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5章 ダンジョン
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その人は盾のようなものを持ちながら、最後の一人である茶髪の神使と共に前に出てきた。
「守りの神剣シールディリアの主、リーンスタ。
君の、伯父でもある。
……ずっと君に会いたいと思っていた」
「……え?」
今、なんと? 俺の伯父? え、だって父の方は伯父などもちろんいない。だからあり得るとしたら母のほう。そしてこの男性は確かに記憶の中の母と同じ色彩を持っている。でも、まさか。
「これに見覚えがあるのではないかい?」
そう言って差し出されたのは懐中時計、だった。その懐中時計の表面には細かな意匠は異なるものの、大まかなモチーフに見覚えがあるものが彫られていた。あの、母の形見の懐中時計で見たことがあるのだ。
「どうして……」
うまく言葉を継げないでいると、その人の肩口から小さな光がふわりと出てきた。その光はそのまま俺の前に来ると、何かを訴えるように数回瞬く。
「あの、これは?」
「この子は精霊だ。
この国ではあまり力を保てないから、そのような小さな光にしかならないが……。
本当はとても力を持った子なんだ」
「せ、精霊!?」
「ああ。
その子はね、もともとリゼッタの……君の母の精霊だったんだよ」
まって、待って。さっきから意味が分からない。いろいろわからない。困惑していると、ノックの音が室内に響く。どうやらイシューさんが到着したようだ。まだ回らない頭でひとまず許可を出すと予想通りイシューさんが入ってきた。
そして、部屋の中にいる面々と神使を見てぴしりと固まってしまう。そんな中ファイガーラが姿を現した。
「神使が全員揃いやがった……。
まさかこの国でこんなことが起こるなんて皮肉だな」
ぽつりとファイガーラがこぼした言葉に神使たちが何とも言えない表情をする。そうか、これで全員揃った、のか。
「そもそもすべての神剣に主がいること自体が異様ともいえるでしょう。
それでも確かに、この地で集うことになるとは思いもしていませんでした」
理由はわからないがどうやら全員そう思っているらしい。神使がそろったからだろうか、なんだかこの部屋の空気だけ他とは違う気がする。ひとまず自己紹介は終わったということで、この後はダンジョンについて話をしなくてはいけない。
でも、俺の伯父と名乗ったリーンスタ殿のこともミーヤのことも気になる……。
「スーベルハーニ殿。
面倒ごとが片付いた後、少々時間を取ってもらってもいいか?」
「あ、はい、大丈夫です」
思わぬ問いかけにかくかくと首を動かす。むしろこちらからいろいろと質問したいくらいだ。でも、今は。視線を窓の外に向ける。朝からいつもは感じない重苦しさは感じていた。今はもう、重苦しい雲が空を覆っている。
「まずは改めて。
私の呼びかけに応じて、こうしてこちらに集まってくださったこと感謝します」
「シャリラント様のお呼び出しならもちろんだ。
俺たちにとってもここはけっして心地よい場ではないが、シャリラントがいらっしゃるならば我々がそんなことを言っている場合ではない。
それにダンジョン、と呼ばれるものについてはずっと憂慮していた。
それが解決できるならば来ないという選択肢はないさ」
「ええ、そうですね。
期待していますよ、スーベルハーニ。
神の愛し子よ」
え、え……? ちょっと待って。愛し子って何? そんなの聞いたことない。しかも俺が何かの問題解決できるってなんで思うの?
「い、意味が分からない!
ちょっと説明して、シャリラント!」
「ええ、あれを片付けた後に。
今はまず、目の前の問題だけに集中してください。
これで戦力は十分でしょう?」
ええ、ええ、十分でしょうよ。どれだけ手ごわいダンジョンかは知らないけれど、少なくとも現在の皇国で用意できる最高戦力だ。
「出現するダンジョンは2塔。
振り分けだけは考えた方がいい」
「ああ、そうだな。
ここの二つは分けるとして……」
呆然としている間に話合いが始まっていた。俺がついていけるかはわからないが、ひとまずその話合いに集中することにしよう。
話し合いの結果、Aチームが俺、マリアグルースさん、リーンスタさん。Bチームがイシューさん、ティアナさん、ジヘドさん、シュリベさん、ということになった。俺の方にはフェリラがいるから、一応回復はできるしね。そして、ミーヤは留守番。さすがに戦闘要員ではなかったらしい。これには少しだけほっとした。
外の空気はどんどんと重苦しさを増していく。おそらくもうすぐ、ダンジョンが出現するのだろう。
「守りの神剣シールディリアの主、リーンスタ。
君の、伯父でもある。
……ずっと君に会いたいと思っていた」
「……え?」
今、なんと? 俺の伯父? え、だって父の方は伯父などもちろんいない。だからあり得るとしたら母のほう。そしてこの男性は確かに記憶の中の母と同じ色彩を持っている。でも、まさか。
「これに見覚えがあるのではないかい?」
そう言って差し出されたのは懐中時計、だった。その懐中時計の表面には細かな意匠は異なるものの、大まかなモチーフに見覚えがあるものが彫られていた。あの、母の形見の懐中時計で見たことがあるのだ。
「どうして……」
うまく言葉を継げないでいると、その人の肩口から小さな光がふわりと出てきた。その光はそのまま俺の前に来ると、何かを訴えるように数回瞬く。
「あの、これは?」
「この子は精霊だ。
この国ではあまり力を保てないから、そのような小さな光にしかならないが……。
本当はとても力を持った子なんだ」
「せ、精霊!?」
「ああ。
その子はね、もともとリゼッタの……君の母の精霊だったんだよ」
まって、待って。さっきから意味が分からない。いろいろわからない。困惑していると、ノックの音が室内に響く。どうやらイシューさんが到着したようだ。まだ回らない頭でひとまず許可を出すと予想通りイシューさんが入ってきた。
そして、部屋の中にいる面々と神使を見てぴしりと固まってしまう。そんな中ファイガーラが姿を現した。
「神使が全員揃いやがった……。
まさかこの国でこんなことが起こるなんて皮肉だな」
ぽつりとファイガーラがこぼした言葉に神使たちが何とも言えない表情をする。そうか、これで全員揃った、のか。
「そもそもすべての神剣に主がいること自体が異様ともいえるでしょう。
それでも確かに、この地で集うことになるとは思いもしていませんでした」
理由はわからないがどうやら全員そう思っているらしい。神使がそろったからだろうか、なんだかこの部屋の空気だけ他とは違う気がする。ひとまず自己紹介は終わったということで、この後はダンジョンについて話をしなくてはいけない。
でも、俺の伯父と名乗ったリーンスタ殿のこともミーヤのことも気になる……。
「スーベルハーニ殿。
面倒ごとが片付いた後、少々時間を取ってもらってもいいか?」
「あ、はい、大丈夫です」
思わぬ問いかけにかくかくと首を動かす。むしろこちらからいろいろと質問したいくらいだ。でも、今は。視線を窓の外に向ける。朝からいつもは感じない重苦しさは感じていた。今はもう、重苦しい雲が空を覆っている。
「まずは改めて。
私の呼びかけに応じて、こうしてこちらに集まってくださったこと感謝します」
「シャリラント様のお呼び出しならもちろんだ。
俺たちにとってもここはけっして心地よい場ではないが、シャリラントがいらっしゃるならば我々がそんなことを言っている場合ではない。
それにダンジョン、と呼ばれるものについてはずっと憂慮していた。
それが解決できるならば来ないという選択肢はないさ」
「ええ、そうですね。
期待していますよ、スーベルハーニ。
神の愛し子よ」
え、え……? ちょっと待って。愛し子って何? そんなの聞いたことない。しかも俺が何かの問題解決できるってなんで思うの?
「い、意味が分からない!
ちょっと説明して、シャリラント!」
「ええ、あれを片付けた後に。
今はまず、目の前の問題だけに集中してください。
これで戦力は十分でしょう?」
ええ、ええ、十分でしょうよ。どれだけ手ごわいダンジョンかは知らないけれど、少なくとも現在の皇国で用意できる最高戦力だ。
「出現するダンジョンは2塔。
振り分けだけは考えた方がいい」
「ああ、そうだな。
ここの二つは分けるとして……」
呆然としている間に話合いが始まっていた。俺がついていけるかはわからないが、ひとまずその話合いに集中することにしよう。
話し合いの結果、Aチームが俺、マリアグルースさん、リーンスタさん。Bチームがイシューさん、ティアナさん、ジヘドさん、シュリベさん、ということになった。俺の方にはフェリラがいるから、一応回復はできるしね。そして、ミーヤは留守番。さすがに戦闘要員ではなかったらしい。これには少しだけほっとした。
外の空気はどんどんと重苦しさを増していく。おそらくもうすぐ、ダンジョンが出現するのだろう。
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