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彼⑤

いつも俺がそばに…

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「オレだけを見てろよ」



こんなキザなセリフは
彼以外誰が
恥ずかしげもなく
何のてらいもなく
言ってのけられるのだろうか?


 
「私には何人もソウルメイトがいて
彼らは皆んな私の助けを必要としているの。
あなた一人だけを選ぶと言うのは
出来ないかもしれない。」



 
「理解してるフリをしてみたが
嫉妬で中身が抉れそうに
気が狂いそうで
平静を装う演技で精一杯だったんだ。」


 
「人間味の醍醐味だね。」



軽く笑ってみせた。


 
「お前は不器用ですぐに
傷ついて
死にたいとか
軽々しく言うくせに
何なんだよ‼️」



確かに。。。


 
私もワタシが1番分からないのだよ。
皆、それで苦労するのではないのか?
自己を客観視出来ないから。
思い込み
自尊心
見栄
様々なカテゴリーの罠にハマりっぱなしなのだよ。


 
「平気でトゲを刺してくる人に
いちいち反応してたら
ワタシがんだけどさ、くるんだもん。
まだまだ強くならなきゃね……」



涙が不意に溢れて来てしまった。


 
動物は虫たちは植物たちは
環境に合わなければ
自然淘汰していく。


 
なのに人間だけは
続けてしまうんだ。
"魂の最高の学び"という
まやかしのような言葉を耳元で誰かが囁くんだよ。



 
「きっとあなたとは、もう居られないと思う。
でも出逢えて本当に幸せだったよ。
私の不器用さを全て受け止めてくれたから。"生きてて"良いんだって、心の化膿しきった傷を治してくれたから。
あなたみたいな人に
少しの間だけでも
"愛されてる"のかもしれない
そう錯覚出来ただけでも
私は世間の羨望の的だね。。。」


 
 
「何のカテゴリーにも縛られなかったら、今すぐ会いたいのに……」




あーあ、
また泣いちゃうよ、ワタシは……




 
こんなにも
身体を求められることは
人生でないと思ってたんだ。


 
夫からは
「お前は"女"として見られないだろ?
そんなんで?
俺はもっと稼いで他の良い女と家族作るから。」



 
産後の精神と肉体が極限に追い込まれ、ほぼ寝込む妻にかける言葉なのだろうか?


 
耳を疑ったが気にしないをしていたんだ。



ちょっと悲しかっただけ。
もう私は"女"として
生きていくこもなく
扱われることもなく
ただ病弱な世間の
肩身を狭く
生きていく
だけなんだ。。。



 
そんな私を救ってくれたんだ……


 
彼が一晩中抱きしめてくれるから
寒がりの私でも
服を何も着ていないのに
あったかい。



身体があったかいだけで
ヒトはこんなにも
安心感を覚えるもんなんだね。。。




 
彼は何も言わない。
何も言わずに
熱くて優しいキスを代わりにくれた。



 
セックスが苦手でたまらない私を
馬鹿にする事もなく
恥ずかしさで
笑いで誤魔化そうとしても
屈することなく
ただ、"愛"を心の中心軸に
その軸を微動だにさせず
一途に気持ち良くさせてくれることに
懸命な彼は
どれほど私の心を癒してくれただろう。



 
「ゴメン、上はまだ無理……!」
照れと恥ずかしさで
何も出来なくて
思わず変な動きで笑っちゃう私も
受け入れてくれるんだ。



 
「ねぇ、本当に私と一緒に、いたいの……?」




「お前が心配でたまらないんだよ!!!
こんなに大切な人が、
こんなに傷ついてボロボロなのに
すぐそばに駆けつけられず、
俺のこれまでのキャリアと仕事は何の為だったんだろう?
自問自答が止まらないんだ……」



「決まってるじゃん!
あなたは、たっくさんの人に
"光"を届ける人だもん。
私とこっそり後ろで隠れて生活する人ではないんだよ。」




「俺といる覚悟はあるのか……?」





 



 

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