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2章 学園生活

89話 校外学習(6)

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 そして翌朝、日が昇ったばかりで未だみんなが眠りについている時間。そんな時間には似つかわしくない騒々しい馬をかける音が聞こえてきた。すぐに音に敏感な何人かが跳ね起きると周りの人と起こしていった。
 ゆっくりとしたものになるはずだった朝は予想外の騒々しさで開けていったのだ。

「ウェルカ!」

「セイット、これはいったい?」

「わからない、けれど何かあったみたいですね」

 何が何だかわからない状態で起こされたと思ったらすぐにテントの外に出ることになった。そして私とセイット、マンセルトさんは一か所に集められると先生にここで待っていように、と伝えられたのだ。
 そして今、視線の先では先生が何やら気難しい顔で突然訪れた騎士を相手にしていた。

「こ、このまま帰ることになるのですかね?」

 恐る恐るといった様子でマンセルトさんがそういう。だけど、こんな早朝にここを訪れるということはあの人達は夜通し馬をかけていた可能性すらあるのだ。そんなに急いでいたのにすんなりと帰れるとは思えないのだ。


 少しして話が終わったようで先生がこちらに戻ってくる。騎士の人たちはまた馬に乗り去っていく。そんな様子を他の人も心配げな目で見ていた。
 
「行先は変更だ。
 ハレンクトラ伯爵領へ向かう。
 すぐにここを立つ支度をしてくれ」

「何があったのですか?」

「スタンピードが、起こりかけているらしい。
 最悪の一歩手前といったところだ」

 スタンピード……? 聞いたことがあるような、ないような。でもその言葉に周りの人たちが息をのむことが聞こえた。

 そのあと、あわただしく片づけをするとすぐにここに来る前と同じ状態になった。昨日の夜までのような、ゆったりとした空気はもうなくなっていて緊張した空気が流れている。昨日と同じように4人で馬車に乗り込むと馬車はすぐに出発した。

「あの、スタンピードってなんでしょうか」

 ようやく聞いてもいいであろう状態になった時、横に座るセイットに聞いてみる。きっと彼なら知っているだろうと思ったのだ。

「あ、あの僕も知りたいです」

 その声に前を向くとマンセルトさんもおずおずといった様子でこちらを見ていた。私がまだ授業で習っていないのだ。マンセルトさんも習っていない可能性の方が高いのは当たりまえだ。

「そうか、君たちはまだ習っていませんでしたか。
 スタンピードは森にいた魔獣が溢れかえることを指します。
 普段は定期的に魔物を狩ることでこれを防いでいるのですが……」

「あふれかえるとどうなるのですか?」

「魔獣が街に降りて、その場にいる人間を手当たり次第に襲うんだ。
 今はまだ騎士たちが抑えているようだが、それもいつまでもつか。
 今朝の騎士たちは応援を呼ぶために王都に向かっている途中だったようです」

 魔獣、というものを実は私は見たことがない。だがただ手当たり次第に襲うことしか考えないといわれる魔獣が街に降りたら、そう想像するだけで血の気がひいてくる。たいていの人は魔獣に対抗し得る力を持っていないのだ。

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