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よん
しおりを挟む周辺国を招き開かれた結婚式を持って、ヘンリックは正式に龍王妃となった。ルドガーがヘンリックを政治に関わらせる気がないので何も変わらないが。
隣接する王妃の寝室にヘンリックを移動させてはどうかと進言する者達をルドガーは黙らせて、今まで通り私室を共有させている。部屋が広すぎて落ち着かないのか、リビングでも寝室でもなく、ヘンリックは相変わらず衣装部屋で寛いでいることが多い。
もしや衣装部屋だと気づいておられないのでは?と執事が呟いたことでルドガーは得心がいった。祖国では小さな馬小屋のような建物に閉じ込められ、満足に衣服も与えられなかった子供だ。教えなければ衣装を保管するための部屋が存在するなど思い至らないのだろう。
ルドガー以外がヘンリックと会話することを良しとしない弊害がこんなところに出ている。だが、ヘンリックはそれでいいのだ。下手に知恵をつけて危険視されれば予想外のリスクが生まれることだろう。
絨毯の上で猫のように丸まって昼寝をするヘンリックをルドガーは抱き上げる。
「ん、ルドガー様…?」
ようやく名前を呼ばれた。それだけのことが飛び上がりたくなるほど嬉しい。
「ああ、困った。今すぐお前を孕ませたい」
「……………それは、お待ち下さい」
寝台の上で身を捩り、顔を真っ赤にして逃げようとする。
「もうしばらく蜜月を愉しみたいということか。なるほど。夫として応えてやらねばな」
「……………」
誰もそんなこと言っていない、と。ヘンリックの目は明確な否定の色を見せている。
人間の子と異なり、龍人の子は妊娠期間が3年経たないと産まれない。後天的に龍人化したことも、その龍人化の方法が中出しだった上に、己が受胎可能な身体になったということも、ヘンリックには青天の霹靂だ。未だに飲み込めてないのだろう。
事前に承諾も得ずに変化させたことをヘンリックは怒らなかった。むしろ嬉しそうに表情を緩めるだけだった。思わず「それでいいのか」と問えば「僕は陛下のものですから」と、今更何を言うのかと不思議そうに返された。ただ心の準備が出来るまで待って欲しいと。
「待つさ。我々の一生は長い。焦る必要はない。だが、愛でるのは待てない」
「あ!ルドガー様、ダメです!仕事に戻って」
まだ日が高い室内で、ヘンリックは必死に四肢をばたつかせる。左足首を掴み、靴を脱がせて放り、靴下と素足の境目に舌を這わせる。んんんっ!と押し殺した声を上げて、ヘンリックの手がシーツを握り締めた。優しく歯を触れさせながら、靴下のゴム部分を咥えて引っ張り、そのまま脱がせてやる。
「だめ!汚いから、ルドガー様!」
空気に開放された足指を口に含んで舌で形をなぞる。足指の指紋さえ愛しい。
「ゃ、ゃ、ぁ、」
羞恥に見悶え始めれば最早抵抗らしい抵抗など出来ない。
「全身、余すところなく、お前は私のものだ」
ヘンリックは幸せだ。
祖国では邪魔者扱いされていた。
しかし、ルドガーはヘンリックがいないと駄目なのだと、過剰な程の行動で示して、ヘンリックの不安を取り除いてくれる。
こんなに満たされていいのだろうかと、贅沢な悩みすら湧いてくる程、毎日幸せである。
[完]
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