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しおりを挟む「久しぶりだな、ツバメ」
「……そうだな」
この日、皇帝との謁見を求め久しぶりに城へ来た。
城の人たちは素直に皇帝のいる部屋まで案内してくれて。
予定もなかったのか「入れ」の一言で扉を開けた。
「何故来た。お前の処遇か?」
それも気になる、確かに。
あの離れにどんだけ俺を閉じ込めてんだと物申したい。
だが、今はそれよりもーー
「お前とエリスの契約内容を知りたい」
お前が純粋な気持ちであいつを選んだとは思えない。
侵略する大国を指揮する男だ、きっと裏がある。
それも、合理的な裏が。
「ほう? あのお前がそんなことを聞くとは、通われて骨抜きにでもされたか」
「……そうかもなぁ」
確かにそうなのかもしれない。
毎日通ってきてしつこく名前を呼ばれて、そんなことされたら嫌でも情が移るのかもしれない。
でも、
「それでもいっかなって、思っちまったよ」
この現実主義者の俺が、まさか自己中心的なあいつにやられるとは。
「普通だったら切るよな、言葉通じねぇし」
「そうだな、私はあのパレード以来面と向かって話をしていない」
「乗馬の違うのか?」
「あれはお前たちの動向を探る為だ、私の暗殺などでも考えられたら困るからな。〝想い〟とは怖いものだ」
「成る程? まぁそうだな」
〝想い〟なんて、〝心〟なんて所詮目には見えない。
そんな非合理的で非現実的なもの、俺たちはこれまでどうでもいいと思ってきた。
ーーだが、違う。
「なぁ。〝心〟ってさ、本当に胸らへんにあったよ」
痛かったんだ、あいつが泣いた時。
ぎゅぅって押し潰されるような感覚がして、呼吸が止まるかと思った。
嬉しかったんだ、「僕を選んで」と言われた時。
押し潰されてたのがぶわりと解放されて、体が暖かくなった。
「お前にも、ちゃんとそれを感じてたんだぜ?」
「感じれるほどに、その頭は普通へ成り下がったのか?」
「いや、それでも俺は現実主義者だ」
だから逃避行なんてせずお前の元へ来た。
「お前とエリスが結んでる契約を聞かせろ。
それを知ってから次を考える」
あいつに聞いても上手く説明してくれない、ってかできない。
だからこいつから聞いて、現実を知ってから考える。
「俺は、エリスと共に人生を歩んでいきたい」
あの自己中心的思考のあいつの隣とか、絶対考えらんねぇけど
ーーでも、多分これを逃したらあいつほど俺を愛してくれる奴はいないだろうから。
(あぁ本当、自分でもびっくりだよ)
俺は、こんなにも誰かに愛されたかったんだ。
結婚は隣に並んで正解じゃない。
想いを通わせ愛し合うのが正解なんだ。
合理的と現実主義者は、初めから一緒にいちゃいけなかった。どうやっても愛が生まれない。
だから、俺にはエリスみたいなのがお似合いなのかもしれない。
ならば、どうにかしてこの現実を打破する方法を。
こいつとエリスの結婚を破棄させる方法を、考えなければ。
「……ふぅん」
これまで一度も笑わなかった男が、初めて笑みを浮かべた。
「案ずるな、難しいものではない」
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