『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

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4章 皇国

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 ……。……。……え??? 

「「えっ!?」」

 いつの間にそんな関係に!? と焦るも、俺よりもはるかに焦る、というよりも目をまわしているフェリラにだんだんと冷静になる。うん、自分よりも焦っている人がいるとっていうあれかな? って、そんなことはどうでもよくて!

「フェリラを公爵夫人にってこと!?」

「まあ、そうなるね」

 それはなんというかなかなか無理があるのでは!?

「む、無理無理無理!
 え、何でそんなこと考えたの!?」

「長い時間一緒に過ごしているうちに……」

 え、なんか少し照れているんですが!? こんなリキート見たことがない!!

「あ、あたしに、ただの平民に公爵夫人はいろいろ無理だって!
 反対とかされまくるだろうし、公爵になるリキートにふさわしいご令嬢だっているだろ!?」

「公爵夫人にふさわしいご令嬢、とかじゃなくてフェリラがいいんだ。
 少し名前はいじってもらうことにはなるけれど……。
 平常時は難しくても、皇帝の代替わりや粛清でごたごたしている今だったら大丈夫だよ。
 それに、フェリラはこの国にとって希少な光魔法の使い手だ。
 きっと皆歓迎してくれるよ」

 つらつらと反対材料を切り捨てた後、もちろんマナーなどについては学んでもらわなくちゃだけど、と付け加える。え、それでいいのか公爵夫人。

 さすがにそんなリキートの言い分にフェリラもどう返したらいいのか、わからないらしい。でも、え? とぶつぶつとつぶやいている。

「フェリラは嫌だ?
僕の妻になるのは」

「い、いや、そもそもどうしていろいろすっとばして結婚なの!?
 もっとさ、こう!」

「うん、それはごめんね。
 でも僕としてもこの後は公爵位の継承とかでごたごたしてしまうから、その前にフェリラの意思を確認したくて。
 もちろん嫌がるなら無理強いはしない。
 でも、少しでも僕に好意を持ってくれているなら、どうか」

 少しも負けないリキートの言葉に相変わらずフェリラはタジタジだ。まあ、本当に今まで何も伝えていなかったらしいから、こうも焦るのは当たり前か。ってなんでそこでこっちを見るんだ、フェリラ。しかも涙目で。というか、どうして俺がいる前で初めてこの話を持ち出した?

「は、ハールぅ」

「いや、これはリキートとフェリラの話だから」

 だから俺に振らないでくれ。というか、ここまで言われて初めて持ち出された話への困惑しかないなら答えは出ているようなものではないのか? 一方、混乱をもたらしたリキートはと言えば、そのままの体勢でじっとフェリラからの答えを待っている。いや、俺なんでここにいるの?

 そうしてどれくらいの時間が過ぎただろうか。フェリラは顔を真っ赤にしたまま、ようやく首を縦に振った。その返事を受けた瞬間、リキートが今まで見たことがないほど嬉しそうに笑って。俺はなぜか友人たちが結ばれた瞬間を見守ることとなったのだ。



「で、どうしてわざわざ俺がいる前で?」

 そのあと、熱い抱擁を交わした友人たちをいっそ冷めた目で見てしまったのは許してほしい。なんなら途中から俺の存在忘れていませんでした? ようやく2人の様子が落ち着いたころ、俺はようやくそう切り出せた。

「お互いがどんな立場になろうとも、僕は君に隠し事をしないという意思表示だよ。
 君のことは誰よりも信頼している」

 誰よりもとか言って、そのあとにフェリラも同じくらいに、と付け加えるリキート。まあこれから夫婦になるなら信頼は大事だよね。そして、なぜかフェリラもこくこくとうなずいているし。いや、その前に。

「隠し事、なのか、これ?」

 別に告白成功してからでよかったのでは?

「まあ、君にはすべて見せられるくらい信頼しているということ。
 それは僕が公爵になっても……、君が皇子の地位を捨てても変わらない」

「……ありがとう」

 俺が嫌なら皇子でなくてもいい、それで身分差があろうとも友人でいる。そう言ってくれるリキートに俺はそう返すのが精いっぱいだった。沈みがちだった心に、じんわりと暖かいものが広がっていく。ああ、やっぱりリキートには敵わない。
 あの時リキートが、フェリラが、皇国までついてきてくれるという決心をしてくれてよかった。そしてそれが2人にとって悪い方へ転がらなかったなら、これ以上いいことはない。

「おめでとう、リキート、フェリラ。
 2人の友人として、心から祝福するよ」

「ありがとう。
 まあ、当分は結婚までは行けないけれどね」

 公爵領が、皇国が落ち着くまでは結婚できないと言うのはわかる。わかるけれど、それは一体何年後の話だ? まあ、フェリラにはいろいろ勉強が必要だろうからある意味ちょうどいいのかもしれないけれど、とは口に出せなかった。

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