。見えないということで安心して見ることに。

「あ、そこ……」

 リキートとフェリラのところに。その言葉を聞いてシャリラントはどこかをまっすぐ目指していた。部屋を出たところから視界を共有していた関係で、多少酔ってしまったわけですが。その目的地は見覚えのある、ひどく懐かしいもの。
 暮らしていたのはあまり長くない時間だったけれど、それでもかけがえのない思い出も、どうでもいい思い出もいろんなものが詰まっている場所。

「変わってないなぁ」

『ハール?』

「なんでもない。
 二人ともそこにいるのか?」

『ええ』 

 そういうとシャリラントは建物の中に入っていく。今は朝の訓練を終えて朝食を食べているところだったらしい。食堂に人が集まっていた。あ、レッツ……。まだそこにいたんだね。騎士団にいたころ、よく俺に剣を教えてくれた俺の師匠。時がたって髪は白髪が増えたし、しわも増えた。でも、その気楽な笑みは変わらない。

 そんなレッツのすぐそばに二人はいた。レッツさんが何かを言って、それを受けて二人が楽しそうに笑う。その様子に無理はなくて。二人がこの騎士団でちゃんと居場所を得ていることの証に見えた。

「声は、聞こえないんだな」

『今はまだ、ですね』
 
 食事を終えた面々はそれぞれの業務へと移っていく。訓練を始める人が居れば、書類仕事をする人もいる。リキートは書類仕事、フェリラは訓練に行くみたいだ。俺に対して気を使ったのか、それを確認した後シャリラントは建物の中やその周辺をくるくると回ってくれた。懐かしい宿舎も。

「ハール、起きてるか?」

 ノックとともに優しく声をかけてくれるグルーさんがやってくるまで、内緒の騎士団見学は続いた。途中泣きそうになったが、ぐっとこらえてみて回った騎士団内部は俺がいたころと大して変わったいた様子はない。……、ここは俺の帰る場所になってくれるのかな、なんてあり得ないことを考えてしまったほど。最後まで俺の部屋にも兄上の部屋にも行けなかったが、そこが変わらず暖かい場所であることはよくわかった。

 すべてが終ったら、そこにも一度足を運びたい。きっと実際に目で見るのはまた違った感覚だろうから。でも、今は俺のやるべきことをやらないと。朝とは違って、今を見ることができたような、そんな気持ちになった。

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

処理中です...