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その後の彼ら。
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しおりを挟むグレイルが実家の父に依頼した件はスムーズに動き出した。これでシェノローラ第一王女を侮辱した者たちは今後物資不足に喘ぐはめになるだろう。しかも気づきにくい緩やかな変化で始まったばかりだ。その間にも、それぞれ余罪や思惑を洗い出す必要がある。
グレイルのすべきこと、やりたいことは山積みだ。中でも最優先となるのがシェノローラのことである。シェノローラが帰ってきたとの報告に、グレイルは足早に廊下を進む。
サルベール男爵は国外にも情報を売っていた。その件で調査を行い、グレイルが国王に報告している最中に、シェノローラはグレイルに隠れて外出していたのである。きちんとグレイルの影を護衛として連れていった点は構わないが───
「───ソレ、なに」
シェノローラが連れ帰ってきた女に、グレイルは殺気を向ける。
「わたくしの侍女よ。だから殺さないでね」
どうやって甚振ってやろうかと、グレイルは新しい拷問椅子の設計をしていた。新しい拷問椅子の設計はシェノローラに喧嘩を売った連中の人数分ある。簡単に死なせず、苦痛が長引く毒の調合も完了している。それが1人分無駄になった。
新しい侍女、リリアは、メイド服に身を包み、髪色も一新して別人のようだ。砕けた口調で話すグレイルを前にしても顔色ひとつ変えない。
「今までにもこれからも、俺がいれば必要ないじゃないか」
「グレイルは王配になるのよ?今後はわたくしばかりに構っていられなくなる。その穴を埋めるための専属侍女は必要だわ。信用できるかわからない女達にその場限りで任せるよりは専属がいた方が確実でしょう」
そもそも、今まで専属の侍女が一人もいなかったことがおかしいので、グレイルも考えてはいた。いたが───
「ソレなら信用できると?」
「彼女なら貴方に色目を使う心配は要らない。貴方が彼女に傾く可能性もない。これ以上ない人材だと思うの」
王女でありながらシェノローラに専属侍女がいなかった原因はまさにそれだ。グレイルを狙う女ばかりだったため、片っ端から排除されていった。
グレイルが睨みつけてもリリアは全く動じず、堂々と一礼して口を開いた。
「私、何がなんでも生きたいんです。もし死ぬなら安らかに死にたい。そのためなら何でもしますし、誰か様の毒牙から守って頂けるならシェノローラ第一王女殿下に全力で忠誠を誓います」
シェノローラ第一王女はニッコリと微笑む。
「ね、いいでしょう?」
「………わかり、ました」
グレイルは深い深い溜め息を吐いた。自分以外の人間がシェノローラに一日中張り付くなど、簡単には容認できないが、今後のことを考えれば確かに必要だ。
なにより、グレイルはシェノローラの笑顔には勝てない。
───徹底的に教育してやる。
そう、心に決めた。そんな不穏な内心を見透かしたのか、シェノローラがグレイルに微笑みかける。
「結婚式、楽しみね。これから忙しくなるわよ」
「───えぇ、楽しみですね」
シェノローラが笑うだけで、そこに明るい未来があるのだと確信できる。確信できるからこそ、誰にも邪魔はさせない。例え、どんな手を使ってでも。
「愛してる」
この言葉の異様な重さに、彼女は生涯気づかないかもしれない。だが、それでいいとグレイルは甘く甘く微笑み返した。
[完]
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