不確定要素は壊れました。

ひづき

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その後の彼ら。

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 リリアの仕事は情報を得ることだ。雇い主はサルベール男爵。男爵が次王に誰を推しているかなど、リリアには興味が無い。興味はないが、シェノローラ第一王女の邪魔をして良いと言われている。



 公爵家の養子は、どんなに頑張ってもそれを認めない養父との関係に悩んでいた。かの公爵家は代々宰相を排出してきた名家で、養父は歴史を途絶えさせるわけにはいかないと自身のプライドを守るために足掻いていた。それが次期宰相に第三王子が指名されたことで、より一層養子に辛く当たるようになったらしい。荒れている宰相の執務室から情報を盗むのは、虐げられている彼からすれば当然の報復で、受け取ったリリアがそれをどうしようと構わないようだった。むしろ、憎い養父を公爵家ごと滅ぼしてくれる天使だと本気で信じている、そんな狂気じみた人物だ。

 伯爵家の三男坊は、すぐ上の兄にコンプレックスを抱いていた。何をさせても優秀な兄。それに比べ、三男坊は何をやらせても平凡以下だと言われ続け、自信を失っていた。そんな兄は騎士団長の娘婿。兄を慕う弟の仮面を被り、兄夫妻の元へよく遊びに行き。兄の遠征準備を手伝いつつ、無防備に置いてある書類や荷物の傾向から遠征先を推測してリリアに教えてくれた。将来的に軍務に就くことを希望している第四王子が同行する遠征の情報も得られた。内面が幼稚な三男坊は、兄の裏をかけたことが楽しい、出し抜けただけで嬉しい。その情報の重要性を微塵も理解していないらしい。

 男爵家の跡取りは、父親が行っている違法植物の栽培を知り、憤っていた。そこにあるのは良心の呵責というより、幼い正義感。自領で不作と土砂災害が重なり、逼迫し、領民の生活を守るために泣く泣く違法行為に手を染めた父親の心境など知ろうともしない。そのくせ、自身がお金に困らず裕福な生活を営めているのは違法行為の恩恵だと気づいているから、何もせずただ憤るだけ。彼がそれらをリリアに語ったことで、サルベール男爵は彼の実家の弱みを得て、脅迫し、都合のよい手駒として使い始めた。

 聖女ミリアの甥は「聖女の甥」と称されると自身が聖女ミリアの付属品扱いされていると怒りだす。聖女ミリアは領主を勤める夫と共に故郷に定住しており、国から聖女に仕事を依頼する時には聖女業務の統括窓口として子爵位を賜った聖女の弟を経由する。甥は子爵位を継ぐつもりのようだが、ミリアが聖女である期間に限定した1代限りの爵位なので無理がある。聖女ミリアのための爵位なのに、自身を主体にして考えている時点で、色々と残念な頭の持ち主としか言えない。国と聖女動向を聞き出すのには大いに役立った。



 ───もちろん秘密よ。わたしと貴方だけの、秘密。



 甘く囁いておきながら、実際は養父に全て報告している。リリアは酷い女だと自覚しつつ、そんな自分が嫌いではなかった。

 問題は、シェノローラ第一王女の情報がろくに得られないこと。隙がない。メイドの兄弟や姉妹を当たっても、コンプレックスを抱いているような弱点のある者がいない。いたとしても、シェノローラ第一王女から遠過ぎて意味が無い。シェノローラ第一王女の世話は全て王弟令息であるグレイルが取り仕切っている、という周知の事実しか得られない。グレイルに近づこうにも、やはりこちらにも隙は無い。実家の商会を探っても、まるで縁切りでもしたかのようにグレイルの情報が掴めない。

 ならば、と。グレイルに恋する乙女を演じて、堂々とグレイルの情報を聞いて回った。恋に頭の沸いた、怖いもの知らずを気取って、彼のことなら些細なことも知りたいの!と。

 陰から密かにグレイルのことを想うお嬢様方から嫌がらせをされるようになったが、もっと陰湿なイジメを経験した身としては可愛いものである。そもそも、グレイルという男の何がそんなに魅力的なのか、リリアには理解できない。確かに容貌はいい。だが、それだけだ。シェノローラ第一王女を見つめる眼差しの、あの仄暗い情熱に、なぜ誰も気づかないのか。男は少しくらい阿呆で抜けている方がリリアは好きだ。その点、グレイルという男は気味が悪くて仕方ない。何を犠牲にしても気にならないというくらいの、異様な余裕がある。そんな、シェノローラ第一王女のようには決して見せないであろう、表情。あれを見て懸想できる女は脳内がお花畑か、現実が見えない病気なのだろう。

 そんな夢を見るお嬢様方からの嫌がらせを、周辺の連中がシェノローラ第一王女の仕業だと勘違いしたのには呆れて何も言えない。いざとなれば王族の権力で冤罪をでっち上げて相手を抹殺することも簡単な王女が、常にグレイルと共にいる王女が、そんな回りくどいことをすると何故思ったのか。頭が足りない。だからこそ彼らはリリアに篭絡されたのだろうけれど。




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