『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

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4章 皇国

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「あ、しまった」

「どうかしましたか?」

「皇子がお使いになるタオルを忘れてしまった……。
 すまない、部屋まで取りに行ってもらっていいか?」

「わかりました」

 仕事、というよりも皇宮内の地図にも慣れてきたころ。珍しく忘れた荷物があるらしく、部屋までのお使いを頼まれてしまった。そう言えばここにきて一人になるのは初めてかもしれない。

 行ってきます、と言って皇子の私室に向かう。いつもは大人数で移動するから、なんだか静かに感じる。すれ違う人達の視線が心なしか痛い気がするんだが……。まあ、この服装を見るだけで俺がルックアラン皇子付きの侍従だとわかるだろうし、第二皇子たちの暮らしぶりに思うところがある人もいるのだろう。

 さて、皇子が訓練を終えるまでに戻らないと。意外と距離があるから急がないとな。

 迷うことなく辿り着いた私室で無事にいつも通りのタオルを見つける。これを持って後は戻るだけだ。足早に道を進んでいると、前方からなにか騒がしい音が聞こえる。そのまま前方の様子を見ていると、通りかかった人たちが頭を下げているのを見つけた。

 面倒な……。皇族か高位貴族が通りかかるのだろう。さすがに無視をするわけにはいかない。他の人と同様に端により頭を下げる。そのまま集団が通りすぎるのを待つ。……一体誰が通りかかったのだろう。キャバランシア皇子かリヒトだったらそろそろ例の麻薬の進展を聞きたい。

 そんなことを考えて、少し顔を上げる。一応頭を下げるべき人が通り過ぎたから、もう動き出していいけれど、本当はもう少しそのままでいるべきである。それはわかっているが、どうしても気になってしまった。

 ちらりと集団を見る。そのとき、ふいに中央を歩いていた人がこちらを振り返った。しまった、と思ったときは目が合っていて。俺はすぐに顔をそらした。

 あの蒼の瞳……。覚えのない顔だったし、おそらく第四皇子だろうか? 第五皇子はもうこの皇宮を出ていると言ってたし。あれが第四皇子、モンラース皇子か……。あの人は一体誰の味方なのだろうか。以前リヒトに聞いたときはどちらにもついていない中立派といっていたけれど……。っと、いけない。そろそろ戻らないと。

「おー、遅かったな」

「すみません、途中第四皇子とすれ違っていました」

 そういうと、あの方か、とうなずく。そう言えば騎士団に所属しているという話だったけれど、ここでは見たことがないな。さすがに違うところで訓練しているのか?

 少しすると第二皇子の訓練が終ったようだ。それにしても、なんというか……。あまり強くなさそうだよな。一応続けてはいるからそれなりに剣を扱えてはいるようだが、特に脅威になるほどではなさそう。それよりも皇子の相手をしている人たちの方が問題なんだよね。

 たまにだが将軍が相手をしているときがある。その時はもう訓練場の空気が違うからわかる。もしも、第一皇子がクーデターを実行したら、おそらく敵になる人達。人数が多いのもあって厄介な予感しかしない。

 皇子の予定はなんというか、予想とは違う方向に忙しかった。正直皇子らしいことなど何もやっていない。とっくに成人しているはずなのに、自由時間か皇后も出ているお茶会に顔を出すか、こうして騎士団に顔を出すか。後は第二皇子派の人たちが心にもない誉め言葉を言ってくるのを聞いているかくらい?

そこには明確に第二皇子には阿呆でいてもらわなくては、という意思が働いているようでいい気はしない。まあ、同情もしないけど。こういった大人たちから離れて学ぶ機会があったのに、結局こうなっているのは本人の責任だと思うしね。

「ハール、そろそろ慣れたか?」

「はい、おかげさまで」

 やるべき仕事も少ないですし、と心で付け足しておく。でも、本当に付き従うだけなのだ。何かあったら特定の人がやってくれるしね。でも、実は同じ皇子付きの人は嫌いじゃなかったりする。いきなり引き立てられたことを知っているからか、この蒼の瞳を気にすることなく接してくれるのだ。それはありがたい。後は一人部屋も。

「今日も一日お疲れさまでした」

「ありがとう。
 早速付き合ってもらってもいい?」

「もちろんです」

 そういうと、具現化したシャリラントが刀らしきものを持つ。俺の手にも同じもの。これは本物の刀ではない。すべてシャリラントの力だ。これ同士は実際の刀のように打ち合うことはできるが何かを傷つける心配はない。あまり広くないこの部屋で模擬試合ができるのは一番嬉しいことだった。

「では、行きます」

 シャリラントが振るった刃を正確にとらえる。まともに受けていたら俺の力では敵わない。うまく力を受け流すとすぐに切り替える。そうして何度も打ち合っていると、ついにシャリラントの刃が俺の首をとらえた。

「は、はは。
 やっぱり敵わないか」

「私はミベラの神剣ですからね」

 ミベラの神剣、か。ひと段落すると、汗を流して就寝する。これが俺の日常になってきていた。

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