9 / 11
9
しおりを挟む「あれは、この大国の次に大きな国の王子だ。
流石の私もあの国相手に戦争をするのは難しくてな、そんな時話が来た」
『島国から来ている王族との婚約を解消せよ。代わりに我が王子をそちらへ向かわす』
「正直意味がわからなかった。
何故お前との婚約に口を出すのか、何故王子が来るのか、考えても理解が追いつかない。
そして強引に来た王子もまた、理解できない者だった」
だが、これはいい機会。
こちらが戦争をしたくないように向こうだってそう考えているはず。ならばーー
「あの国は〝代わりに〟と言った。それを利用し、こちらから交渉を持ち込んだ」
『島国の王族の代わりに貴国の王子と結婚する。
我々は互いに侵略をせず、同盟を築くとしたい。王子はその為の架け橋とする。
侵略戦争が終わり次第、結婚は解消し貴国へ返そう』
「この侵略戦争は父からの遺言でな、まだ長らく続きそうだ。
戦争が終わった暁には私は結婚の適齢期を終える。そこで離婚しても、周りの者は〝皇帝は再婚なとせず独身を貫くに違いない〟と諦めるだろう。私の後継は既に決まっているし子どもも必要ない。
だから、お前はこの戦争が終わるのをただ待ってさえいればいいんだ。そうしたら時期お前の元にエリスは来る」
「…そんなに長く待つ現実を受け入れろって言うのか?」
「ならばどうする? お前の国は小さな島国、あの王子の代わりに差し出せるものなど何もないだろう?
それとも自国を裏切るのか?」
そんなことはしない。
それをしたら最後、首が飛んで未来など消える。
だから、
「俺をこの国の〝宰相〟にしろ。
政治の方じゃない。戦略の方の宰相だ」
こんなに合理的な奴でさえ終わらせるのに長くかかる侵略。
ならば、俺の脳を貸してやるよ。それならきっと予定より早く戦争が終わるはずだ。
俺たちは婚約では合わなかったが、仕事のパートナーとしてはきっと最適すぎる組み合わせだろう。
「その代わりエリスに手を出すな。
結婚は形だけにして、俺との交際を許可しろ」
「この私に浮気を許せと?」
「そうだ、ってかお前あいつのこと愛してない癖に浮気とか言うなよ。
代わりに俺がその戦争にかかる時間を半分にしてやるよ。
そしてお前も〝愛される〟ということを知ってみろ」
合理的なこの男が愛でどう変わるのか、我ながら興味がある。
「……ふむ、成る程」
閉じていた目が、ゆっくりとこちらを見た。
「いいだろう、と言っても元々お前の処遇は宰相行きだったがな。あの島国を離す予定は無い。婚約を解消してもお前には人質としてまだ国に残ってもらう予定だった。
だが、使える者を野放しにしておくのは勿体ない。だからどうにかして宰相に落とし込む案を考えていたのだ。
それが、まさかこういう形で実現するとは思ってもみなかったが」
「へぇ、なら利害の一致ってことで」
「問題ないな」
結婚はしたくないが、使えるものを合理的に使わないと気が済まない皇帝。
現実的に事実を受け入れ、より良い打開策を作ってさっさとエリスと共になりたい俺。
互いにこれ以上はない。
「明日にでも迎えをやる、城へ戻れ。
戻り次第早急に今の宰相たちと仕事をしろ」
「分かったよ。俺の部屋はエリスと一緒な」
「お熱いことだ」
「ほっとけよ。じゃあ行くからな」
俺は一度決めたらその現実を受け入れんだよ。
いいじゃねぇか別に。
「しかし、あのツバメがここまで変わるとは……」
背中にポツリと呟かれた、皇帝の声。
「…少し、愛というものに興味が湧いたかもしれんな」
「いいじゃん。お前の変わり様を見るのが楽しみだ」
「お前は、私のことを愛してくれていたのか?」
(そうだな……)
愛する努力はした。
この国に来てからの俺は全力だった。
その時間は決して無駄ではないと、思うから。
振り返って、ニヤリと笑ってやる。
「俺の初恋の相手は、間違いなくあんただったよ」
0
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
貧乏子爵のオメガ令息は、王子妃候補になりたくない
こたま 療養中
BL
山あいの田舎で、子爵とは名ばかりの殆ど農家な仲良し一家で育ったラリー。男オメガで貧乏子爵。このまま実家で生きていくつもりであったが。王から未婚の貴族オメガにはすべからく王子妃候補の選定のため王宮に集うようお達しが出た。行きたくないしお金も無い。辞退するよう手紙を書いたのに、近くに遠征している騎士団が帰る時、迎えに行って一緒に連れていくと連絡があった。断れないの?高貴なお嬢様にイジメられない?不安だらけのラリーを迎えに来たのは美丈夫な騎士のニールだった。
出戻り王子が幸せになるまで
あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
初恋の相手と政略結婚した主人公セフィラだが、相手には愛人ながら本命がいたことを知る。追及した結果、離縁されることになり、母国に出戻ることに。けれど、バツイチになったせいか父王に厄介払いされ、後宮から追い出されてしまう。王都の下町で暮らし始めるが、ふと訪れた先の母校で幼馴染であるフレンシスと再会。事情を話すと、突然求婚される。
一途な幼馴染×強がり出戻り王子のお話です。
※他サイトにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる