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2章 意外な出会い
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しおりを挟む「どうして、彼がここに?」
「シント?
本当に大丈夫か」
「兄上……」
どうしたらいいんだろう。どうして、ここで彼に再会するんだろう。戸惑いばかりが先行して、何を口にすればいいのかわからない。
「彼、アラミレーテ殿だっけ」
勝手にびくりと肩が揺れる。兄上がこちらをじっと見て、何かを見極めようとしている。それはわかるのだけれど、でも今は動揺が大きすぎて隠しきれない……。
「君の友人にはしない方がいいのかな」
ぽつり、そうつぶやく。そうだ、僕に彼の友人を名乗る資格なんて、あるはずがない。
「僕にはあまりにももったいない人、ですから」
「彼がシントに見合わないのではなくて、シントが彼に見合わないのか?」
「はい」
逆なんて、あるわけない。僕は恩人を窮地に追いやって、裏切って。なのに彼は最後まで、死んだ後まで僕を守ってくれた。そんな人の人生を二度もめちゃくちゃにしてはいけない。
「シントはおかしなことを言うね。
君は王族だ、そして彼は辺境伯の子息。
まだ外に出ていない彼にどんな価値があるというんだ?」
理解ができないというように兄上は言う。まあ、クロベルタとラルヘの事情を知らなければ、理解できるはずがないよね。兄上が王族の血に誇りを持っていることも知っている。
「ひとまず、今日はもう休んだ方がいい。
もし、アラミレーテ殿と友人になる気があるのならば、後日謝ればいい」
今回無礼を働いたのはこちらだしな、という兄上にはい、とだけ返す。そして自室に戻ることにした。ひとまず一度落ち着いて考えたい。彼と友達になりたいか? 許されるのであれば、友達になりたいに決まっている。でも……。
「シフォベント殿下、どうぞ」
いつの間にか自室のソファに座っていた。その前にはゾーゼルが入れてくれた紅茶が置かれている。
「ありがとう」
「大丈夫ですか?」
ああ、ゾーゼルにも心配をかけてしまったか。一口紅茶を口に含むと、少しだけ落ち着くことができた。
「今日はもう休む」
「かしこまりました」
少し落ち着いたとはいえ、やっぱり一人で考えたい。ひとまず入れてくれた紅茶を飲み切ると、寝室へと向かった。
僕はどうしたらいいんだろう。ラルヘ、いやアラミレーテと友達になりたい、それはもちろんだ。でも、それを決める権利は僕にはない。彼自身が決めるべきだ。でも、僕から動かなければ彼は僕には会えない。拒絶しているならばいいけれど、もし文句を言いたいならその機会すらなくなる。何よりもこの王族の身分が厄介すぎる。僕が呼ばなければ王族の機嫌を損ねたといわれる、僕が呼べば彼の意思に関係なくここに来るしかなくなる。
「どうして、王族に生まれてしまったのだろう……」
どうして……。
この身分に生まれて、クロベルタの、ベルタクトラの記憶を思い出して。この人生はきっと贖罪のためのものなのだと思った。だから、兄上の目となり腕となり足となり、一番傍で支えようと決めた。誰よりも市井に寄り添って、貴族との懸け橋になろうと。それはすべて失ってしまった、自分で手放してしまったかけがえのない友情に対するせめてもの罪滅ぼしで。でも、その相手は目の前に現れた。もちろん兄上の支えになろう、という決意は変わらない。
でも、でも。
「ひとまず、しっかりと話してみないとわからない、よね」
まだまだ甘え切ってしまうのは申し訳ないけれど、でも彼ならきっと。偽りない気持ちを聞かせてもらえるはずだ。なら、向き合おう。また顔をそらして、大事なものを失いたくないから。勝手に相手の幸せを決めつけて、不幸にしたくないから。
「……よし!
ゾーゼル、いるか?」
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