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2章 学園生活
135話 領民へのお披露目(1)
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さて、今日は領民へのお披露目の日です。なんというか、本当にどうなることやら、という感じです。お母様は認めてくださったけれど、領民の心は分からない。もしも受け入れてもらえなかったら、なかなかつらい。そんなことを考えると、やっぱりやめると言いたいところだが、もうお屋敷に人が入ってきているようでかすかにざわめきが聞こえてきている。それに、今日に向けて皆がどんなに頑張って準備して来たかを知っているからな……。
「まあ、とてもかわいらしいわウェルカ」
はぁ、と何度目かわからないため息を吐いているとお母様の声が聞こえてきた。いつの間に入ってきたのだろうか。
「ねえ、回って見せて」
ふふっと微笑みながらおねだりされてしまうと、さすがに弱い。はい、と答えて私は一回転してみた。回るのに合わせてスカートがふわりと舞う。
今日着ているのはいつものドレスとは全く違うものだ。このあたりの村娘が少し特別な時に着るようで、さすがにとても着やすい。胸の下のあたりできゅっと長いリボンが結ばれていて、そこを境に生地が変わっているのだ。リボンの上は首元が丸くあいたフリルたっぷりの白い生地で、下はふわりとしたスカートなのだがいつもと違ってパニエを着用していない。
うーん、楽! コルセットもしなくていいしね! 何せくびれを見せるような作りの服ではないのだ。ちなみにお母様も似た形の服を着ている。
「うん、とっても似合っているわ。
そろそろ移動しましょう。
もうみんな首を長くして待っているわ」
うっ、とうとう行くのか。ここまで来ても逃げたい気持ちでいっぱいだが、もう仕方ない。
「はい、お母様」
さすがに屋敷を開放といっても、屋敷内部には人を入れない。その分屋敷内の静けさが外のにぎやかさによって際立っていて、少し寂しい気もしてくるから不思議だ。
「来たな、ウェルカ」
「お待たせいたしました、お父様」
お父様も今日はラフな恰好をされている。こんなシンプルな服装なお父様は初めて見たけれど、とても似合っている。お兄様方もだ。
「ウェルカはそういう格好もとても似合うな」
「ありがとうございます」
お父様にも褒められてしまった。それがとても嬉しかった。
ふと、想ったのだ。私の元の家族のことを。きっとこの間お母様の話をしたからだとは思うけれど。私はお母様に間違いなく愛されていた。だから、家族の愛、というものを知っていた。その分、絶望したともいえるかもしれないけれど。
だから、あの人たちはきっと家族ではないのではないのだろうなとは思っていた。それでも、お母様が亡くなってからお姉様が帰ってくるまでの期間すがるものはあの家族だけだったのだ。家族になれると、信じていたのだ。
「ウェルカ?」
ふと、思考が途切れる。
「はい?」
「ぼんやりとしていたが大丈夫か?」
「はい。
すみませんでした」
いや、とお父様が言う。うん、今はちゃんと『家族』がいるものね。
「では、行こうか」
お父様の声に、私たちはそろってバルコニーのほうへと出ていった。
「まあ、とてもかわいらしいわウェルカ」
はぁ、と何度目かわからないため息を吐いているとお母様の声が聞こえてきた。いつの間に入ってきたのだろうか。
「ねえ、回って見せて」
ふふっと微笑みながらおねだりされてしまうと、さすがに弱い。はい、と答えて私は一回転してみた。回るのに合わせてスカートがふわりと舞う。
今日着ているのはいつものドレスとは全く違うものだ。このあたりの村娘が少し特別な時に着るようで、さすがにとても着やすい。胸の下のあたりできゅっと長いリボンが結ばれていて、そこを境に生地が変わっているのだ。リボンの上は首元が丸くあいたフリルたっぷりの白い生地で、下はふわりとしたスカートなのだがいつもと違ってパニエを着用していない。
うーん、楽! コルセットもしなくていいしね! 何せくびれを見せるような作りの服ではないのだ。ちなみにお母様も似た形の服を着ている。
「うん、とっても似合っているわ。
そろそろ移動しましょう。
もうみんな首を長くして待っているわ」
うっ、とうとう行くのか。ここまで来ても逃げたい気持ちでいっぱいだが、もう仕方ない。
「はい、お母様」
さすがに屋敷を開放といっても、屋敷内部には人を入れない。その分屋敷内の静けさが外のにぎやかさによって際立っていて、少し寂しい気もしてくるから不思議だ。
「来たな、ウェルカ」
「お待たせいたしました、お父様」
お父様も今日はラフな恰好をされている。こんなシンプルな服装なお父様は初めて見たけれど、とても似合っている。お兄様方もだ。
「ウェルカはそういう格好もとても似合うな」
「ありがとうございます」
お父様にも褒められてしまった。それがとても嬉しかった。
ふと、想ったのだ。私の元の家族のことを。きっとこの間お母様の話をしたからだとは思うけれど。私はお母様に間違いなく愛されていた。だから、家族の愛、というものを知っていた。その分、絶望したともいえるかもしれないけれど。
だから、あの人たちはきっと家族ではないのではないのだろうなとは思っていた。それでも、お母様が亡くなってからお姉様が帰ってくるまでの期間すがるものはあの家族だけだったのだ。家族になれると、信じていたのだ。
「ウェルカ?」
ふと、思考が途切れる。
「はい?」
「ぼんやりとしていたが大丈夫か?」
「はい。
すみませんでした」
いや、とお父様が言う。うん、今はちゃんと『家族』がいるものね。
「では、行こうか」
お父様の声に、私たちはそろってバルコニーのほうへと出ていった。
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