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4章 皇国
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もともとリヒトの紹介で入ったこともあり基本的なことはリヒトたちのもとで学んでから、という提案をしたらしいのだがそれには及ばないと断られてしまったらしい。いや、なんで!? 俺侍従とか本当にできないよ? まあ、名称が侍従というだけでほぼ下っ端の仕事だろうけどさ。
結局なるべく早いタイミングでルックアラン皇子のところに行くことになってしまった。まあ、ただの下働きから見たらかなりの出世。向こうも俺が喜んでいると思っているだろう。だからこちらの迷惑などお構いなしにそちらの都合を押し付けてくると。面倒な。
マーシェさんたちのこと、不安だけど任せるしかないんだろう。この件は俺が報告したということもあり、しっかりと経過を聞かせてもらえることに。いやー、頼んでみるものだな。それもあって次は今回よりも早く呼ぶと言ってもらえた。
「まさかこんなに早くお別れになるとは思っていなかったよ。
その……、大丈夫か?
まだこの城にも慣れていない上に、まさか第二皇子のもとにだなんて」
「グルーさん……。
こんなにも親切にしていただいたのにすみません。
本当にありがとうございました」
感謝の気持ちが伝わるようにとしっかりと頭を下げると戸惑う声が聞こえてきた。そこまでのことはしていないというけれど、知っている人が身近にいないことがストレスだった中で、グルーさんの存在は救いだったのだ。
短い間だったけれどたくさんの優しさに触れられた。別れは少し名残惜しいけれど、そろそろ移動しないと。初めにリヒトと別れたところに行くと、シェーベラントと名乗る第二皇子付きという侍従が迎えにやってきてくれた。今まで下働きが通るようなところしか行かなかったから、表を歩くのはなんだか緊張……。兄と自分がどれくらい似ているのかわからないけれど、もし勘付く人が居たら、とつい考えてしまう。まあ、そのあたりは皇宮に来ることが決定した時点で俺も、そしてリヒトたちも覚悟はしているだろうけれど。
「あの、俺本当に何をすればいいのかわからないのですが……」
「ん?
ああ、大丈夫だ。
第二皇子付きならば、基本的には皇子の機嫌さえ取っていればいい」
他の皇子の侍従ならそうもいかないが、と苦笑いする先輩。いいのですか、それは……。ただ、意外にも俺に対する嫌悪感がなさそう。それは正直助かる。
それ以降特に会話を交わすことなく回廊を歩いていく。ああ、皇宮はこういうところだったのか、とふと思う。皇国を出るまではずっと暮らしていたはずなのに、俺が自由に歩けたのはほんの一部。それも端の方だけ。自分の知らない場所の方が多い。
「ひとまず、こっちの部屋で湯あみと着替えをしてくれ。
そのあとにルックアラン皇子と皇后陛下に挨拶をする」
「わかりました」
皇后陛下……。あれ以来見ていないが、とうとう顔を合わせるのか。正直、怖い。自分がどういう反応をするのか。味方もいないここでは前みたいに体調を悪くするわけにもいかない。
ひとまず侍従に与えられた部屋で言われた通り支度をする。ここには第二皇子付きの侍従のみが使える浴室が小さいながらもあるみたい。なんという贅沢……。時間はないからさっさと支度をしないと。っていうか、どうして侍従の部屋が離れではなくここに……? うん、ひとまず考えないようにしよう。
さっと身支度を整えると用意されていた服に着替える。おお、すごい。めっちゃ着心地がいい服だ。さて、これでいいかな?
「あの、準備できました」
「ああ、じゃあこっちに」
「あの、一ついいですか……?」
やっぱり気になる。相手が何? とこちらを見たのを確認して、どうして皇宮内に侍従の部屋があるのか聞いてみた。
「ああ、それは皇子のわがままにすぐに対応するためだよ。
皇后陛下のご指示なんだ。
あそこの部屋は特定の人の部屋というわけではなくて、交代制で夜詰めるときの休憩部屋。
お前の部屋は後で案内するよ」
「そうなのですね。
ありがとうございます」
いや、待て待て待て。皇子のわがままを叶えるために侍従が皇宮に部屋もらっているのか? え、何それ面倒。まあ、今は落ち着かれて呼び出されることはほぼないけどな、と付け足される。よかった、と安心していい、のか?
何とも言えない気持ちになったところで、とある扉の前で立ち止まる。ここに、あいつらが……。
「皇后陛下、ルックアラン皇子。
ハールを連れてまいりました」
「入れ」
声と共に扉が開かれる。少し奥にあるソファにその二人が座っていた。
結局なるべく早いタイミングでルックアラン皇子のところに行くことになってしまった。まあ、ただの下働きから見たらかなりの出世。向こうも俺が喜んでいると思っているだろう。だからこちらの迷惑などお構いなしにそちらの都合を押し付けてくると。面倒な。
マーシェさんたちのこと、不安だけど任せるしかないんだろう。この件は俺が報告したということもあり、しっかりと経過を聞かせてもらえることに。いやー、頼んでみるものだな。それもあって次は今回よりも早く呼ぶと言ってもらえた。
「まさかこんなに早くお別れになるとは思っていなかったよ。
その……、大丈夫か?
まだこの城にも慣れていない上に、まさか第二皇子のもとにだなんて」
「グルーさん……。
こんなにも親切にしていただいたのにすみません。
本当にありがとうございました」
感謝の気持ちが伝わるようにとしっかりと頭を下げると戸惑う声が聞こえてきた。そこまでのことはしていないというけれど、知っている人が身近にいないことがストレスだった中で、グルーさんの存在は救いだったのだ。
短い間だったけれどたくさんの優しさに触れられた。別れは少し名残惜しいけれど、そろそろ移動しないと。初めにリヒトと別れたところに行くと、シェーベラントと名乗る第二皇子付きという侍従が迎えにやってきてくれた。今まで下働きが通るようなところしか行かなかったから、表を歩くのはなんだか緊張……。兄と自分がどれくらい似ているのかわからないけれど、もし勘付く人が居たら、とつい考えてしまう。まあ、そのあたりは皇宮に来ることが決定した時点で俺も、そしてリヒトたちも覚悟はしているだろうけれど。
「あの、俺本当に何をすればいいのかわからないのですが……」
「ん?
ああ、大丈夫だ。
第二皇子付きならば、基本的には皇子の機嫌さえ取っていればいい」
他の皇子の侍従ならそうもいかないが、と苦笑いする先輩。いいのですか、それは……。ただ、意外にも俺に対する嫌悪感がなさそう。それは正直助かる。
それ以降特に会話を交わすことなく回廊を歩いていく。ああ、皇宮はこういうところだったのか、とふと思う。皇国を出るまではずっと暮らしていたはずなのに、俺が自由に歩けたのはほんの一部。それも端の方だけ。自分の知らない場所の方が多い。
「ひとまず、こっちの部屋で湯あみと着替えをしてくれ。
そのあとにルックアラン皇子と皇后陛下に挨拶をする」
「わかりました」
皇后陛下……。あれ以来見ていないが、とうとう顔を合わせるのか。正直、怖い。自分がどういう反応をするのか。味方もいないここでは前みたいに体調を悪くするわけにもいかない。
ひとまず侍従に与えられた部屋で言われた通り支度をする。ここには第二皇子付きの侍従のみが使える浴室が小さいながらもあるみたい。なんという贅沢……。時間はないからさっさと支度をしないと。っていうか、どうして侍従の部屋が離れではなくここに……? うん、ひとまず考えないようにしよう。
さっと身支度を整えると用意されていた服に着替える。おお、すごい。めっちゃ着心地がいい服だ。さて、これでいいかな?
「あの、準備できました」
「ああ、じゃあこっちに」
「あの、一ついいですか……?」
やっぱり気になる。相手が何? とこちらを見たのを確認して、どうして皇宮内に侍従の部屋があるのか聞いてみた。
「ああ、それは皇子のわがままにすぐに対応するためだよ。
皇后陛下のご指示なんだ。
あそこの部屋は特定の人の部屋というわけではなくて、交代制で夜詰めるときの休憩部屋。
お前の部屋は後で案内するよ」
「そうなのですね。
ありがとうございます」
いや、待て待て待て。皇子のわがままを叶えるために侍従が皇宮に部屋もらっているのか? え、何それ面倒。まあ、今は落ち着かれて呼び出されることはほぼないけどな、と付け足される。よかった、と安心していい、のか?
何とも言えない気持ちになったところで、とある扉の前で立ち止まる。ここに、あいつらが……。
「皇后陛下、ルックアラン皇子。
ハールを連れてまいりました」
「入れ」
声と共に扉が開かれる。少し奥にあるソファにその二人が座っていた。
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