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6章 再会と神島
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「その、大丈夫か?」
「ええ、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした、キンベミラ殿下」
あえて、名前を強調して口に出す。これで今はお互い宮間でも陽斗でもないのだ、という意思が伝わればいいのだが。
「本当にすみませんでした、……スーベルハーニ皇子」
その一言で俺の意思が伝わっていないことがよく分かった。俺はもうそこには触れてほしくないし、陽斗はあの瞬間にもうあきらめてしまったのだ。他人に好いてもらうことを。でも俺は、スーベルハーニは違う。彼が俺を陽斗としか見ていないのならば、それはスーベルハーニとして生きてきた俺への侮辱でもある。
「もう二度と、陽斗の名を口にしないでください。
俺はもう陽斗ではない。
そしてあなたももう宮間ではない。
キンベミラ・オースラン王太子という、将来オースラン王国を導いていくお方だ。
過去にとらわれていないで、前を見てください。
あなたがそんなでは王国民はどうしたらいいのですか。
……、きかっけは何であれこうして皇国と同盟を結んでくださったことには感謝いたします」
「はる……、スーベルハーニ皇子。
わ、私はずっと、君に罪を償わなければと思って生きてきました。
ただ、それだけのために。
だが、君はそれが必要ないというんですね」
そういうと顔を覆ってしまったキンベミラ殿下。いや、そのためだけって。そう言おうとしたが、その様子からそれが決して嘘ではないことが分かった。
「俺がオースラン王国に滞在しているときに、殿下の話を聞きました。
民のために動いてくれる良い王太子だと。
きっと意識していなくてもあなたの働きは国のためになっていたのでしょう。
だから、これからはあなたを信頼している国民のために、力を尽くしてください」
そういうと、キンベミラ殿下はうつむいてしまった。そしてそのまま小さな声で囁く。
「ひとつだけ、教えてください。
この同盟は君の力になりましたか?」
「はい、とても」
「それなら、何よりです」
顔を上げた殿下は涙を浮かべながら微笑んだ。そして、頭を下げる。
「スーベルハーニ皇子の心情を考えず、申し訳ございませんでした。
どうかこれからも、同盟国としてよろしくお願いいたします」
「はい、よろしくお願いいたします」
これでこの話はおしまい、かな。ひとまず受け入れてくれたようでよかった。俺のことを陽斗と呼ばなくなったし、口調も変わっていることにほっとした。
「明日には国に戻ります。
また、お会いできることを楽しみにしております」
そのあとの話し合いで今日の晩御飯は双方の使節団全員で一緒に取ることとなった。その様子は無事に同盟が結ばれたこともあり、とても和やかなものとなった。だが、カンペテルシア殿はこちらを心配そうに見てきており、思ったよりも心配させてしまったようだ。
「シャリラントはさ、俺が転生者だって知っていたの?」
夜、自分の部屋でようやく落ち着くとシャリラントにそう問いかけていた。シャリラントはキンベミラ殿下から話を聞いていたときに一緒にいた。あの話が聞こえていたはずだ。
「そうですね、知っていた、と言えるでしょう。
私はミベラ神からあなたのことを教えられたときに変わった魂がある、と言われました。
ほかの世界からやってきた魂が。
なので、記憶が保持しているかは知りませんでしたが、魂自体は他の世界で生まれたことは知っていました」
「そうか」
なら、シャリラントは知らなかったのか。俺が転生することになった理由も前世でどういう生活を送っていたのかも。それに少しほっとした。
「知ってほしいですか?」
「いいや。
聞かないでくれると嬉しいかな。
俺はもう、この世界で生きているから」
「なら、そうしましょう。
今日は疲れたでしょう?
もう寝てください」
「そうだね。
お休み、シャリラント」
目を閉じると、やはり疲れていたようですぐに眠気がやってきた。
翌日、キンベミラ殿下を代表としたオースラン王国の使節団は国へと帰っていった。
「ええ、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした、キンベミラ殿下」
あえて、名前を強調して口に出す。これで今はお互い宮間でも陽斗でもないのだ、という意思が伝わればいいのだが。
「本当にすみませんでした、……スーベルハーニ皇子」
その一言で俺の意思が伝わっていないことがよく分かった。俺はもうそこには触れてほしくないし、陽斗はあの瞬間にもうあきらめてしまったのだ。他人に好いてもらうことを。でも俺は、スーベルハーニは違う。彼が俺を陽斗としか見ていないのならば、それはスーベルハーニとして生きてきた俺への侮辱でもある。
「もう二度と、陽斗の名を口にしないでください。
俺はもう陽斗ではない。
そしてあなたももう宮間ではない。
キンベミラ・オースラン王太子という、将来オースラン王国を導いていくお方だ。
過去にとらわれていないで、前を見てください。
あなたがそんなでは王国民はどうしたらいいのですか。
……、きかっけは何であれこうして皇国と同盟を結んでくださったことには感謝いたします」
「はる……、スーベルハーニ皇子。
わ、私はずっと、君に罪を償わなければと思って生きてきました。
ただ、それだけのために。
だが、君はそれが必要ないというんですね」
そういうと顔を覆ってしまったキンベミラ殿下。いや、そのためだけって。そう言おうとしたが、その様子からそれが決して嘘ではないことが分かった。
「俺がオースラン王国に滞在しているときに、殿下の話を聞きました。
民のために動いてくれる良い王太子だと。
きっと意識していなくてもあなたの働きは国のためになっていたのでしょう。
だから、これからはあなたを信頼している国民のために、力を尽くしてください」
そういうと、キンベミラ殿下はうつむいてしまった。そしてそのまま小さな声で囁く。
「ひとつだけ、教えてください。
この同盟は君の力になりましたか?」
「はい、とても」
「それなら、何よりです」
顔を上げた殿下は涙を浮かべながら微笑んだ。そして、頭を下げる。
「スーベルハーニ皇子の心情を考えず、申し訳ございませんでした。
どうかこれからも、同盟国としてよろしくお願いいたします」
「はい、よろしくお願いいたします」
これでこの話はおしまい、かな。ひとまず受け入れてくれたようでよかった。俺のことを陽斗と呼ばなくなったし、口調も変わっていることにほっとした。
「明日には国に戻ります。
また、お会いできることを楽しみにしております」
そのあとの話し合いで今日の晩御飯は双方の使節団全員で一緒に取ることとなった。その様子は無事に同盟が結ばれたこともあり、とても和やかなものとなった。だが、カンペテルシア殿はこちらを心配そうに見てきており、思ったよりも心配させてしまったようだ。
「シャリラントはさ、俺が転生者だって知っていたの?」
夜、自分の部屋でようやく落ち着くとシャリラントにそう問いかけていた。シャリラントはキンベミラ殿下から話を聞いていたときに一緒にいた。あの話が聞こえていたはずだ。
「そうですね、知っていた、と言えるでしょう。
私はミベラ神からあなたのことを教えられたときに変わった魂がある、と言われました。
ほかの世界からやってきた魂が。
なので、記憶が保持しているかは知りませんでしたが、魂自体は他の世界で生まれたことは知っていました」
「そうか」
なら、シャリラントは知らなかったのか。俺が転生することになった理由も前世でどういう生活を送っていたのかも。それに少しほっとした。
「知ってほしいですか?」
「いいや。
聞かないでくれると嬉しいかな。
俺はもう、この世界で生きているから」
「なら、そうしましょう。
今日は疲れたでしょう?
もう寝てください」
「そうだね。
お休み、シャリラント」
目を閉じると、やはり疲れていたようですぐに眠気がやってきた。
翌日、キンベミラ殿下を代表としたオースラン王国の使節団は国へと帰っていった。
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