純情天邪鬼と、恋

花町 シュガー

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社会人編

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「はぁ? 合コン??」

誰もいなくなったオフィスで相談されたこと。

「はい!今俺と友人で計画立てて、互いの会社の人たち集めてるんですよ。
鈴木さん今フリーでしたよね? 良かったら参加されません?っというかしてください是非!」

「何でしなきゃいけないの。お前同期たくさんいるだろ、他の奴もいるし」

「あらかた既に誘ったんですよ…でもあんまりノリ良くないというか、思ったより集まんなくて……
向こうももう先輩とか男女関係なく声かけてるって言うから、じゃあ俺もって」

「じゃあって……」

今時自分たちで合コンの計画とか立てなくないか? それ系の店行ったりするだろ普通。
こういう行動力が流石新卒というか、まだ学生感が抜けきってないというか……

「俺、別に彼女とかいらないから」

「何言ってんすかそのイケメン顔で!それ俺ら敵に回してます!? 勿体なさすぎますって!」

「…はぁー……」

大学の時からこんな誘いはちょくちょくあった。
断りすぎるのも危ないと思って何度か参加した事はあるけど、でも全然……正直気持ち悪いだけで。

別に女性が嫌いなわけじゃない。
ただ、どうしても友人以上には見ることが出来ない。

(なのに、初っ端からそういう目で見られる場所に行くとかどんだけ自殺行為だよ)

それに、女性は男より勘が鋭い。
気を抜くとまじで俺の視線だけで〝違う〟とバレる可能性がある。

〝合コン〟って言葉も久しぶりに聞くくらいだったのに、まさか社会人になってまで悩むことになるとは……

「っというか、人集まらないならいっそ中止にすれば?」

「それはできません!
折角集まってる人たちに、申し訳なくて……」

(っ、あぁもう)

なんだこれは、なんでオレがこんなに悩んでる?
流石にプライベートまでお世話できるわけないだろ。

だが……


「鈴木さぁん…まじでお願いします助けてくださいぃー」


「…………っ、

はぁぁ……わかった、わかったから」


「!! やった、まじっすか!?」

(こういうところだよ俺は)

学生時代頼られることがなかった分、どうしてもこういう押しに弱い自分がいる。
勿論断るところはちゃんと断わってる。
けど、今回のは新坂だしメンターの俺が助けて当然。
それに断わりすぎると変な方向に疑われる可能性があるし、ややこしくなって最悪クビにまでいくのは避けたいし……

そうなる可能性が極めて低いのはわかってる。
だが、此処で生きるためにリスクヘッジはしておくべきだ。

「これ、貸しだからな。お前来月の新規1件譲れよ」

「えぇぇなんでっすか!? 鈴木さん自分の数字だけで充分達成なんでしょ!」

「アホ、学生と社会人は違うんだよ。
先輩との接し方もっかい指導してやろうか……?」

「ひぃぃ…っ、わ、わかりましたよ……」

こんな時、普通は喜んだり楽しみにしたりするのだろうか。

「……はぁぁ」

(ただただ、気が重い)





***





「本当に先始めちゃっていいのっ?」

「いいみたいっすよ!何か向こう少し遅れるって」

「んじゃ、乾杯しときますか!」

「「「「乾杯ー!!」」」」

テンション高めの掛け声で冷えたグラスをぶつけ合った。

新坂の言ってた通り、うちから集まったのは男女混合なメンバー数名。

(営業から事務からその他部署まで…本気で先輩とか関係なく声かけまくったのか、あいつ)

そのコミュニケーション力と人当たりの良さをもう少し仕事に活かせたら、すぐに伸びるのに……

「鈴木さんお疲れ様ですっ!お隣いいですか?」

「あぁお疲れ様。どうぞ」

「やった!失礼します~。
こういう飲み会参加されるの珍しいですよね? 彼女募集中なんですか?」

「新坂が困ってたから助けてやろうと思って。
彼女は……そうだね、ぼちぼちかな」

「本当ですか!? 私の部署鈴木さん狙い多いんですよ!わー今日来て良かったぁ~抜け駆けしちゃおっ!」

「あはは……お手柔らかに」

(駄目だ)

やっぱり、申し訳ないけど俺には響かない。
友人でなら全然いいんだけど。

あぁまったく、向こうの会社の奴らはいつ来るんだ?
遅れるとか辞めろよまじで。
適当に挨拶して帰ろうと思ってたのに…本当計画狂う……


「おーい新坂ー!悪りぃ!!」


「お!こっちこっち!」


ガヤガヤうるさい店内の中、一際大きな声。
振り向くと、同じような数の団体がこちらへ歩いて来ていた。

「皆さんお疲れ様です、初めまして!
遅れて申し訳ありません~」

「お疲れ様です!」「お先に乾杯させてもらってます~」

「あはは!もう既に出来上がってません?」

真っ先に話しはじめた奴が、恐らく新坂の友人。

(なんか似たような雰囲気……最近の若者ってこんな感じなのか?)

「これ適当に座ってんの?」

「そうそう。どうせ後から自由だろうし、始めは空いてるとこでいいかって」

「りょーかい。
皆さん適当らしいので、空いてる席どうぞ~」

「はーい!」「お邪魔します~」

挨拶しながら入ってくるのを笑顔で接しながら、
皆が皆互いに品定めするような目で会話をし始める。

……こういう、合コン特有の雰囲気。
出会った瞬間から男女の関係がはっきりする、この気持ちの悪さ。

(ーー早く)

早く、時間が過ぎろ。
それでさっさと抜け出して、帰って寝て、それからーー



「ほーら!一ノ瀬さんもさっさと入ってくださいよ~!

1番の色男がなに恥ずかしがってんすか?」



「…………ぇ?」



不意に聞こえた、その名字。

無意識に、下へ向けていた顔が上がった。


「だから、俺乗り気じゃねぇって」

「またそんなこと言ってー。もうここまで来たんですから挨拶くらいしてください!」

「はぁぁ……ったく、お前のせいだぞまじで」

「分かりましたから!後でちゃんと怒られますって」

新坂の友人が楽しそうに腕を引っ張っている、人物。


(まさ、か)


ドクリと心臓が跳ね上がり、スーツの上から押さえつける。

声色とか、口調とか、トーンとか。
そんなものが似ているなんて、そんなこと。

〝一ノ瀬〟なんて名字これまで何人も会ってきたし、あいつに似てる奴だって見たことがある。
だからそんなのはあり得ない、絶対に。

……なのに、


「ーーーーっ、ぁ」


まるでスローモーションのように、ゆっくり動く人影。


靴を脱いで、気怠そうに部屋を見回したその顔は


俺と目があった瞬間、驚愕の色に変わった。




「…………ゆ、ずり……は?」







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