『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio

文字の大きさ
117 / 178
5章 ダンジョン

14

しおりを挟む
 その人は盾のようなものを持ちながら、最後の一人である茶髪の神使と共に前に出てきた。

「守りの神剣シールディリアの主、リーンスタ。
 君の、伯父でもある。
 ……ずっと君に会いたいと思っていた」

「……え?」

 今、なんと? 俺の伯父? え、だって父の方は伯父などもちろんいない。だからあり得るとしたら母のほう。そしてこの男性は確かに記憶の中の母と同じ色彩を持っている。でも、まさか。

「これに見覚えがあるのではないかい?」

 そう言って差し出されたのは懐中時計、だった。その懐中時計の表面には細かな意匠は異なるものの、大まかなモチーフに見覚えがあるものが彫られていた。あの、母の形見の懐中時計で見たことがあるのだ。

「どうして……」

 うまく言葉を継げないでいると、その人の肩口から小さな光がふわりと出てきた。その光はそのまま俺の前に来ると、何かを訴えるように数回瞬く。

「あの、これは?」

「この子は精霊だ。 
 この国ではあまり力を保てないから、そのような小さな光にしかならないが……。
 本当はとても力を持った子なんだ」

「せ、精霊!?」

「ああ。
 その子はね、もともとリゼッタの……君の母の精霊だったんだよ」

 まって、待って。さっきから意味が分からない。いろいろわからない。困惑していると、ノックの音が室内に響く。どうやらイシューさんが到着したようだ。まだ回らない頭でひとまず許可を出すと予想通りイシューさんが入ってきた。

 そして、部屋の中にいる面々と神使を見てぴしりと固まってしまう。そんな中ファイガーラが姿を現した。

「神使が全員揃いやがった……。 
 まさかこの国でこんなことが起こるなんて皮肉だな」

 ぽつりとファイガーラがこぼした言葉に神使たちが何とも言えない表情をする。そうか、これで全員揃った、のか。

「そもそもすべての神剣に主がいること自体が異様ともいえるでしょう。
 それでも確かに、この地で集うことになるとは思いもしていませんでした」

 理由はわからないがどうやら全員そう思っているらしい。神使がそろったからだろうか、なんだかこの部屋の空気だけ他とは違う気がする。ひとまず自己紹介は終わったということで、この後はダンジョンについて話をしなくてはいけない。

 でも、俺の伯父と名乗ったリーンスタ殿のこともミーヤのことも気になる……。

「スーベルハーニ殿。
 面倒ごとが片付いた後、少々時間を取ってもらってもいいか?」

「あ、はい、大丈夫です」
 
 思わぬ問いかけにかくかくと首を動かす。むしろこちらからいろいろと質問したいくらいだ。でも、今は。視線を窓の外に向ける。朝からいつもは感じない重苦しさは感じていた。今はもう、重苦しい雲が空を覆っている。

「まずは改めて。
 私の呼びかけに応じて、こうしてこちらに集まってくださったこと感謝します」

「シャリラント様のお呼び出しならもちろんだ。
 俺たちにとってもここはけっして心地よい場ではないが、シャリラントがいらっしゃるならば我々がそんなことを言っている場合ではない。
それにダンジョン、と呼ばれるものについてはずっと憂慮していた。
 それが解決できるならば来ないという選択肢はないさ」

「ええ、そうですね。
 期待していますよ、スーベルハーニ。
 神の愛し子よ」

 え、え……? ちょっと待って。愛し子って何? そんなの聞いたことない。しかも俺が何かの問題解決できるってなんで思うの?

「い、意味が分からない! 
 ちょっと説明して、シャリラント!」

「ええ、あれを片付けた後に。
 今はまず、目の前の問題だけに集中してください。
 これで戦力は十分でしょう?」

 ええ、ええ、十分でしょうよ。どれだけ手ごわいダンジョンかは知らないけれど、少なくとも現在の皇国で用意できる最高戦力だ。

「出現するダンジョンは2塔。
 振り分けだけは考えた方がいい」

「ああ、そうだな。
 ここの二つは分けるとして……」

 呆然としている間に話合いが始まっていた。俺がついていけるかはわからないが、ひとまずその話合いに集中することにしよう。

 話し合いの結果、Aチームが俺、マリアグルースさん、リーンスタさん。Bチームがイシューさん、ティアナさん、ジヘドさん、シュリベさん、ということになった。俺の方にはフェリラがいるから、一応回復はできるしね。そして、ミーヤは留守番。さすがに戦闘要員ではなかったらしい。これには少しだけほっとした。

 外の空気はどんどんと重苦しさを増していく。おそらくもうすぐ、ダンジョンが出現するのだろう。

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

処理中です...