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2章 意外な出会い
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しおりを挟む「それでは紹介いたしましょう。
わがカーボ辺境伯家次男、アラミレーテ・カーボです」
そばにいたサイガにそっと背を押される。それに勇気をもらうように僕はとうとう前に出ていくことになった。
日の光がまぶしい。今日というお披露目の日に選ばれたのは丁寧に整えられた我が家の庭だった。今日に合わせて寒い気温でも咲く花を用意し、そうして準備をしてくれた庭師には感謝しかない。おかげでこの季節には珍しいくらい、ここは花の香りに包まれてた。
一歩、一歩転ばないようにと慎重に歩を進めていく。そして父上の隣まで来ると、そこでようやく今回の招待客のほうに顔を向ける。う、思っていた何倍もの人がいる。こっち見ている。それでも、一つ深呼吸をすると無理やり気持ちを落ち着けた。
「皆様、初めまして。
カーボ辺境伯家次男のアラミレーテと申します。
本日は私のお披露目にお越しくださり、誠にありがとうございます。
遠方からもわざわざこの地を訪れてくださった方もいらっしゃると聞き、うれしい限りでございます。
まだまだ未熟な部分が多く、皆様のお力をお借りすることもあるかと思います。
カーボ家、引いては我が国を支えていける人物となっていけるように精進してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます」
言い切ると、深く頭を下げる。よかった、失敗せずに済んだ。ほっとしたのもつかの間、ここで起こるはずの拍手が一向に聞こえない。え、何か失敗しちゃったかな⁉ このままだと顔を上げることもできないし……。
ハラハラしていると、ようやく拍手が聞こえてくる。それにひとまず顔を上げる。すると、拍手の音は徐々に大きくなって、いずれ庭中に響き渡るほどになっていった。いやいやいや、いったい何事? そんなに大きくなくていいんだよ?
どうしたら、と戸惑っていると父上がわざとらしく咳ばらいをした。すると、拍手は徐々に収まっていく。
「息子のことを歓迎していただき、感謝する。
本日は軽食も用意した。
どうぞ、楽しんでゆかれよ」
そう言って、初めの挨拶をしめると、ようやく自分がわかる流れに戻ってきた。この後は挨拶をしまくって終わり。よし、がんばるぞ。
「この度は9歳、おめでとうございます、アラミレーテ殿。
アレクフレット・シベフェルラだ。
君が王都へと来る日を心待ちにしているよ」
「シベフェルラ公爵様、ありがとうございます。
私も王都でたくさんのことを学べる事、楽しみにしております」
なぜここに公爵が……、そう驚愕した気持ちはきちんと隠しておく。いや、本来はここにそんなに気軽に来られる立場じゃないよね? まあ、お祝いに来てもらえたのはうれしいからいいのだけれど。
それを皮切りに挨拶が続いていく。いや、もう誰が誰かよくわからなくなってきたぞ? 本当に数が多い。それに少し血の気が引いてきて、まずいかもしれない。本当にどうしてこんなにも体力がないんだろうか。そんなことを考えながらも頑張ってると、ついに最後である従伯父上たちの番になった。イシュン兄上は僕の顔を見るなり、限界を察してくれたようで、顔を険しくさせる。その様子を察した従伯父上たちは早々に会話を切り上げて、僕を休めるようにしてくれた。ありがたいです……。
「アラン、もう限界だろう。
これで一通り挨拶は済ませたから抜けていい」
「ありがとうございます、父上」
最後に一つ深く礼をしてから僕は会場を抜けることにした。人目がなくなると気が抜けたのか、すぐにくらり、と視界がゆがむのを感じる。それに気が付いたサイガがすぐに体を支えてくれる。はあ、なんというか情けない。
何とか自室までたどり着くと、こうなるとわかっていたかのように待っていたアベルに服を脱がされいつもの部屋着へと着替える。そして手ばやくメイクも落としてもらうと、ようやく一息付けた。そしてそのまま水を受け取って飲むと、もう限界だったようですぐに睡魔が襲ってきた。
「おやすみなさい、アラン様。
本日は本当にお疲れさまでした」
最後にサイガのそんな言葉と、やさしく頭をなでてくれる温かい手を感じながら僕はすぐに深い眠りへと落ちていった。
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